待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!!   作:一人称苦手ぞ。

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世界の危機。監視と警告

 

 

 

 

 

 

 すたぁ、との手合わせが終わった後。儂は歓迎会に招かれることになった。お兄ちゃん達? が主導で開くそうじゃ。夜になったら来てくれとのことで、走り書きされた紙片(めも)を渡されたわ。日が暮れたら、もらるの奴に連れて行って貰うとしよう。

 少し悩ましいところじゃけど、被身子も連れて行く。流石にずっと放っておきたくはないし、歓迎会ぐらいなら連れて行っても良いじゃろ。儂やながんも側に居るんじゃから、少なくとも命の危険は無い。何なら被身子自身、反転術式(はんてん)を回せるからの。じゃからって怪我を許容するつもりは無いが。最悪、 反転術式(はんてん)と言う保険が有ると考えるだけじゃ。そもそも何が有っても、怪我一つ負わせる気は無い。

 

 それで、じゃ。空軍基地を出た儂等は、空軍が用意していた車で一度宿(ほてる)まで戻った。その途中で被身子に電話してみたが、珍しく出なかった。そしたら、出入り口で疲れた顔のもらると遭遇した。何しとるんじゃこやつは。確か儂は、被身子の警護を頼んだんじゃけど? ……もしや、何か有ったか……?

 

 念の為、意識を集中させるとかなり真上の方に被身子が居ることが分かった。どうやら大丈夫そうじゃの。

 

「やぁ、ブラッディ」

「何しとるんじゃ貴様」

「いや、これかラ買い出しに。ヒミコちゃんが、掃除用具が欲しいって言うかラさ……」

 

 掃除用具が欲しい? 何じゃってそんなものを……。儂に電話してくれれば、途中で何処かの店に寄ったと言うのに。

 

「……そうか。日が沈んだら此処に連れてってくれ」

「うん、分かった。じゃあ、後で……」

 

 もらるは既に被身子に振り回されているところじゃけど、ついでに頼んでおくとする。渡された紙片(めも)を握らせて、それから昇降機(えれべぇたぁ)の方に向か……おうとすると、ながんに襟首を掴まれた。どうやら方向が違ったらしい。少し呆れた面をされた。

 

「まったく、あんたは……。部屋に戻ったら、少し話が有る」

「相分かった」

 

 ……話? まぁ、儂としても色々話そうと思っていたところでは有る。今後どうするかとか、活動方針について相談しておきたい。呪術師としても、英雄(ひいろお)候補生としてもじゃ。わざわざ外で話すことでもないから、部屋に戻ったらさっそく相談しておこう。ながんの話も気になるところじゃし。

 ながんの案内で昇降機(えれべぇたぁ)に乗ると、懐に入れていた携帯電話(すまほ)が震え出した。取り出してみると、被身子からじゃ。なので直ぐに出た。

 

「もしもし?」

『あ、ごめんなさい。色々してたら、うっかり取り損ねちゃって』

「それは構わんけど。勉強中じゃったか?」

『んー……、大掃除……ですかねぇ。あぁもぅ……!』

 

 電話の向こう側で、何やら大きな物音がする。重たい物を動かしていると言うか、何なら何かを壊していると言うか……。いったい何をしてるんじゃ被身子は。部屋で暴れてるのか……? な、何故? そもそも、何で大掃除を??

 

『今、どこに居ます?』

「ほてるの、えれべぇたぁ。もう直ぐ戻る」

『あ、帰って来てたんですね。じゃあちょっと手伝って欲しいことが有るんですけど……!』

「何じゃ?」

 

 おっ。昇降機(えれべぇたぁ)が止まった。後は廊下を進めば、部屋に着けるの。なんて思っていると、慌ただしく部屋の扉が開いた。儂等が使ってる部屋の扉じゃ。

 

『お掃除、手伝ってください!」

 

 部屋の中から、それはもう不機嫌な顔をした被身子が飛び出して来た。結構お冠のようじゃ。何か、余程気に入らない事が有ったらしい。……何が起きた? 取り敢えず、被身子自身は無事のようじゃけども……。

 

「渡我、どうした?」

「どうしたも何も、見れば分かるのです……!」

「分かった。……有ったんだな?」

「そりゃもう、沢山っ!」

 

 ……沢山って、何が? すっかり不機嫌な被身子に真っ直ぐ近付くと、待ってましたと言わんばかりに抱き寄せられた。んぐむっ、こら……! 雑に抱き寄せるなっ。もう少しこう、丁寧に……って。……んんむ……。

 抱き締められたまま部屋の中を見てみると、大惨事じゃ。部屋中に、あれやこれやと物が散乱している。被身子がここまで部屋を散らかすのは珍しいのぅ。年末の大掃除でも、ここまででは無かったと思うが……。

 被身子に抱き寄せられるがままに部屋に入れると、直ぐにながんが扉を閉めた。音を立てて鍵もした。そしたら直ぐに被身子が儂から離れて、部屋の奥に向かって行った。と思ったら、直ぐに両腕いっぱいの機械? を、抱えて戻って来た。

 

