待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!!   作:一人称苦手ぞ。

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いんたぁん。地獄の轟家

 

 

 

 

 

 

「行くぞ!!」

「おぉ!!」

「あぁ」

「はい!!」

「うむ」

 

 なんてやり取りが有ったのが、ほんの三十分程前。そして今。

 

 

「何でだ!!!」

 

 

 夜。儂はえんでゔぁに連れられて、緑谷達と轟の実家にやって来ていた。……何でじゃ? 珍しく舎弟と意見が合致したの。儂も何でこんな場所に連れて来られたのか知りたい。おい、えんでゔぁ。少し気不味そうな背中を見せるんじゃない。

 ちなみに、今回の訪問にながんは連れて来ていない。流石に牢の中に居るべき人間を、自宅まで招くつもりはえんでゔぁにはなかったようじゃ。なので、ながんは近場に車を停めて待機している。

 

「姉さんが飯食べに来いって」

「何でだ!!」

「友達を紹介して欲しいって」

「今からでも言って来い! やっぱ友達じゃなかったってよ!!」

「か、かっちゃん……!」

 

 ……なるほど? つまり、夕食にお呼ばれしたってことか。いや、だから何でじゃ? 意気揚々と、次の現場に飛んで行くんじゃなかったのか? 急に事務所に帰って、急に制服に着替えるように言われたと思ったらこれじゃ。何か英雄(ひいろお)として、次の仕事が有ると儂は思ってたんじゃけど……?

 

 まったく……。報連相が足りんぞ、ほうれんそうが。飯なら飯と言って欲しいものじゃ。そしたら車の中で、次は何をするのか想像を巡らせるなんて真似をしなくて良かったと言うのに。えんでゔぁめ……!

 

「忙しい中、お越し下さってありがとうございます。初めまして焦凍がお世話になっております。姉の冬美です!」

 

 ……お、おう。前掛け(えぷろん)姿の女性が、笑顔で玄関から出て来たの。白い髪に、少し赤い髪が混じっとる。見たところ若いが、子供ではなさそうじゃ。轟の姉は、どうやらしっかりと大人らしいの。丁寧に出迎えてくれたし、儂も丁寧に接するとしようかのぅ。

 

「……この度は、わざわざすまんのぅ。馳走になる。初めまして、儂は廻道円花じゃ。

 こちらは緑谷出久で、こっちは舎弟の爆豪勝己」

「貴女が廻道さん……! お父さんから色々聞いてます! 焦凍のガールフレンドかもって……!」

 

 は? がぁる……ふれんど……?

 

 いやまぁ、女子の友達って意味ならば間違いではない。実際、友と言えば友じゃからな。轟とは、色々と話す機会が多い。つい最近まではそうでもなかったかもしれんが、この実地研修(いんたぁん)が始まってからはまた話すようになった。じゃから、友と言う分には間違いではない。と、思う。しかしじゃな? 別の意味での、がぁるふれんどは間違いじゃぞ。轟とそういう関係にはなっとならん。恋人って意味なら、儂のがぁるふれんどは被身子じゃぞ……! おい、えんでゔぁ! 貴様、何を勘違いしとるんじゃ!!

 

「……一応正しておくが、儂は既に婚約者が居る身じゃ。それは断じて轟ではないからな? 違うからな……!?」

 

 ここに被身子が居なくて良かったと、心から思う。でないと色々大変じゃった。主に儂と轟が。それはもう大変な目に遭ったじゃろう。今回ばかりは離れ離れで良かったかもしれん。

 

「えっ、そうなの……? ごめんなさい勘違いしちゃってて。私もてっきり焦凍がお年頃になったのかって舞い上がっちゃって……!」

「いや、分かれば良いんじゃ……。おい、えんでゔぁ貴様ぁ!」

「別に間違いではないだろう」

「轟とは、ただの友人、じゃっ!」

「ぐおっ!?」

 

 ひとまず。危うい場面を作り上げてくれた燃え面を蹴り飛ばしておく。脛を思いっ切り蹴り飛ばしておく。何ならへし折るつもりで蹴り込んでおく。誰が、誰の、がぁるふれんど、じゃって!? まったく、ふざけた勘違いをしおって……!! そもそも貴様っ、いつそんな風に思ったんじゃ!? いつそんな勘違いをしおった!!?

