待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!!   作:一人称苦手ぞ。

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日記:両面宿儺

 

 

 

 

 

 

 西暦2819年1月7日。今日は夕方になる前に起きれました。

 

 さっき体験した、三年分の記憶が最後になります。五十六歳から、五十九歳までの分です。この日記も、これでおしまい。

 

 ヨリくん、誕生日に殺されました。本人は全然気にしてませんでしたけど。何やってるんですか、もぅ。よりにもよって、産まれた日に死んじゃうなんて。

 

 

 この三年間は、隆之くんとの日々でした。当時、両面宿儺に挑む術師は多かったです。とうとうヨリくんも挑む出番がやってきました。理由としては、最低でしたけど。

 

 新しい加茂家当主と、縛りを結んだんです。両面宿儺を倒したら、加茂家当主の座を譲れって。ヨリくんは、世界を変えたかったんです。子供が虐げらない世界を、欲しがってました。だから、チャンスだったんです。加茂家当主になれば、少しは世界を変えられるのかも知れないって。少なくとも加茂家では、もしかしたら呪術界でも、子供が虐げられることは無くなるんじゃないかって。

 ……だから、両面宿儺に挑んだんです。単純に猛者と呪い合いたいって願望もありましたけどね。

 

 隆之くんは、猛反対しました。何も両面宿儺に挑むことは無いって。そんな事より、俺と一緒に子供達の所に帰ろうって。でも、ヨリくんは聞かなくって。最後は結局、喧嘩別れです。

 

 ほんと、隆之くんには敵わないのです。喧嘩別れした後でも、ヨリくんを大切に思ってくれて。もしかしたら産まれ直したりするのかもって期待して、いずれまたヨリくんが産まれてくるのを……待ってたんです。だから、呪具や手紙を遺してくれたんです。きっと、産まれ直したヨリくんが寂しくならないように。産まれ直したヨリくんの力になれるように。

 

 隆之くんは、それはまぁ生意気な子でした。口も悪いし、喧嘩っ早いし。でも、面倒見はすっごく良い子。時には盛大にヨリくんを振り回したりしてましたけど。

 

 でも、ヨリくんと凄く気が合ってました。本当に親友って感じで、相棒って感じで。ああいう風にヨリくんと任務をこなす姿が、とても羨ましかったのです。ズルい。隆之くん、ズルいです。

 

 両面宿儺に挑んだヨリくんは、真っ二つになって死にました。まさか四本腕で、目が四つあって、お腹にも口がある人間が居るなんて思いませんでした。いやあれ、本当に人間ですか? 呪霊か何かって言われた方が、まだ納得出来るぐらいです。

 

 流石に殺される感覚は、二度と体験したくないです。自分の命を失う感覚は、とても言葉に出来ません。それぐらい、おぞましくて怖いものでした。

 目が覚めた時、汗ぐっしょりで震えが止まらなかったのです。円花ちゃんが抱き締めてくれなかったら、多分無理でした。今も思い出すと、ヤバいです。二度と思い出さないようにします。

 

 ヨリくんの人生は、酷いものでした。残酷で、苦しくて。悲しくて、痛くて。あんな人生を歩んでいたら、そりゃあ独りで何とかしようって思っちゃいますよね。何より、もう子供の命を目の前で失いたくないんです。あんな人生を見ちゃったら、私のして来た事は……。みんなが、して来た事は……。

 

 

 

 

 

「たわけ。何を書いとるんじゃお主は」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「たわけ。何を書いとるんじゃお主は」

「んぎゅ……っ。何って、日記ですよぉ。こっちはヨリくんの記憶の、大まかなやつです」

 

 日記を書いていると、円花ちゃんが後ろからくっついて来ました。トガの肩に顎を乗せて、日記を覗き込んでるのです。それと両脇の下に両腕を差し込んで、後ろからぎゅってしてくれます。それ自体は、とっても嬉しいです。嬉しいですけど、だからって大喜びしたいわけでもないの。

 だって、今は。今は……その。私がして来たことが、やっぱり間違いだったんじゃないかって。そう思っちゃうから。

 

「……ヨリくんの幸せって、何ですか……?」

「……」

「教えてください。私、もしかしたら間違っ――! いだぁ!? ちょっ、痛い痛い痛いですっ!!」

 

 ちょっ、ちょっ!! 何で突然、こめかみをグリグリするんですかっ! しかも結構強めにっ! 痛いですっ、痛い! 家庭内暴力は反対なのです!!

