待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!!   作:一人称苦手ぞ。

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年末の騒動。そのに

 

 

 

 

 

 

「げほっ。まったく貴様は……!」

 

 煙たい。背中が痛い。何で後援(さぽぉと)科の工房に来る度、爆発に見舞われて発目を受け止めなければならんのか。咄嗟に被身子と常闇を逃がすことは出来たが、儂の避難は間に合わなかった。念の為に身構えて居たというのにこれじゃ。まったく、この発明狂いと来たら何も反省しとらん……!

 

「いやぁすみません。今年最後のドッ可愛いベイビーがこれまた難産で!」

「じゃからって爆発させるな、たわけっ。危ないじゃろ!?」

「無理ですねぇ! どうにもジェネレーターが安定しないので!」

 

 ちっ。何を言っても反省しそうに無い奴め。日々開発に勤しむのは構わんが、もう少し周囲に配慮出来ぬのかこやつは。と言うか、二度の爆発で怪我をしていないなら早く儂の上から退け。いつまで覆い被さってるんじゃ貴様は。被身子が嫉妬するじゃろ。そしたら大変なのは儂なんじゃからな!? じゃから早く退け、早くっ。儂の腹上に座ってるんじゃない……!

 

「けほっ。煙いたいのです。明ちゃん、早く退いてあげてください。と言うか退いてください」

「おっと。これは失礼しました!」

「廻道、無事か?」

「円花ァ……! 平気カ!? 怪我シテナイ……!?」

「……無事じゃ無事。何とかな」

 

 派手に背中を打ち付けたが、別に問題は無い。制服が少し焦げ臭くなったのと、発目が重かっただけじゃ。儂自身は、幸いにも怪我しとらん。まぁ、工房の中と廊下は大惨事になっとるけど。あれだけの大爆発で、校舎そのものが吹き飛ばなかったのは運が良かったとしか言えん。

 やっとこさ発目が儂の上から退いたので、取り敢えず体を起こす。大爆発を起こした元凶の発明狂いは、挨拶もそこそこに工房の中に戻って行ったわ。まったく、何なんじゃあやつ。好き勝手に振る舞いおって……! お陰で儂は大変なんじゃが!?

 

「あー……、大丈夫? 怪我が無くて良かったよほんとに……」

 

 床から立ち上がると、今度は煤まみれの教師が話し掛けてきた。今日も今日とて、発目に付きっきりで振り回されているようじゃの。不思議と親近感が湧くのは、儂もこやつも振り回される側の人間じゃからか……? 南無。

 

「……苦労してるな、お主。そろそろ何とかしてくれんか?」

「いやもう……、半分諦めてるのが本音」

 

 いや、諦めるな。諦めないでくれ。貴様教師じゃろうが。じゃったら、生徒の馬鹿は何とかして矯正するべきじゃろ。まったく、大人のくせに何と情けない。もう少しこう、どうにかして発目を抑え付けてくれ。でないと、あと何回この工房が爆発するか分からん。

 

「……もぅ。円花ちゃんも煤まみれになっちゃったのです」

「被身子、あやつどうにかならんか? いかんじゃろあれはっ」

「どぅどぅ。どうにかするのは無理じゃないですか? トガと同じで明ちゃんも一直線なので、そこはもう受け止めてあげてください」

「お主だけで手一杯なんじゃけど?」

 

 子供のやりたい事は何でもやらせてやるべきじゃと思っては居るものの、儂にも流石に限度が有る。突発的な爆発だけは勘弁して欲しいところじゃのぅ。何せ危ない。とても危ない。周囲に危害が及ぶことは勿論、発目自身も危険じゃからの。よくもまぁ、今日まで五体満足で居られたな……?

 それから! 儂を振り回すのは被身子だけで良いんじゃ。まったく、どいつもこいつも……!

 

「それで。君が来るのは久しぶりだけど、どうかした?」

「……こやつの、さぽぉとあいてむの発注。発目に頼みたい」

「発目に?」

「そうじゃ、発目に」

 

 ……気乗りはしない。しかし、こればっかりは発目に頼るしか無いじゃろう。今も呪術科の寮に置きっぱなしとなっている呪具作成機を発明したのは、発目なんじゃから。それ故に、常闇の装備を作るのは発目の方が良い。あの作業台がどれだけの性能をしていて、どこまでの代物を作れるのかを正確に把握しているのは開発者しか居ないのじゃから。

 とは言え。とは言えじゃ。まぁ、出来れば。可能で有るならば、なるべく関わりたくない。最低限の関わりを望む。毎度毎度爆発に巻き込まれるのは嫌じゃ。まっこと、勘弁して欲しい。

 

「と言うわけで。さっさと作って貰え常闇。設計図が出来たら、後は儂が作るから」

「承知した。発目さん、俺達専用のサポートアイテムを依頼する」

「無理ですねぇ! 今は手が空きませんので来年来てください! 良いお年を!!」

「は?」

 

 ……盛大に断られたわ。少し解せぬ気もするが、仕方ないか。何やら忙しそうにしておるし、間が悪かったと思って出直すことにしよう。またこの工房に足を運ぶのは嫌じゃけども、今回は諦めるしかない……か?

