待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!!   作:一人称苦手ぞ。

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世界の危機。案内と愚痴

 

 

 

 

 

 

 冷える朝は、起きたら味噌汁が飲みたい。もらるが朝飯を用意してくれたんじゃけど、何故か揚げ菓子(どぉなつ)と珈琲じゃった。米国(あめりか)では朝から菓子を食べるのが常識なのか……? おかしな国じゃなぁ。健康に悪そうじゃ。まぁ、朝から甘味を堪能出来る贅沢な国と好意的に解釈しておくが。実際、不味くはなかったからの。寝起きに頬張りたい味でもなかったが。

 

 で、じゃ。もらるが用意してくれたのは朝食だけではない。服も下着も一通り用意してくれていた。何でも、儂が宿泊している宿(ほてる)に向かってる途中で空軍の者に儂に渡せと押し付けられたらしい。多分、すたぁの部下じゃの。お陰で助かった。それから、念の為にと何やら部屋の中をあれこれと物色しておった。盗聴器の類いが無いか調べる、とか何とか言っておったの。

 そんなもらるを横目に取り敢えず用意された服を着てみたが、かなり子供っぽい服じゃった。訳の分からん不気味な猫の面が貼り付けてある、編み物(せぇたぁ)と短い(すかぁと)。それと、厚手の長靴下じゃ。どれも色や柄の主張が強くて、被身子が選んでくれる服とは大違いじゃ。端的に言うと、かぁいいものではなかった。それでも着るしかないんじゃけどな。……こんな格好で被身子に会ったら、盛大に嫌がられそうじゃなぁ……。

 

 なんて思ったのが、数十分前。儂は今、もらるが運転する車の助手席じゃ。被身子達が来る前に、宿(ほてる)の周辺を案内して貰うことにした。まぁ道順は覚えられる気がしないが、米国(あめりか)の街並みがどんなもので有るのかを少しでも知っておきたい。日本との違いは色々有るんじゃけども、一番大きな違いは……やはり呪霊が見当たらないことじゃな。蠅頭すら、まるで姿が見えない。いったい、どうなっとるんじゃ? 日本じゃったら、鬱陶しいぐらいに見掛けるんじゃけどなぁ……。

 

「―――で、ここがニューヨーク近代美術館ね。ニューヨーク3大美術館のひとつでさ? って、聞いてル?」

「……ん、あぁ……。まぁ、でぇとには良さそうじゃな? 許嫁と行ってみようかのぅ」

「日本人がデートに行くなラ、やっぱタイムズスクエアじゃない?」

「人混みは避けたいんじゃけどなぁ」

「この辺リは何処も似たようなもんだよ」

「……そんなものか。人が多いの、にゅうよぉくは」

 

 もらるに街中を案内して貰ってるんじゃけども、殆ど聞き流してるようなものじゃ。出来る限り窓の外を眺めて呪霊を探してるんじゃけごも、やはり見当たらん。仕方ないから、もう観光気分になって案内して貰うのも良いかもしれん。別に遊びに来た訳じゃないんじゃけども、今現状では特にやれる事が無いんじゃ。儂を招いておきながら放ったらかしにしているのは、いったいどういうつもりなんじゃか。公安が何を考えてるのかさっぱり分からんのは、日本も米国(あめりか)も大差無いようじゃな。

 

「……とこロで。ブラッディは、ヒューマライズの一件にも参加すルのか?」

「ひゅぅまらいず……? あぁ、何処ぞで爆発事件を起こした……」

「そう、テロ組織。今アメリカに来てルってことは、そっちも理由なんだロ?」

「別に指示は無い。……が、ひいろお候補生としては放っておけんか……」

 

 英雄の呪霊、ええっと……米国(あめりか)では、らいぁあまいと……か。偽の筋肉阿呆じゃなら、偽筋で良いのでは? まぁそれはどうでも良いか。……とにかくじゃ。

 

 儂は、呪霊を祓う為にこの国へやって来た。てろ組織とやらは放っておいて、任務を優先したい。と、一昔前までの儂はそう思ったんじゃろうな。今の儂は、英雄(ひいろお)候補生じゃ。そのうち、ほぉくすもこの国にやって来る筈じゃろう。あやつに付き従うのは微妙に嫌じゃけど、この際仕方ない。詳しい事はあの翼男に聞けと、何やら慌てた七山が言っておったしの。

