待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!!   作:一人称苦手ぞ。

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一方その頃。トガ的警戒

 

 

 

 

 

 

 むぅうう〜〜っ。

 

 円花ちゃんがアメリカのNo.1ヒーローに呼び出されて、ホテルから出て行っちゃいました。せっかく十数時間ぶりにイチャイチャ出来ると思ったのに、そうはならなかった事が不満です。仕方ない事情が有るのは分かってますけど、円花ちゃんが呪術師としてヒーローとしてこの国で活動しなきゃいけないのも分かってるんですけど、それでもやっぱり不満は不満なので。公安も総監部も、大前提としてヨリくんはトガのものだって認識が抜け落ちてるのです! まずは私ありきって事を、しっかり覚えてくれないと困ります……!!

 

 むすーーっ。こうなったら、ヨリくんが部屋に帰って来たら思う存分イチャイチャしないと気が済みません。朝まで愛を重ね合っても良いですし、外に出て気が済むまでデートするのも良いですねぇ。何なら今直ぐホテルから飛び出したい気分ですけど、それは流石に我慢します。アメリカの地理なんて分かりませんし、土地勘も無いので。

 

 まぁ、円花ちゃんが護衛代わりに置いてったお巡りさんに頼み込むって手も無くは無いですけど。……それでも、我慢です我慢。トガは約束が守れる良妻なので!

 

 ……それにしても、独りで部屋に居るのは退屈で仕方ないのです。ベッドに寝転んでザッピングしてますど、気になった番組は特に無いです。そもそも海外のテレビ番組はよく知りません。仕方ないからニュースっぽい番組でも垂れ流しにしておきましょうかねぇ? ここ最近にアメリカで起きたことを知っておくのは、補助監督として大事なので。そのついでに、英語の再勉強もしておきたいところなので。

 なにせ。ヨリくんの記憶を全部体験したら、学校で学んだ事や勉強してたことが頭から殆ど抜け落ちました。三学期が始まってからは、授業に付いて行くのでいっぱいっぱいで……。まだ何とかなってますけど、そのうち本当に置いてかれちゃうのです。そしたら、流石に特待生を維持出来なくなっちゃう。輪廻ちゃんやおじさんに学費を援助されたくないですし、高給取りになった円花ちゃんに支払って貰うのも嫌です。……親とすら思いたくない両親には、絶対頼りません。

 

 だから、決めました。円花ちゃんとイチャイチャしたり、ヨリくんのお手伝いをする隙間時間で猛勉強します。特待生のままで居られるように、三年生になるまでに学力を取り戻します……!

 

 な の で。キャリーケースの中に入れておいた教科書とかノートとか問題集を使って、円花ちゃんと火伊那ちゃんが帰って来るまでに勉強しようと思います。英語……は、まだ何とか話せますし、テレビを点けっぱにしてればリスニングの勉強になります。他の科目は、もうこの際目に付いたものを片っ端からやっつけちゃうのです。取り敢えず、何とかベッドの上まで手繰り寄せたキャリーケースの中身を一気にひっくり返します。ざばぁ。だばぁ。

 

 それで、最初に目に付いたのは……。あ、歴史の教科書ですね。内容を暗記し直します。ええっと、まずは―――。

 

 

「……ヒミコ、……さんだっけ? 君の護衛を任さレたモラルだけど。ちょっと良い?」

Nah.()I'm busy now(今は忙しいので)!」

 

 部屋の扉の向こうから、私達がアメリカに着くまでの間に円花ちゃんがお世話になってたお巡りさんが話しかけて来ました。でも、お断りしておきます。理由は三つです。

 

 単純に勉強に集中したいのが、ひとつ。

 もうひとつは、あの人……空港でヨリくんと親しげにしてたので。いやそれだけなら別に嫉妬だけで済むんですけど、たまに円花ちゃんを探ってるような気がするので。

 

 金髪になって少し髪と背が伸びた緑谷くんみたいな感じの人ですけど、ちょっと直ぐには信用出来ないんですよねぇ。円花ちゃんはやっぱり異性に対する警戒心が無いので、その分トガが警戒しておきます。そもそも、男性を部屋に招き入れたいとは思わないので。そんな無防備な真似はしません。

 

 最後のひとつは、円花ちゃんを見る目が露骨だったんですよねぇ……。そりゃあ円花ちゃんは物凄くカァイイ美少女で、目を奪われるのは仕方ないかなって思います。でも、見る目とか表情とかが……何か隠してる感じで。お巡りさんなのに、ちょっと怪しいんですよねこの人。ヨリくんは鈍感なので、気付いてないかもしれませんけど。

