待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!!   作:一人称苦手ぞ。

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思わぬ素質。

 

 

 

 

 

 儂が寮生活を始めて、十日が経った。その間に変わったことと言えば、発目が呪霊の見える眼鏡を量産出来るようにした。あやつ天才じゃろ。何で呪力が無いのに、呪力を物体に染み付かせる装置なんて作れたんじゃ。分からん、全く分からん。これも個性の力なのか? いや、あやつの個性は視力が良くなるだけだと聞いた。かなり遠くまで見渡せるらしいの。何で作れたんじゃ? (まこと)に意味不明じゃぞ。

 

 まぁ、細かな説明は良い。専門的な事は聞いても分からんしの。確か……儂の髪や血、皮膚の一部を材質に組み込んで呪力との親和性を増加させ、呪力を馴染みやすくしたとか何とか……。えねるぎいがどうこう、保存性がうんぬん……。装置でどうたらこうたら……。

 

 うむ。詳しい原理は知らん。分からんっ。

 

 とにかく、じゃ。呪霊が見える眼鏡『呪眼(のろいまなこ)』が完成した。これは根津校長による尽力が大きかったお陰とも言える。具体的に財力じゃな。なお、命名は常闇じゃ。あやつ、名付けの才が無いのでは? あやつに聞いた儂が馬鹿だった。どっ可愛いべいびいなんばあ六十六とどっちが良いのかは分からぬところじゃが。

 

 そんなこんなで、呪眼の生産体制が整った。真に驚いた。しかし、問題がある。

 

 呪眼を生産するのに必要な材料は、儂の肉体の一部と儂の呪力じゃ。前者は反転術式で即座に補えるから良いんじゃけどな、問題は呪力じゃ。この呪具を作るのに、かなりの量の呪力を時間をかけて注ぎ込まなければならない。具体的に呪力切れ寸前までじゃ。だいたい一つ作るのに、自己補完の範疇で済ませようとすると四日もかかる。現在作ることが出来た呪眼は、一つだけ。これからも時間を掛けて作っていくしかない。

 

 で、じゃ。昼頃に害にもならぬ呪霊蠅頭(ようとう)を取っ捕まえて来て、寮前で教師達と呪眼の性能を試しておったんじゃよ。その時に、とんでもない事態が起きた。

 

「あの、廻道少女。私、眼鏡外しても見えたままなんだけど……」

 

 は?

 

「は?」

 

 は?

 

「いやだから、私……眼鏡外してもそれ見える……」

 

 縮こまって片手を上げるおおるまいとに、儂は驚くしかない。

 

 何じゃと? いやおかしいじゃろ。お主に呪力など無い筈じゃ、おおるまいと。なのに何故呪霊を認識出来る?

 ……いや待て。こやつ……呪力を持っておるの。何でじゃ。以前見た時は、呪力を持っては居なかったじゃろ。何? いったい、どういう事じゃ?

 

 まさか呪霊を認識したことで、呪力まで認識し自然と知覚出来るようになった? 眼鏡を掛けた数秒の間で? そんな筈は無い。じゃって今、こやつは明らかに、突然呪力を獲得した。全身に漲らせる程の、大きな呪力を。今の儂と大差無いかもしれん、膨大な呪力を。

 

 これは、明らかにおかしい。

 

「あ、見えなくなった。いったいどういう……いや、そうか。そういう事……なのか? だとしたら……」

「オールマイトさん?」

「ああいや、うん。何でもないよ相澤くん。廻道少女、少し良いかな? 大事な話がある」

「それは構わんが、何じゃ?」

「良いから。ちょっと来て」

 

 呪眼を相澤先生に預けて、おおるまいとは寮の裏側へと歩いていく。不思議なことに呪力は消えている。何だかよく分からぬが、話があると言うなら聞こう。どうやら人に聞かれたくない話らしいの。

 

「廻道少女。これから話すことは、決して人に話さないで欲しい。これは私と君、そして……緑谷少年の三人だけの秘密だ」

「……それは構わんが。何じゃ急に真剣な顔をして」

 

 そもそも、何故ここで緑谷の名が出てくる?

 

「決して人に知られてはならない秘密なんだ。この秘密を聞いた上で、呪力について改めて君から教わりたい。

 

 私の、個性についての話だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 とんでもない事を聞いてしまった。気がするの。力を蓄える力に、力を譲渡する力が混ざり合った? それを代々引き継いできた?

 

 個性は(まこと)に何でもありじゃな。いい加減にしてくれ。

 

 まさか、歴代継承者の分の呪力を長年かけて蓄積し続けていたとはのぅ。ならば、おおるまいとが呪霊を目視出来るようになった理由も、呪力が出たり消えたりする理由も納得出来る。個性の使用に合わせて、見えている物が切り替わるそうじゃ。眼鏡を掛けた時、つい身構えて個性を使ってしまったらしい。で、見えるようになったと。

 これまで呪霊が見えていなかったのは、脳が呪力を認識していなかったせいか? 呪力と脳には何かしらの関わりがあると聞いたことがあるが……。

 今回見えるようになったのは、呪霊を見たことで認識が改まったからか?

