待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
「で。何でそんな面しとるんじゃお主は」
あと二日もしない内に大晦日がやって来ると言うのに、くらすめぇと達との訓練に勤しんだ日の夜。風呂も食事も済ませた後で、儂は常闇の話を聞くことにした。今朝、……と言うか昼間。儂が常闇を認め頼ると公言した時から、こやつはずっと不服そうじゃ。そのくせ訓練自体は、鬼気迫るものが有ったんじゃけど。常闇との付き合いはそれなりの長さがあると思ってはいるが、それでも今回は何を考えているのかよく分からん。何がそんなに気に食わないんじゃ、この鳥頭め。
被身子が麗日や他の
「……」
腕を組んで壁に寄りかかる常闇は、不服そうな面のままじゃ。何なら口も開かん。何なんじゃこやつ。儂が聞いてるんじゃから、そこは素直に答えて欲しいのぅ。だぁくしゃどうは、相変わらず儂の腕に絡み付いて来るけども。嫌とは言わんが、被身子に見られたらどうなっても知らんぞ。
「なぁ、だぁくしゃどう。常闇は何でそんな面をしてるんじゃ?」
「知ラネェ。踏陰ヨリ俺ニカマエ!」
「構っとるじゃろ、ほれほれ」
「モット構エ!」
……仕方ない個性じゃなぁ、だぁくしゃどうは。常闇は黙り込んだままじゃし、仕方ないから個性の方を構ってやることにする。ここ数日のだぁくしゃどうは、どうにも口調が荒い。それ自体は構わんのじゃけども、常闇にまで反発するようになったのはどういう理屈じゃ? 以前は、暴走しない限りは完全に制御していたと思うんじゃが……。
さては、個性の不調か……? いや、それにしては常闇が困った素振りを見せていない。明らかに変わったことと言えば、だぁくしゃどうが常に姿を現していることぐらいで。
まさか、引っ込めることが出来なくなった……なんてことは無いよな? それでは成長どころか、むしろ退化してしまっている。
はて? これはどういう理屈じゃ……?
……まぁ、良いか。心配ではあるものの、現状だぁくしゃどうが好き勝手動いてようが何も困っとらんようじゃし。暴走するようなら、最悪相澤に止めて貰えば良い。もしくは轟や舎弟が何とか出来るじゃろう。青山も居る。何なら八百万も。だぁくしゃどうは、光に弱い。そこばかりは、変わりようがない弱点のようじゃからの。
「ところで、だぁくしゃどう。らぐなろく界?
とは何じゃ?」
「俺達ノ世界ダゼ!」
「いや、それは知っとる。儂が聞きたいのはそうではなくて……」
「……あれは、領域展開を真似たものだ。闇を蓄え真の姿となったダークシャドウで、周囲を囲い閉じ込める。だが、まだ付け焼き刃だ」
「ッテコトダ! 褒メロ!」
……領域展開を、真似た? じゃと?
それはまた、随分思い切った技な気がしてならん。しかしあの技は、間違いなく必殺技じゃった。
あんな技を積極的に使って活動したなら、常闇の前に立った悪党はその殆どが死ぬ。これは実際にこの身で体感した儂が言うんじゃから、間違いない。
「助言通り、闇を広げ深化した」
「……なるほど?」
まぁ、つまり。恐らく多分じゃけども、常闇は個性の解釈を広げた……ってことかのぅ。発想や解釈次第で術式は飛躍することも有る。どうやらそれは、個性にも通ずることのようじゃな。実際、儂の個性じゃって術式同然に扱うことで反転するようになったわけじゃし。順転にしろ反転にしろ、規模と反動が大きくなってしまうことが問題じゃけどな。下手に小規模で済ませようとすると、それはそれで使い道が無い。かと言って大規模にすると大惨事じゃし。我ながら、面倒な力を抱えたものじゃ。
……とにかく。常闇が強くなったのは個性の解釈を広げたから。ってことなんじゃろう。その結果、だぁくしゃどうに反発されるようになったのはどういう理屈なのかさっぱり分からんが。
「……ダークシャドウがこうなったのは、自由にさせた結果だ。ダークシャドウを操るのではなく、力を借りると考えた」
「ソウ言ウコトダゼ!」
「そうか。ひいろお活動や私生活に支障が無いならそれで良い」
なるほど。下手に抑え付けようとするのではなく、委ね任せる。そう言えば、儂が教えた事じゃったな。であれば、常闇が急激に実力を伸ばしたのも理解出来る。しかしまぁ、考え方を変えるだけでああも伸びるのか。儂ももう少し、個性の解釈を広げるべきかのぅ?
