待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
口裂け呪霊を祓い、廃病院に残る蠅頭を祓い尽くした後。帰りの車の中で、えんでゔぁにあれやこれやと質問された。主に呪霊が何であるのか、口裂け呪霊を前に咄嗟に動くことが出来なかった理由、結界術に領域に、呪力に呪具に術式。……要するに、儂が呪術師として知っている知識の殆どを教える羽目になってしまった。全てを教え終えたのは、えんでゔぁの事務所に戻ってから数時間経った頃。しかもその後、儂が作った
その後で儂は、事務所内にある宿泊施設の一室へ。さっさと
なんて、思っていると。
「……もしもし?」
電話が掛かってきた。被身子からじゃ。何で朝の四時前に起きているんじゃこやつは。夜更かしか? 夜更かしなのか? まったく、夜更かしは体の成長を妨げるんじゃぞ。背が伸びなくなっても知らんからな?? ……って、もう被身子の背が伸びることはないか。儂も伸びん。これから背が伸びていく男子達が、羨ましいのぅ。儂ももっと上背が欲しい。せめて被身子ぐらいは欲しい。叶わぬ夢じゃけどな。
『あ、寝るとこでした? それとも他の事してました?』
電話に出ると、
「……寝る前に電話するか悩んでた」
『んふふ。いつでも電話して良いんですよ!』
「寝てるかと思って」
『起きてますよぉ。まぁ、さっきまではすやすやでしたけど』
「電話する為にわざわざ起きたのか?」
『はい。このくらいの時間に掛かってくるかなーって。起きたら着信無かったですし、待ってられないから掛けちゃいましたけど!』
そう言って、被身子は舌を出しながら笑った。見透かされている気がして、なんじゃか悔しい。どうしていつも、儂の心じゃったり行動は被身子に筒抜けなのか。解せぬ。でも儂じゃって被身子の事はお見通しじゃから、そこはお相子なのかもしれん。とは言え悔しいは悔しいし、解せぬものは解せぬ。
まったく、こやつと来たら。いつもいつも、儂を見てばかりじゃ。まぁ、それがどうにも嬉しいんじゃけど。
『今日の任務はどうでした?』
「無事に終えれたぞ。まぁ、退屈じゃったけど」
『……もぅ。どうしようもないバトルジャンキーなのです』
「良いじゃろ別に。猛者と呪い合うのが好きなんじゃ」
こればっかりは、変わりそうにない。変えたいとも思っとらんしの。
猛者と呪い合うこと、腕を競い合うこと。このふたつこそ、儂の楽しみなんじゃ。趣味と言っても良いじゃろう。他には散歩とか、温泉とかも趣味じゃけどな。
『じゃあ、トガと愛し合うのは?』
「……」
何を聞いてくるんじゃ貴様は。面と向かってそんな事を聞くんじゃない。答えるのは気恥ずかしいじゃろ。こら、何を挑発的に笑ってるんじゃ被身子。儂をからかって遊ぶのがそんなに楽しいか? まったく、どうしようもない奴め。素直に答えるのは何か癪な気がしてならん。なので。
「……さぁ、どうなんじゃろうな?」
少し反発してみるとする。そしたら被身子は頰を膨らませて、分かり易く拗ねた。これはこれで可愛らしく思う。一番は笑顔じゃけど、他の表情じゃって愛おしいものじゃ。こやつは色んな表情を見せてくれるから、見ていて飽きることは無い。まぁそうでなくても、飽きるなんてことは一生無いんじゃろうなぁ……。
……っと。拗ねた被身子を見て楽しむのはそろそろ止しておこう。これ以上拗ねられたら、どうやって機嫌を取れば良いのか分からん。電話越しじゃ、触れ合うことも出来ぬからの。
「冗談じゃ。……その、好きじゃよ。多分、……一番」
『むーーっ。それなら許してあげます! もぅ、ヨリくんの馬鹿っ』
「すまんすまん。……ぁ、愛してるから許してくれ」
『んふふ。仕方ないから、許してあげます♡』
「……むぅ……」
結局、気恥ずかしい目に遭ってしまった。儂を辱めて楽しそうにするんじゃない。まったく、仕方のない奴なんじゃから。そういうところがいかんのじゃぞ? そういうところなんじゃからな??
