待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!!   作:一人称苦手ぞ。

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世界の危機。米国の状況

 

 

 

 

 

 

 米国(あめりか)は寒い。日本より寒い。厚着してたつもりじゃけど、それでもかなり寒いんじゃ。何でも、最低気温は零度を下回るとか。流石にこれだけの寒さは、そうそう体験したことがない。手は悴むし、時折吹く風が強くて顔に当たると何なら痛い。もう一枚、いや二枚程は着込みたいと思ってしまう程に。まぁでも、すたぁあんどすとらいぷの……部下? の、いぃさん……? が気前良く上着を貸してくれたので、多少は温い。襟巻き(まふらぁ)を持ってくるべきじゃった。いや、鞄の中に入れては有ったんじゃ。じゃけど急に、身一つで戦闘機の上に座る羽目になったからの。荷物は日本じゃ。被身子やながんが持って来てくれるじゃろうけど、すたぁ……曰く速くても到着は十何時間も先になるとか何とか。

 ひとまず。儂は米国(あめりか)の何処ぞの……確か、にゅうよぉく? とか言う街にある、たいむずすくえあ……? の、宿(ほてる)に案内された。米国(あめりか)の公安委員会からの特別待遇だか何だかで、良い部屋が用意されてるとか何とか。

 それと。すたぁと街中を歩いていると、そこらの通行人から注目の的じゃった。夜中じゃって言うのに、やけに人通りを多く感じた。何度物珍しげな視線に晒されたか分からん。勝手に写真を撮ろうとする者までおったし、何なら話しかけて来る奴も大勢居た。儂は英語がろくに話せんから、相槌しか出来んかったけど。特に道行く通行人と二人で並んで写真を撮られまくる羽目にもなった。面倒この上ない。勘弁して欲しいところじゃ。あと、酒臭い奴が多かったの。

 

「大人気だったな。今日は休んで、明日から働いてくれよ」

「……そうさせて貰う。これ、返しといてくれ」

「いや、あげるつもりで渡してる。お兄ちゃん達は面倒見が良いんだよ。素直に甘えとくと良い」

 

 案内された部屋に辿り着いたので上着を返そうとしたら、断られた。恩着せがましい、……って訳でも無いか。これは単純な善意じゃろう。仕方ないから、明日は後で礼のひとつでもしておかなければ。こういう時は、菓子折りでも用意したら良いのか? 被身子やながんと合流したら、見繕ってみるとしよう。さっそく手間が増えた気がするが、これについては良しとしておこうかの。

 

 ……それにしても。また随分と広い宿じゃな? 下手をすると、そこらの賃貸住まいよりも広いのでは?

 わざわざこんな部屋を用意してる辺り、やはり何か……裏が有るんじゃろうな。でなければ、日本の小娘をこうも待遇良く扱うものか。腹の探り合いやら恩の着せ合いなぞ御免被るが、これは国際的な英雄(ひいろお)活動の一環……とでも思っておくか。あまりに気乗りしないんじゃけどな。成り行きとは言え、儂は英雄(ひいろお)を目指す身じゃ。やるだけやってみるとしよう。上手く行くかは、知らんけども。

 

「さて。二人きりになったところで、話したい事がある。ちょっと良いかい?」

「……何じゃ改まって」

 

 すたぁが、丸い机の向こうに着いた。何やらそれなりの話が有るようじゃ。もう休ませて欲しいんじゃけど、話は聞いておくとしよう。儂としても、知れる事は知っておきたい。

 

「二人きりじゃなきゃ出来ない話さ。今からするのはこの国の重要機密の話。当然、他言は無用だぜ? 場合によっちゃ、私の立場すら危うくなる」

「……相分かった」

「じゃあさっそく質問だ。

 ……ヨリミナ。ジュジュツシ、ってのは何だ?」

「……」

 

 ん、んん。さっそく面倒な質問が飛んで来た。何が面倒って、これを儂から話すことは出来ん。秘匿義務は守らねばならんからの。七山に釘を刺されてもいるし。まぁ今回の共同任務(ちぃむあっぷ)は、儂が思うに呪霊案件じゃ。それも相手は特級呪霊。じゃからこそ、わざわざ儂を米国(あめりか)に派遣させた。何か上の方でそれなりのやり取りが有ったのも、事実じゃろうな。急に話が決まったと思ったら、急に滅茶苦茶な迎えが来たぐらいなんじゃから。

