待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
今回の呪霊退治は、最悪じゃった。子供が被害に遭った挙げ句が、大勢の一般人を巻き込んでしまった。負傷者は多くなってしまい、救助にはそれ相応の時間が必要となってしまっての。
途中から
今回、儂は多くを間違えた。その結果が、無関係じゃった筈の子供達まで巻き込んだ。くらすめぇと達や、見知らぬ子供を。
それが、心苦しい。もっと上手く立ち回れた筈じゃ。違う結果を出せた筈じゃ。なのに、儂は最悪と言える結果にしてしまった。不甲斐ない、情けない。呪詛師に堕ちてなお、人助けすらまともに出来ぬとは。
「んーー……っっ、やっと終わったぁ……!」
警察署から出ると、隣を歩く被身子が大きく伸びた。今日は色々と有ったからか、すっかり疲れているようじゃ。儂も、少し疲れた。特に事情聴取は、待たされる時間が多かったしの。お陰で夕飯もまだじゃ。そろそろ何か口にしたいところじゃけど、この分じゃと食事を摂れるのはもう少し先なんじゃろう。
……んんむ……。
……空腹であることは、考えないことにする。余計に腹が空いて来そうじゃし。とにかく、今は家に帰ろう。そしたら、少しはゆっくりと休めるじゃろうから。
なんて思いつつ、被身子と歩いていると……。
「あーーっ! やっと出て来た!」
「遅いよ廻道! 渡我先輩も!」
「事情聴取でもポンコツしてたり? 流石に無いか……」
「二人共お疲れ様。お腹空いてるでしょう? 良かったらこれ。みんなで買って来たのよ」
「お腹空いてると元気でないもんね! 食べて食べて!」
何処に隠れていたのか、今日行動を共にした
「んふふ。みんなして待っててくれたんですか?」
「もっちろん。途中まで一緒に帰ろうよ! 色々話したいし!」
……元気じゃな、どいつもこいつも。少しも疲れとらん。いや、疲れてはいるんじゃろう。葉隠とか、普段より動きが小さいし。芦戸も普段よりは物静かな気がするの。耳郎は疲れを隠そうとはしとらんし、梅雨も気怠そうに見える。麗日もじゃ。それでも全員、元気そうに見えるのは、疲れより高揚が勝っているからじゃろう。
確かに、一仕事終えた後ではある。買い出しの最中に血汐と言う名の子供が行方不明になって、呪霊被害が出て、救助活動じゃものな。こやつ等は買い出しの為に出掛けていたのに、結局は
「はぁい。良いですよね、円花ちゃん」
「……別に構わんが」
まぁ別に、帰路ぐらいは共にしても良い。独りで居たい気持ちも有るが、成り行きじゃ成り行き。どうせ家に帰るまでは、まだまだ時間が掛かる。被身子と二人きりで居たい気持ちも少しは有ったんじゃけど、……今は少し騒がしいくらいがちょうど良いのかもしれん。いつどの時代じゃろうと、子供の笑顔は良いものじゃからな。
取り敢えず。まずは帰路に着くとしよう。こんな風にくらすめぇと達と過ごすのは、いつ以来じゃったっけ? 何じゃか、随分と遠い昔じゃったような気がしないでもない。思い返してみれば、呪術科に移籍する直前ぐらいから離れ離れと言えば離れ離れじゃったか。儂は授業なんてそっちのけで呪術師をしておったし、そもそも相澤に対して猛反発してたからの。まぁそれは、今もそうなんじゃけど。
「ところでさー、廻道」
「そうだよ廻道ちゃん!」
「……ん?」
葉隠と芦戸が、儂の前に躍り出た。少し不満げで、そのくせ何か求めているような面をしている。何じゃか、見覚えがある気がするの。こういう時の子供は、大抵儂に何かをねだって……。
「褒めてくれても良いんじゃない!?」
「そうそう! 褒めて褒めて!」
……は? 褒める? 何を??
