待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!!   作:一人称苦手ぞ。

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世界の危機。米国の頂点

 

 

 

 

 

 

 取り敢えず。被身子とながんと合流する事が出来た。その際、海外でも使える携帯電話(すまほ)と新たに耳に付ける通訳機を渡された。それと、これでもかと被身子に接吻(きす)されて途中から流石に気恥ずかしさが勝った。他の空港利用者には感動の再会的なものに思われたらしく、生暖かい目と拍手喝采で何じゃか申し訳ない気持ちにすらなったわ。まったく、儂の許嫁は少しも我慢出来ないんじゃから。嫌ではないし、求められるのは大歓迎じゃけども。それと、今の儂の格好について言及された際には肝が冷えた。被身子の目が据わってしまっての。

 

 ……おほん。とにかく、合流は合流じゃ。もらるに宿(ほてる)まで送って貰って、ひとまず二人が持って来てくれた巫女装束(こすちゅうむ)に着替えた。これから英雄(ひいろお)活動をするわけじゃないが、周囲に儂が英雄(ひいろお)の端くれであることを示す為に着ておけと、ながんに言われたからの。確かに急に悪党が起こした騒動に巻き込まれることも有るから、外ではこの格好をしていた方が後で都合が良いんじゃろう。

 

 着替えた後。儂は直ぐまた外に出た。と言うのも、宿(ほてる)に戻って直ぐ、すたぁに呼び出されたからじゃの。被身子を連れて行きたかったし、被身子自身も付いてくる気満々じゃった。んじゃけども、すたぁ……と言うより米国(あめりか)側からの要望での。儂とながんだけで来いとのことじゃ。どういう意図かは知らんけども、恐らく何か思惑が有ってのことなんじゃろう。渋る被身子を説得するのは、それはもう大変じゃった。最終的に納得してくれたんじゃけども、帰ったら機嫌を取らねば。

 それと、もらるには被身子の警護を頼んだ。警察じゃし、儂とながんが出て行ってしまうからの。まぁ宿(ほてる)の部屋に居る分には危険も何も無いとは思うが、念の為じゃ念の為。米国(あめりか)の勝手は日本とはまったく違うし、そういう意味でも、もらるに頼むのが手っ取り早かった。一応「儂の被身子に何か有ったら許さん」と、足を踏んで釘を刺しといたが。ながんには盛大に呆れられた。被身子は喜んでいた。もらるは、苦笑いじゃったの。我ながら、少し過保護かもしれん。

 

 まぁ、少し緑谷みたいな奴じゃし。真面目そうじゃから任せておいても大丈夫じゃろう。多分。さっそく気が気じゃなくなってしまった気がするのは、何でじゃろうなぁ……?

 

 ともかく。儂とながんは、空軍の者に案内されて海が見えて滑走路が有る空軍基地にやって来た。昨日、儂が真っ先に連れて来られた場所じゃの。儂に上着をくれた、いぃさんには礼を言っておいた。そしたら「日本人は礼儀正しいな!」と、笑い飛ばされたが。

 あぁそれと、呼び出された場所に向かってる最中で被身子から電話が有った。特にこれと言った用事は無かったみたいなんじゃけど、どうやら声が聞きたかったようじゃ。まったく、仕方のない奴なんじゃから。

 

「……それで? いったい何の用じゃ?」

「呼び出して悪かったね。明日の事で、色々話が有る」

 

 滑走路の側。戦闘機の格納庫……とでも言えば良いか? そこの前で、英雄装束(こすちゅうむ)姿のすたぁに何の用なのか聞いておく。わざわざ人伝に呼び出したんじゃから、それなりの用が有るんじゃろう。でなければ、直ぐにでも帰るつもりじゃ。

 

 それから、まぁ……。色々と、面倒な事になりそうな気がするのぅ。じゃってほら、すたぁの顔付きが嫌に真剣じゃ。となると、余程の用が有るんじゃろうな。

 

「まず、明日1600時。私達はヒューマライズのニューヨーク支部に殴り込む。これは世界各地の支部も同様だ。目的は、ヒューマライズが保有しているだろう個性因子誘発爆弾(イディオトリガーボム)の確保。及び、首謀者であるフレクト・ターンの捕縛。それと、構成員も残らず引っ捕らえる」

 

 なるほど。さっそく英雄(ひいろお)達は動くようじゃ。となると、儂もそれには同行する事になるんじゃろう。これは世界中で起きてるいざこざじゃからの。被身子や家族、くらすめぇと達が巻き込まれる可能性が有るんじゃから同行しない理由が無い。しかしそれだけならば、わざわざ呼び出して言う必要は無いじゃろう。本題は、間違いなく別に有る。じゃってほら、見ての通り。

 

 ―――すたぁが、臨戦体勢じゃからの。平然と立っているが、気が隠せておらん。何なら、やる気満々じゃの。些か急な話じゃが、儂としても米国(あめりか)の頂点の実力を体感出来るのは有り難い。何なら今直ぐ始めても、儂は構わんぞ?

