待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
七山に電話で訳の分からん指示をされた後。直ぐに儂も被身子も大忙しとなってしまった。これも全て、急遽渡米することが決まってしまったからに他ならない。状況はいまいち飲み込めぬ上に、詳しい理由は
まぁ、一応。今回、海外で起きた事件は儂を日本から出さざるを得ない程のものなんじゃろう。総監部や公安がそう判断したのなら、上の方で何か有ったとも考えられる。何が起きたのかはまるで知らんけど。
……とにかく、じゃ。儂は急遽、日本を出ることになった。そこまでは良い。そこまでは、何とか良しとしよう。しかしなぁ……。
「私も! 行きます!!」
と、被身子が高らかに宣言しての。わざわざ七山に電話してじゃぞ? 今回の件は、色々と厄介そうじゃと言うのに付いて来る気満々じゃ。きな臭いような状況じゃって言うのに、事態に飛び込もうとするのはどうかと思う。何とか宥めようとは思ったんじゃが、こうなった被身子には何を言っても無駄なのも知っている。
じゃから、仕方なく条件を出した。
まずひとつめ。危険には絶対に近付かないこと。
ふたつめ。外に出るなら、儂かながんのどちらかを必ず同行させること。
みっつめ。
よっつめ。以上全ての条件を守るなら、連れて行く。
そしてこの条件を、被身子は直ぐに了承した。じゃから、連れて行くことにする。仮に置いてけぼりにしたら、下手すると勝手に付いて来るかもしれんしの。それはそれで良くない。色々と駄目じゃ。
それと、一応。雄英には許可を取った。被身子が秒で。たまたま寮に戻って来た相澤をとっ捕まえて、総監部からの依頼で渡米するから上手くやってくれと一方的に伝えておった。相澤は頭を抱えていたが、そっちは放っておく。あやつの頭が痛くなろうが、胃が痛くなろうが儂は知らん。大人なんじゃから、勝手に何とかしろ。
そんなこんなで。一通りの荷物を鞄に詰め込んで、儂等は寮を出た。……んじゃけども。
「なぁ、ながん。あれは何じゃ?」
「……戦闘機だな。アメリカの」
「その戦闘機の上に、何で人が立ってるんじゃ??」
寮の外に出て校舎の方に向かっていると、何やら仰々しい音が聞こえてきた。何事かと思い音がする方向、つまり空を見ると……そこには飛行機じゃ。それが何機も。正確には戦闘機と言うらしいが、儂にはよく分からん。何より、戦闘機が雄英付近の空を飛んでいる以上に訳の分からん光景が目に入った。流石に困惑するしかなかった。
じゃって、人が空飛ぶ戦闘機の上に立ってるんじゃもん。
……もう既に、何か嫌な予感がする。いきなり冷や汗が背中を伝う程に、猛烈な嫌な予感がする。
「人って戦闘機の上に立てるんですねぇ……」
いや、被身子。呑気に感想を言ってる場合か。まだ遠くに見える戦闘機は、どんどん儂等の方に近付いている。それから、明らかに儂を見ている気がする。気のせいで済ませたいところじゃが、戦闘機の上に生身で立ってるような奴じゃ。既に個性で、儂等を察知してるんじゃろう。じゃってあれ、
そう考えると、おおるまいとのように滅茶苦茶な奴な気がしないでも―――。
「Bros! I'll come back as soon as I pick up that girl.」
……は? いや、おい。戦闘機が頭上を通り過ぎたと思ったら、人が降ってきた。英雄装束に身を包んだ、偉丈夫な女。図体も雰囲気も、触覚のような髪も、何処ぞの筋肉阿呆を思い出す。そして
儂の目の前に、降ってくるな!!
