待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!!   作:一人称苦手ぞ。

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日記:隆之

 

 

 

 

 

 

 西暦2819年1月4日。ぎりぎり4日です。円花ちゃんを堪能してたら、こんな時間ですねぇ。カァイイのがいけないんです、カァイイのが。今日は趣向を変えて、思いっきり辱めたら私も円花ちゃんも堪らなく興奮しちゃって。円花ちゃんて、逃げられない状態で滅茶苦茶にされるとすっごく興奮するんですよねぇ。立派なネコなのです。カァイイねぇ、カァイイ……♡

 

 明日もまた、滅茶苦茶にしちゃおうと思ってます。

 

 今日は、四十歳から四十八歳の分です。

 もうそろそろヨリくんの記憶を体験し終えるのかなって思うと、ちょっと勿体無い気がしますけど。あ、のじゃのじゃ言うようになったのは四十五歳になった辺りからですからね。旅の途中で出会った三歳ぐらいの子に、じいじと呼ばれてからです。完全にその場のノリだったんですけど、なんか気に入っちゃったみたいで。それ以来、のじゃのじゃ口調です。一年も経つと、すっかり抜けなくなってましたね。ヨリくんてほんと、可愛い人ですよねぇ……。出来れば、生きてる内に一度は会いたかったです。叶わぬ夢ですけど。

 

 村を出て、一年経った頃。椿くんが殺されました。ヨリくんの目から少し離れるタイミングがあって、……その時非術師の大人と揉めちゃって。それで、運悪く。ヨリくんは、その非術師を直ぐに見つけて殺しました。死体が原型を留めないぐらいグチャグチャに。流石にやり過ぎでした。そんなだから赤鬼とか加茂の鬼とか、変な呼び名が広まっちゃうんですよ。……仕方ないとは思ってますけど、ちょっとやり過ぎなのです。

 

 椿くんは、手先が器用な子でした。物静かな子だけど、すっごく頑なで。線が細くてちょっと女の子っぽい感じで可愛かったです。でも、この子もヨリくんみたいに子供を救けようとして……。結局……。

 

 あと何回、ヨリくんは心を許した人を失えば良いんですか? これから、何度失ってしまうんですか?

 

 こんな経験をしてばかりいたら、幸せなんて信じられなくなって当然なのです。だからこそ私は、何が何でも死にません。私も円花ちゃんも皺だらけなお婆ちゃんになっても、ぜったいぜったい円花ちゃんより先には死にませんから。だってそうじゃないと、また幸せを失っちゃうので。

 

 だから私は、長生きします! 目標は、百歳オーバーとします! まぁ出来れば、最期は一緒に死にたいですけどっ。

 

 

 ……今回の八年間は、と言うか今回の八年間も。ヨリくんは失ってばかりです。その度に独りになって。だけど、独りになる度に誰かが付き人になって。

 ほんと、子供のわがままに弱いんですよね。どんなに嫌がっても、最後は結局流されちゃって。一番可哀想だったのは、六人目の鏡子ちゃんです。今までの付き人の中で一番の年長者で、わがままな子でした。でもヨリくんは、一切鏡子ちゃんに話掛けなくって。意思の疎通は殆どしてませんでした。と言うか、避けてました。何とかして遠ざけようとしましたけど、それでも離れなかったんです。

 だって鏡子ちゃん、明らかにヨリくんが好きでしたから。異性として、好きでした。猛烈アピールしてましたけど、ヨリくんはずっと塩対応でしたね。ノンデリカシーだったのです。恋する乙女としては、この時のヨリくんはさいてーと言わざるを得ません。無理です、擁護。

 

 でも。鏡子ちゃんはめげずに頑張り続けて、やっとヨリくんがコミュニケーションを取るようになりました。……でもその翌日に、ヨリくんを呪霊から庇って亡くなりました。

 

 やっとヨリくんが心を開いてくれたのに。やっと、心を開いても良いとヨリくんが思ったのに。それなのに、目の前で。

 

 もう、ヨリくんは限界でした。鏡子ちゃんが亡くなった後、ヨリくんは独りで過ごしました。子供を救けても深くは関わらず、冷たく突き放すようになって。何でもっと上手くやれなかったのかと、後悔の波に呑み込まれて。

 

 ヨリくんは、失ってばかりです。だからこそ、強く思っちゃうの。

 