 

 いや、何とかならんか? 出来れば儂、極力この工房に足を運びたくないんじゃけど?? ここを訪ねる度に爆発に巻き込まれるなんて事態は、二度と御免じゃ……!

 

「……何を作っとるか知らんが、手伝おうか?」

 

 焦げ臭い工房の真ん中。煤けた作業台で何かを夢中になって開発している発目に、ひとつ提案してみるとする。機械の扱いとか知らんけども、何か手伝えることが有るかも知れん。それであやつの発明が順調に進めば、儂にとっても利が有るしの。何が手伝えるかは、知らんけども。

 ……って、おい。おい発目。がちゃがちゃと機械弄りをしてないで、儂の提案に返答せんか。もしかして、聞いてないのか? 或いは聞こえてない……?

 

「おい、発―――」

「じゃあこれに呪力流しといてください! なる早で!」

「ぐえっ!?」

「廻道!?」

 

 何か、得体の知れぬ機材を投げ渡された。これが中々に大きく、重い。受け止めることは出来たが、危うく受け止め損ねるところじゃったわ。危ないじゃろ、たわけ……! やはり嫌いじゃっ、こやつ嫌いじゃ……っ! 何なんじゃもうっ!!

 

 この後。儂は発目の開発に付き合うことになった。何を作ってるのかはまるで教えてくれなかったし、何が出来たのかもさっぱり理解出来なかった。依頼主は根津校長ってことだけは教えて貰えたが、あやつ何を作らせるつもりじゃ?

 

 ちなみに、被身子が持っていた弁当は発目用の物じゃった。なぁ被身子、儂のは? 儂のお弁当は??

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 発目との開発の後、儂と被身子は常闇を工房に置いて実家に帰ることにした。何でも常闇は、これから発目との打ち合わせが一日掛かりになるそうじゃ。儂等が居ても仕方ないからの。焦げ臭い工房からは退散じゃ、退散。向こう暫くは、足を運ばなくて良いじゃろう。……良いよな?

 ところで、被身子。何やら発目から小箱を受け取っていたが、それは何じゃ? 儂の知らないところで、何を発注していたんじゃ貴様は。何じゃか嫌な予感がしたのは、気のせいではない。箱の中身が良からぬ物な気がしてならん。

 じぃっと睨むと、悪どい笑みを浮かべて見詰め返して来た。今答えるつもりは無いようじゃけど、箱の中身がろくでもない物なのは理解した。今は聞きたくないから、後でじっくり聞くとしよう。それよりも、先に相談したい事があるしの。

 

「なぁ、どうすれば母を説得出来ると思う……?」

 

 実家への帰り道。被身子の腕を抱き寄せながら、聞いてみる。

 実のところ、儂は早く復学したい。復学しなければならん。でないと、緑谷が危ないからじゃ。あやつの個性ならば大抵の呪霊は独力でどうにか出来るじゃろうけど、それでも心配してしまう。おおるまいとと任務に当たっているから、余程の事が無い限りは大丈夫なのも分かっては居るが……。それでも、やはり。どうしても、緑谷が気掛かりじゃ。

 今の儂が呪術師をやる資格なんて無いけれど、それでも任務に当たりたい。でないと、儂の知らぬところでまた子供が死ぬかもしれん。それは、どうしても嫌じゃから。

 

「んーー……。そんなに考えなくても、案外あっさり認めてくれると思いますよ?」

「いや、そうはならんじゃろ……」

「そうですかねぇ。今の円花ちゃんなら、直ぐ説得出来ると思うのです」

「……何でじゃ?」

「だって、人を頼ろうとしてるじゃないですか」

 

 ……。……いや、まぁ……。それは、そうなんじゃけども。でも、じゃからってそんな簡単に事が進むとは思えん。確かに常闇を認め、頼るとは決めた。あやつが補助監督として働けるように、今日は気乗りせずとも発目を頼った。結果、色々と話が進んでいるのは事実じゃ。後は総監部に儂から常闇を推薦して、それが認められればあやつは補助監督になれるが……。

 

 でも、何でそれで母を説得出来ると思うんじゃ? むしろ余計に反対されるような気がしてならんのじゃけど?