「……まぁ、ねだるのはどうかと思うんだけどさ。ウチ等今回、誰も怪我しなかったよ」
「つまり成長してるってこと!」
……あぁ、そういう。まぁ確かに、誰も怪我はしとらん。呪力に当てられることも無かった。救助活動については、何なら儂よりも手慣れてる部分が有ったと思う。が、しかしじゃな。今回怪我無く事態を終えることが出来たのは、誰も呪われずに済んだのは、ただただ運が良かっただけじゃ。
……そう。運が良かった。こやつ等も、儂も。もしかしたら、呪霊に喰われた時点で死んでいたかもしれんのに。なんやかんやと有ったが、結果生き残れたから良し。……とは言いたくないのぅ。儂からすれば、反省点ばかりじゃった。
でも、そうじゃなぁ……。こやつ等が無傷で
……。……仕方ないのぅ……。簡単に褒めて良いことでは無いと思うが、頑張ってくれたのは事実じゃ。じゃから、まぁ……。
「まぁ、少しは頑張ったんじゃないか? 引き続き精進することじゃ」
「ちょっ、な……何でウチから!?」
何でって。目の前に躍り出た二人から撫でてやるのは、何か負けた気がするからじゃ。その点ほら、耳郎は積極的ではなかったし。こやつの個性は、実に役に立った。壁や地面やらを通して遠くの音や声を聞き取れるのは、素晴らしい。それは儂には出来んし。
背伸びして頭を撫でてやると、耳郎は照れながら儂から離れた。何じゃ、謙虚な奴め。せっかく褒めてやるつもりじゃったのに。
「……まぁ、ありがと。案外嬉しいね、こういうの」
「素直じゃない奴め」
「それ、廻道には言われたくない」
解せぬ。素直じゃない素振りを見せたのは、耳郎の方じゃと言うのに。で、次は……そうじゃな。梅雨にしよう。こうして褒めるのは二度目じゃけども、終始冷静じゃったし。くらすめぇと達の中では、恐らく最も冷静じゃ。じゃからこそ、誰も怪我をしなかったのかもしれん。多分。
「ケロケロ。嬉しいわ円花ちゃん」
「うむ」
耳郎と違って素直に撫でられたから、少し多めに撫でておく。梅雨は冷静じゃけども、素直でもある。被身子みたいに、言いたいことは言ってしまうからのぅ。そんなところも、好ましくはある。人としてって意味じゃけど。
梅雨の次は……そうじゃな。麗日じゃな。麗日にしよう。
「んえっ、か……廻道さん……っ!?」
「何じゃその反応は」
何じゃその反応は。何を気にしてそんなに慌ててるんじゃお主は。緑谷みたいな素振りを見せおって。さては好きな人からの影響か? 変な部分に影響されるのは、どうかと思うぞ。
「いやその……。嬉しいは嬉しいんやけど……。気軽に誰かに触れるのは駄目だよ? 駄目だからね?」
「……変な奴め。緑谷じゃあるまいし」
「んグッ!?」
何でそこで息を詰まらせてしまうんじゃか。お主なぁ、少し突かれたぐらいでそんな大袈裟な反応をしてしまうのは止した方が良いぞ? そんなじゃから、緑谷とのことで被身子に迫られるのでは? 好きなら好きと言っておいた方が良いんじゃぞ。でないと色々大変じゃ、色々と。
……さて。残るは二人か。何度も背伸びして頭を撫でるのは、少し面倒なところじゃ。何で全員、儂より背が高いんじゃ。解せぬ。皆、少し背丈を縮めてくれ、少しで良いから。具体的には十数
それで、じゃ。……んんむ……。まぁ、そうじゃな。
「葉隠、頭出せ」
「はい頭っ!」
「いや、分からん分からん。芦戸はこっちじゃ」
「えーっ! そんなついでみたいに!?」
じゃって、ついでじゃもん。一人一人頭を撫でて回るのは、この体では面倒なんじゃ。いちいち背伸びしなければならん苦労を知ってくれ。いや別に、わざわざ背伸びなどせずとも手を伸ばせば事足りはする。事足りはするんじゃけど、こう……。くだらない話であるんじゃが、儂の背丈の低さを認識されたくないと言うか……。どうして儂の背は伸びないんじゃ。ぐぬぬ。
「そもそも、これで満足するなよ。今回無傷で居られたのは、運が良かったとしか言えん。今後呪霊に遭遇したら真っ先に逃げろ。これを機に呪術界に踏み込むのは無しじゃ」
褒めるのは、まぁこの際良い。じゃけど、じゃからって調子に乗られては困る。どんな事情が有ったとしても、非術師を……それも子供を呪霊の前に立たせたいとは思えん。今回上手く行ったのが、こやつ等や被身子のお陰じゃったとしてもじゃ。
……そう。儂一人じゃもっと被害が大きかった。もっと大勢の一般人が死んでいたかもしれん。最悪、呪霊に喰われた子供を救けられなかったかもしれんな。儂が呪霊の腹から追い出された後、くらすめぇと達や被身子が動いていたからこそ……子供の命を掴み損ねずに済んだ。それは分かっとる。分かっとるけども、どうにもなぁ……。んんむ……。
