待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
「廻道は何もしないでね!?」
「絶対余計に散らかすじゃん?」
「ほんとに何かしたらあかんよ?」
「廻道ちゃんはここから動かないこと!」
「円花ちゃんはトガが疲れた時の甘やかし係なのです」
解せぬ。
いや、もう。まっこと解せぬ。
大晦日前日。儂と被身子は
まったく。失礼な連中め。儂じゃって掃除ぐらい出来るんじゃぞ。いつもいつも、儂をぽんこつ扱いするのは止さぬか。こうなったら儂が部屋を掃除して、くらすめぇと達を黙らせるしかないようじゃな。今に見てろよ……! 儂にじゃって、掃除ぐらい出来るんじゃ……!!
「円花ちゃんはこっちですぅ。はい、ソファに座って大人しくしてて!」
「ぐえっ。こ、こら被身子……!」
「疲れたら甘えに来ますので、それまで待機です!」
んぐぐ。居間にある
なんて思いながら被身子を睨むと、
「まーまー、廻道はサボってような?」
「むしろ羨ましいぐらいだぜ? 俺だってサボりてぇ〜〜」
「クソチビが大掃除なんてしたら面倒だわ」
「わ、悪ぃ廻道! 庇ってやれねぇ……!」
遠ざかる被身子の背を睨み付けていると、今度は男子達が話し掛けて来おった。瀬呂に上鳴に、舎弟に切島。この四人が纏まっているところを見るのは、何じゃか久しぶりな気がしないでもない。が、それはそれとして。こやつ等まで儂に大掃除をするなと言い始めた。
別に良いじゃろうが、儂が大掃除をしたって。やはりこうなったら、勝手にやるしかない。取り敢えず
「待て廻道。廻道にしか出来ない務めがある」
今度は誰じゃっ!? って、何じゃ。常闇か。箒と塵取りを持ってどうした?
「リビングの掃除をしたい。中学の時のように、手を貸してくれ」
「……仕方ないのぅ! 儂に任せろっ」
何じゃ常闇。話が分かるではないか。今日も立派な鳥頭をしおって。額や腕に巻いた包帯が気になるところじゃが、何も聞かないでおくか。多分、訓練の最中に怪我でもしたんじゃろう。励んでいるようじゃが、怪我をしてしまっては元も子もない。
他の連中は儂に何もするなと言っていたが、常闇だけは別じゃの。やはり持つべきものは友なのかもしれん。中学時代も、よくこうやって一緒に掃除をしないかと誘われたものじゃ。懐かしいのぅ。
「ほれ。早く掃け早く。今日は忙しいんじゃぞ?」
常闇の手から塵取りを奪い取って、椅子から少し離れたところでしゃがみ込む。こうしていると増々懐かしくなって来た。中学時代は、よくこうして教室の掃き掃除をしたものじゃ。常闇が埃や塵を集めて、儂がそれを塵取りで受け取る。儂が転校する前は、掃除の時間はいつもこうしていた記憶があるの。
「よし諸君! 常闇くんと廻道くんが塵取りをしている間に大掃除を進めよう!」
「常闇さん、廻道さんはお任せしますわ!」
……は? 今何か、物凄く失礼な号令が掛かった気がする。おい飯田。おい、八百万。今、何と言った? なんと号令を掛けたんじゃ??
儂は聞いておったぞ。はっきりと聞こえてたんじゃが!?
◆
げ、解せぬ。まっこと、解せぬ。儂にも大掃除をさせろ。見ての通り、掃除ぐらい出来るんじゃぞ。ほらほら、常闇と協力して小さな埃の山が出来た。何なら拭き掃除だって出来るぞ。もっぱら雑巾を絞る係じゃけど!
まったく、どいつもこいつも。儂をぽんこつ扱いして家事から遠ざけるのは止さぬか。そうやって遠ざけられると、いつまでも家事が出来ないままなんじゃけど? まぁ確かに現代の掃除に詳しくはないが、それならそれでひとつずつ教えてくれたりしても良いじゃろうが。まったく……!