「はいこれ、見てくださいっ」

「……酷いな。そうかも知れないとは聞かされてたが、ここまでか」

「何が?」

「隠しカメラですよぉっ。それと、盗聴器も沢山有りました……!」

 

 隠し撮影機(かめら)に、盗聴器……じゃって? なるほど、じゃから部屋が散らかってるのか。と言うか、そんなに山程仕掛けられていたのか。まるで気付かなかったの。誰がこんな真似を……って、こんな真似が出来るのはこの国の連中だけか。恐らくは、米国(あめりか)の公安が設置したんじゃろうな。まさかこうまでして、儂等を監視したいとはな。これは流石にどうかと思う。まさかここまで、注視されてるとはの。肝が冷えそうじゃ。

 

「渡我、これは壊したのか?」

「いえ。これはまだですけど、これから壊します……!」

「いや、待て。盗聴器も含めて、公安に送ろう。ホークスが来てる筈だ、あいつに任せれば良い」

「何でですかっ。壊しちゃいましょう!」

「残しておけば今後有利に立ち回れるかもしれない。……まぁ、こんな分かりやすく仕掛けたのがアメリカの手口とは思えないが」

「あめりかじゃないなら、誰じゃ?」

「あんたに注目してる、この国か他の誰かだ。……この国にいる間、外じゃ気を付けな。常に監視されてると思った方が良い」

 

 ……どうやら、そのようじゃの。この国か、或いは何処ぞの馬の骨か。何にせよ、儂を監視しようとする輩が居るのは確かなようじゃ。まったく、この国に来てから色々と面倒な事ばかりじゃな。まさか部屋の中ですら、落ち着ける場所では無かったとは。もらるの奴が一通り探して、その手の類いの物は見当たらないと言っていたんじゃが……はて? 単にあやつが見過ごしただけか? もしや、もらるが使えない奴って事かの?

 って、待て。撮影機(かめら)が設置されてたってことは、昨晩この部屋で過ごしてた儂が誰かに見られてたって事か……? 昨夜は、割りと裸で過ごしてたんじゃけど……。

 

 い、いかん。これは黙っておこう。でないと、被身子がどんな反応をするか分からん。この際裸が見られていたことについては、仕方ないと割り切る。少し気恥かしい気がしないでもないが、割り切っておこう。が、盗撮されていた事実を被身子が許すかは別じゃからの。いかんぞ、いかん……っ。

 

「他に見落としが無いか、もう一度探そう」

「はいっ。全部見付けないと気が済まないのです……!」

「……儂も手伝う」

「いや、頼皆は浴室にでも居てくれ」

 

 な、何でじゃ……っ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 結局。被身子が先に見付けていた物とは別に、部屋の中からとんでもない数の盗聴器や隠し撮影機(かめら)が見つかった。それぞれが小型なのに、全部纏めると机の上が埋め尽くされるほどじゃ。この大捜索をしている間に、すっかり日が沈んでしまった。途中でもらるが迎えに来るかと思ったが、何処で掃除用具を買い漁っているのか未だに戻って来ない。

 設置されていた機具の全てを纏めて袋詰めしたり、散らかった部屋を元通りにしたりしていたらもう夜の七時を越えてしまった。まぁ儂は、ずっと浴室に放置されてたんじゃけども。ちなみに、ほぉくすとは連絡がついたそうじゃ。

 

 今は、寝具(べっと)の上で被身子の膝上じゃ。すっかりご機嫌斜めになってる被身子に、好き勝手抱き締められてる次第じゃの。

 

「それで、ながん。話って何じゃ?」

「……それはこの件についてだ。日本でもそうなってたが、あんたは誰にでも注目されるようになって来た。それこそ、(ヴィラン)にも他国にも。今回は、相当露骨だったけどな」

「……気を付けるとしよう」

「そうしてくれ。もうあんたは、あんた一人の体じゃないんだ」

 

 ……そうじゃな。万が一にでも、儂に何か有ると色々な連中が被害を被りかねない。日本で言えば総監部や、おおるまいとや緑谷が。場合によっては、ながんもそうじゃ。そして、被身子じゃって。好き勝手にしたいものじゃけど、少なくともこの国に居る間は普段よりも気を付けるとしよう。日本に帰ってからも、少しは気を付けなければな。被身子に心配させたり、悲しませるような真似はしたくない。

 

「状況次第ではあるが、基本的には独りにならないことを心掛けてくれ。ヒーロー活動や呪術師活動の最中で独りになるのは仕方ないが、私生活は特に気を付けな」

「……相分かった。まったく、面倒なものじゃの?」

「あぁ、きな臭くなって来たよ」

 

 一筋縄では済まん任務とは思っていたが、まさかこうも面倒な形になってくるとはのぅ。被身子の顔を下から覗いてみれば、不満と不安が混ざったような顔をしている。これはこれで、少しかぁいいと思ってしまう。が、望んでみたいとは思えん表情じゃ。どうにも、上手くいかんものじゃなぁ……。こんな顔をさせたい訳じゃない。被身子には、笑っていて欲しいんじゃけど。

 

 ……もらるの奴は、まだ戻って来ないようじゃの。なら、もう少しぐらい時間は有るか。じゃったら……。

 

 ひとつ、ながんに目配せしてみる。そしたら、呆れた顔をして部屋を出て行ってくれた。どうやら外の廊下で待ってくれるらしい。意外と伝わってしまったことが、少しこう……我ながら呆れてしまうと言うか。そんなに普段から人前で求め合ってるつもりは……もはや無いとは言い切れぬか。すっかり自制心と言うか、遠慮を無くしてしまったと言うか。

 

 でもでも、じゃって。

 

 好きとか、愛してるとか。そういうのは、隠さんようにするべきなんじゃろ……?

