待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!!   作:一人称苦手ぞ。

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円花の停滞。兆し、そのご

 

 

 

 

 

 

 休学の身分で真っ昼間から逢瀬(でぇと)するのは如何なものかと思う。学生として駄目な気がしてならん。とは言え、一応は冬休みじゃし今は被身子優先じゃからあまり気にしないことにする。まぁ帰ったら、積もり積もった課題をどうにかせねばならんのじゃが。勉強を被身子だけに頼り切るのもいかんから、出来るところまでやっておきたい。でないとほら、進級に関わる。

 それから、悪党(ゔぃらん)連合の所在地が気になるところじゃ。こっちは気にしたところでどうにもならんのじゃが、気になるものは気になってしまう。どうにかして接触を図らねばなるまいて。被身子を元に戻す手段を知れるかもしれんのじゃ。今直ぐにでも捜し回りたい気持ちも有るが、闇雲に捜し回ったってどうにもならんじゃろう。

 

 なので。被身子最優先。あれこれと別の事を考えていると、拗ねられるかもしれんし。今は被身子だけに集中じゃ。集中。

 

 ……ところで。今は実家の近所に在る商業施設に居るわけじゃ。最初は木椰区の商業施設に行こうなんて話になったんじゃが、今は閉鎖中での。仕方なく近場まで逢瀬(でぇと)ってことになったわけじゃ。

 

「これとかカァイイです!」

「ぅ、うむ……。そうじゃの……?」

 

 いつもなら、被身子はまず真っ先に服屋に行こうとする。儂を着せ替え人形にして大いに喜ぶんじゃけども、今回は違う。

 まず最初に儂等が足を運んだのは、雑貨店じゃ。何でかと言うと、新年を迎える為に明日から大掃除をするから。もっとも、家中の掃除をするのは被身子や母なんじゃけども。儂と父は何もするなと、昔から釘を刺されておる。父はともかくとして、儂にも掃除ぐらいさせて欲しいものじゃ。

 

 ところで。被身子が見せびらかして来たのは、真っ赤な前掛け(えぷろん)じゃ。所々に、白い模様が付いている。はぁとまぁく……、のようじゃ。本音を言えば、よく分からん。前掛け(えぷろん)前掛け(えぷろん)じゃと思う。まぁ、被身子が着る分にはきっと可愛らしいものなんじゃろう。赤色なのは悪くない。儂としては、もう少し色が暗い方が好みじゃけども。

 

「それも悪くないが、こっちはどうじゃ?」

 

 赤、は悪くない。好きな色に近いし。でも単純に赤いのは、何と言うか安直な気がしてならん。儂が着る分には良いんじゃけど、被身子が着るとなるともう少しこう……。こう、別の色でも良いんじゃないかと思う。例えばほら、この白いやつとかどうじゃ?

 

「えーー……? それもカァイイですけど、ちょっと露骨過ぎるのです」

「……そうかも知れん」

 

 儂が手にとって見た前掛け(えぷろん)は、妙に装飾が多い気がする。白一色なのに、 やたらと飾り立てられていると言うか、ふりふりしている……と言うか。変な物を手に取ってしまった感は拭えない。が、ほら。被身子が着たら意外と様になるんじゃないか? こういう感じの衣類を身に着けた被身子も、きっと悪くない。何せほら、被身子は見てくれが良いから。誰よりもかぁいいんじゃから、何を着てたってかぁいいものじゃろ?

 試しに被身子の体に当ててみると、……うむ……。別に悪くない。悪くないんじゃけど、なるほど確かに。こやつが言っていたように、何故か露骨感が強い。似合うと思ったんじゃけどなぁ……。かぁいいはかぁいいんじゃけど、何か違う気がして来た。

 

「んふふ。意外とそういうのが趣味なんですか?」

「いや、趣味ではなくて単純に似合うんじゃないかって思っただけで……」

「それを趣味って言うんですよぉ。えへへ、これはこれで買っちゃいましょうかねぇ……♡」

 

 いや、じゃから。趣味では無いぞ。断じて違う。儂の好みは、こういう……無駄にひらひらしたものではなくてじゃな? 実用性とかそう言うのがもっと優れた物の方が好ましいんじゃ。お洒落をするのに実用性は必要無いと、最近は思わんでもないが。

 儂自身が着飾るのは苦手じゃけども、被身子が着飾る分には良いと思う。ほら、愛しい人の色んな姿は見たいものじゃから。別に着飾らなくとも、被身子はかぁいいんじゃけども。

 

「じゃあ円花ちゃんもこのエプロンにしましょう! あ、そうだ! 二人でゴスロリとかどうですか!?」

 

 ごすろ……。……何じゃって? 牛頭鹵理? 呉須路履? 何処かで聞いた単語じゃが、何処でじゃったっけな。まるで記憶に無い辺り、多分聞き流したんじゃろう。被身子は時折、よく分からん言葉を口にする。意味不明な単語を口走るのは止さぬか。せめて儂に、どういう意味なのかを説明してくれ。

 

「地雷系も捨て難いですよねぇ……。どっちが良いと思います?」

「いや、聞かれてもじゃな……」

 

 地雷系? 地雷って、あれじゃよな。踏んだら爆発するやつ。体育祭の時は、あれを幾つも踏んで服が滅茶苦茶になったのを覚えておる。あんな物を……着るのか……? いやそれは、衣服として成立しないじゃろ。仮にしたとして、単純に危ないと思うんじゃけど。動いたら爆発しそうじゃし。そんなものを二人で着たいとは全く思わん。何を言ってるんじゃ、こやつは。相変わらず、意味不明な事ばかりを口走るんじゃから。仕方のない奴め、仕方のない奴めっ。

