待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
「散々予定を遅らせるとは、良いご身分だな……! 貴様はもっと後継の自覚を持て! そんな調子で居るから、下手な注目を集める羽目になるんだ!!」
まっこと、面目ない。いや、
年が明けて、一週間と半ばが経過した頃。儂はようやく、復学が許された。本来なら昨年の内に、目ぼしい
じゃからまぁ、こうしてこの燃え面。つまり、えんでゔぁに黙って叱られるしかない。復学の際に、相澤……先生にも叱られたわ。聞き流したい気持ちもあったが、今後は
「儂の都合で予定を遅れさせたのは、すまなかった。謝る」
熱い。まっこと、熱い。新しくなった
新しい巫女装束は、巫女装束……的な別の何かじゃ。まず第一に、袴が短い。殆ど
「反省したなら、さっさと付いて来い! 時間が惜しい!」
「ぅ、うむ……。今日からよろしく頼む……」
何はともあれ。今日から儂は、えんでゔぁと共に働くことになっている。いんたぁん、ってやつじゃな。もっとも、昼間は英雄活動で夜は呪術師なんじゃけども。そうやってお互いが、お互いに師事するわけじゃ。中々忙しくなりそうじゃなぁ……。ちゃんと隙間時間に、被身子に電話出来たら良いんじゃけども。
……そう。いんたぁんしている間は、被身子とは離れ離れじゃ。というのも、被身子が家事力じゃったり勉強力を取り戻す為に雄英に残ったからじゃな。まさか今更離れ離れになるとは思わなくて、最初はつい反発してしまった。何なら被身子も、何とかして付いて来ようとしたぐらいじゃ。事情が事情じゃから、二人して仕方ないと諦めるより他が無かったけれども。
んんむ……。隣に被身子が居ないのは、なんとも寂しい。じゃってここ最近、毎日毎日お互いを求め合ってたんじゃから。
―――いかんいかん。煩悩は退散させねば。頭を振って、これからの事に集中していく。取り敢えず、今はえんでゔぁの案内でえんでゔぁの事務所の中を散策中じゃ。建物自体がかなり大きい。おおるまいとの事務所と、そう大差ないかもな。ただ、あやつの事務所と違って落ち着いた
何でも、宿泊施設が完備されてるそうじゃ。さっきから、何人かの
「―――と、言うわけだ! 分かったな!?」
「え? あぁ……。うむ……」
どうやら、案内は終わったらしい。気が付いたら、最初に案内された部屋に戻っとるの。随分と駆け足な道案内じゃった気がするのぅ。まぁ道順は……殆ど覚えとらんけど。これについては仕方ない。らしい。
儂の記憶を体験した被身子曰く、儂が方向音痴なのは何をどうしたって仕方ない事情が有ったらしい。いや別に、儂は方向音痴ではないが。
あ、そうそう。儂は昨晩、被身子に訳の分からん縛りを結ばされた。何でも、儂の魂を留める場所を被身子にしろ……と迫られたわ。そんな訳の分からん縛りを結びたいとは思わなかったが、被身子が何が何でも結ばせようとしたから結局根負けした。
不思議なことにこの縛りを被身子と結んだ後から、何となく被身子の居る方角が分かるようになった。……何でじゃ? まぁ、意識を集中させれば何となく被身子の存在を感じられるような気がして、悪い気はしない。ちなみに被身子が差し出した対価は、儂を魂を留める場所にする……とのこと。ううむ、訳が分からんぞ。何なんじゃあやつは。
……それはそれとして。最初の部屋に戻って来たわけじゃ。鍛錬器具が並べてある部屋じゃの。えんでゔぁと戻ってみれば、傷んだ
「来たのか、廻道。おはよう」
「おはようヨリミナ。今日からよろしくね」
「……クソチビまで来んのかよ! 聞いてねえぞ半分野郎!!」
「言ってなかったか? わりぃ……」
「おはよう。……全員、精進しとるようじゃの?」