しかし、触れた物を回すだけの個性の解釈をどう広げろと? 回転は回転。ぐるぐる回るだけじゃ。幸い、回せる対象は広い。無機物から有機物まで。それこそ小石や空気、人間じゃって対象じゃからの。
「……回転の解釈を広げられると思うか?」
自分で考えても、現状は何も思い浮かばない。じゃから試しに、聞いてみる。個性の扱いについては常闇の方が上じゃろうし、もしかしたら儂が思い浮かばぬ事を言うかもしれん。
少しむず痒いが、時には頼ってみるとしよう。
「……文明の発達……?」
「は?」
「……例えば、電気。回転によって発電する」
「あぁ……」
まぁ、そう言えばそうか。風力発電とか、風の力で機械を回して発電するんじゃもんな。しかし儂の個性から直接電気が生じるとは思えん。仮に生じたとして、それをどう扱えと? 上鳴のように放電すれば良いのか……? いやそもそも、発電出来るとは思えんし……。
……まぁ、結局の所。解釈を広げるより先に、個性伸ばしの方が先じゃの。儂はまだまだ個性を伸ばせる筈じゃ。じゃってこれまで、ろくに使ってこなかったんじゃから。大体のことは術式で事足りてしまうっていうのも有るが、せっかく授かった力なら使っていかなければな。そうしたらほら、子供達を鍛えるのに役に立つじゃろうし。
それはそれとして。
「で。何でそんな面しとるんじゃ?」
「……はぁ……」
おい。人の面を見て盛大に溜息を吐くな。失礼な奴め。聞くな、とでも言いたいのか? それならば無理には聞かんが。今はな。いずれ聞き出してやるから覚悟しておけよ貴様ぁ。
「……俺はまだ、勝ってない」
「それはそうじゃな」
「なのに認められては困る。……けど、廻道に頼られるのは嬉しい。それが癪だ」
「面倒くさい奴め」
「廻道にだけは言われたくない」
いやいや、儂はそこまで面倒くさい奴ではない。違うからな? 違うったら違うんじゃぞ?
でも、まぁ。不服そうにしている事情は、一旦分かった。じゃってこれ、男の意地じゃし。納得出来ぬよなぁ、認められんよなぁ。じゃからこそ、儂の方から取り下げたりはしないがな。意地は張り通してこそ、じゃ。それに、儂の方から配慮してやるつもりもない。
「精々強くなれよ。儂に置いて行かれんようにな」
激励のつもりで、常闇の胸に拳を当てとく。さて、そろそろ被身子の元に戻らんといかん。常闇が気になって、少し放ったらかしにしてしまったからの。これ以上離れていると、後で何をされるか分かっ―――。
……ぁあ……。うむ……。いかん。遅かった。がぁるずとぉくをしていた被身子が、
「……常闇。さっそく頼りたいことが有るんじゃけど」
「嫌だ」
「まぁそう言うな。被身子を何とかして欲しいんじゃが」
「断るっ。自分で何とかしてくれ……!」
「元はと言えば、貴様があんな面をしてたからじゃろ!?」
「俺のせいにしないでくれ……!」
いやいや、貴様のせいじゃ貴様のっ。お主が不服そうな面をしていなかったら、儂はわざわざ話を聞こうとは思わなかったんじゃから! たまには責任を取れ責任をっ! いつもいつも被身子がああなったら逃げようとしおって……!
「二人で、何の話ですかぁ? 白昼堂々と浮気なんて、どうしてくれましょうか……っ」
「ち、違っ。渡我先輩、これは廻道が勝手に……!」
「は? じゃから貴様が悪いんじゃろっ!?」
この後。圧を出した被身子を前に、儂と常闇は震えるしかなかった。ついでに、だぁくしゃどうは泣いた。年々、被身子が醸し出す圧が凄まじくなっているのは気のせいではない。まっこと、嫉妬深い女に育ってしまったのぅ……。そんなつもりは無かったが、どこかで教育を間違えたか……? ふ、不覚……!