 ほぉくすが来たら、ひゅうまらいず……の件で英雄(ひいろお)活動をする羽目になるんじゃろう。その前に、せめて出来そうな事をしておくか。

 

「もらる。この辺りにいわゆる、心霊すぽっとは在ったりするか?」

「……心霊スポット? まぁ、調べレば出てくルと思うけど」

「調べておいてくれ。……あと、紙と筆」

「筆? ……あぁ、ペンなラあルよ」

 

 頼み事ついでに、筆と記帳を借りた。こやつは協力者じゃからの。報酬は用意しておこう。渡された記帳は付箋だらけで、何やら使い込んである。何となく(ぺぇじ)を捲ってみると、あれやこれやと英語で書いてあるわ。何となくしか読めん。まぁ内容なんてどうでも良いんじゃけど。

 何度か記帳を捲ってみると、何も書いてない(ぺぇじ)が有った。ので、大きく英雄名(ひいろおねぇむ)を書いておく。ついでに、……あだ名の方も書いておいてやるとするか。ぶらっでぃ、なんてあだ名を名乗る気はしないが、どうにも世間に浸透してしまっている。どうにかならんものかと思うが、相澤曰く学生生活下での呼び名は本職(ぷろ)になった際も呼ばれ続けるそうじゃからのぅ。もはや諦めるしかないのかもしれん。……まったく、どいつもこいつも。

 

「ほれ。くれてやる」

「え? 何を?」

「……後で見ろ。と言うかお主、もう少し記帳(のぉと)は整理した方が良いんじゃないか?」

「いやぁ……。あレこレ書いてたラ、こうなっちゃうんだよね。あはは……」

 

 真面目なのか、だらしないのか。車の中は、それなりに散らかっとるしの。後部座席なんかは特に物が散乱しておる。そのくせ、助手席や運転席は綺麗なんじゃよな。変な奴め。

 

 ……それにしても。やはりこの街、或いは国では、ろくに呪霊の姿が見当たらない。米国(あめりか)は、人々の負の感情が溜まり難い……のか? 悪党による犯罪は日本より多いのに? どういう理屈でこうも呪霊が見当たらんのか、さっぱり分からん。

 

「あ、そこの喫茶店はコーヒーが不味い。しかも高い。でも、そレ以外は美味いんだよね」

「……そうか。ところで、今は何時じゃ?」

「そロそロ12時。昼食にすル?」

「腹は減ってない。……空港に向かってくれるか? そろそろ許嫁と付け人が着くと思うんじゃが」

「空港? 良いけど、時間掛かルよ?」

「構わん。合流が先決じゃ」

 

 昼になると言うなら、もうそろそろ到着してるであろう被身子とながんを迎えに行きたい。二人がどの便で米国(あめりか)に向かってるかは分からんが、儂が連れ去られた後に直ぐ動いたのならそう待たされることは無いじゃろう。多分。まぁ最悪、空港で待ち呆けする羽目になっても構わん。今のところ、呪術師としては暇じゃからの。

 

「って、ちょっと待った。空港までもっと時間が掛かルかも……!」

「ぬおっ!?」

 

 急に車が回転しながら止まりおった。ついでに、爆発音のようなものまで車外から聞こえた気がする。いきなり振り回されたから、窓に頭をぶつける羽目に遭った。別に痛くは無いんじゃけども、こんな風に止まるなら一声掛けても良いんじゃないのか……っ!? このたわけめ……っ!!

 

「なん、なんじゃおいっ」

「ご、ごめん。向こう!」

 

 向こう? もらるの奴が指差した方向を見てみれば……。……おぉ? 何じゃか分からんけども、儂等の前を走っていた車が空を飛んでいるの。いや、吹き飛ばされてるのか。爆発音のようなものは止まぬし、何なら悲鳴が聞こえて来たり群衆が走り回って逃げておる。

 

 ……なるほど、悪党か。米国(あめりか)の悪党は、やる事が派手じゃのぅ。まったく、仕方の無い。さっさと捕まえて、空港に向かうとしよう。まさかこんな足止めをされる羽目に遭うとはの。何処の国も、悪党ってのは突然大暴れするものなんじゃなぁ。

