待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!!   作:一人称苦手ぞ。

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いんたぁん。助言と再会

 

 

 

 

 

 

 えんでゔぁに盛大に叱られ、緑谷達には盛大に呆れられた。迷子になった儂は、街中を彷徨いながらごみ拾いに勤しんでたわけじゃ。商店で売ってたごみ袋を片手にじゃ。何となく見渡した限りではそんなに拾うごみは無さそうじゃったが、彷徨いながら拾ってたらこれが案外溜まっての。奉仕活動としてはまずまずじゃと思いたい。被身子と連絡を取り合いつつも歩き回っていたら、数時間ぐらいしてようやく四人と合流出来た。

 で、何をしていると盛大に叱られたと。緑谷は大慌てで、轟は淡々と儂が極度の方向音痴だとえんでゔぁに伝えておったわ。儂の方向音痴っぷりを聞いたえんでゔぁは、それはそれで憤慨したんじゃけども。あ、熱い……。

 

「……まず貴様は、長距離間での移動方法を身に付けろ。短距離は問題無いが、長距離移動とは別の技術だ。

 ここに何をしに来た? ゴミ拾いで程度で満足するなら、清掃員にでもなれ!」

 

 まっこと、ぐぅの音も出ん。長距離間での移動も、儂の課題じゃの。しかしそうなってくると、どうしたら良いものか。赫鱗躍動に呪力強化も合わせて尚、途中から追い付けなくなった。えんでゔぁはともかくとして、緑谷達にまで追い付けなくなっているとはの。これはうかうかしてられん。どうにかして解決策を見付けなければ。

 ……しかし、まぁ。これ以上成長のしようが無い気もする。身体は鍛えようにも、限界値が低い。筋肉が付かないんじゃよな、脂肪も付かぬけど。攻撃も防御も、呪力に術式があればひとまずは問題無い。移動速度にしたって、短距離で問題無いのであれば戦闘に支障が出るわけじゃない。長距離間での戦闘は、術式でどうとでもなるしのぅ。こうなったらいっそ、馬にでも乗るか……? いや、個性による移動には馬でも追い付けんじゃろうて。

 

 んんむ。まさかの行き詰まりか? 行き詰まりなのか?

 

「……頼皆も、圧縮と点の放出を試してみたらどうだ?」

「圧縮と点の放出?」

「あぁ。今、俺と爆豪でやってる移動速度の向上訓練。赫灼の応用なんだが……」

「あ、そうだ……! ヨリミナ、呪力放出で移動してみるのはどうかな? それと赤血操術を組み合わせれば、黒鞭みたいな運用が出来るかも……!」

 

 ……呪力放出を、移動に? まぁ、確かに。速度を上乗せするとなるとそのぐらいしか思い浮かばぬところではあるか。前世はともかく、今生の呪力量ならばそんな真似をしたって呪力切れにはならぬじゃろう。問題は……効率じゃな。呪力効率をもっと高める必要があるかも知れん。最小の呪力で、最大の効果を発揮出来るようにならねば移動だけで呪力が尽きるかもしれんし。それでは現場に到着しても、何の役にも立てん。

 

 ……なるほど。呪力放出による移動と、効率。課題が増えてしまったが、成長の為ならば致し方ない。やるだけやってみるとしよう。

 

 ところで、黒鞭……じゃったか? 緑谷の個性の中に有った、別の個性。確か期末試験で暴走してたあれじゃ。身体からうねうねと飛び出てたやつ。あれを赤血操術で再現しろ……と? 出来なくは無いんじゃろうけど、それはまた面倒な使い方かも知れん。まぁ、こうして助言されたのなら試してみよう。駄目なら、取り敢えずは呪力放出による移動一点に意識を絞る。

 

「……相分かった、試してみるとしよう。直ぐ追い付くようになるから、先に行け」

「ったりめーだ。うかうかしてっと置いてくぞチビ!」

「あ゛?」

 

 ったく、こやつは……。どうしてこう、いちいち突っ掛かって来るのか。この態度の悪さは、まるで直る気配が無い。やはり、教育するしかあるまいて。何じゃか久しぶりじゃな、こうして舎弟の脳天に拳骨するのは―――!

 

「っで!? 何してんだてめえ!!」

「喧しい! 少しは行儀良く出来んのか貴様は!?」

 

 せめて外でぐらい、大人しくして欲しいものじゃ。何じゃっていつでもどこでも、こうも態度が悪いのか……!

