待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
休学の身分で真っ昼間から
それから、
なので。被身子最優先。あれこれと別の事を考えていると、拗ねられるかもしれんし。今は被身子だけに集中じゃ。集中。
……ところで。今は実家の近所に在る商業施設に居るわけじゃ。最初は木椰区の商業施設に行こうなんて話になったんじゃが、今は閉鎖中での。仕方なく近場まで
「これとかカァイイです!」
「ぅ、うむ……。そうじゃの……?」
いつもなら、被身子はまず真っ先に服屋に行こうとする。儂を着せ替え人形にして大いに喜ぶんじゃけども、今回は違う。
まず最初に儂等が足を運んだのは、雑貨店じゃ。何でかと言うと、新年を迎える為に明日から大掃除をするから。もっとも、家中の掃除をするのは被身子や母なんじゃけども。儂と父は何もするなと、昔から釘を刺されておる。父はともかくとして、儂にも掃除ぐらいさせて欲しいものじゃ。
ところで。被身子が見せびらかして来たのは、真っ赤な
「それも悪くないが、こっちはどうじゃ?」
赤、は悪くない。好きな色に近いし。でも単純に赤いのは、何と言うか安直な気がしてならん。儂が着る分には良いんじゃけど、被身子が着るとなるともう少しこう……。こう、別の色でも良いんじゃないかと思う。例えばほら、この白いやつとかどうじゃ?
「えーー……? それもカァイイですけど、ちょっと露骨過ぎるのです」
「……そうかも知れん」
儂が手にとって見た
試しに被身子の体に当ててみると、……うむ……。別に悪くない。悪くないんじゃけど、なるほど確かに。こやつが言っていたように、何故か露骨感が強い。似合うと思ったんじゃけどなぁ……。かぁいいはかぁいいんじゃけど、何か違う気がして来た。
「んふふ。意外とそういうのが趣味なんですか?」
「いや、趣味ではなくて単純に似合うんじゃないかって思っただけで……」
「それを趣味って言うんですよぉ。えへへ、これはこれで買っちゃいましょうかねぇ……♡」
いや、じゃから。趣味では無いぞ。断じて違う。儂の好みは、こういう……無駄にひらひらしたものではなくてじゃな? 実用性とかそう言うのがもっと優れた物の方が好ましいんじゃ。お洒落をするのに実用性は必要無いと、最近は思わんでもないが。
儂自身が着飾るのは苦手じゃけども、被身子が着飾る分には良いと思う。ほら、愛しい人の色んな姿は見たいものじゃから。別に着飾らなくとも、被身子はかぁいいんじゃけども。
「じゃあ円花ちゃんもこのエプロンにしましょう! あ、そうだ! 二人でゴスロリとかどうですか!?」
ごすろ……。……何じゃって? 牛頭鹵理? 呉須路履? 何処かで聞いた単語じゃが、何処でじゃったっけな。まるで記憶に無い辺り、多分聞き流したんじゃろう。被身子は時折、よく分からん言葉を口にする。意味不明な単語を口走るのは止さぬか。せめて儂に、どういう意味なのかを説明してくれ。
「地雷系も捨て難いですよねぇ……。どっちが良いと思います?」
「いや、聞かれてもじゃな……」
地雷系? 地雷って、あれじゃよな。踏んだら爆発するやつ。体育祭の時は、あれを幾つも踏んで服が滅茶苦茶になったのを覚えておる。あんな物を……着るのか……? いやそれは、衣服として成立しないじゃろ。仮にしたとして、単純に危ないと思うんじゃけど。動いたら爆発しそうじゃし。そんなものを二人で着たいとは全く思わん。何を言ってるんじゃ、こやつは。相変わらず、意味不明な事ばかりを口走るんじゃから。仕方のない奴め、仕方のない奴めっ。
「後で洋服も見に行きましょうねぇ。ゴスロリも地雷系も、ロリィタも試してみましょう!」
「ぅ、うむ。そうしようかの……?」