 私は、間違えてたんじゃないかって。ヨリくんの、円花ちゃんの幸せの為に頑張ってたのが……間違いだったんじゃないかって。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 西暦2819年1月5日。と言うか、6日。気が付いたら、日付が変わってました。寝てる間はヨリくんの記憶を体験して、起きたら円花ちゃんを堪能して。そんな生活をずっとしてるから、流石にいい加減……人として駄目になってきました。冬休みは後三日しかないんですよねぇ。……まぁ、円花ちゃんが復学するのはもう少し先になりそうなので、その間に全部の記憶を体験出来るとは思うんですけど。それに私は円花ちゃんが復学するまでは公欠扱いなので、冬休みの残り日数なんて気にしなくて良いんですけどっ。

 

 今日は、四十八歳から五十六歳の記憶です。後三年、後一回って思うと……なんだかもったいない気がします。産まれ直してからの記憶も体験したいです。二日分しかないでしょうけど。

 

 七人目と八人目の付き人は、双子の男の子でした。五十歳の時です。琥一くんと、流次くんです。山奥で暮らしてるのを見付けて、野盗に襲われてるところを救けた形で保護しました。もう誰かと一緒に居たくないヨリくんは冷たく突き放そうとしましたが、二人が恩返ししたいとしつこく付いて来たので、結局は押し切られてました。

 ……ほんともう、子供に甘々なのです。駄目だ駄目だって思っていながらも、ついつい甘やかしてしまうんですよね。ヨリくんのそういうところ、大好きです。ずっとずっと子供を甘やかして、大事にし過ぎちゃうの。……頼人くんと比奈ちゃんの代わりを、無意識に探しちゃってるのかなって思わなくもないですけど。

 

 でも。そんなヨリくんが、円花ちゃんが居てくれたから私は今が幸せなのです。これからも、幸せに過ごせるの。

 

 ……だけど。んん……。

 

 少し、考え直さなきゃいけないのかなって。私の思う幸せと、ヨリくんが思う幸せは絶対に違くて。その辺りの擦り合せをしなきゃいけない気がするんです。ヨリくんは優しいから、私が一方的に伝えたらそれを黙って受け取っちゃうので。

 

 ヨリくんにとっての、円花ちゃんにとっての幸せを聞き出すのは骨が折れそうですけど。絶対、恥ずかしがって話してくれなそう。ちゃんと聞き出しますけど!

 

 

 ……続きです。琥一くんと流次くんは、それぞれ分担しながらヨリくんのお世話をしてました。道案内と必需品の調達は流次くん。料理とか洗濯は琥一くんの担当でした。まぁ、時々役割を入れ替えてたから結局二人仲良く全部やってたんですけど。徘徊呆け老人扱いされてるヨリくんは、不服そうに全部任せてましたね。

 

 それと、二人共ちょっと悪戯好きで。時折、頼人くんと比奈ちゃんを思い出しそうになることが有りました。その度にヨリくんは、二人から目を背けて胸を痛めてました。

 

 鏡子ちゃんの事があったから、鏡子ちゃんよりは二人に接してました。悪戯してくる二人に、少し癒されてた部分もあったと思います。同時に自己嫌悪にも陥ってましたけど。

 子供が虐げられない世界を欲して、だけどそれが夢や幻に過ぎないってヨリくんは気付いてるから。夢を抱えたまま、現実に思い知らされてて。心が壊れて擦り切れても、届かない理想に手を伸ばし続けて。

 

 ヨリくんの夢を、琥一くんと流次くんは手伝いおうとしてたんです。でも、上手く行かなくって。夢を叶えるのは、簡単じゃないですよね。ヨリくんの夢は特に、難しいことですから。……実現するのは、正直現実的じゃないのです。

 

 

 ある日、二人は呪術師として別々の任務に付くことになりました。勝手に総監部と接触して任務を決めて来た二人に、ヨリくんは猛反対しました。そりゃあもう、盛大に大喧嘩になりました。どちらも譲らなかったので。

 

 結局最後は、ヨリくんの望みが無理矢理通されました。でも二人はそれに納得しなくって。また何度も勝手に任務を受けて。

 役に立ちたかったんです。自分達を救けてくれたヨリくんに、少しでも恩返ししたかったんです。それで、結局。後は、いつもの通り……です。

 