 

「てめえに言われたくねぇんだわ!! 初日から迷子になって勝手な真似してんじゃねえ!!」

「ひいろおは元来奉仕活動じゃろ!? ごみ拾いの何が勝手な真似じゃ貴様ぁ!!」

「ちょっ、ちょ……っ! 外で喧嘩しないでよ二人共……!!」

 

 緑谷が儂と舎弟の間に割って入った。轟はひとまず舎弟を取り押さえておるし。えんでゔぁは、呆れと苛立ちで燃えておるわ……。んんむ、どうにも情けない姿を見せてしまっている。気を付けねば。いやしかし、舎弟の態度を放って置くわけには……! 誰かが矯正しないといかんじゃろこれは!!

 

「……はぁ。相変わらずだな、あんた」

 

 む……? 聞き覚えのある声がしたの。爆発しとる舎弟をいったん放って置いて、振り返ってみる。すると目に入ったのは、呆れた顔のながんじゃった。今日は背広姿じゃの。黒眼鏡までして、少々人を寄せ付けん雰囲気を醸し出しておる。……後で被身子に写真でも送ってやるとするか。あやつも最近は、ながんに会ってなかったわけじゃし。

 

「お、おぉ……。久しぶりじゃの?」

「……勝手な真似は止してくれ。あれから、大丈夫だったか?」

「……んむ。まぁ、色々有りはしたがひとまずは。その件は迷惑を掛けた、すまん」

「別に良い。本来居るべき場所に戻っただけだ」

「……そうか。すまなかった」

 

 何じゃか今日は、謝ってばかりな気がする。全て儂が原因じゃから、言い訳も何も出来ぬが。この冬は、人に迷惑ばかり掛けてしまっておるのぅ。我ながら情けない。今後は、しっかり気を付けねばならん。ひとまずは、そう。いんたぁんに集中するとしよう。

 

「ナガ、……筒美さん! お久しぶりです!」

「お久しぶりです。那歩島では、お世話になりました」

「あぁ、久しぶり。デクもショートも、調子はどうだ?」

「少しずつだけど、前に進んでます。一歩一歩、着実に」

「……そうか。色々と、呑まれるなよ」

「はい!」

 

 取り敢えず。久しぶりに見たながんは、元気そうじゃの。儂が居ない間、またあの呪霊が姿を見せたりしなくて良かった。今後は、下手に離れ離れにならんようにしなければ。でないと、いつあの呪霊が姿を見せるか分からん。

 それはそれとして、緑谷と仲が良さげじゃの? 少しは心を開いたのかもしれん。ながんは、どうにも子供とは距離を置いてる部分が有るからのぅ。何か、躊躇う理由が有るんじゃろうけど。

 

「……レディ・ナガン? 投獄された身の貴様が、何故ここに?」

 

 げっ。知っとるのか、えんでゔぁ。いやまぁ、この国の頂点に位置する英雄(ひいろお)なんじゃから知らん方がおかしくはあるか。見る者が見れば、多少変装してたってながんに気付くじゃろう。むしろ今まで、誰も気付かなかった事の方が奇跡なのかもしれん。

 

「そういう取引だ。今の私は、この子の補助監督だからな」

「……そう言う事か。公安め、勝手な真似を」

「公安はいつだってそんなものさ。No.1、若い芽を摘み取らせるなよ」

「留意しておく」

 

 ながんは、かつては英雄(ひいろお)じゃった。過去に何かやらかして檻の中に入って居たんじゃけど、それでも現役の英雄(ひいろお)と何やら通じ合うところが有るようじゃ。

 

「それと、頼皆。これを持っときな」

「……何じゃこれ?」

 

 えんでゔぁと話し終えたながんが、よく分からん板状の物を儂に向かって放り投げた。取り敢えず受け止めてみたものの、この板は何じゃ? 携帯電話(すまほ)に似てるようじゃけども……。うむ、よく分からん。何かしらの機械ってことだけは分かるが、それ以外は何も、

 

「私の位置や、私との距離を常に把握出来る端末だ。あんたは今日からまた、私の護衛と監視をすることになってる」

「……別に要らんじゃろ、こんなもの」

「必要なんだ。常に持ち歩いてくれ。壊したり、無くしたりするなよ」

「……気を付けよう。一応、預かっておく」

 

 別に今更、ながんを監視する必要は無いと思うんじゃけどな。儂と数カ月間共に過ごしたけど、変な真似は一切しなかったし。そういう事をやる奴なら、とっくに儂なり被身子に危害を加えてるじゃろうて。

 公安の考えはよく分からんが、今は従っておくとしよう。この端末は……懐にでも入れておけば良いか。

 

 ……っと。急に通りが騒がしくなって来たの。近くに悪党でも出たか? それとも、事故か?