 

「……と、とにかく……! どうぞ皆さん上がってくださいっ。今日は腕によりをかけて、ご用意させて頂きましたので……!」

「か、廻道さん落ち着いて……!?」

「離せ緑谷っ。処す! こやつ処す!!」

「悪ぃ廻道、落ち着いてくれ」

「ぐぬぬぬ……っ!」

 

 ……くそっ。後でもう一回蹴り飛ばすからな!? その時までに、精々脛を鍛えておけよこの燃え面ぁ!!

 

 儂は! 被身子の! 女じゃぞ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 えんでゔぁの脛は蹴り足りぬけど、ひとまずは大人しく夕飯の席に着くことにした。轟の実家は、それはもう立派な住まいじゃ。まず敷地が広い。そして建物が大きい。それも、いわゆる日本家屋じゃな。広々としていて、縁側も有る。風呂も広いのかもしれん。いつぞやに轟が畳じゃないと落ち着かないと言っていたから、部屋には畳が敷いて有るんじゃろう。……そう考えると、良い家じゃの。将来は、こういう家に住みたいかもしれん。

 ……いや、でも。無駄に広くする必要は無いか。下手に広くし過ぎると、家の中なのに迷ってしまうかもしれんし。儂はほら、実は方向音痴じゃからの……。

 

 それはともかく。何やかんやで、夕飯の席に招待されたわけじゃ。舎弟はまったく納得しとらんようじゃけど、大人しく席に着いた。念の為、両側を儂と緑谷で挟んでおくが。

 

「……お主も初めましてじゃの? 廻道円花じゃ。こっちは爆豪勝己、こっちは緑谷出久」

「初めまして。焦凍の兄の、夏雄です」

「うむ、よろしくの夏雄。とどろ……、焦凍には世話になっとる」

「はじめまして! 緑谷出久です、とど……焦凍くんには色々お世話になってます!」

「よろしく。廻道さんに、緑谷くん」

 

 冬美と轟の配膳で料理が並び始めた机の、向こう側。儂の真正面に居るのは、白い髪の男性じゃ。冬美よりは若いが、こやつも大人じゃろう。体格がえんでゔぁに似ているの。鍛えれば、かなり近くなりそうじゃ。個性の方は……どうなんじゃろうか? もしかして、強いのか? じゃったら是非手合わせしたいところじゃけど、身に纏う空気は……一般人のそれじゃ。残念。……それと。

 

「こちらこそ、焦凍が世話になってるみたいで。……雄英入ってから、焦凍はどう?」

「それなりに優れとるよ。そこの勝己と並ぶ程度には」

「……そっ、か」

 

 ……んん……? 何じゃお主。さっきから、変にえんでゔぁを気にしとるの。様子を窺っていると言うか、距離を取りたがっていると言うか……。

 あぁ、そうか。そういう事か。轟から聞いてる限り、えんでゔぁは毒親じゃ。父親として、それはもう最低な存在じゃ。今は更生中のようじゃけど、じゃからって過去の行いが消えるわけじゃない。と、なると……。

 

「父親は嫌いか?」

「……」

「よし分かった、後で殴り飛ばしとく。何な ら呪っておくが?」

「廻道、まだ呪わなくて良い。そん時になったら、頼む」

「……ん。ならそうしようかのぅ」

 

 別に、儂はいつ呪っても良いんじゃけどな。配膳中の轟に止められたから、この話題は止めておくか。代わりに、えんでゔぁを睨んでおくが。

 

「……わ、わぁ。どれも美味しそうですね……! ねっ、かっちゃん……!」

「……そこの麻婆寄せとけや」

 

 ……んんむ。空気が悪い。すっかり緑谷と、舎弟に気を遣わせてしまった。今のところ舎弟が大人しいのは不気味じゃけど、別に空気が読めん奴では無いからのぅ。意外と繊細なんじゃよな、こやつ。

 どれ。えんでゔぁを睨むのは一旦止して、今は大人しくしておくか。机の上の料理に目を向けると、……おっ、味噌汁が有るの。中華料理が主じゃけど、どれも美味そうな感じじゃ。こうしてずらりと並んだ料理を眺めていると、腹が減って来た。結局一日中、睡眠不足のままで動き回っていたからのぅ。そりゃ、腹も減る。

 

「ささ、どうぞどうぞ。食れないもの有ったら、無理しないでね」

「……相分かった。いただきます」

「いただきます!」

 

 一通り見てみた感じ、別に食べれないようなものは無い。そもそも儂、好き嫌いはないしの。この時代は、食べるものに困らん。食の好みはあれど、わざわざ口にするつもりはない。轟の姉が、腕を奮ってくれたんじゃ。美味しくいただくとしよう。

