待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!!   作:一人称苦手ぞ。

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円花の停滞。異変

 

 

 

 

 

 

 ……それにしても。この商業施設は、呪霊が多いの。元々この時代は呪霊の数が多過ぎるが、それにしたって数が多い。取るに足らん低級呪霊ばかりでは有るが、こうも視界に映り続けると些か気になってくるところではある。前回来た時は、悪党(ゔぃらん)連合が儂を監視していたから特別多く見えたと思っていたんじゃが……どうやら違うらしい。ここは多くの呪霊が巣食っとる。人的被害がさして出ていないのも、気になるところではある。……まぁ、今の儂が気にする事ではないか。呪術師ではないんじゃから。

 

「……円花ちゃん、どうかしたの?」

「……別に。小蠅が鬱陶しいだけじゃ」

 

 呪霊の数が気になる。なんて、言ったところでどうしようもない。梅雨が顔を覗き込んできたが、正直に話す必要は無いじゃろう。見えないものの話をしたって仕方がない。何より、深く関わらせたくないんじゃ。

 

「廻道ちゃん廻道ちゃん。もしかして……呪霊……?」

「え、うそ。居るの?」

「眼鏡持って来てる人居る?」

 

 ……おい。何で全員して、興味を示すんじゃ。興味本位で動こうとするんじゃない。相手は悪党ではなく、呪霊なんじゃぞ。下手に関わったら、何が起きるか分からん。相手が低級呪霊ばかりとは言え、等級の高い呪霊が居ないとは限らん。ざっと見たところ大部分が蠅頭ではあるが、じゃからって危険が無いとは言えぬ。

 

「おい、待―――」

「うっわ、目茶苦茶居るじゃん!?」

「ケロ……。こんなに居るものなのね……」

「廻道、これ大丈夫なの? 何とかした方が良いんじゃない……?」

 

 おい。何で全員、しっかり呪眼(のろいまなこ)を持ち歩いてるんじゃ。全員して眼鏡を掛けて、呪霊を認識しおって。見えるだけで何が出来る訳でもないのに、首を突っ込もうとしないでくれ。頼むから止めてくれ。何か有ってからじゃ遅いんじゃぞ……っ。

 

「……放っておけ。今直ぐ大きな害は無い」

 

 と、思う。蠅頭による被害は、精々が肩凝りとか頭痛程度のものじゃろう。じゃからって無視し続ける訳にもいかんが、一々蠅頭如きに時間を割く余裕は今の呪術界には無い。単純に、人手不足じゃからの。

 ……それから。呪霊がやたらと発生する原因は、必ず何処かに有るとは思うが。この時代は、どこもかしこも呪霊が多い。平安時代でも、ここまで呪霊が蔓延ってることはなかった。何か明確な原因が有るとは思うんじゃけど、それが何なのかは分からん。

 

「放っておいて良いものなのか?」

「ここは優先順位が低い」

 

 呪術界そのものが人手不足である以上、漏れ無く全てに対応することは出来ん。等級の低い呪霊よりも、等級が高い呪霊を優先するしかない。大きな人的被害が出たところから優先的に対処するしかないのが、今の呪術界の現状じゃ。残念ながら、この商業施設の呪霊をどうこうすることは今直ぐには出来ん。儂が休学している以上、余計に人手不足じゃからの。

 

「……じゃあさ、廻道。今、やっちゃわない……?」

「は?」

「これを見て、何もしないで帰るってのは……ちょっと無理かな」

「は?」

 

 ……は?