『あーー、もぅ……。イチャイチャしたいですよぉ! 早く帰って来てくださいっ!』
「……そうじゃな。お主も来れれば良かったんじゃけど」
『付いて行きたかったですけどぉ……。流石に今は学業優先なので』
「戻ったら、でぇとしよう」
『はい! デートですデート! たぁっくさんっ、イチャラブしましょうねぇ……♡』
「ぅ、うむ。そうしよう」
戻って早々に
……はぁ……。愛ほど歪んだ呪いは無いと言うが、まさかここまでとはの。すっかり呪われてしまっている。全然嫌な気はしなくて、むしろ嬉しいぐらいに思ってるのが問題じゃ。うぅむ、困った困った。早く会いたいのぅ……。電話越しではなくて、直接会いたい。被身子に触れたいし、被身子に触れて欲しい。
じゃけど、今は……。
「……愛、してる……」
『はい。私も愛してます♡』
これで、我慢するしかないか。今は眠くなるまで、こうしているしかない。独りで寝るのは余りに久しぶり過ぎて、とてもとても寝付けない気がするんじゃけども。
ひとまずは瞼を閉じて、寝るように努めてみるとする。寝れるかのぅ、これ。出来れば、直ぐにでも寝てしまいたいんじゃけど……。
……はぁ……。何とも、物足りぬ寝床じゃ。
◆
「集中すれば出来る事を、寝ながらでも出来るようにしろ! やると決めた時には行動し終わっていろ!!」
「ここに来て何で力んでやがる……!!」
「掴めそうなところで引き離される……!」
「……くぁ……っ。ふわぁ……あ……」
……ふぁ……。ん、んん……。眠い。今朝は結局、あまり眠れなかった。どうにも寝付きが悪かったし、やっと寝れたのは被身子と電話し始めて一時間以上経った後じゃ。まさか、独りで寝れない日が来ようとはな……。被身子め、儂の体を変な風にしおって。責任取れ、責任。
僅かな仮眠を取った後。儂は昨日の昼間と同じく、えんでゔぁを追い掛けている。と言っても、新たな移動手段についてはもう問題無い。昨日の感覚を思い出せる内に、何度も試したからの。お陰で、えんでゔぁから突き離されることはなく常に真後ろを保てている感じじゃ。しかし
高速移動からの、高速捕縛。これをえんでゔぁより速く行うのは、中々に至難の技じゃな。もう少し、あれやこれやと試してみるとしよう。出来れば個性も試したいが、対象に直接触れねばならんとなると、……それはそれで難しい。
「頼皆貴様! 欠伸をするな!! 真面目にやれ!!」
「それはすまん。今は寝付きが悪くてのぅ……」
被身子が居ないと、どうにも寝付くのが遅い。これは何とかしなければならんな。でないと、
「……頼皆。どういう感覚であそこまで加速してる?」
「穿血の応用。お主の方が先に掴めそうなものじゃけどなぁ。赫灼は会得しとるんじゃろ?」
轟達三人はどうにか追い付いているが、悪党確保には二歩も三歩も足りない。えんでゔぁが悪党を確保する頃に、やっと現場に到着するような感じじゃからの。それでは遅過ぎる。せめて儂と同じくらいの速度を出せなければ、えんでゔぁより先に確保するどころではない。
轟、緑谷、そして舎弟。この三人の中でなら、最も速く動けそうなのは轟かと思ったんじゃけどなぁ。実際は、似たり寄ったりじゃな。
「……点での放出がまだ完璧じゃねぇ。俺の赫灼は、まだ洗練しきれてねぇから」
なるほど。まぁ確かに、こやつの放つ赫灼はえんでゔぁのそれと比べたらまだまだ荒い。向き不向きも有るんじゃろうけど、正しい感覚を掴めてないのかも知れん。ならば、まぁ……。ひとつ、試してみるとするか。街中じゃけど、多分大丈夫じゃろう。昔、隆之に穿血を教えてやった時と同じ手で教えてみるとするか。何か役立てば良いんじゃけど。
「そうじゃなぁ……。轟、左手を出せ」
「……?」
「あ、一応被身子には内緒じゃからな?」
轟の左手を、両手で挟むように包む。轟の左手を呪力で圧壊させぬように気を付けて……っと。
「手のひらから火を出してみろ」
「火傷しちまう」
「良いから出せ」