 

「そりゃ、輪廻ちゃんが反対するのはトガも納得なのです。呪術界はさいてーで、そんなところに我が子を置きたくないって思うのは親として当然ですから」

「……うむ。そうじゃな……」

 

 それは、そうじゃと思う。儂が母の立場じゃったら、絶対に認めんじゃろう。呪術界は、良い世界とは決して言えぬから。……でも、じゃけど。それでも、儂は呪術界に身を置きたい。そういう生き方しか知らんのも有るが、何より……呪いを祓いたい。今を生きる子供達の為に、これから産まれてくる子供達の為に。少しでも、ほんの僅かでも子供達への呪いを減らせたら。そう、思ってしまうんじゃ。今生(いま)前世(むかし)も、そこだけは変わらない。変えられない。

 

「円花ちゃんが今まで通り独りで居ようとするなら、私だって反対ですよぉ。でも、少しずつ頼ろうとしてるので。

 だったら……少しは許してあげるの。もっと誰かを頼れるようになったら、文句無しに許してあげるんですけど」

「……すまん。それは直ぐには、……無理じゃ」

「はい、分かってます。今は変わろうとしてる最中ですし、急かしたりはしません」

「……助かる」

 

 そうやって見守ろうとしてくれるのは、……嬉しい。心強い。これで良いんじゃって、少しでも安心出来る。腑抜けた考えかも知れぬけど、間違ってるかも知れぬけど、でも……。でも、こうして認めて貰えるのは……やはり嬉しいものじゃ。

 

「お主には、また心配させてしまうの」

「まったくです。いい加減にしてくれないと、おこですおこ!」

「んぐむっ」

 

 拗ねた顔で、唇を摘まれた。こればっかりは、一生許して貰えんかもしれん。何なら、恨まれるのかも。結局儂は、被身子を心配させてばかりじゃ。怖がらせてばかりじゃ。全然、約束を守れていない。それでも、被身子は儂の側に居てくれる。儂を支えようとしてくれる。自分勝手な話じゃけども、それが嬉しい。伴侶としては、最低じゃが。

 

 ……儂、恋人としても許嫁としても駄目じゃなぁ……。んんむ……。

 

「でも、そんな駄目駄目なところも愛してます。惚れた弱みですねぇ……」

「んぐんぐ……」

「私のことも、ちゃーんと補助監督として扱ってくださいね。現場に連れてってくださいっ。常闇くんだけ特別扱いなんて、許さないのです!」

「んぐぅ……」

 

 ん、んん……。んんん……。被身子を、補助監督として扱う。現場に連れて行くのは、……嫌じゃなぁ……。幾ら呪力を得たからって、儂の記憶を追体験してるからって、呪霊の前に立たせるのは嫌じゃ。それは余りにも危険じゃから。もしも、万が一、これ以上被身子の身に何か起きてしまったら。

 

 そう考えると、怖い。怖くて堪らない。

 

 ……でも。良い……んじゃよな? 頼ろうとしたって。少しぐらい、今の被身子を……頼っても。どうしても、不安を拭えない。恐怖が消えない。それでも、被身子と少しずつ変わって行くと決めたのは儂じゃ。

 

 じゃったら。怖くても、前に進まなければ。

 

「ちゃんと、私も頼ってください。そしたら、私も一緒に輪廻ちゃんにお願いしてあげるから」

「……ん。分かっ、た……」

「ほんとですか!?」

「……んん。でも、それならお主も力を示してくれ。常闇みたいに」

「むすーーっ」

 

 あ、いかん。余計に拗ねてしまった。これは、いかん。暫く口を聞いてくれないかも知れん……っ。でもでも、じゃって! 儂と現場に出るならば、ある程度の実力を示して貰わないと困る。幾ら被身子でも、そこは譲ってはならん……!

 

「……まぁ、でも。そこは努力します。だから色々、教えてくださいっ!」

「少しずつ……じゃぞ?」

「はい、少しずつ。でも、直ぐ常闇くんは追い越して見せますから! ヨリくんの記憶を全部見れば、きっとあっという間なのです……!」

 

 ……いや、それは狡では……? 確かに儂の記憶を全て追体験すれば、被身子はかなりの呪術師になれるじゃろう。既に帳を降ろせるようになっているし、いずれ反転術式(はんてん)じゃって扱えるようになる。術式や領域については、流石に無理じゃろうけども。それでも、一級呪術師ぐらいには……もしかしたら。

 嫌じゃけどな。被身子を呪術師として扱うなんて。被身子は儂の許嫁で、儂の帰るべき居場所じゃ。それだけは、絶対に変えたくないんじゃ。

 

「んふふ。円花ちゃんっ!」

「ぐぇえっ」

 

 じゃ、じゃからっ。急に抱き付くのは危ないじゃろ!? 危うく押し倒されるところじゃった……!

 

「不束者ですが、末永くお願いします♡」

「……こっちの台詞じゃ。たわけ」

 

 まったくもぅ。まっこと、仕方ない奴なんじゃから。きっと儂は、二度とこやつから離れられないんじゃろう。

 でも、それで良いんじゃ。それこそが、儂が望むところなんじゃからな……!

 

 

 

 

 

 

三人称による補完は要りますか?

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  • 要らん
  • 良いから一人称で突っ走れ
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