待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!!   作:一人称苦手ぞ。

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呪霊の腹中。

 

 

 

 

 

 

 円花ちゃんが、目の前で何処かに連れ去られました。多分大丈夫と思いたくても、心配で心配で仕方ないのです。それに、手を伸ばしたのに血で払われたことが……不服です。不満です。そこは手を掴んで、一緒に連れ去られて欲しかったのに。

 ……ほんっと、重症なのです。円花ちゃんが、子供に危険とか危害とか……そういう何か起こることが嫌なのは分かってます。だからこそ、独りで戦おうとしちゃうことも知ってます。それがヨリくんの望みだから、トガは何も言わないようにしてました。でも今、みんな纏めて呪霊に食べられちゃった今。この状況をどうにかする為にみんなで動かなきゃ駄目なのです。それなのに、独りでどうにかしようとして……っ。結果、ヨリくんが離れることになっちゃったら守るどころじゃないじゃないですかっ。

 

 ……もぅ。馬鹿、円花ちゃんのバカッ。こんな時ぐらい、頼ってくれたって良いじゃないですか。たまには誰かの手を借りたって、バチは当たりませんよぉ。

 

 今の円花ちゃんは、ほんっとに大嫌いです。手を払ったことは、一生許してあげません。どんなに反省したって駄目なのです。まったくもぅ……!

 

 ……まぁ、とにかく。怒るのは後にします。今、私達は呪霊のお腹の中。ヨリくんがあれこれ試した結果、目を凝らせば結界がうっすらと見えることが分かりました。それで、今。その結界が消えました。と、同時に足元が大きく揺れ始めます。多分これ、呪霊が動いてるんだと思います。理由は分かりませんけど、もしかしたら円花ちゃんが何かしてたり……?

 

 何にせよ、この状況はチャンスです。結界が消えてる今なら、私達は前に進めると思います。先に食べられちゃった子供を見付けないと……!

 

「じ、地震……!? どうなって!?」

「落ち着いてください。多分……頼皆、ブラッディが何かしてるんでしょう」

「間違いなく大暴れなのです。あと、結界が消えてます。今の内に奥に進んじゃいましょう!」

「って言われても、この揺れの中……!? うひゃあ!?」

 

 盛大に揺れてるせいで、三奈ちゃんが姿勢を崩しました。とっさにお茶子ちゃんが触って浮かせたから、すっ転びはしなかったんですけど。あ、そうだ。

 

「ウラビティ、全員浮かせてくれるかしら? ツクヨミ、ダークシャドウちゃんでみんなを牽引して」

「うん、分かった!」

「了解した。ダークシャドウ!」

「任セナァ!」

 

 トガが言うよりも早く、みんなは動き始めました。そうですよね、みんなヒーローになる為に訓練してるんですから私が思い浮かべることぐらい直ぐに思い付くのです。

 

「渡我先輩、しっかり掴まって。離したらあかんよ?」

「んふふ。はぁい」

 

 みんなを浮かせた後、お茶子ちゃんが手を握ってくれました。無重力を経験するのは初めてでは無いですけど、やっぱりフワフワしてて楽しいのです。こうして浮くのは、文化祭の時以来ですかねぇ。あの時の頑張ってる円花ちゃんは、可愛くてカッコ良かったなぁ……。来年も、また見れたら良いなぁ。

 

「渡我先輩、また結界は張られちゃうと思う?」

「だとしたら、また前に進めなくなるけど……」

「呪霊の気分次第ってところです。今は多分、円花ちゃんに手一杯でこっちまで結界を張る余裕が無い……んだと思います」

 

 透ちゃんや響香ちゃんが口にした懸念は、私も気になるところではあります。また結界が張られちゃう可能性は、ゼロじゃなくって。見たところまだ床……と言うか呪霊の体は揺れてるみたいで。ヨリくんはまだまだ大暴れしてるみたいなのです。もしかすると、先に食べられちゃった子供を見付ける前に祓われちゃうんじゃ……? そうなる前に、早く見付けてあげないと。

 みんなでダークシャドウに引っ張られてると、どんどん前に進んで行く感じがあります。やっぱり、今は結界が無いみたいです。

 

「今回は分業ね。ブラッディが呪霊の気を引いてくれてる内に、先へ進みましょう」

「あぁ、そうしよう。血汐くんを見付けたらどうする?」

「結界が無いんなら、逆方向に進めば外に出られたりしないかな……?」

「それって、呪霊の口から出るってこと?」

「脱出するには、それしかない……よね」

 

 移動しながら、みんなは作戦会議してます。トガも混ざりたいですけど、なるべく黙っておこうかなって。ここで私が呪術師として力を貸しちゃうと、みんなの為にならない気がして。何より、円花ちゃんがもっとしょんぼりしちゃうので。……口出しは、最低限にします。

 みんな、ちゃんとヒーローなんだなぁって。こんな風に協力しあって、問題解決に尽力して。ヨリくんも、こうなってくれたら良いのに。そしたら、妻として少しは安心して送り出せるのです。

 

「オイ踏陰! 見エテキタゼェ! 倒レテンゾ!!」

「―――! 急いでくれ!!」

「振リ落トサレンナヨ!!」

 

 ちょっ、ちょ……っ! 急に移動速度をあげないで欲しいのですっ。トガはみんなと違って鍛えてないので、握力が……っ。お茶子ちゃんがしっかり握っててくれるからまだ振り落とされませんけど、ヒヤヒヤしちゃうのでもう少し速度を……!

