待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
久しぶり、……では無いけれど。儂と被身子は実家に帰った。明日はもう、大晦日じゃ。明後日になれば、新年を迎える事になる。今年は、例年と比べたら色々有った。雄英で過ごした今日までの日々は、何かと慌ただしく密度が濃い毎日じゃったと思う。思い返してみれば、散々な目にも遭った。
例えば、呪霊を認識出来る個性を持った者を迎え入れるとか。日本は広いんじゃから、数多居る
残念ながら、都合良く呪霊を認識出来る英雄が居ないんじゃけども。これから先、呪霊を呪具無しで祓える者が出て来ないと総監部は行き詰まりになるじゃろう。儂が現役として活動出来る時間は、どうしても限られてる訳じゃし。人間である以上、老いだけはどうしようもないからの。
儂が老いるより先に、十二分な体制が作れれば良いんじゃけどなぁ。まぁ、遠い未来を今から考えても仕方ないか。今は、儂が出来る事だけをしていけば良い。
じゃから。目下の目標は。
両親を説得して、復学すること……なんじゃけども。この説得が、上手く行く気がしない。話す前から駄目な気がしてならん。それでも、説得しないわけにもいかん。どうにかして、上手く説得出来たら良いんじゃけども……。
「それで円花。話って?」
「んん……」
取り敢えず両親に居間に集まって貰ったわけじゃけど、どうにも切り出せない。たった一言が、何故か出し難い。反対されると分かっているにしても、……こう。何でか、言い難くての。
「……まぁ、その。……儂、復学したいんじゃけど」
これからするのは、真面目な話じゃ。大切な話じゃ。恐らく、反対されるんじゃろう。じゃけども儂は、頼み込もうと思っている。これ以上緑谷に、任務を振りたくないからじゃ。それから、儂独りで全て何とかしようとも思ってない。少し前までの儂なら、何としてでも独りで任務に当たろうとしていたんじゃろうけども。
でも、今は。今は、たった一人だけとは言え……頼ると決めた。近い内に常闇を補助監督とする為に、今日から動き始めた。あやつが儂の任務に付いて来れるようになるのは、少しばかり先の話ではあるが。
「それは、どうしてかな?」
「……これ以上儂が休学していると、緑谷な危ない。今、儂の代わりに任務に出てしまってるから」
「クラスのお友達の為に、復学したいってこと?」
「そうなるの」
有り体に言えば、父の言う通りじゃ。緑谷が心配じゃから、一刻も早く復学したい。あやつに何か起きてしまってからでは、遅過ぎる。おおるまいとが付いているとは言っても、あやつと緑谷だけでは祓えない呪霊が出て来ないとは限らないんじゃ。もしかすると近い内に、……下手をすれば今日、あの二人の身に何か起こってしまうかもしれん。
おおるまいとが怪我をしたり呪われたりする分には良いが、緑谷の身に何か起きるのは駄目じゃ。過保護かもしれんが、警戒しておかなければ。何か起きてしまっては、駄目なんじゃから。
「じゃあお父さんからひとつ聞くけど」
「ん……。何じゃ?」
「お友達を助けた後に、円花はどうするつもり? まさか、前みたいに独りでじゅじゅちゅ……じゅじゅ……」
「呪術師?」
「そうそれ。じゅじゅちゅっ、し……をやるつもり?」
……いや、父よ……。呂律が回ってないんじゃけど? まさか酔っ払ってるわけじゃなかろうな? 何を言いたいのか補佐した母が、盛大に呆れてるではないか。まったく、儂は大事な話をしてると言うのに。お陰で変に気が抜ける。何なんじゃもぅ……。
「……それについては、少し……ずつ、周りを頼ろうと思ってての」
「へぇ……? ふーー……ん?」
ん、んん。今度は何じゃ母よ。
「円花ちゃんは、少しずつ誰かを頼るって決めたのです。だから、これからは独りで呪術師をやろうとはしませんよぉ」
「……そう。まぁ、良いんじゃない? お父さん、復学させちゃう?」
「お父さんは認めません!」
「ぬぐ……。いや父、そこを何とか」
「いいや駄目だね! 認めない!」
「……はぁ、もう。冗談は、止めなさいっ!」
父の頬が、母の手によって盛大に張られた。立派な紅葉が刻まれたおったわ。まったく、何をしてるんじゃこの二人は。被身子まで目を丸くしてるではないか。
「い゛っだぁ゛あ゛!? ちょっ、輪廻……! ガタビンタはしないで!?」
「娘が真面目に話してるのにふざけてるからでしょ、まったく」
「ごめんごめん。だって、言う機会が無いからつい。円花が男の子と結婚したがれば、言えたんだけどぉあっ!?」
また頬を張り飛ばされている。今度は、さっきとは逆の方じゃ。こうして父は、両方に紅葉が刻まれてしまった。いやもぅ、何なんじゃこやつ。こんなのが儂の父じゃなんて、思いたく無いんじゃけど。娘が真剣に話しているのに、巫山戯た態度を取りおって。親としてどうなんじゃ、親として。まったく……!