 

「待て、スターアンドストライプ」

 

 って、おい。おい、ながん。何で儂と、すたぁの間に立った? 思いっきり睨み返してやったのに、何なんじゃもぅ。邪魔をするな邪魔を……!

 

「この子を試す気か?」

「……レディ・ナガン。悪いね、これも上からの命令さ。

 ―――何より、私が知りたい。その子が、本当にマスターの後継に足るのかをね」

「明日に作戦開始なら、手合わせに余力を使う必要は無いだろ?」

「まぁね。だからそこは、きっちり余力を残してやるよ。怪我はさせない、それで良いだろ?」

「……駄目だ。この子は日本の、最重要戦力だ。その点ではオールマイトより、ずっと優れてる。無駄に摩耗させるつもりはない」

「へぇ……。だったら尚更、私が直々に測らなきゃな!」

 

 ……はぁ……。あぁ、もぅ。多分これは、どちらも公安からの指示じゃろうな。米国(あめりか)と、日本の。向こうは儂の実力を測りたい、こちらは儂の実力を隠したい。そう思ってるんじゃろうなぁ。ながんや、すたぁ。そして儂を使って、くだらん腹の探り合いをしないで欲しいのぅ? まったく、仕方のない話じゃな。面倒この上ない。

 

「……ながん、退いておけ。儂は構わん」

「頼皆、そういう問題じゃない。公安があんたを守ろうとしてんだ。気色悪いが、今は守られてな」

「隠してたって、いずれ知られる話じゃろ。そういう事なら、手を抜いてやる」

 

 ちっ。つまらん。せっかく、すたぁの実力を体感出来る良い機会じゃったのにな。それを公安だの何だのに邪魔されるのは、まるで良い気がしない。腹の探り合いは間に人を立てず、直接やって欲しいものじゃ。まったく……!

 

「……はぁ……。結局こうなるのか……。良いか頼皆、操血は使うなよ」

「相分かった」

 

 ……はぁ……。術式を使うなと来たか。可能な限り、総監部は米国(あめりか)に呪術を秘匿したいんじゃろうな。米国(あめりか)米国(あめりか)で、呪術を探りたいみたいじゃけどな。でなければ、すたぁが呪術師について聞いて来たりはしない。どういう手を使ったのかは知らんが、この国は既に呪術界の事を知っているようじゃからの。

 

「そういう訳じゃ、すたぁ。手を抜いて相手をしてやる。知りたかったら、儂を本気にさせてみろ」

「―――良いね。その強気は嫌いじゃない。ただ、どこまで持つか見ものだな」

 

 格納庫から、すたぁと横並びになって歩き、離れる。術式を使えんのは手間がかかるが、まぁやるだけやってみるとしよう。あ、そうじゃ。ついでじゃから、試しに呪具を使ってみるとするか。隆之が遺して、今は儂の後腰に差してあるやつじゃ。ここは水辺ではないが、ただの呪具として……単なる脇差しとしては十分に扱えるじゃろう。

 

「お兄ちゃん達! 適当に合図してくれ!」

 

 ……格納庫の中で何やら作業をしていた空軍の者に向かって、すたぁが大声を出した。そしたら全員が作業の手を止めて、ぞろぞろと格納庫から出て来た。中には、何処から取り出したのか酒を持ってたり椅子を運んでいる者も居る。何なんじゃもぅ、どいつもこいつも……。

 

「……おう、じゃあ合図するぜスター。ちなみに、お前らどっちが勝つに賭けるよ?」

「怪我無しとは言え、個性有りのガチンコだろ? なら、俺ぁスター」

「俺もスター」

「俺もだ。姉ちゃんは?」

「……頼皆だ」

 

 おい。何で賭けが始まろうとしてるんじゃ。それはそれで気に食わんのじゃが? 何で見世物にならねばならんのか。解せぬ。

 

 ……まぁ、良い。本気は出さぬが、手合わせは手合わせじゃ。脇差しの柄に手をかけ、鯉口を切る。すると、すたぁが身構えた。分かり易く拳を握りおったわ。

 

「―――、始め!!」

 