分からん。まったく分からん。炉利板? って何じゃ。これも何処かで聞いたが、はて何処で聞いたんじゃったか。案外、服屋で聞いたりしたのか? じゃったらまぁ、何処かで聞いていて当然じゃ。じゃって、被身子と何回服屋に足を運んだか分からんし。
こやつは昔から、服屋に行きたがるからのぅ。そんなに儂を着せ替え人形にするのが楽しいのか? よくもまぁ、いつもいつも飽きないものじゃ。されっぱなしは癪じゃから、今回は儂が被身子を着せ替え人形にしてしまおうか。
……うむ。悪くないの。悪くない悪くない。たまにはしっかりとやり返さなければな。今日こそ、儂が被身子を好き勝手するんじゃ。あれこれと好き勝手に、服を選んでしまおう。なに、金なら無駄に有る。呪術師をやっていると、金が貯まっていく一方じゃからの。時折、散財したって許されるじゃろう。父や母じゃって、被身子や儂の服の為ならば結構な散財をするんじゃから。
よし。そうと決まれば……。
「次は服屋じゃ。良いな?」
「はぁい。冬物、いっぱい買いましょうね!」
また長くなりそうじゃなぁ。果たして何時間掛かることやら。嫌とは言わんけど。
◆
被身子に洋服について教えて貰いながら着せ替え人形になったり、大掃除に必要な物を買い揃えたり。とにかく今日は、普段とは違った意味で忙しい。呪術師も
……それに。
じゃと言うのに……。……はぁ……。
なんでこの時代は、時折平穏とはかけ離れた瞬間と遭遇しなければならんのか。相変わらず呪霊が目に付くし、何なら悪党まで出て来る。これでも世界規模で見れば日本は平和らしいんじゃけど、
「むーー……」
あ、いかん。被身子が拗ね始めた。何でって、儂が子供やら大人に囲まれ始めたからじゃ。ついさっき、飛び出て来たひったくり犯を赤縛でとっ捕まえたらこれじゃ。被身子と談笑しつつ歩いてる片手間に、取り敢えず縛っておいた。後のことはこの施設の警備員とか、何か慌てて走って来た警察とかに任せたんじゃが……それも良くなかったかのぅ。いやでも、
その結果、大勢に囲まれることになったのは解せぬところじゃが。
「ブラッディ! サインちょうだい!」
「こっちも頼むよ!」
「あたしもー!」
「ぼくもーー!!」
いや、じゃから。ぶらっでぃではないと何度言えば民衆は分かってくれるのか。気が付けばくらすめぇと達にまで浸透してしまっているし。世間の付けたあだ名がそのまま呼び名になる
と言うかじゃな、被身子が不機嫌になるから今は止してくれ。空気を読め、空気を。まったく、どいつもこいつも……。
「でぇと中じゃから、そっとしてくれんかのぅ……。さいんはしてやるから、さっさと逝ね」
「そうですぅー! 私とヨリくんはデート中なんですぅ!!」
ぐぇえっ。横から押し倒さんばかりの勢いで急に抱き付いて来るのは、それはそれでどうなんじゃ被身子。まったく、いつまでも甘えたがりなんじゃから。駄目とは言わんし、いつでも好きにして良いんじゃけども、先に一言欲しい気がしないでもない。
抱き付いて来た被身子を宥めつつ、片手間に突き出される筆記帳やら色紙やらなんやらに左手で
「頼むから、今後儂がでぇと中は話し掛けないでくれ。頼……んぐんぐ……」
喋れなくなって来た。じゃって被身子が、儂の顔に胸を押し付けるんじゃもん。もう少しこう、時と場合を考えて欲しい気がしないでもない。いつじゃって人前でも遠慮無しなんじゃから。
そういうところも、好きじゃけど!
三人称による補完は要りますか?
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欲しい
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要らん
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良いから一人称で突っ走れ