待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!!   作:一人称苦手ぞ。

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発明問題児。

 

 

 

 

 

 発目明。後援(さぽおと)科の生徒にて、問題児。なんでも、毎日毎日工房に入り浸ってあらゆる道具(あいてむ)を作り続けてばかりだとか、何とか。そんなこやつはしょっちゅう爆発を繰り返し、工房の主のぱわあろおだあ先生の手を焼いているそうじゃ。

 儂の舎弟を超える問題児は居ないと思っておったんじゃけど、世の中広いの。もしかするとこの女子(おなご)、小僧よりも問題児かもしれん。いや、役立つ物の発明を日々熱心に開発しておると考えたら小僧程ではないか。

 

 そんな発目明。游雲解析に一枚噛んでおったわ。何でも呪力と言う未知なるえねるぎい()に興味が有るようで、強引に解析に参加したらしいの。将来的に呪力を使った道具を作りたいとか息巻いておるが、そもそも呪具作成の前提である呪力がじゃな……。まぁ、こやつの手綱を引くのは儂じゃない。どうも被身子と似た部分があるような気がするが、放っておこう。好きにさせたら良い。どうせ被身子と同じで言っても聞かんじゃろうし。苦労するのぅ、ぱわあろおだあ先生。

 

「それで、パワーローダーさん。解析の方は?」

「うーん。まず驚いたのが、このアイテム……と言うよりは武器。平安時代に作成されてるね」

「平安? 冗談でしょう?」

「いや、事実。これが作成されたのは千八百年以上は前。なのに材質の劣化がこれっぽっちも無い。表面の塗装は剥げてるけど、中身は新品同然。

 どうも、何か見えない力に守られてるか見えない力を発しているか。こんな物が世の中に有るとはなぁ……」

 

 まぁ、相澤が信じられぬのも無理はない。儂だって游雲を見付けた時は驚いた。流石に時間が経ち過ぎているからの。幾らなんでも原型は留めていないようじゃけど、それでもまだまだ呪具として機能する筈じゃ。

 ……それにしても。この天幕の中はろくな足場が無いのぅ。床にはよく分からない物が散乱しておるし、そんな中で発目は何かを夢中になって作っておるし。被身子はさっきから儂を後ろから抱き締めて離さん。ずっと発目を睨んでおる。しばらくは嫉妬したままじゃろうなぁ。

 

「ところで、おひとつ質問があるのですが!」

「何じゃ?」

「呪力とは何でしょう!? どうやってこのエネルギーを!? あちらのアイテムのように物質に込めるには!?」

「……」

 

 また呪力が何か説明しなければならんのか? もうこれで何度目になるんじゃ。そろそろ勝手に共有しておいて欲しいんじゃが?

 仕方ない。また一から話すとするか……。じゃから発目よ、話すから近寄るな。迫るな。目を輝かせてこっちに来るな。これ以上被身子を嫉妬させてどうするつもりなんじゃ貴様。勘弁してくれ。

 

「呪力と言うのはな。人の負の感情を火種にして……」

「あ、それは知ってます。そうではなく、私が聞きたいのはですね。呪力がどのような挙動をしてどのような性質を持ちどのように増幅しどのように―――」

 

 ……何て? おい、捲し立てるな。それ以上迫るな。さっきから被身子の腕に力が込もって息苦しいんじゃ。儂が知る範囲で説明するから、一度落ち着いて距離を……。

 

「私の許嫁です! あげません!!」

 

 貴様も落ち着かんか。おい被身子。別に盗られやしないから、警戒するでない。ああもう、仕方のない奴じゃなっっ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

「なるほどなるほど。であれば、まずはこちらの測定機に呪力を流し込んで貰えませんか? 私のドッ可愛いベイビーに呪力が合わされば更に優れたベイビーが―――」

 

 ……話が長い。途中からついて行けなくなったわ。後援(さぽおと)科の生徒は全員こんな感じなのか? だとすると、近付きたくないのぅ。もうさっきから被身子が大変なんじゃ。これ以上嫉妬したら何をしでかすかまるで分からん。まさか人前で儂を辱しめようとはしない筈じゃが、こやつの事じゃ。何をしでかすか分からん。さっきから冷や汗が止まらん。誰か助けてくれ。おい担任、ぱわあろおだあ先生と話し合ってる場合ではない。儂の警護をせんか儂の。生徒の危機じゃぞ貴様。儂の貞操の危機じゃ。いや、もうとっくに貞操など無いが。そんな物はとっくの昔に奪われてしもうたわ。

 

「―――ではどうぞこちらに呪力を! どの程度呪力をチャージ出来るか分からないので、いっそありったけの呪力を!!」

(まこと)に? 壊れても知らんぞ?」

「その時はその時です! また一から設計し直します!!」

 

 猛烈な勢いで目の前に置かれたのは、何だかよく分からない機械じゃ。凹凸が激しい上に、幾つも棒が突き刺さっておる。何の為の機械かさっぱり分からぬなこれ。

 で、この謎の物体に呪力をありったけ注ぎ込む? いや、呪具警護の都合上全ての呪力を使い切るわけにはいかん。

 ……取り敢えず、三分の一……いや四、ではなく五分の一程にしておくか。また爆発したら大変じゃ。真後ろに宿儺面になってそうな被身子が居るしの……。

 

 よし。

 

 掴みやすそうな棒を掴み、呪力を流し込む。器が壊れないよう、少しずつ慎重に。

 おい被身子。首に顔を埋めるな。口付けをするな、くすぐったいじゃろ。少し集中させんか貴様。

 

「お、おお……これは……! みるみる内に性能が上がって、上がっ……あ」

「おい、これは駄目じゃと思うんじゃが?」

 

 何か、ばちばち言っておるの。青い光が迸っておる。眩しい。何か熱い気がする。何なら空間が歪んでいるように見えて……。

 おいおいおい。これは駄目じゃろ。絶対にいかんやつじゃろこれ。いかん、被身子っっ!!!

 

 

 

 

 この後。工房は大爆発しおった。天幕すら吹き飛ぶ程の大爆発じゃ。游雲が無事だったことと、人的被害が奇跡的にも零じゃった事が救いじゃな……。隣の寮は、壁が焦げてしもうたが。

 

 儂、もう二度と発目の発明品に呪力は流し込まん。いちいち爆発されたら大変なんじゃ。焦げ臭いし、危ないし。今後は絶対に協力せんからな貴様。分かっておるのか小娘。だから何かが出来る度に、どっ可愛いべいびーとやらを寮に持ってくるな。置いていくなっ。ここは倉庫じゃないんじゃぞ貴様。

 

 おい、おいって。被身子、この小娘を何とかしろ! ああもう、いちいち嫉妬するな! 儂は身も心も貴様のものじゃと何度言えば分かるんじゃ!!

 

 

 

 

 






話が全く進んでいませんが安心してください。ひとつ解決作見付けました。次回でやります。だからって発目ちゃんでも駄目だったなんて展開にはしません。彼女には暴れて貰います。

しかし何で気付かなかったか自分でも謎でしたわ。勘の良い読者ならとっくにお気付きになっていたことでしょう。

三人称による補完は要りますか?

  • 欲しい
  • 要らん
  • 良いから一人称で突っ走れ

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