 

「話が終わったなら再開するぞ。全員付いて来い! 遅れた者は置いて行く!」

「はい!」

 

 えんでゔぁが、飛んだ。続いて舎弟と緑谷と、轟も動き始める。

 

「行ってくる。……後でな」

「あぁ。後で」

 

 ……さて。それでは試してみるとするか。今回は、呪力放出を移動に加える。いつものように呪力を練り上げ、身体強化を施す。それから、足へ意識を向ける。今回は、跳躍と共に呪力を放出してみるか。圧縮と、点の放出……じゃったか……? どれ、この際思いっ切り……。

 

「ぬおぁっ!?」

 

 跳躍の為の踏み切りと同時、呪力を点で放出してみた。すると、どうじゃ。とんでもない勢いで身体が跳んだわ。速度は申し分無いじゃろう。じゃって一番最後に動き始めたのに、もうえんでゔぁの背中が見える。なるほど、この感覚か。圧縮と、点の放出。一度で理解出来たわ。

 

 ……ただ。これ、どうやって止まるんじゃ? 減速し始めているものの、完全に着地するまで止まることは出来ん。ついでに小回りも利きそうに無いと言うか……。

 

「っと、とと……!」

 

 取り敢えず、着地。勢い余って、四回五回と小さく跳ね歩く羽目になった。その間に、えんでゔぁ達は更に前へ。さっきのは、少し呪力を放出し過ぎた気がするの。であれば今回は、呪力の圧縮を少し弱めてついでに出力も下げて……。念の為、赫鱗躍動もしておくか。速過ぎて動体視力が追い付かんなんて事があれば、ただただ危ないだけじゃし。

 

「おっ、良し」

 

 なるほど。なるほど。悪くない。悪くないの。今度は先程よりは遅いし、高さも低い。が、速度はまぁまぁじゃ。少なくともえんでゔぁの背中を見失うことはなく、緑谷達にも出遅れてない。呪力の減りは……少ないとは言い切れんか。もっと効率的に、もっと少量の呪力で圧縮と放出を行うとしよう。でないと、移動してるだけで呪力が切れるかもしれん。

 

 ところで。えんでゔぁは、何処に向かって行ってるんじゃ? 取り敢えず黙って付いて行ってはいるが……。って、あぁ……なるほど。

 えんでゔぁの進む先には、二輪車(ばいく)が居るの。やたら速度を出してる上に、手に持ってるのは……女物の鞄か。運転手は男じゃから、多分引ったくりってところじゃろう。

 

 って、おい。おい、えんでゔぁ。炎を溜めるんじゃない。走る二輪車(ばいく)に向かって火を飛ばすのは、危険としか思えんじゃろ……! まったく、仕方のない……!!

 

 このままじゃと二輪車(ばいく)が炎で溶かされるかもしれんし、えんでゔぁが何かする前に儂が引っ捕らえてしまおう。身体は跳んでる最中じゃから踏ん張りは利かんが、まぁ問題は無い。

 両手を叩き合わせ、狙いを定める。そして。

 

「穿血」

 

 なるべく加減した穿血を、放つ。狙いは胴体。思い描いていた軌道通りとはいかんが、当たりはする。と、思っていたら。地に沿うような炎が、儂の血ごと引ったくり犯を包みおったわ。おいこら貴様っ。何をしてるんじゃっ!!

 炎に包まれ驚いた引ったくり犯は、二輪車(ばいく)から転倒した。燃えながらも地面を転がるように滑る二輪車(ばいく)に向かって、幾重にも赤縛を放つ。儂の血は炎に焼かれながらも何とか車輪の動きを止めることが出来たが、あれは大丈夫なのか……? 燃料に引火して爆発とか、流石に勘弁じゃぞ? なんて思っていると、轟の氷が二輪車(ばいく)を凍らせた。

 

「遅い。このインターンの間、一度でも俺を追い越してみせろ」

「……あ゛?」

 

 き、貴様……。儂の穿血を焼き払っておきながらそれか。良いじゃろう、直ぐにでも追い越してやる。その時になって、吠え面をかくなよ!!

 

 

 

 

 

 

 

三人称による補完は要りますか?

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