 

 ……日本と米国(あめりか)の均衡はどうなってたかのぅ。確か新安保がどうとか、相互協力関係がどうとか。試験(てすと)対策で頭に詰め込んだ筈なんじゃが、すっかり忘れてしまっている。まぁ良いか。政治的な事まで口出しするつもりは無いしの。試験(てすと)でまた必要になるのなら、もう一度頭に叩き込めば良いんじゃし。

 

 とにかく、じゃ。儂の方から、すたぁ……つまり米国(あめりか)に話せることは無い。事態が事態じゃから話したって許されるような気がするが、守秘義務は守秘義務じゃからの。

 

「それについては話せん。儂も立場が危うくなるからの」

「そっちも、守秘義務だの箝口令か。嫌になるよまったく。これじゃあ仕事のしようがない。……ヨリミナを信用も出来ないな」

「そこはお互い様じゃ。まぁ、例の悪党については恐らく儂の管轄じゃから任せてくれれば良い。

 独りにさせてくれれば助かるが、付いて来るのはそちらの勝手(・・・・・・・・・・・・・)じゃな」

「……そうさせて貰う(・・・・・・・)。お互い、上に振り回されて難儀なもんだ」

「まったくじゃ。面倒この上ない」

 

 何じゃって細かい事をあれこれと考えてまで、呪霊を祓わねばならんのか。任務はもっと単純なものが良い。現地に赴いて、呪霊を祓うだけで済ませたいところじゃ。まぁ窓も補助監督もろくに居ない状況では、儂も色々と動かねばならんのじゃけども。

 

「儂はもう休む。寝るのを邪魔されるのは嫌いじゃから、放っておいてくれ」

「そうするよ。おやすみ」

「んむ。おやすみ」

 

 話もそこそこに、すたぁは一旦帰って行った。もっとも、また直ぐに行動を共にすることになるんじゃろうけど。儂は付いて来たければ勝手にしろと伝えたんじゃ。それには勝手にされる分には隠さんと言う意図を込めてある。気付いてない、なんて事は無いじゃろ。向かい合って話した感じ、おおるまいとよりは話が通じる奴じゃと思う。……多分な。伝わってなければ、ただの筋肉阿呆でしかないが。

 英雄(ひいろお)の頂点に立つ者は、全員筋肉阿呆なのか? その可能性がどうにも捨てきれんのは、何かの間違いじゃと思いたい。

 

「……さて、と」

 

 広々とした部屋で、独り呑気に過ごすつもりは無い。動くならさっさと動いてしまおう。出来れば被身子と連絡したいところじゃけど、残念ながら連絡を取る方法が分からん。今頃はながんと二人で飛行機の中、じゃろうか? とっくに日本から飛び出しているとは思うんじゃけど、飛行機の搭乗手続きは色々と面倒じゃったからの。まだ空港に居る……なんて事も有り得る。

 

 ……まぁ、今は独りでも出来ることをしてしまうか。まずは、外に出よう。ここに来るまでの間に気付いたことじゃけど、不思議な事に米国(あめりか)は日本と比べて呪霊が少ない。これはこれでどういう理屈なのか気になるところじゃけど、今は考えても仕方ないか。

 ひとまず、譲られた上着を羽織ってじゃな? ……む、衣嚢(ぽけっと)に何か入っとるの。何かと思い取り出して見ると、米国(あめりか)の紙幣や硬貨と……折り畳まれた小さな紙? 何じゃこれ?

 

 取り敢えず折り畳まれた紙を開いてみると、そこには英語で何か走り書きしてあるの。ええっと、……ぽけ……ぽけっと、ま……ねぇ? ぷり、ぷりぃず? ふぃ……ふぃ……。………ふぃぃる? ……ふりぃ?