 いぃさん、が合図を出す。と、同時。儂は脇差しを抜く。すたぁは―――。

 

 

「そのナイフが得物か!? ブラッディ!!」

 

 

 合図が有るなり、真っ直ぐ飛び掛かって来た。速度はそれなり。まぁ、手を抜いてるのはお互い様か。

 

「っと」

 

 迫る拳を余裕を持って避け、同時に脇差しを振るう。(まこと)に斬る訳にはいかんから、あくまで峰打ちじゃ。

 迫った峰を、すたぁもまた余裕を持って避けて見せた。

 

 ……ふむ。互いに手加減しているとは言え、それでも見えて来るものがある。強いな、こやつ。米国(あめりか)の頂点に立つんじゃから、当然と言えば当然なんじゃけども。

 

 今度は、儂から仕掛ける。三歩で間を潰し、上体を低くしてすたぁの足元に潜り込む。術式を使うなと言われてるし、これは儂等を通した腹の探り合いじゃからの。じゃから、呪力強化も使わんでおく。とことん実力を隠しながら手合わせをするのは、思いの外……機嫌が悪い。

 

「ふっ!」

 

 下から上へ、柄尻を突き出す。狙いは胸の中心。鳩尾じゃ。顔面を狙いたかったが、呪力も術式も無い素の身体能力ではまず当てられんじゃろう。

 まぁ案の定なんじゃけど、鳩尾を狙った一撃は軽々と避けられた。仕返しと言わんばかりに側頭部を狙った拳が飛んできたから、頭を下げて避ける。っと、下から膝が来た。それは腕で防ぐと、身体が浮いた。んんむ……、どうして儂の身体はこんなに軽いんじゃろうなぁ。下から突き上げるような攻撃じゃったり、速度と体重が乗った一撃なんかはどうにも受け難い。浮いてしまうからの。

 

「HAHAHA! SMAASH!!」

「ぬおっ!」

 

 浮いた儂に、更なる追撃が来た。真っ直ぐ顔面に向かって来る拳を、刃の腹で受ける。当然受け止め切れぬから、儂の体は割りと派手に吹き飛んだ。明らかに加減されていても、これか。二転三転と転がり、立ち上がろうとすると直ぐに間を詰められた。から、左に転がって蹴りを避ける。

 ひとまず体勢を整えようとすると、そうはさせまいと言わんばかりに再び距離を詰めて来た。……仕方ない。

 

 真っ直ぐ突き出された拳が迫る。それを寸前で避けると同時、脇差しを手放す。代わりに両腕を絡めてでも掴むのは、突き出されたすたぁの腕じゃ。

 

「どっ、こいせぇっ!!」

 

 すたぁの勢いを利用し、背負い投げるっ。

 

「うおっ!? やるね……!!」

 

 勢い良く地面に叩き付けてやるつもりが、跳ばれた。宙で身を翻して、見事に着地してみせたわ。力も、身のこなしも悪くない。むしろ、かなり良い。手加減せねばならん事が、この上なく不愉快な程に……!

 

 ……ちっ! 不快じゃ。不愉快じゃっ。せっかく猛者とぶつかり合えるのに、互いに手加減するしか無いとはな……っ! 思う存分暴れさせろっ!!

 

 不愉快なままに、足元の脇差しを蹴り上げることで拾う。再び峰を向けるように構えると、すたぁは拳を構え直した。あやつも儂も、加減せねばならんとは言え、生半可な手では互いに通用しないことは分かっている。もっと全力で、もっと本気で挑まなければ、正しい実力を把握することは出来ないじゃろう。くそ、くそっ!

 

「操血、とやらは使わないのか? それで実力を示せるとでも?」

「貴様が先に個性を使えば、考えてやる」

「はっ。そりゃあ、無理ってもんだな!」

「気が合うな、ひいろお!」

 

 どちらからでもなく。儂もすたぁも、互いに向かって駆ける。速度は、今のところ向こうが上。力も重さも、素の状態で儂より優れている。当然じゃ。儂は身体が出来上がっていない。と言うより、身体を作れない。ろくに太らんし、ろくに筋肉が付かぬからな。じゃからこそ、呪術を扱わなければ儂自身はそう大したものじゃない。が、じゃからって素直に率直に負けてやるつもりは無い。実力を隠していようが、呪術を使わなくとも関係無い。勝負は、勝負じゃからなっ!

