待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!!   作:一人称苦手ぞ。

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円花の停滞。兆し、そのよん

 

 

 

 

 

 

 何と言うか、良いように転がされている気がするんじゃ。被身子や両親や、……くらすめぇと達に。どうにも今年の年末は、不愉快な事ばかりが起き続けている。昨日なんて、当面は商業施設が封鎖される程の大騒動が起きてしまった。やけに図体が厖大(ぼうだい)な呪霊が出て来て、色々と危うかった。そしてその後は、これまた色々と有った。まさか儂が、少しでも子供を頼ろうと思うなんて。

 前世では、とても考えられなかった。今生では尚更じゃ。呪霊多きこの時代、呪術師を名乗っているのは儂だけじゃからの。一応緑谷やおおるまいとが居るが、あやつ等は呪術師ではない。呪力が扱えるだけの英雄(ひいろお)じゃ。今の呪術界は特に人手不足じゃから、英雄(ひいろお)じゃろうが子供じゃろうが呪霊の前に立たされる。

 

 そう考えると、やはり緑谷が心配じゃ。あやつは今、儂の代わりに呪術師として活動している。この間はおおるまいとと共に行動していたようじゃけども、いつ独りで任務に向かうことになるか分からん。そうなってしまう前に、早く休学から復帰したいところじゃ。両親に直談判しなければ。

 

「ん、ふふ……。えへへぇ……」

 

 朝。と言うか、ほぼ昼。儂は珍しく、被身子より先に起きた。先に起きて、これからどうするかを考えているわけじゃ。ちなみに、被身子はまだ寝ている。どんな夢を見ているのかは知らんが、涎を垂らして緩み切った顔で爆睡中じゃ。かぁいい。んんむ、かぁいいなこやつ……。どうしてくれようか……?

 

 ……と、取り敢えず。復学を当面の目標としよう。その為には、両親の許可を得なければ。それに……色々とやりたい事も有るしの。復学を急がなければならん目先の問題とは別に、被身子に掛けた呪いをどうにかする術も探したい。こちらについては、何をどうしたら良いのか分からんままじゃ。儂の知る方法では今のところ無理じゃし、五条家が保管していた資料は何も記されていなかった。と、なると……。

 

 あぁ、そうじゃ。那歩島の神主。あやつは隆之の子孫じゃから、もしかしたら何か知っているのかも。直接出向かうには遠過ぎるからの、取り敢えず電話してみるとするか。確かあやつの連絡先は、被身子の携帯電話(すまほ)に有る筈じゃ。それで、被身子の携帯電話(すまほ)は何処じゃ? 机の上? 鞄の中? 部屋を見渡して見た感じじゃと、見当たらんな。

 

 あ、そうじゃ。そう言えば昨晩帰って来た時に、玄関の靴棚の上に置いているところを見たような……。仕方ない、玄関まで取りに行くか。いつまでも裸で居るのも風邪を引きそうじゃし、適当に何か羽織るとしよう。先に灌水浴(しゃわぁ)な気がしないでもないが、とにかく何か着なければ。

 

 ええっと……。

 

「まぁ、これで良いか」

 

 取り敢えず箪笥(たんす)を開いて、目に付いた下着を着るとする。胸用下着(ぶら)を付けるのは面倒じゃが、付けねば後で叱られるしのぅ……。確か、ええっと……。……そう、運動(すぽぉつ)下着(ぶら)が有った筈じゃ。色は……灰色にでもしようかの。と言うか、あまり色の種類は無い。派手な柄の下着を身に着けるのは、余り好まんところじゃし。被身子は不満気にするが、行為に及ぶ時は勝負下着? とか言うのを着るようにしてるんじゃから勘弁して欲しい。お、あったあった。

 手早く下着を着……なくて良いか。出すだけ出して、灌水浴(しゃわぁ)の後に着るとする。次は服じゃな。いつも通りに着物……たまには洋服で良いか。長袖の襯衣(しゃつ)を着て、上に毛糸の服でも着よう。で、やたら短い下穿き(ずぼん)……を穿くと足が寒いか。ええっとたしか、厚手の(たいつ)が何処かに有った筈じゃ。確か靴下が入った引き戸の……ええっと。……お、有った有った。

 下着も服も準備したし、灌水浴(しゃわぁ)じゃ灌水浴(しゃわぁ)。被身子は幸せそうに寝たままじゃから、そのままにしておこう。起こすのは気が引ける。

 

 んん、今朝も寒いのぅ。身震いしてしまう。

 

 せめて浴室まで何か羽織るか……? いや、どうせ脱ぐんじゃし汚れた体で着るのは違う気がする。よし、じゃあさっさと浴室に向かってしまおう。そうしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 裸で浴室に向かっていたら、叱られたわ。母が言うには客人が来て居たらしい。それは叱られても仕方ないし、客人に裸を見せるわけにもいかんので直ぐに浴室に向かった。で、のんびりと灌水浴(しゃわぁ)をして体を綺麗にした後で浴室を出た。一人で体を拭いて髪を乾かすのは、やたらと時間が掛かって仕方ないのぅ。髪を短くした方が楽なんじゃが、そうすると被身子が拗ねるんじゃよなぁ……。お陰で、髪は伸び過ぎな気がしないでもない。別に良いんじゃけどな。被身子が喜ぶなら、儂はそれで。

 で、じゃ。何とか髪を乾かした後、下着を着て服も着て取り敢えず台所へ。喉が渇いたから何か飲み物が無いかと冷蔵庫を開けようと炊事場に向かったわけじゃ。その時、客人の姿が見えた。居間で母と向かい合って話しておる。気にはなったが、まずは飲み物が先じゃ。冷蔵庫から水の入った容器(ぺっとぼとる)を取り出して、蓋を開けて中身を飲む。……それから。

