待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!!   作:一人称苦手ぞ。

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日記:心壊

 

 

 

 

 

 

 西暦2818年12月31日。夕方、天気は晴れ? 曇りかも? 外を見てないので分かりません!

 

 おはようございます。いずれ廻道被身子になる、今はまだ渡我な被身子です。今日から、ヨリくんの記憶を日記にしちゃおうと思います。後で読み返して、思い出せるように。こっちのノートは、大まかに書きます。もうひとつのノートには詳しく書きます。こんな事が有ったんだよって、ヨリくんに教えられるように。ヨリくんが、ちゃんと思い出せるように。

 今回は、と言うか今回も。八年分、ヨリくんの記憶を追体験してきました。八歳から十六歳までの記憶になります。小学生が高校生になったぐらいの年月分ですね。

 

 今回の追体験で知れたのは、まず最初にヨリくんが何で笑いながら戦うようになったのか……ですね。これは八歳から九歳までの間に知りました。

 

 次に、ヨリくんの心の事。これには、……頼人くんと比奈ちゃんの最期が関わってます。正直、私もおかしくなりそうでした。思い出したくないぐらいです。でも、そのお蔭で納得出来ました。ヨリくんが、円花ちゃんが何であんなに子供っぽいのかってことを。これは詳しく、後で書きます。十四歳の時のことです。

 

 最後に、十四歳から十六歳の事。この二年は、見るに堪えない時期でした。自暴自棄になってて、何にでも噛み付く狂犬でしたね。あんなの、ほぼほぼ爆豪くんです。でも、冷静になれる出来事が有りました。考え得る限り、最低な形でしたけど。

 

 それじゃあ、この三つを順番に書いていきましょう。最初は、何で笑顔で戦うようになったのかです。

 

 

 ヨリくんは、元々戦うことが嫌いでした。戦う為に鍛錬するのも嫌いで、呪霊も怖いものだと思ってて。でも、素質は元から有ったんだと思います。後から気付いたんですけど、辛い時程笑って挑んでました。鍛錬の時も、呪霊の時も。困難に対して、最後は笑う子だったんです。本人は、まるで自覚してなかったみたいですけど。

 ヨリくんの笑顔を最初に指摘したのは、比奈ちゃんでした。頼倫……つまりお父さんと殺し合った後のことで。原因は、ヨリくんが人を殺し過ぎたが故に加茂家から追い出されそうになったから……ですね。これについては、ちょっと擁護してあげられません。殺してしまうことが正しいと思ってしまって、少しでも子供を虐げる大人が居たら殺しちゃってましたから。

 

 それで、まぁ。暴走し続けてるヨリくんは、俺が勝ったら加茂家当主の座を寄越せって頼倫……さんに挑みました。結果は、負けです。流石に呪術師としての年季が違くて、当時九歳のヨリくんじゃ勝ち目が無い戦いでした。

 

 ろくでなしの父親に負けて、死にそうになって。それで比奈ちゃんに治療されてる時に「殺し合いを楽しまないで」と言われて、トガは気付きました。まぁヨリくんは、死にかけてましたから聞こえてても覚えてない……みたいでしたけど。あの時はすっごく痛くて、無力感も酷くって、かなりしんどかったです。

 

 ある時。……そう、ある時。力を振るうことや、力を得ることが楽しいと強烈に自覚した時がありました。加茂家を追い出されて、一年もしない内の出来事でした。その時、自分一人でも生きて行けると盛大に誤認したような気がします。家を出て直ぐに迷子になって、危うく行き倒れそうになってたくせにですよ? ほんともぅ、生粋のポンコツなのです! ポンコツは死んでも直らないんですねぇ……。

 

 

 ……それで、ええっと……。次は、んん……。

 

 

 これは、私も思い出したくない……です。ヨリくんに、円花ちゃんに思い出して欲しくないって思ってます。だから、書かなくても良いかなぁって思うんですけど……。一応、その。頑張って書き残しておこうかなって。

 

 まず、前提として。ヨリくんが生まれ持った術式は、うっすらと家族を知覚出来ます。どんなに遠く離れてても、何となく家族は元気なんだなって……分かる感じです。その前提の上で、この先は読んでください。

 

 

 ヨリくんは加茂家を追い出されてから十四歳になるまで、家の外で生きてました。時に道行く商人のお世話になったり、時に心優しい村人にお世話になったり。でも、相手が大人だから何も信用してませんでした。行き倒れなかったのは、ほんとに何かの奇跡です。あ、それとこの四年間の内に、反転術式を会得してました。家を追い出されて、三年ぐらい立った時に死にかけて、その時に呪力の核心を掴んだので。

