待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
「これとか可愛くない……!?」
「カァイイですカァイイです! こっちも良くないですか?」
「あー、良いねっ! それも良い……!!」
おじさんとベビー服を見繕って、大盛り上がりのトガです。輪廻ちゃんのお腹に居る双子ちゃんが産まれてくるのは、まだまだ先の話です。それは分かってるんですけどぉ、いざおじさんに連れられてベビー服を見に来たら楽しくなってきちゃいました。なので今、ウーキーズの中に有る専門店であれこれと見て回ってる訳です。服とか玩具とか、あれやこれや色々と。
おじさんが妙に張り切り過ぎてる気がしないでもないですが、そこはもう好き勝手させちゃおうと思います。だって私も楽しいですし。これから産まれて来る双子ちゃんが、可愛いおべべを着てる姿を想像するだけでもカァイイのです。
それに。私の弟や妹でもあるんです。トガは一人っ子ですから、妹や弟が欲しいなー……なんて思うことは無かったと言ったら、嘘になります。今度、円花ちゃんと一緒に来ようと思います。二人で赤ちゃんの服を選ぶデートっていうのも、有りですよねっ。
まぁ円花ちゃんは「気が早いわ、たわけ」って呆れた顔をしそうですけど。でも何だかんだで付いて来てくれるのは分かってるので!
「ワンちゃんも良いけど、ネコちゃんも捨て難い……!」
「クマさんだってカァイイですよぉ。もういっそ全部買っちゃうのはどうです?」
「んーーっ、それも有りだなぁ……! あ、でもこっちの恐竜も中々……」
赤ちゃん用の着ぐるみパジャマがカァイイのです。種類も豊富で、色も形もバリエーション豊かで。円花ちゃんも、赤ちゃんの時はこういうのを着て過ごしてたんですよねぇ。昔、輪廻ちゃんに写真を見せて貰ったから知ってるのです。
「そう言えば、円花ちゃんってどんな赤ちゃんでした?」
「え? 円花? んーー……円花はねぇ……。全く手間が掛からない子だったよ。泣き喚くことは全然無くって。夜泣きもしないし。あと、お乳を飲む時は物凄く嫌そうだった」
「ぁーー……」
それは、……はい。そうですよね。とってもよく分かるのです。トガはヨリくんの記憶を体験してるから、分かります。牛乳嫌いになっちゃったのも納得なのです。まぁ、飲ませるんですけど。栄養は偏り無く満遍に摂って欲しいので。ヒーローも呪術師も体が資本ですから。
「熱中症になっても泣かないし、喋るようになったと思ったら最初からのじゃのじゃしてたなぁ……」
「ぁ、はは……。赤ちゃんの時から目茶苦茶だったんですねぇ……」
「そりゃあもぅ、色々と目茶苦茶な子だったね。だって喋るようになったら、あれは何だこれは何だって質問責めで」
ん、んん。そりゃあ、そうですよねぇ……。ヨリくんが生きてた平安時代と、今の時代は何もかもが違い過ぎるので。気になってあれこれ聞いちゃうのも仕方ないとは思います。でもまさか、喋れるようになって直ぐ質問してたとは思わなかったのです。
そんな円花ちゃんも見たかったなぁって、思っちゃいますけど。
……そう言えば。ヨリくんの記憶って何歳の頃まで見れるんでしょうか? もしかして、産まれ直した後の記憶も体験出来たり……? そう考えると、トガは夢の世界で七十年以上も過ごすことになるのです。もちろん、それを嫌に思うことは無いんですけど。むしろヨリくんの、円花ちゃんの記憶を全部見れてお得かもって思います。
「……本当に、被身子ちゃんが居てくれて良かったよ。思えばあの日から、きっと円花は被身子ちゃん一筋でさ」
「それを態度に出すまで長かったですけどね。愛してるって、ぜーんぜん言ってくれなかったのです!」
それは今思い出しても、やっぱりちょっとムカムカくるぐらいです。ほんっと円花ちゃんは、全然愛を伝えてくれなくって。最近は素直になって来ましたけど、トガ的にはもっともっと言ってくれた方が嬉しいのです。最低でも一日一回……、いや三回以上は言ってくれないと!