 

「ぬ、ぉおっ!!」

 

 全力で、今出せる渾身の力で、脇差しを振るって見せる。縦に横に、斜めに奥に。振って、薙いで、突き出して。向けているのは峰や柄尻とは言え、狙うは人体の急所。

 

 頭を、喉を。首を、鳩尾を。

 

 当たれば無事では済まんところへ、何度でも脇差しを振るって行く。……が。その全ては避けられ、弾かれ、或いは防がれた。手応えが無いわけではない。最後に繰り出した柄尻での突きは、腕で防がれはしたものの会心の当たりじゃったと思う。骨の一本ぐらいは、もしかすると折れていてもおかしくないぐらいの。それだけの手応えがあった。……しかし。

 

「はっ! ちったぁやるね!!」

「ぬぐ……っ!!」

 

 すたぁは怯むことなく、儂を殴り返して来た。たった今、儂の突きを防いだ腕でじゃ。どうやら、折れも砕けもしていないようじゃな。再び刃の腹で拳を防いだ瞬間、伝わってくる力はつい先程のものと何ら変わりなかった。ちっ、まさか骨すら砕けんとはの……! 頑丈な奴め……!!

 

「マスターの弟子にしちゃあ、軽いな!」

「喧、しいっ!」

 

 くそっ。防げば浮かされる。飛ばされる。この体重差ばかりは、素のままではどうしようもないっ。鍛え抜かれた者とこうして手合わせしていると、正面からぶつかり合っていると、より強く思う。

 

 ―――儂は、軽い……!

 

 わざわざ言われるまでもない。それは誰よりも、儂自身が痛感してる事じゃ。それでも、この身体でやって行くしかない。重さを持たず、柔さしかないこの身体でやって行くしかないんじゃ……!!

 

 拳一つで吹き飛ばされて、どうにか受け身を取る。刃を地面に突き立て身体を制動してみれば、再びすたぁに間を詰められた。振り被った拳が見える。体勢が悪い……っ!

 

「ここまで、だっ!!」

「ぐお……っ!?」

 

 蹴り飛ばされた。腹を思いっ切り。防ぎ損ねた挙げ句が、二転三転と地面を転がる羽目になる。呪術無しでは、単純な力比べではどうにも分が悪い。直ぐに受け身を取って立ち上がる。痛みなど、儂には何の問題にもならん。それよりも、それよりもじゃ……!

 

 

「きひっ」

 

 

 いい加減に、楽しくなって来た……!

 

 良いじゃろうっ。ここからは―――!!

 

 

「あれを呑むぞ、隆之……っ!」

 

 

 ここからは。もう、本気でやるっ。国同士の腹の探り合いなど、知ったことじゃないっ! 呪力を呪具に流し込み、振り上げる。この呪具が持つ力を、隆之が遺した呪いを、思う存分に―――!!

 

「―――!! 大気は! 私の三倍の大きさで固まる!!」

 

 刃を、振り降ろすっ。すたぁが何をしていようが、関係無い。この呪具は、隆之の術式を持っている。あやつの術式は、水を操る。水を操作するだけのものじゃ。故に、水辺で無ければ使い物にならんじゃろう。かつての儂はそう思っていた。じゃけど、今は違う……!!

 

 いつかに、隆之が言っていた事を思い出す。空気には水が有ると。あの時は術式の解釈を広げることに苦心しているとだけと思って聞き流していたが、今ならば分かる……! この呪具を通して、はっきりと!

 

 

「ぉ、い……! おいおいおい!! スターー!!」

「下がってなお兄ちゃん達!!」

「待て! 頼皆!!」

「もう待たん!!」

 

 ただの一振り。ただ、呪力を込めただけの一閃。じゃが、それが産み出したものは流石に儂の認識を超えていた。

 

 っは。隆之め。儂の死後、いったいどれだけ術式を鍛えたんじゃっ!

 

 一振りで出現した水は、人など楽に押し流せそうな程の量。ちょっとした津波みたいなものじゃ。それが横へ横へと広がりながら、猛烈な勢いですたぁに向かって進んで行く。並みの悪党なら溺れたって仕方ないじゃろう。場合によっては死ぬかもしれん。

 じゃが、目の前に居るのは並大抵の悪党ではない。米国の頂点に位置する、英雄(ひいろお)じゃ。故に、たかだか小波程度に呑み込まれるような奴ではない!