◆
拗ねた被身子を宥めるのは、それはもう大変じゃ。何せ、その日の予定は被身子だけに費やす羽目になるからのぅ。昼から夜まで求め合って、夕飯を食べたらまた求め合って。疲れて眠るまで触れ合ったら、お互いに泥のように眠って……。んんむ、良くない。幾ら今が冬休みじゃからって、どうにも人肌恋しい季節じゃからって、人としてこう、……駄目な気がしてならん。嫉妬させてしまった儂が悪いんじゃけども、少しは手加減して欲しいと思わんでもない。
……いや、まぁ。滅茶苦茶にして貰えるのは、喜ばしく思ってるんじゃけども。いかんなぁ、どうにも。被身子に求められると、つい時間も我も忘れて……。
おほん。朝から被身子との情事を思い返すのは、止そう。煩悩で生きるような真似はしたくない。峰田じゃあるまいし。今日は色々とやっておきたい事が有るからの。まずはそちらを済ませてから、被身子とゆっくり過ごしたい。明日は大晦日じゃから、夜になる前に実家に帰るとしよう。
それから。
「朝からすまんな。お主が居ないと、話にならんから」
「構わないが、何故俺にサポートアイテムを?」
今朝は、朝も早くから外に出ている。外と言っても目的地は校舎じゃ。被身子と常闇を連れて、……苦手なあやつに会いに行こうと思っての。必要とは言え、朝から気が重い。今夜も寝かせて貰えないんじゃろうなぁ、儂。
取り敢えず、今朝は無言で右腕に絡んで来るだぁくしゃどうを撫でるとする。妙に怯えている気がするのは、儂の隣に被身子が居るからじゃろう。多分。
「儂の補助監督をやるなら、最低限呪具は持って貰う。だぁくしゃどうや、常闇自身に合わせた呪具の方が何かと都合が良いじゃろ?」
本音を言えば、あまり気乗りはしない。非術師の子供を呪術界に踏み入らせる真似は、したくない。しかしそれでも呪術界に踏み入ることを許すのであれば、最低限の備えを用意しなければ。
じゃから、まずは常闇に合わせた呪具を作る。そうすれば最低限、呪霊から身を守ることが出来るじゃろう。低級呪霊が相手ならば、 祓うことじゃって出来る。あまり積極的に呪霊の前に立たせたくはないが、こやつの実力なら有る程度は大丈夫じゃと思いたい。もっと早くから、そう判断するべきじゃったか……? これからの準備を考えると、ある程度の時間は必要じゃし……。
「ぶっちゃけ、専用装備を作っちゃった方が円花ちゃんは安心出来るのです。まぁ最初に作るのが常闇くんの分なのは、やっぱり納得出来ませんけど。まだ緑谷くんの方がマシです」
「それは、……すみませんでした」
「円花ちゃんが決めたことですから。でも、補助監督に推薦されるからって円花ちゃんとベタベタするのは禁止です……!」
「ヒッ!?」
「どぅどぅ、落ち着け落ち着け……」
儂の左隣を歩く被身子が、今にも常闇に牙を剥きそうじゃ。いや、もう既に剥いているか……? 右隣の常闇は、何なら少し怯えている気がするの。だぁくしゃどうなんて、震え上がってるぐらいじゃ。
「……そう言えば、冬休みじゃけどあやつは居るのか?」
一応、確認しておく。今は冬休みなんじゃから、
「居ますよ? 近々訪問するって連絡しときましたので!」
い、居るのか……。そうか……。
「手際が良いですね。まさに迅速で在られる……」
「常闇くんに褒められても嬉しくないのです」
「すみません……」
「よく連絡してたの?」
「必要かなって思ったので!」
「ぅ、うむ……。すまん、助かる」
手際が良いと言うか、用意周到と言うべきか。痒い所に手が届くとも言えるじゃろう。流石は儂の被身子じゃ。どれ、頭を撫でてやるとしよう。ほれほれ、少し屈まんか。
……そう言えば、何で弁当箱を持ってるんじゃお主? 出掛ける前にせっせと手早く作っていたのは知っているが、何故?
「ま、待った発目! それは良くな―――!!」
あ、いかん。数
「明ちゃん、今日も元気そうですねぇ」
「……そうじゃな。くわばらくわばら……」
「行かないのか?」
「今は少し待った方が良いぞ? でないと―――」
「うわぁあああ!?」
ほら、爆発した。ぱわぁろぉだぁ先生が、工房から転げ出て来おったわ。相変わらずじゃのぅ、あやつ。また発明品を大爆発させとるのか。そろそろ死人が出てもおかしくないのでは?
「な? 待っといた方が良かったじゃろ?」
「南無阿弥陀仏」
「明ちゃん、相変わらずですねぇ……」
まったく。あやつは在学中に何回爆発を引き起こすつもりなんじゃろうな? もしかする と、毎日爆発させているのかもしれん。また爆発が起きるかもしれんから、そこは気を付けておこう。念の為、いつでも呪力と術式は使えるように身構えてじゃな? ついでに被身子と常闇の背中に、念の為に儂の血を付着させてっと……。うむ、よし。それじゃあ、工房に足を踏み入れるとしよう。
「発目、少し良いかの?」
「良くないですねぇ! 今年最後のドッ可愛いベイビーに手こず―――」
「ぬぉあっ!?」
また爆発したわ。もうやじゃこやつ! 誰か何とかしてくれんかのぅ!?
取り敢えず今回は15話ぐらい毎日投稿です。
三人称による補完は要りますか?
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欲しい
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要らん
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良いから一人称で突っ走れ