まぁ、とにかく。くらすめぇと達は後で見返してやるとして。
今、儂は常闇と居間の掃除をしておる。掃き掃除はもう終わって、次は拭き掃除じゃの。だぁくしゃどうが風呂場まで伸びて水が入った
「ほれ、常闇」
「ありがとう」
絞った雑巾をふたつ、放り投げて渡す。すると常闇とだぁくしゃどうがそれぞれ別に動き始めて、窓やら床なんかを手慣れた様子で拭いていく。中学時代も思ったことじゃが、高い所に手が届くのは羨ましいのぅ。儂はほら、背丈が低いから高い所に触れるのは難しい。こうして眺めていると、だぁくしゃどうは便利な個性じゃ。体が二つ有るようなものじゃし。
……にしても、常闇よ。随分と動きが手慣れているの? 細部に渡るまで隅々と拭き掃除をしているし、なのに手際良く進んで行く。そんなに掃除好きじゃったっけ?
「常夜の巣窟で学んだまで」
「は?」
「……自宅で学んだ。寮生活をする前から、家事は一通り出来るようになっておくべきだと考えて」
「それは羨ましいのぅ」
「……」
いや、おい。何でそこで呆れた顔をするんじゃお主は。儂じゃって家事のひとつやふたつは覚えたいんじゃ。なのに誰も教えようとはしてくれないから、いつまで経っても家事が覚えられん。思えば、前世でもそうじゃったの。身の回りのことは人任せじゃったと言うか、自分で何かをするのを許されなかったと言うか。あの時はあの時で、どいつもこいつも儂を徘徊呆け老人だのなんだの……。
……まったく。何がどうなってるんじゃか。儂はぽんこつでも徘徊呆け老人でもないと何度言えば分かって貰えるのやら。
「円花ァ、褒メロ!」
「ぐえっ。急に来るな急に」
あれこれと考えていると、だぁくしゃどうが被身子のように突撃して来た。当たり前のように腕に絡み付いてきおって。まぁ別に、かぁいいから許してやるが。動物に懐かれるとこんな気分なんじゃろうなぁと、思わんでもない。それに、
まぁ、個性は何でも有りな力なんじゃけども。呪力を通さず扱える術式と言っても過言ではないじゃろう。
ところで。最近のだぁくしゃどうはよく儂に甘えて来る気がする。小さな子供みたいで、可愛らしいものじゃ。存外甘え上手なのかもしれん。
仕方ないから、褒めてやるとしよう。実際、高い位置の掃除はだぁくしゃどうが済ませたんじゃし。
「よくやった。偉いぞ、だぁくしゃどう」
「ソウダロソウダロ!」
「……ダークシャドウ。あまり廻道に触れると渡我先輩が怖いぞ」
「踏陰ガ何トカシナァ!」
「……戻れ。ダークシャドウ」
「ヤナコッタ!」
……んん? 何か、珍しい光景な気がするの。だぁくしゃどうがこうも常闇に歯向かうとは。基本的には、常闇の意思で動いとる筈なんじゃけどな。引っ込めと言われて、引っ込まないなんて事が有り得るのか?
「すまん廻道。ダークシャドウが制御し辛くなった」
「は? 何でじゃ?」
「……それは、後で見せる。廻道、大掃除が終わったら挑ませてくれ」
「は?」
挑むじゃと? 冬休みで、今は年末なのに? それに儂は休学中なんじゃが、訓練場は使わせて貰えるのか?
……まぁ、良いか。許可など特に取らんでも。最悪、雄英敷地内の何処かで勝手にやれば良い。人目に付かん場所は、それこそ幾らでも有るし帳も降ろせば良いからの。
挑むと言うのなら、受けてやろう。儂への挑戦はいつでも受け付けると言ってある以上、逃げも隠れもせん。何かが大きく変わってるようには見えぬが、男子三日会わざれば何とやら……とも言うし。こんな時に申し出て来るんじゃから、もしや勝算でも有るんじゃろうか。じゃとしたら、……うむ。
少しは楽しみじゃ。せいぜい楽しませてくれ。ただし、勝ちは譲らんけどな。勝負は勝負じゃ。殺さない程度に手は抜くが、それ以外の手心は一切加えん。何せ、子供達の将来に関わることじゃからの。
―――数時間後。大掃除が終わった後で、常闇は儂に挑んだ。当然と言えば当然なんじゃけど、その様子を被身子やくらすめぇと達全員、それから相澤に見守られることになってのぅ。それは良いんじゃが、それよりもじゃ。
常闇が、大きな飛躍を儂に見せ付けたんじゃ。
三人称による補完は要りますか?
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欲しい
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要らん
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良いから一人称で突っ走れ