 

「後で洋服も見に行きましょうねぇ。ゴスロリも地雷系も、ロリィタも試してみましょう!」

「ぅ、うむ。そうしようかの……?」

 

 分からん。まったく分からん。炉利板? って何じゃ。これも何処かで聞いたが、はて何処で聞いたんじゃったか。案外、服屋で聞いたりしたのか? じゃったらまぁ、何処かで聞いていて当然じゃ。じゃって、被身子と何回服屋に足を運んだか分からんし。

 こやつは昔から、服屋に行きたがるからのぅ。そんなに儂を着せ替え人形にするのが楽しいのか? よくもまぁ、いつもいつも飽きないものじゃ。されっぱなしは癪じゃから、今回は儂が被身子を着せ替え人形にしてしまおうか。

 

 ……うむ。悪くないの。悪くない悪くない。たまにはしっかりとやり返さなければな。今日こそ、儂が被身子を好き勝手するんじゃ。あれこれと好き勝手に、服を選んでしまおう。なに、金なら無駄に有る。呪術師をやっていると、金が貯まっていく一方じゃからの。時折、散財したって許されるじゃろう。父や母じゃって、被身子や儂の服の為ならば結構な散財をするんじゃから。

 

 よし。そうと決まれば……。

 

「次は服屋じゃ。良いな?」

「はぁい。冬物、いっぱい買いましょうね!」

 

 また長くなりそうじゃなぁ。果たして何時間掛かることやら。嫌とは言わんけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 被身子に洋服について教えて貰いながら着せ替え人形になったり、大掃除に必要な物を買い揃えたり。とにかく今日は、普段とは違った意味で忙しい。呪術師も英雄(ひいろお)も関係無く、ただただ在り来りな日常を過ごすのはいつ以来じゃったか。普段とはまた違った疲労感が有るが、それが心地良いような気もする。

 ……それに。逢瀬(でぇと)じゃからな。意中の人と出掛けて遊ぶのは、何だかんだで喜ばしいものじゃから。今日の被身子は特に楽しそうにしていて、それもまた喜ばしい。

 

 じゃと言うのに……。……はぁ……。

 

 なんでこの時代は、時折平穏とはかけ離れた瞬間と遭遇しなければならんのか。相変わらず呪霊が目に付くし、何なら悪党まで出て来る。これでも世界規模で見れば日本は平和らしいんじゃけど、(まこと)にそうか? 他所の国と大差無いんじゃないかと思えて来た。海外の治安の悪さは日本より遥かに酷いらしいが、どうにも疑わしいところじゃ。海外に行ったことは無いし、行きたいとも思わんけど。じゃって英語とか、全然分からんし。それ以外の言語も知らん。

 

「むーー……」

 

 あ、いかん。被身子が拗ね始めた。何でって、儂が子供やら大人に囲まれ始めたからじゃ。ついさっき、飛び出て来たひったくり犯を赤縛でとっ捕まえたらこれじゃ。被身子と談笑しつつ歩いてる片手間に、取り敢えず縛っておいた。後のことはこの施設の警備員とか、何か慌てて走って来た警察とかに任せたんじゃが……それも良くなかったかのぅ。いやでも、逢瀬(でぇと)中じゃし。細かな事後処理とかそう言うのは、面倒じゃから警察に丸投げしたい。

 その結果、大勢に囲まれることになったのは解せぬところじゃが。

 

「ブラッディ! サインちょうだい!」

「こっちも頼むよ!」

「あたしもー!」

「ぼくもーー!!」

 

 いや、じゃから。ぶらっでぃではないと何度言えば民衆は分かってくれるのか。気が付けばくらすめぇと達にまで浸透してしまっているし。世間の付けたあだ名がそのまま呼び名になる英雄(ひいろお)は多いといつぞやの授業で聞いたが、まさか儂もその類いになるのか……? どうしてこう、前世から望まぬあだ名で呼ばれる羽目になるのか。解せぬ。

 と言うかじゃな、被身子が不機嫌になるから今は止してくれ。空気を読め、空気を。まったく、どいつもこいつも……。

 

「でぇと中じゃから、そっとしてくれんかのぅ……。さいんはしてやるから、さっさと逝ね」

「そうですぅー! 私とヨリくんはデート中なんですぅ!!」

 

 ぐぇえっ。横から押し倒さんばかりの勢いで急に抱き付いて来るのは、それはそれでどうなんじゃ被身子。まったく、いつまでも甘えたがりなんじゃから。駄目とは言わんし、いつでも好きにして良いんじゃけども、先に一言欲しい気がしないでもない。

 抱き付いて来た被身子を宥めつつ、片手間に突き出される筆記帳やら色紙やらなんやらに左手で署名(さいん)していく。面倒この上ない。逢瀬(でぇと)中じゃと言ってるんじゃから、周りを囲んで邪魔するのは止さぬか。民度はどうなっとるんじゃ民度は。まったく!

 

「頼むから、今後儂がでぇと中は話し掛けないでくれ。頼……んぐんぐ……」

 

 喋れなくなって来た。じゃって被身子が、儂の顔に胸を押し付けるんじゃもん。もう少しこう、時と場合を考えて欲しい気がしないでもない。いつじゃって人前でも遠慮無しなんじゃから。

 

 そういうところも、好きじゃけど!

 

 

 

 

 

 

 

 

三人称による補完は要りますか?

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  • 要らん
  • 良いから一人称で突っ走れ
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