 それで、ですね。十四歳になる頃、頼人くんも比奈ちゃんを迎えに行こうと里帰りしたんです。二人との約束でしたから。……でも、その途中で。ヨリくんは、二人に大きな異変が有ったことを術式で知りました。それは明確に嫌な予感で、心臓を鷲掴みにされたかのような苦しささえ有りました。だからとにかく、急いで加茂家に向かったんです。……でも。

 

 間に合い、ませんでした。最初から、間に合う筈がなかったんです。だって、ヨリくんが感じた家族の異変は……どうしたって変えられないものでしたから。

 加茂家に帰ったヨリくんは、頼人くんと比奈ちゃんを探しました。家の何処にも見当たらなくって。たまたま見掛けた使用人をとっ捕まえて、無理矢理にでも聞き出そうとして。

 

 そして、知りました。ヨリくんが帰って来る一ヶ月前に、二人が呪霊に殺されたって。遺品となるものは、何一つ残らなかったって。そうなったのは、頼倫の仕業だって。

 

 ……その時、その瞬間に。何かが、壊れる音がしました。幻聴ではなかったと思います。あれはきっと、ヨリくんの心が壊れた音です。

 

 ヨリくんの心は、そこで壊れました。ここからはまだ推測ですけど、多分ヨリくんはもう……精神的に成長しないんだと思います。だからずっと、子供っぽいのかなって。

 十四歳は、当時では大人でも現代じゃ子供です。きっとヨリくんの心は、……子供のまま止まっちゃったんです。そして、世界を恨みました。呪術界の全てを、子供を虐げる大人達全員を、何より……家族を守れなかった自分自身を。

 

 守りたかった頼人くんと比奈ちゃんが居なくなって、ヨリくんはより一層……子供を救けることに固執しました。信じてました、縋ってました。いつか、子供が虐げられない世界がやって来るって。そう信じて、殺し続けました。呪詛師も呪霊も、時には……非術師も。

 

 殺して殺して、殺し続けて。それ以外には、何一つ目を向けなくって。ずっと独りで、彷徨い続けて。

 

 十六歳の時。周囲に噛み付くことしか出来なくなってたヨリくんは、一つの村を滅ぼしました。その村は、定期的に子供を呪霊に食べさせることで……繁栄と豊作を得ようとしたんです。呪霊を神様と勘違いしてた、最悪のパターンなのです。

 もちろん、ヨリくんは子供を救けました。呪霊も村の大人も皆殺しにして。でも、救けられた子供達は……ヨリくんの目の前で自殺しました。何でそうなったのかは、子供達にとって親が全てだったから……だと思います。正直、トガも分かってないのです。だって、救けられたなら死にたいなんて思わないじゃないですか。私は思いませんでした。むしろ、幸せに生きたいって思ったぐらいで。

 

 ……救けた子供に自殺されちゃって、その時ヨリくんは……やっと冷静になれました。正確には、自殺された事がショックで……塞ぎ込んで。結構長い時間、引き摺っちゃって。それでも、虐げられる子供を見付けたら何が何でも救けようとして。

 

 あぁ、もう。色々思い出して日記にしてたら、円花ちゃんを抱き締めたくなってきました。隣でうたた寝してますけど、遠慮はしません! 色々と我慢の限界なので!! 今日の日記はここまでにします!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 明けましておめでとうございます。現実では年が明けました。

 

 西暦2819年1月1日。夜です、天気は……雨。

 

 昨晩は沢山ヨリくんとイチャイチャしました。だって八年ぶりでしたから。それでその後、二人ですやすやして私はもう一度ヨリくんの記憶を体験して来ました。ついつい自分が誰なのか忘れそうになりましたが、大丈夫です。

 私は渡我です。渡我被身子。円花ちゃんの事が大好きで愛してる、世界で一番笑顔が可愛い女の子! 将来は円花ちゃんのお嫁さんになって、廻道被身子として幸せに生きるの!