 

 

 この後。儂は何やら大暴れしている巨大な悪党を、とっ捕まえた。犀? いやむしろ、闘牛……? みたいな奴じゃったの。途中で現地の英雄(ひいろお)も駆け付けたから、即興で協力する羽目になってしまった。結果、迅速に悪党を捕まえることが出来たんじゃけども。なのに、そこらの建物は結構な被害を被ってしまったの。

 日本の悪党よりも、やる事が遥かに派手で滅茶苦茶じゃった。もらる曰く、この規模の被害は米国(あめりか)では割りと日常茶飯事らしい。……さては、とんでもない国じゃな? この国の治安は大丈夫なのか……??

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そう言えばお主、仕事は?」

 

 途中で悪党と遭遇してしまったから、空港に着いたのは昼を越えてしまった辺りじゃった。まだ日本からの飛行機は到着していないから、被身子達とすれ違っている……なんて事は無いじゃろう。それはそれとして、ふと気になったから聞いてみる。もらるは儂の協力者になってくれたが、じゃからって仕事や生活を放り出してくれとは言えん。協力は、あくまでも仕事や生活のついでで良い。そうしてくれないと、むしろ困る。儂に協力したから職を失ったなんて言われても、何もしてやれることは無いからのぅ。

 じゃから。確認はしておこうと思った。何なら被身子やながんを待っている間、二人で色々と取り決めてしまっても良い。

 

 空港の出入り口付近に有った長椅子(べんち)に腰掛けると、もらるは儂の隣に腰掛けた。

 

「ぁー……、うん……。上かラの指示でさ、ブラッディに付き添えってさ。だからこレも仕事の内……かな?」

「……まさか、お払い箱か?」

「いやいや、署長かラの命令なんだよ。君が滞在してル間は、色々面倒を見てやレって。まぁ俺としても、オールマイトの一番弟子には興味有ったし」

 

 ……まぁ、そういう事なら気にしないでも良いか。要らん心配じゃったわ。良いように上司に使われているような気がしないでもないが、何やら目を輝かせてるから野暮な事は言わないでおこう。

 に、しても。あの筋肉阿呆の一番弟子、……か。まぁ表向きはそうなんじゃけど、事情も知らん奴に期待されるような目で言われると妙な気分になる。別に一番弟子ではないし、後継でもない。ただの隠れ蓑じゃからな、儂。とは言えこの話題はどうしても避けられん。あの筋肉阿呆は、日本どころか世界的に有名過ぎるからのぅ。……確か、若い頃は米国(あめりか)で大活躍だったんじゃっけ? よく日本に帰って来られたの、あやつ。雁字搦めにされててもおかしくないような気もするが……。

 

「ぁーー……、えっと。もしかしてオールマイトの一番弟子とか、そう言う風に言わレルの嫌い?」

「……は?」

「何か、嫌そうだったかラさ。違う?」

「……いや、事実じゃし。まぁ色々、複雑な気分にはなるが」

「なルほど。事情有リなラ、そう呼ばないようにすルよ」

 

 気を遣われてしまった。そんなに嫌そうな顔をしとったかの、儂。つい顔を手で触ると、もらるが盛大に苦笑いしおった。

 

「まぁ君、隠し事とか向かないかもね。結構表情に出てルよ」

「いや、そんな事は無いが」

「コーヒー嫌いでしょ? 凄い嫌そうに飲んでた」

「……嫌いじゃけど」

 

 見透かされておったわ。確かに珈琲は嫌いじゃ。あれを美味いとは思えん。基本的に苦いし、かと思えば変に酸っぱかったりするし。

 

「じゃあ次はホットミルクにすルよ」

「牛乳はもっと嫌いじゃ」

「えっ。じゃあ……ジュースにする?」

「茶の方が良い。ほうじ茶とか緑茶とか」

「そレはこっちには中々無いかなぁ……」

「ちっ。不便な国じゃなぁ」

「ま、まぁ探して見ルよ。どっかに有ルと思うかラさ!」

 

 今度は変に気を遣われた気がするの。子供をあやすことに苦戦する大人みたいな顔をしおって。盛大に子供扱いされてる気がして、それはそれで気に入らんのぅ。じっと睨み付けてみると、困り笑顔を浮かべおった。仕方ないから、勘弁してやるとしよう。今はな。後で覚えてろよ、貴様。

 

「この国の警官は、色々と大変そうじゃな」

「……まぁね。そリゃあ大変だよ。でも、俺は上司に恵まレたかラ、そこは良かったかな?」

「そうか。せいぜい頑張ってくれ」

「そうすルよ。ところでブラッディはさ、今の個性社会をどう思う? 変に思ったりしない?」

 

 ……は?