 琥一くんと流次くんは、任務の最中で亡くなりました。身の丈に合わない任務から、帰って来れなくって。

 

 

 それからのヨリくんは、もう誰とも関わろうとしませんでした。特に子供とは距離をおいて、大人とも距離をおいて。

 誰にも関わらず、それでも呪術師としては活動してました。呪霊の噂を聞く度に、何処かへ駆け付けて。呪詛師の噂を聞いても、何処かへ駆け付けて。元々全国を迷い歩いてましたけど、増々迷うようになったのです。また毒キノコ生活ですよ? それは美味しいからまだマシな方で、酷い時には動物の腐肉です。流石に勘弁して欲しかったですねぇ……。幾ら反転術式が有るからって、ちゃんとしたご飯を食べて欲しいのです。……まぁ、猪とか熊の生肉は意外と悪くなかったですけど。腐肉と比べたら全然マシです。マシってだけで、決して美味しいものでは無いです。ちゃんと調理して食べましょう。

 

 

 五十三歳になる直前。ヨリくんは、隆之くんと出会いました。あの隆之くんです。多分、付き人の中で一番ヨリくんの為に動いてくれた人。未来を見越して、手紙と呪具と、救けた命を現代まで繋いだ人。……それと、私じゃ敵わないかもしれない人です。

 

 隆之くんとの日々は、もしかすると一番愉快だったかもしれません。毎日が騒々しくなっちゃって、そんな日々に居たヨリくんは日々ポンコツ度合いが増して。実は結構、相性が良いんですよね。もっと早くから隆之くんと出会えて居たら、もしかしたらヨリくんは……多くを失わずに済んだのかもしれません。歳の差は有っても、二人は親友でした。悪友だったかもしれませんけど。

 

 あ、そうそう。隆之くんとの騒々しい日々の中で、ヨリくんは五条家の当主に会いに行く羽目になりました。当時の五条家は、まだ出来て間もない感じでバタバタしてたのです。そんな時に元・加茂の呪術師、それも……どちらかと言えば悪名が付いて回ってるヨリくんが会いに行ったものですから、色々大変でしたねぇ。危うく殺し合いが勃発するところでしたもん。

 でも、隆之くんが上手く取り持ってくれたので。ヨリくんの扱いをよく分かってるのです。思い返すと、中々悔しい……。

 

 それでですね。隆之くんは、ヨリくんは天与呪縛を課せられてるって疑ってたのです。実際に、その通りでした。これは、隆之くんが遺してた手紙に書いてあった通りです。ちなみにヨリくんを六眼で詳しく観察した五条家当主は「有り得ねぇ……。滅茶苦茶だろこれ……」ってドン引きしてました。

 

 すっごく簡単に言えば、生涯方向音痴の代わりに魂を大地に彷徨わせるってことです。

 

 詳しく書くと、以下の通りです。

 

 

 壹.……じゃなくて、1

 生涯呪力を三分の一しか使えない。また、自らの呪力総量を正しく認識・記憶出来ない。代わりに、残る三分の二の呪力を以て肉体の死後、一度だけ魂を大地に彷徨わせる。

 

 2.魂を留める場所を決めることが出来る。その代わり、その場所以外への移動において方向音痴となる。

 

 3.自らに課せられた天与呪縛を認識・記憶出来ない代わりに、天与呪縛そのものを強める。

 

 

 この三つが、ヨリくんが課せられた天与呪縛です。一つ目は、恐らく消えてます。だって円花ちゃんの呪力量を、今は底無しのように感じるので。

 そして、残り二つは残ってますね。円花ちゃんがとんでもない方向音痴なのは、自分に課せられた天与呪縛を認識出来ない上に天与呪縛そのものが強くなってるからです。

 

 ええっとぉ、つまり……。魂を留める場所を決めれば、そこに向かう分には道に迷わないってこと……ですよね? って、ことはぁ……。

 

 私の隣を、いやいっそ私を、魂を留める場所って決めて貰います。そしたらどんなに迷子になっても、私の元に帰って来れるので! 円花ちゃんが起きたら、さっそくお願いしてみるのです!!

 

 

 

 

 

 






三人称による補完は要りますか?

  • 欲しい
  • 要らん
  • 良いから一人称で突っ走れ
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