「Nice to meet you! As I saw in the photo, it is really small!」
「……なんて?」
英語は分からん。聞き取れん。流暢に喋られると、尚更じゃ。まったく違う言語を当然のように話されると、頭が混乱しそうじゃ。被身子とながんは、この
「ぁーー……、Nice to meet you, too.She can't speak English. Can you speak Japanese?」
「Oh……、……日本語は少しなら」
「Do you have an interpreter?」
「Yes! I think you will need it!」
うむ。何を話してるのか、まったく分からん。被身子は何とか会話出来てるようじゃから、もう任せてしまおう。……なんて、思っていると。
「それ、I・アイランドで付けてた翻訳機ですよぉ。会話が成り立たないので、付けちゃってください」
「……なるほど?」
そういうことなら、受け取っておこう。儂としても会話が成立しないのは面倒なところじゃしの。差し出された箱を手に取り開けてみると、……なるほど確かに。あい・あいらんどで貸し出されていたのと似たような機械が入っとる。それを指で摘んで、ええっと……こうか。とにかく、耳に付けてみる。耳に何かを付けるのは、あまり好ましくないんじゃけどな。なんかこう、違和感が……。
「じゃあ、もっかい挨拶から始めるとするか。はじめましてだな、ヨリミナ! 私はスターアンドストライプ! 同じマスターを持つ者同士、仲良くやろう!」
……翻訳機は偉大じゃ。何を言ってるのかよく分かる。外国語の勉強など、これさえ有れば必要無いのでは……? まぁ、それはそれとしてじゃ。
「同じ、ますたぁ?」
何の話じゃ、何の。
「オールマイトのことさ! 後継なんだろう?」
「そうじゃけども」
少なくとも、表向きは。世間に認知されているのは分かっていたし、何なら世間に向けてあの筋肉阿呆の後継であることも伝えはした。が、まさか海を越えて海外にまで広まっているとはのぅ。そのせいで、こんな奴が目の前に現れてしまった。緑谷を守る為の嘘とはいえ、まさかこんな目に遭うとはの。……それから。
「おい。降ろせ」
儂を掴んで持ち上げるな。あの筋肉阿呆とそう変わらない背丈を見せ付けたいのか? 出会い頭に、軽々と儂を持ち上げおって。何なんじゃこやつは。悪意が無いのは分かるが、身長差を見せ付けられているようで少し頭に来る。もしや貴様、儂をちび等と思ってないじゃろうな? そんな風に思ってるなら、今直ぐ殴ったって良いんじゃぞ……!
「っと、悪い悪い。こんなに小さいとは思わなかったぜ、お嬢ちゃん」
「あ゛?」
「それじゃあ、アメリカまでひとっ飛びだ。ほら乗った乗った!」
「は?」
降ろされた、と思ったら。訳の分からん事を言っておる。おい、まさかとは思うが儂に戦闘機の上に乗れと? 流石にそれは無理が―――!
「マスターに挨拶したいところだが、生憎と直行直帰の命令だ。領空侵犯だなんだの言われる前に、海の向こうに帰らなきゃなっ!」
「ぬぉあっ!?」
おいっ。おい、跳ぶな! 儂を抱えて跳躍するな。それなりの速度でそれなりの高さまで達したのは良いが、そんな程度の跳躍では頭上を旋回している戦闘機までは届かないじゃろ……!
「空気! これより空気は、私を空に押し上げる!」
……は?
「ぬぉお……っ!?」
跳んだわ。いや、飛んだ。正確には、何故か真上に吹き飛ばされた。物凄い突風……と言うよりは、得体の知れない圧力がこの
「ちょっ、円花ちゃん!? 待って、私も―――!!」
遠くなってしまった地上で、被身子が叫んでいたが直ぐに聞こえなくなった。戦闘機が飛ぶ音があまりに喧しい上に、儂はもう戦闘機の上じゃ。見る見る内に、雄英が遠ざかって行く。何なんじゃもぅ……! もう筋肉阿呆なら間に合ってるんじゃけど!? おおるまいと以外の筋肉馬鹿と、これ以上知り合いたく無いんじゃけど!!?