 

 いや、おい。おいこら、貴様等。何を口走ってるんじゃ。それは駄目じゃ。駄目に決まっている。相手が低級呪霊しか居なかったとしても、非術師であるお主等が呪霊退治に関わるのは無しじゃ。そもそも、呪霊と遭遇してしまったら逃げろと教えた筈じゃ。呪力の無い者に、呪霊をどうこうすることは出来ん。夏合宿の時に教えたじゃろうが。

 なのに、何じゃってこの商業施設の現状をどうにかしようと考えてしまうのか。幾ら英雄(ひいろお)がお人好しじゃからって、呪霊までどうにかしようとするな。

 

「……駄目じゃからな。貴様等は、何もするな」

「危険なのは、分かってる。だからって、何もしないで居て良いとは思えない。せめて……サポートぐらいさせてくれ。廻道や緑谷の、力になりたい」

「呪霊に対して直接出来る事が無いってのは、分かってるのよ。でも、せめて他の所は手伝わせて欲しいの」

「それならさ。ほら、危険も無いじゃん? それでも緑谷や廻道だけ危険な目に遭うのは、歯痒いけどさ……」

 

 ……頑固者め。どうして英雄(ひいろお)候補生っていうのは、こうなんじゃ。子供にこういう道を歩ませようとしてしまうから、この時代を好ましく思えない。

 

 ……はぁ……。仕方ないのぅ。今は呪術師禁止なんじゃけど、こうなったら放って置く訳にもいかんか……。

 

「……やるなら、夜じゃ。人目が無い方が良い。そこは納得してくれ」

「……分かった。それなら夜までに人手を集めよう。ここは広い」

「なら、みんなに声掛けよう! あ、お店の人にも説明した方が良いかな!?」

「でも、なんて説明すればいいのかしら? (ヴィラン)が出たわけでもないし……」

「……総監部に手回しさせる。夜まで勝手なことをするなよ。絶対じゃからな?」

 

 念の為に、釘を刺しておく。まさかこんな目に遭うとはのぅ……。今の内に、夜に家を出る為の言い訳を考えて置かねば。最悪の場合、勝手に抜け出すしか無いんじゃけど。儂が居なかったら居なかったらで、こやつ等は勝手な真似をしてしまいそうじゃし……。それは何としてでも避けねば。

 ……まったく。儂は休学中じゃって言うのに。周りを気にしている場合でも無いというのに。

 

「あの、ごめん……! 良かった、まだ居てくれて……!」

 

 む……。見覚えの有る大人が、大慌てで駆け寄って来おった。こやつはさっき、儂に教えを請うた子供の……父親か。大の大人が血相を変えてみっともない。何をそんなに慌てているんじゃこやつは。

 

「血汐が……、うちの子が……!!」

 

 ……どうやら、何か有ったようじゃ。慌てて儂等に話し掛けてくる辺り、余程切羽詰まってるらしい。子供に何か有ったなら、まず英雄(ひいろお)とか警察に駆け込んだ方が良いと思うんじゃけど。

 

 ……まぁ、とにかく。子供に何か有ったと言うなら、聞いてやるとしよう。場合によっては、殴り飛ばすけれども。常闇や女子(おなご)達に目配せをすると、全員気を引き締めた。何じゃ、少しは成長してるらしいの。

 

 

「うちの子が、突然消えたんだ……!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 儂に穿血の撃ち方を聞いてきた子供、……確か血汐(ちしお)……じゃったか? が、父親の前から姿を消したそうじゃ。我が子を見失うとは、父親としてはどうかと思う。許されんじゃろ、そんな事。子供を連れて外に出歩いたなら、しっかりと面倒を見るのが親ってものじゃろうが。

 

 ……と、思うのは一旦止すとする。父親が狼狽えているからの。子供を見失ってこうも焦るなら、特に言及しないでおいてやる。場合によっては殴り飛ばしてるところじゃ、まったく。

 まぁ本音を言えば、儂等ではなく警察や英雄(ひいろお)に助けを求めろって思うんじゃけど。こやつ等はまだ候補生じゃし、儂なんて候補生ですら無いんじゃから。

 

「ここで消えた……ってことですか?」

「そうなんだ……! 急にこっちに駆け出したと思ったら、姿が消えて……!!」

 

 慌てた父親が儂等を連れ込んだのは、商業施設の中にある袋小路。大人同士ではすれ違えないであろう、細道じゃ。そんな道に向かって子供が走って行って、慌てて追い掛けたら姿が消えていた。父親が我が子の向かう方向を見間違えた……と言う線は無さそうじゃ。たまたま誘拐されたとか、そういう可能性も無いじゃろう。