 

 今日見た記憶は、数え歳でヨリくんが十六歳から二十四歳までの分です。

 

 この八年間は、毎日が似たような日々でした。迷子になりながら色んな村や街を渡り歩いて、時に行き倒れたり死にかけたりしながら、呪術師として活動してました。最優先は子供の命です。

 でも、明確に変わった事もあります。その内のひとつが、反転術式の向上です。正確には、呪力効率の向上ですかね? ちなみにですが、寝起きに円花ちゃんを襲いながら私も試してみたら出来ました。コツは、ひゅーっとやってひょいです。ひゅー、ひょい。でもこれ、すっごく難しいのです。結構意識を集中させないと使えなくって、これを毎日起きてる間は無意識で使ってるんですから円花ちゃんは凄いです。流石、私のお嫁さん! それと、私の才能に嫉妬したみたいです。カァイイ♡

 

 あ、それと。ヨリくんは反転術式に縛りを設けてます。どんな縛りなのか詳しく書くと『術式順転と反転術式を併用しない』です。これは呪術のキレを良くする為……ですね。術式使用までの時間と、反転術式を使用するまでの時間が物凄く早くなりました。切り替えもスムーズなのです。

 デメリットは、戦ってる最中に反転術式を使う際に術式を中断しなきゃいけないってことです。それは明確に隙を晒すってことなんですけど、多分このデメリットは踏み倒してます。だって、切り替えが早過ぎて隙なんて無いですよ。少なくともトガはそう思います。

 多分この縛り、今も続けてますよね? 後で聞いてみるとします。今の円花ちゃんは、疲れ切って寝ちゃってるので。寝顔がカァイイのです♡

 

 ところで、その。今回の八年間で、気持ち悪い人に会いました。いやもう、あれはキショいです。何でも天元さんのお友達みたいで、名前は……羂索。この字であってますよね? おでこに傷跡がある、キショい人でした。この人と接しちゃいけないって、出会った瞬間理解しちゃうぐらいには。差別的なことはしたくないんですけど、流石にあの人は駄目です。NGです。

 

 それ以外に特に記憶に残ったのは、ふたつですね。

 

 まず、ひとつめ。ヨリくん、本当に毒キノコを食べてました。反転術式を会得した後、反転術式による解毒を早める為です。このお陰で、山の中を歩いていれば飢え死にすることはなくなりました。でも、幾ら大丈夫だからって毒を自ら摂取するのはどうかと思います。……なんて書くのをちょっと躊躇っちゃうぐらい、すっごく美味しいかったです。旨味成分の塊と言うか、もはや爆弾と言うべきか……。今度、解毒済みの毒キノコを買ってこようかなって思います。ちょっとハマっちゃいました。

 

 それで、もうひとつ大事な事が有りました。呪霊を祓ったり呪詛師を殺したりしている内に、ヨリくんに近付いてくる人達が居たんです。今の時代で言う、呪術総監部に当たる方々ですね。ヨリくんの活躍……と言うか悪名が轟いてしまって、最初は呪詛師扱いでした。でも、後でちゃんと呪術師として扱って貰えるようになりましたね。

 凄く気前の良い人が居たんです。名前は、蘆屋さんです。あ、その人が彌虚葛籠を教えてくれました。ヨリくんは結界術が下手っぴなので、それなりに時間が掛かりましたけど。

 

 それで、えっと。とにかく、蘆屋さんが各方面に交渉してくれて、ヨリくんは呪術師デビューです。それからは呪霊討伐や呪詛師討伐なんかを依頼されたりして、路銀に困ることは無くなりました。まぁ結局、とんでもない方向音痴なのでちょくちょく行き倒れそうになってたんですけど。

 

 今回の八年は、ひたすら研鑽と人助けの日々でした。間に合わなかった時もあります。救けたのに、恨まれちゃった時もあります。でも、それでも。

 

 ヨリくんは、呪術師として頑張り続けてました。壊れた心が、擦り減っちゃうぐらいに。

 

 ……現実を、見るようになったんです。救けられるのは、この手が届く範囲だけって。それでも、全ての子供達が虐げられない世界がどうしても欲しくて。だからヨリくんは、止まれなくって。とことん意地を張り続けてました。ほんとにもう、呆れるぐらい頑固です。昔も今も、そこは全然変わらなくって。

 

 でも。そんなところも愛してます。良いところも悪いところも、ぜーんぶ愛しいの。

 

 

 大事なところは書けた気がするので、また円花ちゃんを抱きたいと思います! 今夜も、思う存分滅茶苦茶にしちゃうのです!!

 

 

 

 

 

 

 







頼皆の話は全て書こうとするとそれだけで此処までの話数と変わらなくなる気がするので、日記って形でダイジェストになります。呪術本編の八百年後の世界をヒロアカ世界としています。

三人称による補完は要りますか?

  • 欲しい
  • 要らん
  • 良いから一人称で突っ走れ
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