……それはそれとして。葉隠の頭は随分と柔らかいものじゃな。見えぬから分からんかったけど、触れてみると良く分かる。髪が柔らかくて長いんじゃな、こやつ。儂や被身子の髪質とは違う。常闇とも違うの。ある種の撫で心地の良さがある。これは……あれじゃ。毛の長い犬のような。とにかくそんな感じじゃ。
散髪しろと言いたくも有るが、見えぬのなら散髪どころではないか。被身子が知ったら大変じゃろうな、こやつ。南無南無。
「……むーー……」
あ、いかん。隣から不満気な気配がする。常闇の時と比べたらまだ鋭くはないが、それでも突き刺さる程の視線なのは確かじゃ。芦戸と葉隠の頭から手を離すと、腕を引かれて抱き寄せられた。……これはこれで、珍しい気がするの。普段はもっとこう、全身でぶつかって来るのに。
「まぁ……、円花ちゃんの言う通りなのです。運が良かったってのは、否定出来ないので。なので、あんまり呪術界に首を突っ込んじゃ駄目ですよぉ。
……でも、今回の件はみんなのお陰で解決出来たのも確かです」
被身子の言ったことは、何も間違いではない。まったく持ってその通りじゃ。ぐぅの音も出ん。黙って頷くとしよう。
「それと、円花ちゃん。みんな無事でしたし、円花ちゃんが居なくなってもしっかりしてましたよぉ。……少しくらい、頼ったって良いと思います。ほんのちょっぴりだけ」
ん、んん……。それは、頷けん。くらすめぇと達が居たから、何とかなった部分は確かにある。呪霊に喰われた子供の保護なんかは、呪霊の体外で呪い合ってた儂にはどうしようもなかった。特に最後は、被身子の呪力が無ければあの呪霊を祓えなかったじゃろう。被身子が呪力を放出しなければ、無闇矢鱈に長引いて、あの子は衰弱程度では済まなかった。
今回は上手く行ったからって、次も上手く行くとは限らん。大抵は、上手くは行かないものじゃ。
たった一度の成功で、子供達を呪術界に関わらせるなんて真似は出来ない。そんな真似は、絶対に無理じゃ。
「一般人が巻き込まれた時の避難誘導とか、救助活動とか。那歩島の時みたいな事前の下調べとか。そういうところは、頼ってみましょうよぉ。ね?」
「……んん……」
まぁ……、呪霊と直接関わるところではない部分については危険も少ない。特に一般人が巻き込まれた場合の対処なんかをしてくれるのは、助かると言えば助かる。総監部は、まだ窓の選定をしとるところじゃろうし。くらすめぇと達はそこらの
それに、那歩島では既に一度頼ってしまっているしの。んん……、でも……。うぅむ……。
「……むぅ……」
……まぁ、でも……。んん……。じゃけども。……いや、でも。んんむ……。
「……まぁ、……帳の内側に入らぬ分には……?」
少しの下調べとか、後始末とか。そういう類いの事ならば、まぁ……。
「本当!!?」
「ほんとにっ!?」
「ぬおっ」
き、貴様等。急に近寄って来るんじゃない。距離が近いんじゃ、距離が。そのせいか、圧が強い。被身子みたいな事をしないでくれ。
本音を言えば、下調べもさせたくない。じゃってこやつ等は、絶対余計に首を突っ込んでしまうじゃろ? そうなると、下調べの範疇を越えた行為をしてしまいそうでのぅ。それが嫌なんじゃ。そういう真似をしてしまうところが、儂は怖い。
「……危険な事、危険に繋がりそうな事は一切やらせんし、主に任せるのは地味なところじゃぞ?」
「それでも良いのよ、円花ちゃん」
「そうやって頼ってくれるのが、みんな嬉しいから」
ん、んん……。何か違う気がする。選択を間違えた気がしてならん。我ながら押しに弱いと言うか、結局は根負けしてしまう部分が有ると言うか……。なんで昔から、儂に寄ってくる子供は我が強い奴ばかりなのか。お陰で、儂は色々苦労してるんじゃぞ。特にこの時代の子供は、
世直しなんてしたいとは思わんが、たまには少しはこう……訴えても良いのでは? 平安時代も大概じゃったけど、この時代も大概どうにかしとる。
って、こら。こら被身子。そんなに強く後ろから抱き締めるな。息苦しいんじゃ。
「今はそれで我慢してくださいねぇ。プルスウルトラはゆくゆくです、ゆくゆく!」
は? そんな真似はさせんが?? 絶対させんからなっ。そんなもの、阻止してくれるわっ!
三人称による補完は要りますか?
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欲しい
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要らん
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良いから一人称で突っ走れ