 じゃから個性から呪力を引き出せるようになった? はて、分からんの。

 

 しかしまぁ、(まこと)かこれは。

 

 今はまだ個性の使用に合わせてしか呪力を持つことが出来ぬようじゃが、その内呪力だけを使う事が出来るようになるじゃろう。そうなればこやつは、呪術師としても戦えるようになるじゃろうな。平和の象徴が呪術師に? 笑えん話じゃが、心強いのは確かじゃのぅ。

 

「で、何で緑谷の名前が出てくるんじゃ?」

「……継承したんだ。彼に」

「何じゃと?」

「私は、彼こそが次の平和の象徴に相応しいと思っている。だから託したんだ」

 

 ……。おいおい、それはとんでもない話じゃ。(まこと)にとんでもない。緑谷に後を託す? 力無い、無個性だったあやつに? 力を託した?

 

 ……そう、か。あやつ、とんでもないものを背負ったんじゃな。じゃから、去年は体を鍛えていたのか。じゃから、まだ個性が扱い切れぬのか。それに、黒閃が見えていたのもこれが理由か。

 色々な事が腑に落ちた。元より大して気にしては居なかったが、それでも納得してしまった。納得させられた。

 

 なるほど、のぅ。これは人には話せぬ。話してはならぬ。秘密にしなければならん。そして知ってしまった以上は、協力していくしかあるまい。

 何だか、とんでもない事に巻き込まれた気がするの。しかし、おおるまいとと緑谷の助力を得れるのは大きい。まだ緑谷は呪力に気付いているかは知らぬが、気付ければ呪術師になれるじゃろうて。

 

 次なる平和の象徴が、呪術師にもなれるとはな。これも笑えん話じゃ。

 

「話は分かった。じゃが良いのか? こちらの世界は、ひいろおが来るべきところではない」

 

 呪霊を祓うということ。呪霊と戦うということ。それは人の負の感情と争うようなものじゃ。不快しか感じられぬものと、向き合い続けるようなものなのじゃ。

 ひいろおとは、人々に希望を与えるものなのじゃろう? 興味が無い儂でも、それぐらいは分かる。

 

「……君がそう言うのなら、そうかもしれない。

 だけどね。君を一人で戦わせて、何が平和の象徴って話さ!」

 

 ……。善人じゃ。そうだろうとは思っていたが、やはり英雄(ひいろお)とは善人じゃな。であれば、尚更こちら側に来させてはならぬ。善人が呪霊と向き合い続けるとどうなるのか、それを儂は知っておる。しかしおおるまいとの秘密を知り、その上で断る気はせぬ。そんな余裕は儂に無い。

 

 ならば、どうするべきか。決まっている。こやつとて、守らねばならぬ。呪術師として、呪霊から守っていかなければ。人の負の感情に、食い潰されないように。平和の象徴とやらが、呪われぬように。

 

「相分かった。おおるまいと、言っておくが……儂は厳しいぞ?」

「望むところ!」

 

 

 

 

 

 こうして。儂は思わぬところで、協力者を得た。何なら弟子じゃな。おおるまいとが呪霊を見れるようになった言い訳を考えるのは大変じゃったが、今ぐらいは喜んでも良いのじゃろうか?

 

 ……いや。まだ喜べぬ。気を抜くことは出来ぬ。まだおおるまいとは、呪力を引き出せるようになっただけ。これから色々と教えて行かねばならぬ。呪力の扱い方を、呪霊との戦い方を。

 

 何より。守るべき対象が増えてしまった。これは素直に喜べることじゃない。儂一人でやれることは、どうしても限界がある。

 

 

 これから、更に忙しくなりそうじゃの。気を引き締めなければ、な……。

 

 

 

 

 









以下、言い訳です。

はい。という訳でオールマイトが呪力を得ました。と言うか気付いた。
ふと閃いたんですよね。OFAって力のストックじゃん、なら呪力もストックしてるんじゃない?って。
なので予定には無かった、オールマイト呪術師√です。必然、出久も呪術師√に入ったようなものです。と言うかヒーローと両立して貰います。過労死待った無し!!

大変強力な戦力を有しましたが、これでもまだしんどいんじゃないかなって判断してます。でも円花の負担は減りました。でも円花は抱え込みました。オールマイトすら守るべき対象判定。プラマイゼロですね。

ひとまず問題は一気に解決したと思います。と言うかさせました。発目ちゃんがやってくれました。
これで詰みは無くなったと思いたいですが、オールマイトが引退したらいきなりキツくなるんだよなこれ……。やはり問題の先送り……。やっぱり駄目かもしれん……っ!!

三人称による補完は要りますか?

  • 欲しい
  • 要らん
  • 良いから一人称で突っ走れ
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