 

 まずは、……どれ。味噌汁でも。

 

 ……ん。まぁまぁじゃの。まぁまぁ。不味くはない。これが轟家での味噌汁の味なんじゃろうな。被身子や母の作る味噌汁とは幾分か違うが、悪くない。味の濃さや香りの強さで言えば、轟家の味噌汁の方が強いか。使ってる味噌の差じゃろうな、これは。色も違うし。おかずはどうじゃろうな、おかずは。

 

「おっ」

「ん……っ!」

 

 ……ふむ。美味い、と思う。最初に口にしたのは餃子なんじゃけど、野菜の甘味がしっかり出ててこれは中々。もう少し肉っぽい感じがすると、被身子が作る餃子に近くなる気がする。人様の家の家庭の味も、悪くないものじゃ。たまには誰かの家で食事を摂るのも悪くないのぅ。まぁどうしても被身子の手料理と比べてしまうところが有るんじゃけど、そこは許して欲しい。わざわざ言葉にするような真似はしないし。

 

「どれも滅茶苦茶美味しいです! この竜田揚げ、味はしっかり染み込んでるのに衣はザクザクで仕込みの丁寧さに舌が歓喜の―――」

「飯まで分析すんな!!」

「止さぬかたわけ。黙って味わえ。良い味しとるんじゃから」

 

 まったく、緑谷と来たら。分析癖を出すのは時と場合を選んでくれ。いや、この竜田揚げが美味いのは分かるんじゃけどな。轟家の食卓も、中々やるのぅ。

 

「そらそうだよ。お手伝いさんが腰やっちゃって引退してから、ずっと姉ちゃんが作ってたんだから」

「なるほど……!」

「……ほう。お主は作らなかったのか?」

「姉ちゃんと、かわりばんこで作ってたよ」

「え? じゃあ俺も食べてた?」

「あーー……どうだろ。俺のは味濃かったから、……エンデヴァーが止めてたかもな」

 

 ……ん、んん。空気が固まった。夏雄が、えんでゔぁを睨みながら嫌味を言ったからじゃ。内心そうじゃとは思っていたが、まさか(まこと)にこんな感じとはの。当然と言えば、当然なんじゃろうな。儂が知る限り、まだ轟家の問題は解決していない。家族としての形が不自然じゃ。それはきっと、直ぐそこに居るえんでゔぁと、こやつ等の母親が原因なんじゃろう。

 こんな空気をそのままにしておいて、何が償いたいじゃ。まったく、とんでもない親じゃよこの燃え面は。

 

「焦凍は学校でどんなの食べてるのっ?」

「学食の」

「気付きもしなかった。今度―――」

 

 ……駄目じゃこりゃ。全員、どうにも噛み合わせが悪い。一家団欒とは、とても言えん。えんでゔぁがこの場に居なければ、こんな風にはならないのかもしれんが。

 

「……ごちそうさま。もう良いだろ?」

「夏!」

「ごめん姉ちゃん。やっぱ無理」

 

 そう言って、夏雄は幾つかの食器を片手に出て行ってしまった。これでは、それなりに美味い夕食が台無しじゃ。……まったく、仕方のない。あやつは大人じゃろうし、冬美じゃって大人じゃろう。儂がいちいち構う必要は無いと思うが、これでも……轟は友人じゃからの。くらすめぇとで、話すことはしばしば。飯田の事で相談し合ったりもした。何より、儂はこの家の事情を知っている。全ては知ってはいないけれど、既に首を突っ込んでるのは事実じゃ。

 

 ……なら、黙って見てるのは違うか。えんでゔぁの事は、後でぶん殴るとして……。

 

「轟、少しあやつと話してくる」

「夏兄と?」

「そうじゃ。途中ですまんが、下げといてくれ」

 

 満腹には程遠いが、この際仕方がない。放っておくつもりは無い。取り敢えず今回は、夏雄の言い分を聞くことにしよう。場合によっては、えんでゔぁは全力で殴り飛ばす。何なら殺してやりたいが、それは流石に駄目じゃからの。半殺し程度で済ましてやるとするか。

 

 ……さて。夏雄を追い掛けて、話を聞くとするかのぅ。

 

 

 

 

 

 






三人称による補完は要りますか?

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  • 要らん
  • 良いから一人称で突っ走れ
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