 

 どうぞ、自由に……? 自由に、……なんじゃったけこれ。

 

 ……まぁ、よく分からんから明日になったら返しておくとするか。こんな事を気にしてるより、さっさと外に出よう。札鍵(かぁどきぃ)はしっかり持って、携帯電話(すまほ)は……持ってても仕方ないか。圏外じゃし。これは置いて行こう。

 

 さて。それじゃあ、外に出るとしよう。見知らぬ土地で、それも真夜中で酷く冷えるが……まぁ何とかなるじゃろ。こうして自分から独りで出歩くのは、随分と久しぶりな気がしてならん。せっかくじゃから、調査がてら少し散歩してみるとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 米国(あめりか)の街並みは、日本とは大分違う。何がどう違うかって言うと、まず建物が違う。目に映るのは、四角くて高い建物ばかり。日本でよく見るような一軒家はまったく無い。道はどれも賽の目状で、いつまで経っても代わり映えしないような気がする。いや、歩き続けていると建物自体は変わってるんじゃけど……どれも似たようなものばかりな気がしての。少し歩けば交差点、また少し歩けば交差点。取り敢えず宿から出てひたすら直進してるんじゃけども、歩いても歩いても交差点にしか出会さないというか……。何処か途中で曲がれば良かったかのぅ? いや、曲がった先も交差点が見えたんじゃよなぁ。この国の街はどうなっとるんじゃ。真上から観たら、四角の連続になってたりするのかの。

 

 ……それから。夜中の騒々しさが、なにやら日本とはかけ離れている気がするの。警察車両(ぱとかぁ)警笛(さいれん)が常に鳴ってるような気がするし、時折物凄い勢いで何処かに走っとるし。ふと空を見上げて見れば、英雄(ひいろお)が紐……? を使った振り子運動で空を飛び回り、警察車両を追うように何処かへ向かって行ったりもしていた。それと、たまに爆音やら聞き慣れない騒音……多分拳銃による発砲音じゃな。も、聞こえてきたりする。日本もまぁ騒々しいものじゃけど、ここまで喧しくはない。と思う。

 そう言えば、日本と比べたら海外は犯罪率が高いんじゃっけ? ならば真夜中なのに、この騒がしさは納得出来るところじゃ。

 

 それから。道行く通行人が、やたらと話し掛けて来るんじゃよなぁ。日本と違って、他人との間に距離が無いような気がしてならん。それを適当にあしらうのも、そろそろ面倒になってきた。特に情報を持たぬまま、闇雲に外を出歩く意味は無かったのぅ。ただただ、気が向くままに散歩してしまってるだけじゃ。呪霊の一匹でも見えれば祓っておくんじゃけど、これがまるで見当たらん。どうなっとるんじゃこれは。

 

 ……仕方ない。いつまでも宛もなく歩くのは違うし、そろそろ宿(ほてる)に戻るとしようかの。確か、ただただ真っ直ぐ歩いていただけじゃから……逆方向に行けば戻れるじゃろ。でないと困る。よし、踵を返して部屋に戻るとし―――。

 

「おい、そこの少女!」

「……む?」

 

 踵を返したその瞬間。左から誰かが駆け寄って来た。見たところ、警察じゃと思う。多分警察じゃ。そんな雰囲気な服を着ているからのぅ。で? なんで警察が儂を呼び止めて、……って、あぁ……。そう言えば、儂は未成年じゃった。日本では好き勝手に夜を出歩いていても、警察に声を掛けられることは無い。それは単に儂が英雄(ひいろお)候補生じゃからって言うのと、警察自体に総監部が手を回してるからじゃ。

 しかし、ここは米国(あめりか)じゃ。未成年が独りで外を出歩いていれば、そりゃあ声のひとつやふたつは掛けるじゃろうて。しまった、独りで出歩くんじゃなかった。

 

「こんな時間に出歩いて、独りで何をしてるんだ。親は? 身分証は?」

 

 話し掛けて来たのは、警察の若い男じゃ。金髪で、目が青い。肌の白さも、なんと言うか日本人のそれとは違う感じじゃの。より白いと言うか、何と言うか……。まぁ、とにかく。警察に話し掛けられてしまった。職質じゃの、これ。

 

「……あいどんと、すぴぃく……いんぐりっしゅ」

「はぁ?」

「のぉ、いんぐりっしゅ。……どぅ、ゆぅ……じゃぱにぃず?」

「……日本語で話してくレ。俺、日本に友人が居ルんだ。聞き取れルし、話せルよ」

「なんじゃ、日本語で良いのか。それは助かるのぅ……」

 

 少し発音がおかしい気がするが、別に会話に支障はない。何なら有り難いぐらいじゃ。道行く誰かに話し掛けられても、話返すことが出来んかったからの。

 

「何で英語も話せないのに、こんな時間で独リで外に?」

「……ひいろお活動じゃ。取り敢えず、見回りしてた」

「……IDは? ヒーローって言うなラ、免許証を見せてくレ」

「……」

 