「……まったくもう。円花、復学して良いわよ。先生方には申し訳ないけど、冬休み中に手続きしとくから」
「輪廻ちゃん、良いんですか……?」
「元々許してあげるって決めてたのよ。円花がどうしても呪術師として生きたいなら、それも許してあげるって私達は決めてたの」
「それが円花が本当にしたい事なら僕達は止めないし、背中を押してあげようってね。
―――ただし! 必ずヒーロー免許も取ること! それから独りで何とかしようとするんじゃなくて、誰かをちゃんと頼ること! 被身子ちゃんを泣かせないこと! この三つは守ってもらうからねっ!?」
「―――」
……。……驚いた。じゃって、儂は反対しかされないと思っていたから。母は元々、儂が呪術師をするのは反対していた。父はまぁ、母の尻に敷かれてるような奴じゃからてっきり母の味方かと。こうもあっさりと許されてしまうと、それはそれで拍子抜けじゃ。
でも、ありがたいと思う。こうして許して貰えることを、嬉しく思う。父から条件を提示されはしたんじゃけど、それはしっかり守る。
「それと、お母さんからもうひとつ。呪術師としてだけでなく、ヒーローとしても誰かを救けなさい。出来る筈でしょ、円花なら」
「ん、んん……。相分かった……」
「……なら、良しとしてあげる。それと、ナガンさんにはしっかり謝りなさいよ? 振り回しちゃったんだから」
「ぅ、うむ。そうしよう」
……うぅむ。母からの条件は、難しいように思える。じゃって、
ん、んん。ああいう連中に儂がなるのは、何と言うか嫌じゃなぁ……。
「んふふ。許して貰えて良かったですね、ヨリくん」
「……それは、そうじゃけどぉ……」
抱き付いて来た被身子を受け止めつつ、どうしたものかと考える。
……こうなったら、いっそ常闇に聞いてみるとするか。そしたら何か教えて貰えるじゃろ。盛大に呆れられるような気がしてならんけど。
「大丈夫ですよぉ。だって円花ちゃんは、とっくにトガのヒーローですから!」
そうじゃったら、良いんじゃけども。たまには素直に受け取ってみようかの。じゃって、被身子が笑ってるんじゃもん。儂にとっては、それが何より大切な事じゃからの。
◆
「と、言うわけで。見ても良いですか? 良いですよねっ」
……何を?
母と父に復学の許可を貰った後。部屋に戻るなり被身子が高らかに宣言した。見るって、何をじゃ? 何を見たいんじゃ貴様は。っておい、そそくさと布団を敷くな。寝転んで掛け布団を被るな。儂を引き込むんじゃない……!