 

「言わせるな。気恥ずかしいじゃろ」

「ぅ、うう……っ。今は、言って欲しいのに……!」

「……やじゃ。今更勝手に思い悩むような阿呆には、教えてやらん」

 

 ん、んん……っ。グリグリは止めてくれましたけどぉ、円花ちゃんが盛大に拗ねました。でも私の肩に顔を埋めて、ぎゅーって抱き付いたままです。これはもう、間違いなく話してくれません。聞き出せるのはずっと先で、もしかしたらいつまでも教えてくれないかも。それじゃ、何も分からないのです。

 

 ……無理矢理聞き出しちゃうって手も、無くはないですけどぉ……。出来れば今は、ちゃんとヨリくんの口から聞きたくって。でもこうなっちゃうと、口が固いんですよねぇ……。

 

 んーー……。

 

 んーーー。

 

 ん、んんん……。

 

 無理に聞き出すのは違うので、待とうと思います。いずれは教えてくれるんでしょうけど、それまでは……悶々とする羽目になりそうです。自業自得と言えば、そうなんですけど……。

 

「……はぁ……。まっこと、仕方のない奴め」

「……そうですよぉ。トガはまっこと仕方のない奴なので、円花ちゃんが何とかしてくださいっ」

「えぇ……? まったく……」

「わっ♡」

 

 後ろから引き倒されました。されるがままに真上を見上げると、呆れた顔のヨリくんが見えます。ちょっと動けばキス出来そうなくらい、近い距離です。しかも膝枕。何だか積極的な感じがして、ドキドキしちゃう。カァイイお顔が直ぐそこにあって、綺麗な瞳が真っ直ぐトガを見詰めて。

 あー、もうこれは……収まりが付かないかもしれないのです。そんな風に見詰められると、こう……。こう、我慢が……。

 

「……ここまで来たら、振り回し続けてれば良いんじゃ。不快には思っとらん」

「……はい」

 

 逆さまに見えるヨリくんが、頬を撫でながら優しく語り掛けてくれます。声音が優しくて、眼差しが柔らかくって。真っ直ぐ、私を見てくれて。手の動きが少しだけ躊躇いがちですけど、そこは許してあげます。どんなに苦しくっても、トガから離れないって決めてくれたんですから。

 

「お主の側に居られれば、儂はそれで良いんじゃ。二度と言わせるな、分からず屋め」

「んぃい……っ」

 

 鼻を摘まれました。ついでにほっぺたも引っ張られて、変な顔をバッチリ見られました。流石にちょっと見られたくないので円花ちゃんの手を止めようとしますが、逆に手首を掴まれました。動かせないけど、変顔は見られずに済むので良しとします。

 ちょっと不満気に睨んで見ると、ヨリくんが挑発的な笑顔になって。それから……。

 

「んん……♡」

 

 キス、されました。それと、耳を撫でられてくすぐったいです。

 

「ふふん。されるがままじゃの」

「円花ちゃんのえっち」

「被身子には言われたくない」

「じゃあ、二人でえっちです。お揃いですね♡」

「……、……否定はしない」

 

 んふふ。すっごく嫌そう。でも、否定しないってことは自覚はしてるってことですよね。不貞腐れた顔をしてますけど、トガとイチャラブするのがすっかり大好きになってるのです。ほんと、意地っ張りで天邪鬼で……。そのくせ、とっても素直で。私には他の誰よりもデレデレしちゃって。

 

 カァイイ人です。愛しい人です。私の大切な、大好きな人。

 

 だから。だから、間違えたくないんです。ヨリくんが、円花ちゃんが嫌がるような事はしたくなくって。

 

「……儂は、これでも自分を幸せ者じゃと思ってる。人に恵まれて、愛されて。前世とは大きく違う」

「……はい」

 

 真っ直ぐ、真剣な顔で。円花ちゃんは私を撫でながら、ゆっくりと本心を語ってくれてます。ちょっと茶化したいような、冷やかしたいような気もしますけど……今は黙って聞かないと。だって、こうして本心を話してくれるのは珍しいから。

 

「お主が、性懲りも無くぶつかり続けて来たからじゃ。じゃから今、少しは……変わろうと思えてる」

「……はい」

「怖いものは怖い。嫌なことは嫌じゃ。したくない事はしないし、やりたい事しかしたくない。

 でも、お主になら。被身子になら、別に何をされたって良い。じゃって、ほら……」

「はい」

 

 ……もぅ。そこで顔を逸らして言い淀むのは、伴侶としてほんとに悪いところです。許嫁として、恋人として駄目駄目なのです。トガは幾らだって、何度だって伝えて欲しいんですから。

 でも、その一言が言えないのがヨリくんなのも分かってます。言い難いですよね。今なら分かるんです。あんな人生を生きて来たなら、簡単に愛してるなんて―――。

 

「……ぁ、愛し……てるから……。じゃからっ、何じゃって許してやるっ!」

「ふぎゅっ!」

 

 痛いです。振り下ろされた手に、顔を叩かれました。パチン! って音がして、目も鼻も口も叩かれたので。これはDVです、DV! 家庭内暴力なんて断固反対ですっ! 照れ隠しは、もう少し可愛くしてください!!

 

 もぅ、もう……! とことん素直じゃないんですから……! そういうところも、大好きですけど!!

 

 ガバっと起き上がって、抱き付いてみました。そしたら円花ちゃんは、されるがままに押し倒されて。それから……。

 

「……好きにしろ。まったく……」

 

 なんて、照れた顔で呟いて。トガの首に腕を回して、ちょっと期待してる目になっちゃったりして。そうやって、私を誘うんです。これはもう、美味しくいただくしかないですよねっ。ね!

 

 

 

 

 

 






三人称による補完は要りますか?

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