「被身子ちゃんと比べたら湾曲してるからねぇ……。そこはお母さん似かなぁ」
「おじさん似ですよぉ。輪廻ちゃん言ってましたよ? 愛してるの一言を聞くまで長かったって」
「んっぐ……! いやでも、輪廻だって長かったからね!? 何年も好きって言ってくれなくってさぁ……! 実は付き合うのも一苦労だったんだよ!?」
「んふふ。やっぱり円花ちゃんはおじさん似ですよぉ」
大慌てで言い訳をするところとか、ほんとにそっくりです。円花ちゃんと輪廻ちゃん、そしておじさんには魂の繋がりは無いのかもしれません。でも、血の繋がりは確かに有りますし。何より円花ちゃんは、二人にそっくりなので。やっぱり親娘なんだなぁって、しみじみ思っちゃうのです。
……むーー……。何だか、ヨリくんに会いたくなって来ました。今のしょんぼりしてる姿を好きとは言えないですけど、それでもやっぱり……一緒に居たいの。そうでなきゃ落ち着かないっていうか、やっぱり何処かで円花ちゃんを考えちゃって。首ったけとはこの事なのです。何をしてても、ヨリくんは絶対に私の心の中に居ます。だから、だからぁ……!
「円花ちゃんに会いたいです。早く帰りましょうっ。何なら、トガを泥花市に連れてってくださいっ!」
「良いの? 今の円花、結構良くないけど?」
「そりゃ、良くないですけどぉ……。でも、だからって離れるのは不愉快なので!」
「……ん、分かった。じゃあ向かおっか、泥花市。遠いから、ちょっと準備してからだけど」
「あ、タクシーでお願いします!!」
「えっ」
◆
と言うわけで、来ました! 泥花市!
見渡す限り瓦礫の山ですし、荒廃してますが関係ありません……! 今はとにかく、ヨリくんに会いたいのでっ。それで、輪廻ちゃんの実家は何処に有るんでしょうか? 早く案内してくれないと困ります……!
「いやまさか、ナイトアイの言う通りに突撃してくるとはねぇ……。言っておくけど、ここに立ち入れるのはナイトアイの許可有ってのことだからね? 間違っても変な事したり、転んで怪我したりしないように」
「すみませんセンチピーダーさん。被身子ちゃんって、こうなるとノンストップなので……」
「それは回向くんも同じ事でしょう?」
「はーやーくーしてくださいっ!」
おじさんがムカデ頭のヒーローとお話してますが、トガは待てません。待つ気はありませんっ。円花ちゃんに会う為に、片道二時間も掛けてここまで来たんですっ。おじさんがしてた準備とか手続きを含めたら四時間も掛かっちゃって、とっくに夕方なのです……! 私は今直ぐにでも会いたかったのに、随分とお預けされちゃって不快です……!
そりゃ、目茶苦茶言ってる自覚は有りますけども。でもだからって、我慢は出来ないので!
「復興作業中にすみません。直ぐに済ませますんで……」
「そうしてくださると助かります。……それでは、参りましょうか」
やっと、やっとヨリくんに会えます……! 数時間離れてただけですけど、会いたくて会いたくて仕方ないのですっ。やっぱり、最初から付いて行くべきでした。次からは、何が何でも一緒に居るのです。そうじゃなきゃ、とても落ち着けなくって……!
私はもう、円花ちゃんの隣で円花ちゃんと一緒じゃなきゃ身も心も満足出来ないのでっ。その責任は、しっっかり取って貰います!