何なんじゃもぅ。まだ寝るには早過ぎるじゃろうて。昼寝をするにしても、早いと思う。怠惰な一日を過ごすのは嫌とは言わんけど、急に抱き枕扱いされるのは何か違う気がしてならん。こらこら、抱き締めるのは良いが服の中に手を入れるな。せくはらじゃぞ、せくはら。被身子のへんたいっ。
「もぅ、分かってない顔しちゃって。見ると言ったら、今はヨリくんの記憶しかないのです!」
「駄目とは言わんけど、急にどうしたんじゃ……?」
「だってぇ。ここ数日の円花ちゃんはしょんぼりしちゃってて、だから元気になってからじゃないと見ない方が良いかなって……」
「……今じゃって、気が沈んでないわけじゃないんじゃぞ」
被身子を呪ってしまった事実を考えると、やはりどうしても気が沈む。自責と後悔に飲み込まれそうになって、息が詰まる。それでも、いつまでも気を沈めてるわけにはいかんから、……何とか前を向くようにしただけじゃ。有るかも分からない希望に、まだ縋ってるのも事実で。
……それから。呪っておきながら勝手な話じゃけど、儂は被身子の側を離れたくない。どうしたって被身子が愛しくて、離れられない。じゃから、被身子に許可を貰ったわけで。
必ず、必ず元通りにする。その為の方法を、儂は探し続けなければ。でないと、許せない。こんな儂のままじゃ、被身子と添い遂げるなんて許されない。
……待たせることにはなってしまうけれど。もしかしたら、一生掛かるのかもしれないけど。それでも被身子を元通りにすると、誓ったんじゃ。
「でも、前向きになって……また私をちゃんと見てくれてるじゃないですか」
「それは、そうじゃけど……」
結局、好きで好きで堪らないからつい目で追ってる……のも事実じゃ。あと、気を沈めてばかりで被身子を構わないで居ると、それはそれで大変じゃし。
「ん……っ、こら……!」
服の中に滑り込ませた手を動かすんじゃない。直に背中を撫で回そうとするな。儂の顔に胸を押し付けるなっ。昼間から何をしようとしてるんじゃ貴様は……! 幾ら冬休みじゃからって、何もこんな時間にしなくても……!
「んふふ。円花ちゃんの記憶を見る前にぃ、いーっぱいしましょう? 今日はもう、ずっとしちゃいましょう!」
「ぇ、えぇ……?」
いや、まぁ……。嬉しくないと言ったら、それは嘘じゃけども。被身子と体を重ね合わせるのは、好きじゃけども。でも、じゃからってこんな急に求められてもじゃな……? それはそれで儂の気持ちが追い付かないと言うか、何と言うか……。
……っ、こ、こら……! 尻を撫でるな!
「トガからしたら、八年はお預けなんですよ? 出来るなら冬休み中に全部見ちゃいたいですし。
だから、ねっ? 今の内に、たーーっぷり堪能しちゃわないと……!」
「……へんたい。すけべ、被身子のえっち」
……ま、まぁ……。そういう、こと……なら?
確かに儂の記憶を見るとなると、被身子の体感ではかなりの時間、儂と離れ離れじゃ。儂の記憶を体験するのに、儂と離れ離れとはこれ如何に。
「……ぁ……っ」
太腿の間に、被身子の膝が差し込まれた。背中やら尻やらを撫でる両手が、すっかり無遠慮じゃ。まったく、こやつと来たら。直ぐそうやって儂を抱こうとするんじゃから。
「滅茶苦茶にしちゃうのです♡ それとぉ、私も滅茶苦茶にしてくださいっ♡」
なんて事を高らかに宣うんじゃ貴様は。このまま、されっぱなしにされるのは癪じゃの。じゃからここは、主導権は儂が取る……!
「ちゃんと滅茶苦茶にしてくれなきゃ、やじゃからな?」
「―――」
あ、いかん。言葉を間違え―――!
三人称による補完は要りますか?
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欲しい
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要らん
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良いから一人称で突っ走れ