 

「何じゃ急に」

「ただの世間話。と、愚痴かな? 警察やってルとさ、色々見てて思うことが有ルんだよ。無個性だかラかな? 余計に考え込んじゃったリすルんだよね。

 ヒーロー的には、どう思ってルのかなぁって」

 

 ……妙な事を聞く奴め。まぁ確かに、思わんところが無いと言ったら嘘になるか。どういう意図かは知らんけど、暇じゃから世間話ぐらいはしても良いか。協力者と友好的にしておくのは悪い事では無いからの。こやつには今後、忙しい目に遭って貰うかもしれんし。

 

「……まぁ、歪な世の中じゃとは思っとるよ。どうかしとる」

「どうしてそう思う?」

「……子供達がひいろおに夢見るじゃろ。で、傷付いたり……最悪死ぬ。儂、子供が傷付くのが死んでも嫌いじゃから」

 

 なんて、被身子を呪った儂が言っても説得力は無いか。じゃけど、それでも。

 

 儂は子供が傷付けられる事を嫌悪する。これは死んだって変わらなかった。今後も変わったりはしないんじゃろう。そう思うと、やはりこの時代はどうにかしとるな。個性なんてものが有って、英雄(ひいろお)だの悪党(ゔぃらん)だのが居て。そのせいで子供が夢見て巻き込まれて、結果……傷付く。何なら、死んでしまう。

 

「そっか。ヒーロー候補生でも、そう思うんだ?」

「お主はどう思ってるんじゃ?」

「んーー……。まぁ、良く思ってはないかな。個性には山程種類があってさ、個性次第じゃ無個性だけじゃなくって、個性持ちでも馬鹿にされたり迫害されたりするんだ。

 そういうとこ、結構嫌いかも。あ、他の人には内緒ね?」

「黙っとく」

「あリがと。でさ、昔……友達が死んじゃってさ。そいつ良い奴だったんだけど、異形系だったかラ色々有って」

「そうか」

 

 ……まぁ、こやつにも色々有ったようじゃ。全部を聞いてやるつもりはないが、仕方ないから少しは気に留めておいてやろう。大人が苦労してようが知ったことではないが、かと言って協力者を邪険に扱うのは違うしの。散々付き合わせることになるんじゃから、多少はな?

 

「……なんか、ごめん。知り合ったばかリですル話じゃ無かった」

「別に。お陰で、暇潰しにはなったみたいじゃぞ?」

 

 時間にしたら、せいぜい数分程度の会話でしかない。が、どんな内容でも話してれば確かに時間が過ぎるものじゃ。お陰で、ほれ。

 

 

「あっ! 居ました! 円花ちゃん居ました!!」

「待て渡我。走るな」

 

 大して待った気もしない内に、被身子とながんが見えた。ってこら、被身子。荷物を持ったまま自動階段(えすかれぇたぁ)を駆け下るな。気が急く気持ちは分かるが、そんなに顔を輝かせて急ぐんじゃない。……まったく、仕方のない奴なんじゃから。まぁ儂も、さっさと会いたかったんじゃけど。

 このまま被身子を走らせておくと危ない気がするし、儂も自動階段(えすかれぇたぁ)の方に向かって被身子との距離を潰そう。そうしよう。

 

 ……なんて思って、長椅子(べんち)から立ち上がったのが間違いじゃった。数十秒後、儂は盛大に抱き締められた挙げ句が滅茶苦茶接吻(きす)された。人前でじゃぞ? 駄目とは言わんけど、少しばかり加減をじゃな……?

 

 いや、まぁ。儂もしたかったから、良いんじゃけどっ!

 

 

 

 

 

 

 

 






GANRIKI☆NEKOを着る円花の図。
トガちゃんもナガンも合流しました。

三人称による補完は要りますか?

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