 ……うむ。困った。身分証の類は、今は持ち合わせて居ない。何せ、身一つで米国(あめりか)に来てしまったからの。もしかしてこれ、かなり駄目なのでは? いかんのでは? 現に、目の前の若い警官が訝しんでる。下手すると、警察署まで連れて行かれる気がするの。此処だけの職質で済めば良いんじゃけど、雰囲気が怪しくなって来た気が……。

 

「話は、署で聞かせて貰おうか。ほら、向こうのパトカーに乗った乗った」

「む、いや……。うぅむ……」

 

 笑顔で肩を掴まれた。結構強めに。確かに身分証を持ってないのは儂。夜間に独りで出歩いて、職質されてしまったのも儂。悪いのは分かっとる。分かっとるし、夜間外出以外でやましい事は何も無い。……んじゃけども、ここで警察の世話になるのは後で色々厄介そうと言うか。何なら被身子やながんに呆れられてしまうと言うか。総監部とか、ほぉくすにも叱られるじゃろうなぁ……。

 

 うむ、困った。どうしたら良いかの? 日本で職質されることが無かったのは、ひょっとして奇跡みたいなものじゃったのでは??

 

「……ほ、ほてるに送ってくれんかの? 何なら話はそこで……」

「大人しくしロ!! 何を出そうとしてル!?」

「ぬぉあっ!?」

 

 譲られた上着の衣嚢(ぽけっと)から札鍵(かぁどきぃ)を取り出そうとしたら、腕を掴まれた挙句が捻り上げられた。ついでに地面に組み伏せられたわ。やりおるなこやつ、動く気に淀みがない。若さの割りに、それなりの鍛錬を積んで来たんじゃろう。関心関心。もう少し若ければ、褒めてやっても良かった。

 

 ……なんて、呑気に考えてる場合では無いか。

 

 抵抗は、まぁ簡単じゃ。儂を組み伏せた警官を押し退けることは、難しいことではない。しかしここで抵抗してしまうと、公務執行妨害とやらになってしまうじゃろう。それこそ牢屋行きじゃ。と言うことはつまり、大人しくしているしかない。されるがままじゃの。被身子以外にそんな真似をされたって、嬉しくないんじゃけども。何なら不愉快じゃ。まっこと、気に食わん。が、大人しくして居よう。下手に騒動を起こすのは避けたい。ただでさえ、独りで異国に居るんじゃから。

 

「何処に何を隠していル!? 何を出そうとした……!!」

「か、鍵じゃ鍵……! ほてるの、鍵っ。ぽけっと!」

「鍵? ……あぁ、確かに鍵だな。で? 何でこんな物を持ってル? 何処で手に入レた?」

「すたぁ、に渡されたんじゃって。ほら、ひいろおの」

「スター? スターアンドストライプか? 嘘を吐くと心象が悪くなルぞ! せめてもっとマシな嘘を吐け……!」

「嘘じゃないんじゃが!? 確認すれば良いじゃろ、確認……っ!」

 

 いやぁ、もぅ……。いきなり面倒な目に遭ってしまった。すたぁの奴に出会ってから、ろくな目に遭わんの。あやつ、さては疫病神か何かの類いか? そうと言ってくれたら、つい納得してしまいそうなぐらいじゃぞ。何で儂がこんな目に遭わねばならんのじゃ。げ、解せぬ……!

 

「署まで連行すル! 大人しくしていロ!!」

 

 んんむ……。もう駄目そうじゃな、これ。こうなってしまっては、大人しく連行されるしかないか。

 まったく、今日は散々な一日じゃ。まさか米国(あめりか)まで連れ出された挙句が、勘違いとは言え警察に捕まってしまうとはのぅ。何と言うかもう、好きにしてくれ。要望通り大人しくしてやるから、これ以上変な目に遭わせるのは勘弁して欲しい。

 

 それから、儂は決めたぞ。米国(あめりか)では独りで出歩くのは止そう。でないと、またこうして警察に捕まってしまうかもしれんし。

 

 ……はぁ……。もう、散々じゃなぁ。儂、米国(あめりか)を嫌いになりそうじゃ……!

 

 

 

 

 

 

 







円花、警察にとっ捕まるの図。

三人称による補完は要りますか?

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  • 要らん
  • 良いから一人称で突っ走れ
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