「……こう、か?」
「ん、そうじゃ」
重ね合わせた左手が熱い。呪力越しとは言え、皮膚が少しずつ焼かれていく感覚がある。あまり長く続けると大火傷じゃな。
轟の左手越しに、何とか両手で百斂を続けていく。僅かな隙間から炎が漏れぬように気を付けながら、徐々に徐々に圧していく。
……良し。まぁ、多分こんなものじゃろ。手のひらの内で、それなりの量の炎が停滞している感覚がある。当然、物凄く熱いんじゃけどな。
「何となく感じれてるとは思うが、儂の場合は全方位から抑え込む形で圧縮するんじゃ」
「……あぁ」
「で、最後は小さな穴を開けて脱出させる感じじゃの。こんな風に」
うおっ。火が一直線に噴き出た。えんでゔぁが放つ赫灼のように、一本の線となって。それは勢い良く上へ向かって突き進み、直ぐに消え去る。それ見た轟が目を丸くした。
……取り敢えず。穿血の要領でも赫灼は再現出来るようじゃな。百斂が使えぬ轟では、同じやり方は不可能なんじゃけども。
まぁ、それでも。一度は成功しておくというのが案外大事じゃったりする。成功経験が成長に繋がるのは、よく有る話じゃからの。
「……もう一回、良いか?」
「うむ、良いぞ」
目を輝かせるな、たわけ。左手を治して、もう一度百斂を行う。今度は、さっきよりも火を出しているようじゃの。お陰で少し、と言うかかなり圧縮し辛い。炎と血では動きがまるで別物じゃ。それでも何とか、手のひらに感じる熱を頼りに百斂を成立させていく。隙間から溢れ出そうになる炎を、どうにかこうにか一つに圧する。数秒程の溜めを作り、それから……放つ。
「ぬおっ!?」
お、おぉ……。えんでゔぁの赫灼と何ら変わらぬ熱線が、さっきよりも速く空に向かって飛んで行った。熱もしっかり上がっていて、危うく鼻先が焦げるところじゃ。呪力や
「……ありがとう。何とかなりそうだ」
「うむ。励めよ轟」
「あぁ」
どうやら、何か掴めたようじゃ。轟がえんでゔぁのような赫灼を放つのも、そう遠くはないのかもしれん。そしたらその時は、儂が満足するまで鍛錬に付き合ってもらうとしよう。えんでゔぁ並みの赫灼を回転で防ぎ切れれば、それは儂にとって大きな前進じゃからの。
「ショーートォオ!! こんなところで赫灼の鍛錬をするな! 必要なら俺が教えてやる!!」
ぬおっ。も、燃え盛りながらこっちに闊歩してくるな燃え面!!
「いや良い。もう何とか出来る。バクゴー、片手での飛び方を教えてくれ」
「ああ゛っ!? 何で俺がてめえに教えなきゃなんねえんだよ!!? 勝手に覚えろや!!!」
「教えられねぇのか。……悪ぃ」
「教え殺したるわクソがァ!!!」
「おぉ、ありがとな」
いや、騒がしい。道のど真ん中で騒ぐのは止さぬか、たわけ共。まったく、少しは品行方正に出来んのか。特に舎弟、何じゃってそんな直ぐに騒がしくなるんじゃ貴様は……! たまには緑谷を見習っ―――。
「……なるほど。呪力による圧縮……。これ、何とか黒鞭に転用出来ないかな? いやでも呪力操作まで加えるとなると頭がパンクして暴走しちゃうかも……。となるとやっぱり、ひとつひとつ……。黒鞭の次は、百斂を教えて貰おうかな……? 黒鞭以外にも呪力による圧縮は何か役に立ちそうな……。うぅん、あんまり使い道が思い浮かばないな……」
……静かじゃけど、騒がしいな……?
あぁ、もぅ。何なんじゃこやつ等は。急に儂を囲って騒がしくするんじゃないっ。周囲から変な目で見られるじゃろ!? まったく……!!
三人称による補完は要りますか?
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欲しい
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要らん
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良いから一人称で突っ走れ