やっと歩き始めたヒーローやおじさんの後ろを付いて行きますけど、何なら走って欲しいぐらいです。もちろん円花ちゃんに、一刻も早く会いたいからなんですけど。ただ、それはそれとして……。
『ァアアァア』
……居るんですよね、呪霊。結構、うようよと。今のトガなら、多分祓えます。ヨリくんの記憶を経験したことで、何なら呪術師として活動出来るようになってると思います。身体の動かし方とか、呪力の流した方とか知ってるので。でも、だからって積極的に呪霊を祓うつもりはないです。そんな真似をして、もし私が怪我でもしたら……ヨリくんが尚更塞ぎ込んじゃうので。
なので、無視です無視。襲い掛かって来たら、その時は流石に仕方ないかなって思いますけど。
念の為、呪力はいつでも練れるようにしておきます。念の為。
それとぉ……。呪術師の視界は、情報量が多いのです。それは休学してから思ってたことでも有りますけど。雄英を出たら沢山居ましたしね、呪霊。この街なんて、……そこら中に残穢が有って。もしかして、呪霊が大暴れでもしましたか……? これだけの被害が出てるってなると、確実に総監部は対応してる筈です。もしかしたら、オールマイトとか緑谷くんが派遣されてたかもしれません。
「被身子ちゃん? どうしたの?」
「……何でもないです。早く行きましょう!」
「ぅ、うん? そうだね?」
いざ見えるようになると、やっぱり気になっちゃうものですねぇ……。円花ちゃんと同じものが見えるようになって嬉しいですけど、同時に少し……悲しいなって。
だって、だって円花ちゃんが、ひとりぼっちだったような気がして。他の人には見えないものを、雄英に入るまで一人で見続けて来たんだって思ったら……。それを、トガは分かってあげられてなかったって思っちゃって。
これからは、私も一緒に見るのです。円花ちゃんと同じ世界を、二人で見続けるんです。オールマイトや緑谷くんも居ますけど、何なら円花ちゃんが作った呪具で見れる人はどんどん増えていきますけど。それでも、二人で見るんです。ヨリくんと、円花ちゃんと一緒に……!
「……これ、酷いなぁ……。本当に、ここで
「えぇ、その通りです」
「残念です。生きていれば、いつか孫の顔を見れたでしょうに」
「ご息女を会わせるつもりだったんですか?」
「娘が望むなら考えても良いかなと、思わなくもなかったので。まぁ結局、娘は祖父母には無関心でしたが」
……そんな事を、考えてたんですねぇ。輪廻ちゃんとおじさんは駆け落ちしてますから、二人のご両親の話題を聞いたことは今まで無かったのです。何となく、聞きにくい気もしましたし。それに大好きな二人が選んだことに、どうこう言うつもりもなかったので。でも少し、聞いてみたいことも有りますね。
「……そう言えば。円花ちゃんのおじいちゃんとおばあちゃんって、どんな人だったんですか? 何となく想像出来ますけど」
「……んん……。とんでもスピリチュアルで、血筋や仕来たりに拘るやべー人って言ったら、伝わる……?」
「あー……、はい……」
やっぱり聞かなきゃ良かったです。何となく想像は出来てましたけど。まして輪廻ちゃんは、五条家の末裔ですし。つまりそれって、こってこての呪術師家系ってことですよね? 絶対ろくでもないのです。駆け落ちしちゃったのも、納得の理由です。
……でも、不思議なんですよねぇ。何がって、五条家が存続してるのに呪術師が円花ちゃん以外に居なかったことが。だって五条家が現代まで続いてるなら、他の呪術師の家系だって残ってるんじゃないですか? 加茂とか、禪院とかも。なのにどうして、円花ちゃん以外の呪術師が一人も居なかったのか謎です。謎過ぎます。呪霊がそこら中に居るってことは、呪術師が活動してないってことですよね? こんな風になるまで放っておくなんて真似は、流石にしないと思うんですけど……。
……んーー……。まぁ、どうでもいいのです!
そんな事より、今はヨリくんですっ。円花ちゃんですっっ。早く、早く会いたい。でないと、我慢出来ませんっ。満足も出来ませんっ!
三人称による補完は要りますか?
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欲しい
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要らん
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良いから一人称で突っ走れ