 

「何しとるんじゃ、緑谷」

 

 来ていた客人に、声を掛ける。昼間から我が家を尋ねて来たのは、緑谷じゃった。母と何を話していたかは知らんが、声を掛けると儂を見た。

 

「あ、廻道さん。お邪魔してます」

「それは構わんが、どうした?」

「円花、貴女スマホを見る癖を付けなさい。何度も連絡したのに連絡が付かないから、直接来たそうよ」

「じゃって、よく分からんし……」

 

 携帯電話(すまほ)の事はよく分からん。まっこと、分からん。何なら現代にある機械のことは、大抵が分からん。電気の力がこう……なんか上手い具合に作用しとるってことぐらいしか知らんのじゃ。

 なので、携帯電話についても分からんのじゃ。音声操作が出来るようになってからは操作に手惑うことは無くなったが、それでも慣れん部分が有るのは事実じゃったりする。

 

 ……そんなことより。何で緑谷は朝も早くから……いや、今は昼頃か。ええっと、何の用が有って尋ねて来たんじゃ? 何度も連絡したということは、それなりに緊急な用件……ってことじゃよな?

 

「それで、何の用じゃ? こうして尋ねて来るなんて」

「実は、渡我先輩の事で。……もしかしたら、何とかなるのかもしれない」

「……真か?」

「うん。廻道さん、もしかしたら……オール・フォー・ワンが知ってるかも」

 

 は? 何でそこで、あの背広男の名前が出て来るんじゃ。あの男が何を知って……。って。

 

「あっ」

 

 あっ。

 

「……その様子だと、忘れてた……?」

「ん、んん……。いやまぁ……、そうじゃけども……」

 

 そうじゃ。すっかり忘れていた。と言うか、何故儂は忘れていた? 総監部が儂に頼らざるを得ない程に、呪術界について情報不足なのはしっかりと理由が有る。それは、あの背広男が保管されていた資料の殆どを盗み出したからじゃ。もしかすると、その資料の中に被身子を元に戻す方法が有るのかもしれん。ならばあの男に問い質せば、もしかしたら……。

 

 ……いや、駄目じゃ。あの男は死んだ。おおるまいとが、頭に黒閃をぶち当てて殺した。背広男本人から話を聞くことは出来ぬ。それは少し考えれば分かることじゃろ。なのに何故緑谷は、背広男の話を持ち出したのか。

 

「……オール・フォー・ワンは、神野で死んだ。けど、もしかしたら(ヴィラン)連合が何か知ってるかも。例えば、オール・フォー・ワンが盗んだ資料の在り処……とか」

 

 ……なるほどな。確かに、可能性は有る。あの背広男が、悪党(ゔぃらん)連合の頭じゃった。あやつが死んでからも尚、連合は動きを止めとらん。何かしら、水面下で動き続けている。新たな脳無が出て来たり、新たな呪詛師が出て来たりしているからのぅ。

 つまり。つまりじゃ。儂とは別の方面の技術やら情報を握っている可能性は高い。と言うか、間違いない。儂は非術師を呪詛師に変える手段は知らんし、脳無の造り方じゃって知らん。何をしてるのかは想像出来るが、詳しくは分からん。知りたくもない。

 

 じゃけど、もしかしたら。

 

 もしかしたら、呪術師や呪詛師を非術師に変える手段を知ってるかもしれん。脳無や呪詛師を用意出来るんじゃから、その逆じゃってあるいは。

 あやつ等の持つ技術や知識を使えば、もしかしたら被身子を元に戻す方法に辿り着けるのかもしれん。そうあって欲しい。そうでなくては、……困る。

 

「……悪党連合をとっ捕まえれば良い。ってことじゃな?」

「もしかしたら、だけど。でも、廻道さん。(ヴィラン)連合の居場所は掴めない。ずっと何処かに潜伏してるから、今直ぐっていうのは……無理だよ」

「……ちっ。要らん時に出て来る連中のくせに」

 

 あの連中が、何処で何をしているのかは分からん。基本的に姿を見せる連中では無いからの。思えば面倒事の際には、いつもいつも姿を見せるくせに。

 ……じゃけど。緑谷のお陰で、ひとつ分かった。もしかしたら、悪党(ゔぃらん)連合が被身子を元に戻す為の手掛かりになるんじゃろう。あやつ等を捕まえて、呪術界の資料なんかを取り戻す。もしかしたらその資料の中に、儂の欲しい情報が有るのかもしれん。……ならば。

 

 儂がやる事は、ひとつじゃ。呪術師を禁止されている現状じゃが、何も呪術師だけに拘る必要は無い。儂はその生き方しか知らんが、今だけは別じゃ。可能性が有るのなら、それこそ何じゃってして見せる。

 

「……やることは、ひとつじゃな」

 

 気乗りはしない。何で今更、と思う。じゃけども、被身子の為じゃ。被身子の為に、手段を選んでいる場合では無い。可能性が有るのなら、それに縋りたい。追い求めたい。それが今、儂がしなければならん事なのじゃから。

 

 じゃから、決めた。今、決めたんじゃ。

 

 向こう暫く、儂は英雄(ひいろお)として活動しよう。そうすれば、きっと近い内に悪党(ゔぃらん)連合に接触出来るじゃろう。何せ向こうは、一度は儂を欲しがったんじゃならな。

 

 

悪党(ゔぃらん)連合と接触したい。何か、策は有るか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

三人称による補完は要りますか?

  • 欲しい
  • 要らん
  • 良いから一人称で突っ走れ
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