 

 ……じゃって。

 

「……ち」

 

 そこに、残穢が有るんじゃもん。これは間違いなく、呪霊の仕業じゃ。子供が何処に攫われたのかは分からない。或いは、喰われた後なのかもしれん。後者じゃったら、最悪じゃ。前回この商業施設に来た時、呪霊を祓い尽くさなかった儂の失態じゃ。ただでさえ被身子を呪ってしまっているのに、儂の失態で子供まで呪われたとなると……。……我が身を殺したくなる。

 

『お前が見落としたからだ』

「じゃから助けるんじゃろうが。黙ってろ」

「……廻道?」

「こっちの話じゃ。気にするな」

 

 幻聴や幻覚を相手にしている場合では無い。異様なまでに体が重いが、じゃからって動かぬ訳にはいかん。子供が被害に遭ってしまった。命を落とす前に……なんとかしなければ。まだあの子が生きていると断定して、今は動く。でなければ、とても平静では居られないから。

 

 ……とにかく。今は、現場の状況をよく見よう。手掛かりとなるのは、残穢のみ。周囲を見渡してみるものの、他にそれらしい痕跡は無い。術式を以て、何処かに隠れたか? 或いは、移動した? 前者にしろ後者にしろ、最悪そのものじゃ。時間が経てば経つ程に、手掛かりが消えてしまう。

 

 何の痕跡も無いんじゃが、急がなければ。

 

 

「……みんなして、どうしたんですか? 何か慌ててましたけど」

「ぐえっ」

 

 残穢でも辿ろうかと目を凝らし始めたその時、後ろから被身子に抱き付かれた。腕の力が強いのは気のせいではない。今は、止してくれ。邪魔とは言えんが……困る。触れ合ってる場合じゃない。

 

「……どうかしたん?」

「ウラビティ、被身子ちゃん。子供が行方不明になったの。状況的に、これはもしかしたら……」

「あー……、なるほど。これは円花ちゃんの領分ですねぇ……」

「だけど、俺達も協力します。単なる迷子かもしれないですから」

「……ツクヨミ。音は聞いてみてるけど、迷子っぽい声も足音も近くには無いよ。もう少し探してみるけど」

 

 どうやら耳郎は、既に周囲の音を探ってくれていたようじゃ。耳朶が地面やら壁に刺さっているしの。聞き漏らしている……なんて線は無いじゃろう。人助けの為に日々鍛錬しているんじゃから、まず間違いは無い。音による探索は引っ掛からず……か。

 

「……被身子。すまん、総監部に……」

「今メールしときました。帳は降ろします?」

「……一般人が居るが、そうしよう」

「はぁい。……ええっと……。

 ……闇より出でて闇より黒く、その穢れを禊ぎ祓え」

 

 は……?

 

「あ、出来ました。サクッと祓っちゃいましょう!」

 

 ……。……んんむ……。いや、今は……今は気にしている場合では、無い……。子供を見付け、助ける方が先じゃ。たった今、被身子が帳を降ろしたことについては、後で二人で話すことにする。気分は最悪じゃが、今は立ち止まっている場合ではない。

 

「えっ、なになに……!? 何か、暗くなって……!?」

「これは……夜に……?」

「そう見えてるのは、眼鏡を掛けてるみんなと私達だけですよぉ。それより、まだ帳の内側には一般人が居ます。

 その人達が此処に近付かないように、人払いしてください……って、あ」

「ちっ、全員下がれ!」

 

 不覚じゃ。反応が遅れた。目前に、やたらと大きな呪霊の口が迫る。大き過ぎて、面の全貌が見えん程。何故こうも巨大な呪霊に、今の今まで気付かなかった?

 被身子を抱えて跳び下がろうとしても、もう間に合わん。

 

 次の瞬間。儂等は全員、呪霊に喰われた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三人称による補完は要りますか?

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  • 要らん
  • 良いから一人称で突っ走れ
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