朝から舎弟が騒々しいのは、ひとまず放って置くとして。取り敢えず、三人の姿をよく見て見ることにする。今の見てくれからして、それなり……と言うか、かなり苦労してるようじゃ。まぁ、そこに居る大男は今や
いや、心配は心配じゃ。じゃってまだ、こやつ等は子供じゃし。こればっかりはどうしようもない。
「少しは精進……出来てるかな……? でも、エンデヴァーに直に教えて貰えるのは大きな経験になってるよ」
「緑谷、爆豪。昨日は惜しかった。あの感覚を忘れずに行こう」
「うるせぇ。俺ぁもう掴めそうなんだよ!!」
……なんと言うか、少し微笑ましいの。和気藹々(……?)と、けれども集中力は維持したまま。えんでゔぁの元で、修練に勤しんでるようじゃの。感心感心。そのままの調子で、常闇のように大きく飛躍して欲しいものじゃ。この三人の成長は、個人的にかなりの楽しみじゃから。
「―――談話はそこまでにしておけ。仕事の前だ」
「はい!」
「あぁ」
「ッス」
えんでゔぁの一喝で、三人とも黙ったの。教育は行き届いているようじゃ。上下関係がすっかり出来ている。……が、三人とも凄まじい向上心を目に宿しておる。この調子が続くなら、えんでゔぁに追い付くのはそう遠くない未来なのかもしれん。いや、無理じゃな。それは贔屓目が過ぎる。
じゃって、えんでゔぁがこれまで積み重ねて来た経験や歴史は、子供達には到底埋められないものじゃ。生きて来た時間が違う、
「今日も始めるぞ。だがその前に、頼皆」
「……何じゃ?」
「今貴様が抱えている課題。出来るようになりたい事を言え」
「……」
出来るようになりたい事、か。……そうじゃなぁ。それは明確に、ふたつ有る。ひとつは、個性の扱いを極めること。これは今後、一つ目と対等以上に渡り合う為に必須じゃ。もうひとつは、まぁ……。これについては努力目標というか、必須……と言うべきかは少し悩ましいが。でも、やらないなんて選択肢は無い。今更口にするのは、少し気が引けるんじゃけども。
しかしここは、この国で最高峰の環境と言って良い。この場での修練を疎かにするのは、勿体無いの。じゃからまぁ、素直に答えておくとしよう。三人、と言うか四人から変な顔をされるかもしれんけど。
「ふたつ有る。ひとつは、個性の扱いじゃ。もっと洗練させたい」
今はようやく、何とか扱えるようになって来たってだけじゃからの。個性操作をもっと洗練させて、第二の武器として扱えるようにしたいところじゃ。
「だろうな。もうひとつは?」
「……ひいろおとして、人助けをする方法……?」
「は?」
ん、んん……。目を丸くするな。えんでゔぁだけなまだしも、子供達まで目を丸くしおって。いやまぁ、らしくない事を口走ってるのは儂が一番分かっとる。分かってるから、驚かないでくれ。特に緑谷、目を輝かせるな。轟、嬉しそうにするな。舎弟は……今にも大爆発しそうじゃの。平常通りの反応は、お主だけか……。
「どういう意図だ。貴様は呪術師だろう?」
「……まぁ、そうじゃけども。じゃけどこれからは、ひいろおとしても人助けしなければならん。その辺りを教えてくれると助かる」
「……二足の草鞋を履くと?」
「そうじゃな。そういうことになる」
呪術師に、
「……分かった。付いて来い。俺が直々に見てやる」
……取り敢えず。反対はされなかったようじゃ。ならば、せいぜい学ばせて貰うとしよう。
こうして、儂のいんたぁんが始まるわけじゃ。ただ、それはそれとして。
「緑谷。おおるまいとは? お主は、何で此処に?」
「あ、えっと。轟くんに誘われて。最初はオールマイトかナイトアイって思ってたんだけど、二人共エンデヴァーの下で扱いて貰いなさい……って」