 

「ほら、被身子。そんな顔をするな」

「……でもぉ。だって……」

「大丈夫じゃよ。怖い思いをさせてすまん」

 

 寝具(べっど)の上で膝立ちになって、被身子を抱き締めてみる。少しでも安心させてやりたい。じゃから、ほら……。頭を撫でたりも、してみる。そしたら背中に腕を回されて、抱き返された。幾つになっても甘えん坊な奴め。良い、今となってはいつでも許す。全身で跳び掛かって来るのは、流石に危ないから止して欲しいとも思うけれども。

 まぁでも、それも悪くないと考えてしまうんじゃけどな。結局のところ、儂は良いようにされてしまうから。それが望ましいと言うか、好ましいと言うか……。被身子には伝えんけどな。伝えたら色々と大惨事じゃ。増々歯止めが効かなくなってしまう。

 

「……此処に来るまでに、色々聞いちゃったのです。もしかしたら、今までで一番危ないかもって」

「そう、……かもしれんな」

 

 確かに、今回の任務は今までとは毛並みが違う。儂に降り掛かるかもしれない危険じゃってそうじゃ。何せ、相手は特級呪霊じゃ。あの筋肉阿呆への恨み、英雄(ひいろお)への憎しみで産まれた呪霊なんじゃ。その実力は、現時点でも儂より上じゃろう。しかしそれでも、儂が相対するしかない。緑谷や、おおるまいとには任せられない。……少しぐらいは誰かを頼ると決めていても、最後は独りになるしかないじゃろう。儂が特級呪術師であり、相手が特級呪霊である以上は……な。

 

 じゃけど。

 

「それでも、儂はお主の下に生きて帰る。それはずっと前から約束してるじゃろ?」

「……はい。それは信じてます。でも、今回は人間も気にしなきゃいけないじゃないですか」

「それも、その通りじゃのぅ」

 

 今はどうにも、きな臭い。それが現状じゃ。米国(あめりか)の仕業なのか、或いは悪党の仕業なのか。どちらかは分からんところじゃし、もしかしたらそのどちらでもないのかも。それでも、人の悪意が向けられてるのは事実じゃ。知らずとは言え、それに被身子を巻き込んでしまった。儂の記憶を体験してたって、慣れることは出来なかったんじゃろう。当然じゃ。被身子は、ずっとずっと平和の中で過ごして来たんじゃ。人の悪意に慣れるなんて真似は、そうそう出来ぬじゃろうて。

 

 ……思い返せば、那歩島の時じゃって人の悪意が有った。あの時とは比べ物にならん悪意じゃけども。まさか一晩、何処かの誰かに監視されてるとはのぅ……。

 

「でも、大丈夫じゃ。じゃからほら、そんなに怖がらないでくれ」

「ん、んん……♡」

 

 少しでも安心して欲しくて。怖がって欲しくなくって。じゃから、……接吻(きす)してみた。大丈夫じゃって、言い聞かせるかのように。

 

「……もぅ。そんなんで騙そうとしたって、駄目ですよぉ」

「……そうか? じゃったら、どうしてくれようかのぅ……?」

「わ……っ。……もぅ、円花ちゃんのえっち♡」

「お主程じゃない」

 

 えっちなのは、お互い様じゃ。もっとも、儂は被身子程ではない。流石にそこは勝てん。と言うか、勝ちたくはないのぅ。

 なんて考えつつ、押し倒した被身子に噛み付いてみる。無防備な首に、軽く。歯型が残らん程度に。

 

「……ちゃあんと、帰って来てください。じゃないと、嫌いになりますから」

「分かっとる。ちゃんと、生きて帰るから」

 

 耳元でそう囁いて、ついでに……耳に唇で触れてみる。外でながんを待たせてるんじゃけども、すまんがもうしばらく待って貰おう。これから長くなりそうじゃし。……何なら、長い方が喜ばしいからの。……って、こら! 体位を入れ替えるんじゃないっ。今は儂が上の流れじゃったじゃろ!?

 

「ん、ふふ……♡ 滅茶苦茶にしちゃいますね♡♡」

 

 ……それはもう嬉しそうに笑う被身子を見て、不覚にも体の芯が震えた。

 

 

 

 

 

 

 






どこまで行っても円花は誘い受け。これにはお医者さんが首を横に振って、ついでに病院が逃げるでしょう。

三人称による補完は要りますか?

  • 欲しい
  • 要らん
  • 良いから一人称で突っ走れ
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