 

「っは! 呪具ってやつか!? やるじゃないか……!!」

「喧、しいっ!」

 

 案の定、小波程度では通用しなかった。もう一度。もう一度じゃ……! 今度はもっと、もっと多量の水を喰らわせてくれるっ。

 

 次こそは荒波で呑み込んでやろうと、脇差しを振り被った―――その時。

 

 

「そこまで、だっ! お互い、満足しただろ!?」

 

 

 ちっ。ながんが、儂等の間に割って入りおったわ。何じゃもぅ、これからもっと楽しくなると言うのに……! どうしてどいつもこいつも、儂の楽しみを邪魔しようとするんじゃ!? げ、解せぬ……!!

 

 じゃけども、まぁ……。

 

 ……まぁ、これ以上続けてしまえばお互いに怪我では済まなくなる。明日の夜になれば、ひゅうまらいず……とやらの支部に殴り込むんじゃ。ここで二人して怪我をする、なんて真似は避けたい。呪力を多く消費するわけにもいかん。

 どうにも不完全燃焼となってしまうが、ここらで打ち止めとしてやろう。すたぁが最後に何をしたのかはよく分からんが、水の流れを見るに空気の壁でも作ったんじゃろうな。でなければ、あやつの周辺だけ濡れていないなんて事態は起こらない筈なんじゃから。

 先程は、大気と言っていた。空気ではなく、大気と。お陰で、昨日と共通していることを見付けた。あやつは、空気なり大気なり……まずは何かしらの名称を口にしてから何かを起こしている。となると、声が発動条件か……? いや、それならば個性を使う際にわざわざ身体を動かす必要が無い。

 

 ……んんむ。よく分からん。よく分からんが、これだけは分かる。どうせ、あやつも滅茶苦茶な個性なんじゃろうなぁ。儂なんて、触れたものがぐるぐると回るだけの個性なんじゃぞ。これまで色々な個性を見て来たが、個性は格差が物凄い。まぁそれは、術式じゃって同じじゃけども。

 

「あんたもスターも、滅茶苦茶な真似は止せ。まったく……!」

「じゃ、そうじゃぞ? すたぁ、自省したらどうじゃ?」

 

 脇差しを二度、三度と振るい刃に付いた水を払う。それから、鞘に納める。納刀しきると、小気味良い音が鳴った。この呪具が如何に優れたもので有るか体感出来ただけでも、今回は良しとしようかのぅ。もしこれに等級を付けるのなら、特級でも良いんじゃないのか? まったく、とんでもない代物を遺しおって。

 

 それはそうと。ひとまず、すたぁも納得したようじゃ。もう気を張り詰めては居ないし、現に儂等に向かって気楽に歩いているからの。

 

「それはそっくりそのまま返すさ。ブラッディこそ、自省しな。まぁ滅茶苦茶なのは、マスターの弟子らしいな!」

「……えぇ? いや、あんな奴と一緒にするな。不名誉じゃ、不名誉っ」

 

 何であの筋肉阿呆と、同列に語られねばならんのじゃ。あんな奴と一緒にするんじゃない。単純に不愉快じゃっ。あんな、筋肉と才能だけで物事を万事解決するような阿呆と同じに思われても嬉しくない……! と言うかじゃな、貴様っ。貴様こそ、その髪の触覚はなんじゃ。おおるまいとみたいな髪型をしおって……!

 

「どうだ? 飯でも行かないか? お兄ちゃん達も連れてさ、美味い店に行こう! 奢るぜ!」

「……はぁ?」

「お、良いなそれ」

「んじゃあ、店予約しとくわ」

「ガッツな姉ちゃんも一緒にどうだ?」

「……この子が行くなら行くよ」

「なら決まりだ! 今夜は歓迎会だな!!」

 

 いや、おい。話を直ぐに取り纏めるな。儂、まだ頷いてないんじゃけど? なのに勝手に話を進めるんじゃない。どいつもこいつも、何なんじゃもう!

 

 

 こうして。儂は今夜、すたぁや空軍の奴等に歓迎会をされることになってしまった。後で何で止めなかったとながんに聞いたら「友好的にしとけ。アメリカの公安は敵かもしれないが、この人達は味方になってくれる筈だ」とのこと。まぁ殴り合って気付いた事でも有るんじゃけど、すたぁはそう悪い奴じゃない。英雄(ひいろお)らしく、やはり善人じゃ。空軍の奴等じゃって、多分そうじゃ。

 

 ……んんむ。仕方ない。ここはひとつ、友好的な態度を示しておくか。こやつ等とは、特に対立するつもりはない。明日は英雄(ひいろお)として、同じ任務を果たすんじゃからな。親睦は、多少なりとも深めておいた方が良いんじゃろう。多分。

 

 

 

 

 

 







スターとイチャイチャ()してるので、これは実質浮気みたいなものでは……?

三人称による補完は要りますか?

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