 

「待ったツクヨミ! 速度落とさないと、危ないって! これ、速過ぎ―――っっ!!」

「すまん、今のダークシャドウは制御しきれん!!」

「はぁ!? なんで!?」

「鍛錬の成果! あとイヤホンジャック、あんまりしがみつかれるとドギマギするから止めてくれ!」

「馬鹿なの!?」

 

 響香ちゃんの言う通り、馬鹿なんだと思います。と言うか常闇くん、女子にくっ付かれるとドギマギするんですか。ってことは、円花ちゃんにくっ付かれてもドギマギしてるってことですよね……? やっぱり敵です。常闇くんはトガの敵なのですっ。ヨリくんにも、常闇くんにはくっ付かないように教え込まないと! もぅ、もうっ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ふぎゃっ。着地に失敗して転びました。常闇くんが急ブレーキを掛けたせいです。咄嗟にお茶子ちゃんが抱き留めてくれましたけど、お茶子ちゃんごと盛大にすっ転んだのです。お陰で、お茶子ちゃんの肩に鼻をぶつけました。あんまり痛くはないですけど、この恨みは覚えておきます。トガだって根に持つ女なので! 円花ちゃんみたいにっ!

 

「い、つつ……。渡我先輩、大丈夫?」

「大丈夫ですよぉ。お茶子ちゃんこそ、大丈夫ですか?」

「平気平気。鍛えてるから!」

 

 結果として下敷きにしちゃいましたけど、お茶子ちゃんも大丈夫みたいです。私も怪我なく済ましたし、一安心です。ここで怪我なんてしちゃったら、もうヨリくんがどうしようもなくなっちゃうので。

 いつまでもお茶子ちゃんを下敷きにしてるのは良くないので、取り敢えず立ち上がろうと思います。けど、まだ床……と言うか呪霊の肉床? は盛大に揺れてるのです。正直、立つのが難しいぐらいに。

 

「ええよ立たなくって。立つ方が危ないから、しっかり掴まってて」

「でも円花ちゃんが見たら、凄いですよ?」

 

 上体だけ起こしたお茶子ちゃんが、しっかり抱き留めてくれました。これでまた転ぶなんてことは無いでしょうけど……。でもこれ、ヨリくんに見られたら大惨事な気がしないでもないです。主にお茶子ちゃんが。

 円花ちゃん、結構嫉妬深いんですよねぇ。そういうところもカァイイんですけど!

 

「そ、その時は謝るから……」

「んふふ。見られちゃったら、一緒に謝りますよぉ」

「あ、ありがと?」

「はぁい。どういたしまして!」

 

 ……さて。立たないまま、周りを見てみます。薄暗さが増してる気がしますけど、何も見えないって程では無いのです。みんなは……大丈夫そうです。スピードを出し過ぎた常闇くんは、透ちゃんとか三奈ちゃんに怒られてますけど。

 

 ……それから。

 

「血汐! 大丈夫か血汐っ!!」

 

 それから。先に食べられちゃった子供も見付けました。でも、状況は悪い一方です。だって血汐くんは……明らかに呪力に当てられてるので。お父さんが抱え上げて声を掛けてますが、ぐったりしたまま動きません。息は……してると思います。でも、油断は出来ません。これは、急がないと……!

 

「血汐くんを連れて、急いで脱出します。お父さんは、しっかり血汐くんを抱えて。フロッピー、固定を」

「えぇ、急ぎましょう」

「じゃあダークシャドウ、もっかいよろしく!」

 

 血汐くんとそのお父さんは、梅雨ちゃんの舌でぐるぐる巻きに。それからみんなで、常闇くんのマントに掴まります。私はお茶子ちゃんがしっかり抱えてくれてるので、必要無いですけど。……って、あ……!

 

「ちょっ、待ってください! また結界が……!」

 

 最悪です。最悪なのです。ここまで来れたのに、戻れなくなっちゃいました。食べられちゃった子供も見付けて、さぁ帰ろうってところだったのに。なのにまた、結界が張られてしまいました。こうなってしまうと、来た道を戻ることは出来ないのです。

 

 何が何でも逃さない……ってことですかねぇ。でもだからって、このまま食べられちゃう訳にも行きません。どうにかして、どうにかして結界を破らないと。

 

 こういう時、円花ちゃんなら……。ヨリくんなら……!

 

「あっ」

 

 ―――その答えは、さっき見ました。だったら、試してみましょう。もしかしたら、円花ちゃんと同じ所に連れ去られるかもしれません。それなら、何の問題も無いのです!

 

 

 

 

 

 

 

三人称による補完は要りますか?

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  • 良いから一人称で突っ走れ
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