◆
「もう一度改めて! 私はスターアンドストライプ! アメリカのトップヒーローだ!」
「……頼皆じゃ。貴様、滅茶苦茶が過ぎるぞ……っ」
まさか、戦闘機の上に乗って
……物凄く奇妙な感じじゃの。今まで呪術界で生きて来て、こんな事は初めてじゃ。
これについてはまた後で考えるとして。それよりも今は―――。
「で? 何でこんな滅茶苦茶な真似をしたんじゃ貴様は。どんな事情じゃ?」
目の前に居るこの
誤って戦闘機から落ちぬように、なるべく機体の中心側に腰掛ける。高速で空を飛んでいるはずなのに、風を全く感じないのはどういう理屈なんじゃろうな? 目の前に居るもう一人の筋肉阿呆の個性……に因る現象なのは確かなんじゃろうけども。やはり、空気とか風を操る個性なのか? これはこれで、後で聞いてみるとするか。何なら手合わせしたって良い。
「私もよく分かっちゃいないよ。それでも請け負うことにした。大統領の命ってのも有るし、個人的にあんたに興味があってさ。
マスターの後継を名乗る弟子が、どんなもんなのか直接見たいと思ってね。だからこうして、迎えに来たんだ」
「……そうか。それは難儀じゃな」
頂点に位置する
白々しい奴め。幾ら何でも、他国の人間をこんな形で連れ出すなんて許されんじゃろ。何かの法とか、国家間の何かに触れそうな愚行でしかない。そんな真似をしてまでも、どうしても儂を
……やはり総監部絡み、か? しかし七山は何やら大慌てじゃったし、この話は急に決まったことじゃし、説明すら不十分なままじゃ。何を考えてるんじゃろうな、
「今回ヨリミナをこうして連れて行くのは、私とのチームアップの為だ。今、向こうは変な事態が起きていてね。お陰で周りは大慌て。私も訳の分からん仕事を押し付けられたぐらいだ。
何せ、連日大勢の
「……それで?」
「私とあんたの目的は、正体不明の
―――なにせ、何一つとして痕跡が無い。学者さんが物理的に無理って言うぐらいにね。ポリスもヒーローも、捜査はお手上げだ」
「……」
ん、んん……。それはもう、答えを言われているようなものじゃな……。意識混濁の
「……こっちは腹の内を晒した。ヨリミナ、何か知ってるんだろ? 何せ、急に
「知らん。儂に聞くな」
ちっ。また面倒な事になって来たの。とんでもなく面倒じゃ。この件は総監部どころか、公安も絡んでる。これは間違いない。どうやら、儂をおおるまいとの後継に本格的に仕立て上げるつもりのようじゃ。それ事態は別に構わんのじゃけど、何というかこう……裏で色々と有りそうじゃ。ただ呪霊を祓いに
秘匿義務が有る故に、おいそれと呪術界の事を話すわけにはいかん。のらりくらりと会話を避けたいところじゃが、既に腹を探られている。こうなると、更に面倒じゃ。どうにかして誤魔化したいところじゃが、それも今更な気がしてならんの。
……まぁ、そうじゃな。好きに探らせてやるとするか。勝手に知られる分には、秘匿義務も何も無いし。
「儂から話せることは無い。が、協力はする。儂が請け負う任務じゃからの。
……それで? いつあめりかに着くんじゃ?」
「ざっと三時間、ってとこかな」
「えぇ……?」
三時間て。三時間も戦闘機の上で過ごさねばならんのか……? この新たな筋肉阿呆と、二人きりで? まぁ存外戦闘機の上は快適じゃから、どうせなら被身子も乗せて欲しかったものじゃ。そしたら三時間ぐらいなんてことは無いし、何より落ち着ける。まぁこうして意識を向ければ、微かに存在を感じられるんじゃが。ただ、なぁ……。
儂、高いところは落ち着かないんじゃけど? 何じゃってどいつもこいつも、儂を連れて空に出たがるのか。もういい加減にして欲しい。人は空から落ちたら死ぬんじゃぞ……っ!!
三時間後。儂は
それで? 今度は儂を何処に連れてくつもりじゃ、すたぁあんどすとらいぷ……とやら。
お久しぶりです。今回はだいたい十話ぐらいの毎日投稿かなって思います。三十話ぐらいを目標に終わらせたいですね、ワールドヒーローズミッション編。円花にとって、大事なお話になる予定です。多分。
三人称による補完は要りますか?
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欲しい
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要らん
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良いから一人称で突っ走れ