 

「ぁーー、えっと……。んん……、何か……ごめん?」

Please work properly(ちゃんと働いてください)

「……Roger(了解)

 

 さて。お巡りさんが静かになったので、勉強です勉強。ヨリくんと火伊那ちゃんが帰って来るまでに、一通りやっちゃいましょう。早く帰って来て欲しいですけど、急かすような真似はしたくないので大人しくお留守番なのです。

 あ、でも。少し電話ぐらいしても良いですかね? 慌ただしく飛行機に乗り込んだので、私や円花ちゃんのスマホはアメリカじゃ使えません。でも総監部から海外でも使えるスマホを支給されましたし、それは火伊那ちゃんがちゃんと渡してくれたので大丈夫です。今は……空軍基地に向かってる最中ですかねぇ。先に電話しちゃいましょう!

 

『……もしもし?』

 

 八回コール音が鳴ると、電話が繋がりました。んふふ、電話するの結構好きです。だって円花ちゃんのカァイイ声が耳元で聞こえるの。んふふふ。

 

『おい。何なんじゃもぅ』

「えー? 円花ちゃんの声がカァイイなって!」

『まったく……』

「仕方のない奴め?」

『まっこと、仕方のない奴め』

「えへへぇ」

『……褒めとらんからな?』

 

 とか何とか言っちゃって、私の事を愛しいって思ってるのがバレバレなのです。まっこと、隠し事が出来ないんですよねぇ。円花ちゃん歴十三年、ヨリくん歴五十九年だからお見通しってのも有るんですけど!

 

『で? 何の用じゃ?』

「用なんて無いですよぉ。電話したいなって思ったので!」

『……まぁ、良いんじゃけど』

「電話出来て嬉しいのです。ヨリくんはぁ、どうですかぁ?♡」

『……うるさい。変に囁くな、たわけ』

 

 あ、喜んでる。まぁ円花ちゃんが私からの電話を嫌がるなんて事態は、そうそう起きないって知ってるんですけど。今の『たわけ』は照れ隠しなのです。カァイイ♡

 

『……ろくでもない事、考えてるじゃろ?』

「えー? そんな事ないですよー?」

『白々しい奴め。まったく』

 

 たまには電話越しにイチャイチャするのも、結構嬉し楽しいのです。やっぱりいつでもどこでも、円花ちゃんとイチャイチャしたいですから。出来ればこのままずっとお喋りしたいんですけどぉ、流石にちゃんとします。やっぱり勉強はしないといけないので。

 だから、ヨリくんとお喋りしつつ勉強します。ええっと、まずは……数学から攻めて行きましょう。それが終わったら物理です物理。今日は数字や記号と戦いましょう。うっすらとしか思い出せなくなってるので、今は高校の範囲だけでも覚え直します。どうせなら去年の教科書も持ってくるべきでしたかねぇ……。あ、そうだ。円花ちゃんの荷物の中に、円花ちゃんの勉強用具を入れといたんでした。そっちを借りちゃいましょう。ばさぁ、どばぁ。

 

『……何してるんじゃお主』

「荷物をひっくり返してます!」

『えぇ……? 何でまたそんな事を……』

「勉強の為ですよぉ。ちょっと教科書とか借りますね!」

『相分かった。……なんか、すまんの……』

 

 ……むぅ。ヨリくん、最近は直ぐしょんぼりしちゃうのです。そりゃあ大変じゃないと言ったら流石に嘘ですけどぉ、でもだからってそんなに気にする事じゃないのに。ヨリくんの記憶を全部体験出来たことは、トガ的には凄く幸せなことなんですから。だってもうこれで、私はヨリくんそのものって言っても過言ではないので! んふふ、好きな人と何でも一緒って……やっぱり素敵!

 

「愛してますよぉ。ヨリくんの、円花ちゃんの全部を」

『……儂じゃって、被身子の全部が……その』

「その?」

『……ぁ、愛してる。って、言わせるな気恥かしいっ』

「えへへぇ。素直な円花ちゃんも素敵ですよぉ」

『……まったく……』

 

 んーー……。んん、んんむむむ! いやぁ、やっぱり色々忘れちゃってますねぇ。ヨリくんと電話しながら教科書を見返してますけど、何となくしか思い出せないのです。やっぱりこうなったら、最初から全部やり直しちゃいましょう! 一年の範囲から覚え直しです!