……なるほど? まぁ、一理有るか。おおるまいとばかりに学んでいても、仕方ないところは有るじゃろうし。時には学ぶ環境を変えることも大切じゃろうて。他にも何か意図が有れば良いんじゃけど、あやつは筋肉阿呆じゃしなぁ……。何も考えてない、なんて線が無いとは言い切れん。なんと言うか、師匠として駄目じゃよな。まったく、仕方のない奴め……。
◆
……うむ。迷った。いやぁ、道に迷ってしまったの……。そんなつもりは無かったんじゃけど、すっかり迷子じゃ。これには一応理由がある。
事務所を出た直後から、儂等は個性を使って街の中を跳び回ってたわけじゃ。先頭を飛んで行くのはえんでゔぁで、それを追い掛ける形での。それでじゃ、儂がもっとも遅かった。緑谷も轟も舎弟も、見違える程に移動が速くなっていた。常闇だけではなく、くらすめぇと達は全員もれなく速くなっているのかもしれん。
舎弟は爆破で空を飛び、轟は氷と炎で地を進み、緑谷は肉体強化で跳ぶ。その速さが、儂の記憶よりもずっと速くての。目で追えん程ではないが、先を進む四人を路地裏の細道で見失ってしまった。何処をどう進んで姿を消したのやら。
仕方ないから、儂なりに街を巡回しようとしたわけじゃ。いんたぁんの最中じゃし、これも
仕方ないから、被身子に電話することにした。時間も丁度良かったしの。
『ぁ、はは……。もぅ、初日で何やってるんですか』
「んんむ。まさかこうなるとはの……」
被身子に今の状況を伝えると、思いっきり苦笑いされた。何とも情けない姿を見せてしまった気がするの。一日目は無事に終えれたと報告したかったんじゃけども、こうなってしまったら最早それどころではない。
自分が何処をどう歩いているのか分からんし、どうしようもない気がするし、何より声が聞きたかったから電話した。離れ離れは、どうにも落ち着かんのぅ。すっかり毒されてしまっている。
『まぁ円花ちゃんの方向音痴っぷりを把握してなかったエンデヴァーが悪いのです。サボってトガとイチャイチャしましょう!』
「えぇ……? いや、仕事中じゃし。ちょっと声が聞きたかっただけなんじゃけど」
『んふふ。すっかり寂しがりなのです。カァイイ♡』
「うるさい。お主じゃってそうじゃろうが」
しかしまぁ……。やはり電話は便利じゃの。距離に関係無く会話が出来るし、何なら画面越しに話し相手の顔が見える。画面の向こうの被身子は、今は教室に居るようじゃ。儂が復学した以上、被身子も授業に出なくてはならんし。
「それで、久しぶりの授業はどうじゃ?」
『思い出すのでいっぱいいっぱいで、置いて行かれそうなのです』
「なんか、すまん」
『良いんですよぉ。トガは全部知れて嬉しかったので!』
「……大変じゃな。お互い」
『はい。でも、二人で一緒に頑張れてる感じがして私は嬉しいですよ?』
……まったく。好きものめ。何でもかんでも儂と一緒になりたがって、その為にはいつじゃって全力で。そういうところも、今では愛おしいけれども。何なら儂も、やることは違えど一緒に頑張れるのは……嬉しい。
っと……。
「儂も頑張る。お主もしっかりな?」
『はぁい。また後で電話してくださいねっ!』
「うむ。また後での」
『はい。愛してます♡』
「……儂もじゃ。ぁ、……愛してる」
画面の向こうで、予鈴が鳴り響いている。被身子はこれから授業じゃ。名残り惜しいんじゃけども、授業中も電話してるわけにはいかん。仕方ないが電話を切ることにする。切る際に愛を伝え合うのは、いつもより気恥ずかしかったけれども。
……さて、と。独りじゃけども、
「ごみ拾いでもするか……」
いつぞやに学んだ事を、そのままやるとしよう。元々
三人称による補完は要りますか?
-
欲しい
-
要らん
-
良いから一人称で突っ走れ