 

『……っと。そろそろ着くそうじゃ。すまんが……』

「はぁい。また後で電話してください!」

『相分かった。また後での。……ぁ、愛してる』

「はい! 私も愛し―――」

 

 あっ。途中で切れちゃいました。もぅ、照れちゃってカァイイんですから♡

 

 さぁて、勉強です勉強! 円花ちゃんとイチャイチャしたらテンション上がって来たので、この勢いのままやっつけちゃいましょう!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん、んーー……っ!」

 

 今日の勉強は、終わりですっ。集中してやってたら、気が付けば夕方になってました。すっかり体が固くなっちゃったので、思いっ切り伸ばしてストレッチしておきます。ついでに反転術式も回して、凝りとはおさらばしちゃいましょうっ。

 ……それにしても、すっかり凝りに悩まなくて良い体になったと思います。前まで結構肩が凝ったりしてたんですけど、今ではそんなに。ちょっと凝る時もあるかなーってぐらいで、凝っても直ぐに治せますし。これは輪廻ちゃん曰く、肉体が呪物みたいなものになった影響……らしいです。何でも、肉体強度が跳ね上がってるとか。そこに反転術式まで有るんですから、健康的には常に万全みたいなものです。まぁでも、円花ちゃんのマッサージは気持ち良いのでまたして貰いたいんですけど!

 

「……ふぅっ。じゃあ次は、これを片付けなきゃですねぇ……」

 

 改めて見返すと、ベッドが大惨事です。いやもう、ほんとに大惨事なのです。勉強する前に、私とヨリくんの荷物をひっくり返しちゃったのが良くなかったです。盛大に散らかしたままにしておくのは落ち着かないので、さくっと整理整頓しちゃいましょう。ホテルにはしばらく滞在することになるので、着替えなんかは脱衣所に置いちゃいましょう。

 ってあぁ、そうでした……。円花ちゃんが洗濯を試みたせいで、洗濯機周りが大惨事なんでした。まずはそっちの掃除が先ですねぇ。それが済んだら、台所周りを見ておくのです。取り敢えず、掃除用具が置いてないか探してみましょう。無かったら……部屋の外のお巡りさんにお願いしましょう。何が有っても良いようにお金は結構な額を用意して貰ったので。向こう一週間ぐらいは余裕で生活出来るぐらいは有ります。どれだけ滞在する羽目になるのかは、円花ちゃんのヒーロー活動と呪術師活動次第ですけど。

 

「んー……。無い、ですねぇ……。別の物は有りましたけど」

 

 スマホ片手にざっと室内を見て回りましたが、掃除用具の類いはまったく有りませんでした。そのついでに、公安から持たされたアイテムを使って部屋中を調べました。そしたらまぁ、色々出てきましたねぇ。盗聴器とか盗聴器とか、盗聴器とか!

 この部屋、盗聴器ばっかりなのです。流石にカメラまでは無かったんですけど、全部回収して壊して置きました。その前に盗聴器に向かって叫んでおきましたけど。わざわざこんなに盗聴器を仕掛けたのは、アメリカの公安……でしょうか? この部屋を用意したのはアメリカ側ですから、その線で考えるのがベターな気がします。でもそんな自分達が不利になるような真似をするとも思えないんですけどねぇ。そこまでして、ヨリくんを知りたいってことですか? それとも、呪術について知りたい……とか?

 

 ん、んん……。今回の任務は、色々と気を張ることになりそうです。単に呪霊を祓って終わりって感じじゃないですねぇ。まぁ色々と考えなきゃですけど、それは後で火伊那ちゃんや円花ちゃんが帰って来た時に相談するとします。

 取り敢えず今は、お掃除を先に済ませちゃいましょう。なので、まだ外に居る筈のお巡りさんに必要な物をお願いしておきます。扉越しにですけど。

 

Do you have a minute(ちょっと良いですか)?」

Of course(もちろん).What's the matter(どうかしたの)?」

I need some cleaning supplies(掃除用具が欲しんですけど)

「……Got it(分かった). I'll prepare it(用意しておくよ). What else do you need《他に必要な物は》?」

Nothing in special(特に無いですよぉ)

「……OK.I'm off(行ってくるよ)

 

 ……扉の向こうで、人が動いた気配がしました。呪力強化を使って聞き耳を立ててみますが、気怠い足取りで部屋の前から動いてます。どうせなので、もっと部屋を隅々まで調べてみましょう。もしかしたらカメラが有るかもしれませんし、ここは徹底的に。見付けたら何が何でも壊します。

 

 トガとしてはちょっとお掃除するつもりだったのに、何でこんな事になってるんですかねぇ……。まったくもぅ、今回の任務はとっても大変なのです……!

 

 

 

 

 

 

 






三人称による補完は要りますか?

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