待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
あれよあれよと被身子に好き勝手されている真っ最中。盛り上がって来たところで、もらるが帰って来てしまった。ので、色々と途中じゃけども切り上げることにした。まさか、
……おほん。今後は、気を付けるとしよう。
それで、じゃ。すっかり夜の八時過ぎじゃけども、着替えて歓迎会に向かうことにした。洋服にするか着物にするか悩んだが、あれこれ着せ替えられた挙げ句結局は着物になった。被身子も着物に着替えて、準備は完了。今は指定された店に向かってる最中で、車の中じゃ。
「掃除用具を買いに行ったにしては、時間が掛かったの?」
「向かってル最中と帰ってル最中に、
なるほど。まぁそれなら、遅くなったのも仕方ないところか。警察は
「どうせなら、もう少し遅い方が良かったのです」
「……渡我。ああいうのは、二人きりの時にしてくれ……」
「はぁい。気を付けまぁす」
隣の被身子が助手席のながんに謝っているが、舌を出してるからあまり反省しとらん。何ならまた同じ事を繰り返すつもりで満々な気がしてならん。やはり儂が気を付けねば、公序良俗が何処かに行ってしまう気がするのぅ。いやしかし、その気になった被身子を止める術は儂には無いような……。んんむ、どうにかせねばと思いつつも……もはや色々と手遅れな気が……。
ま、まぁ……! 今後何とかすれば良いじゃろっ。が、がははは!!
「あんたもだからな、頼皆。しっかり渡我の手綱を握れよ」
「……握っても振り回される気しかせんのじゃけど」
「それでもだ。まったく……」
「ふ、婦妻円満なのは良いことだよ? うん……」
さっそく、もらるに引かれている気がしないでもない。何でじゃ。別に、許嫁と愛し合うぐらい何もおかしな話ではないじゃろうに。まぁ、規範に反しそうになってるのは事実じゃけども。やはり自制心は持たねば。被身子に流され続けている場合ではない。ここは儂が何とかせねば。どうすれば良いのかは、皆目見当も付かないんじゃけどっ。
「そレにしても、凄いよなぁ。スターとチームアップなんだよね。オールマイトの後継で、やっぱリ将来有望ですか?」
「こんな滅茶苦茶な子を褒めないでくれ。でないと―――」
「円花ちゃんは将来有望ですよぉ! カァイイし強いし、何よりトガのヒーローなのでっ!」
「……トガが調子に乗るんだ。止めてくれ」
「あぁ、うん……。なるほど……?」
……んんむ。そう将来有望とは、儂自身は思えぬけどなぁ。
誰彼構わず救けて、悪党を取っ捕まえる。言ってしまえば、
そもそも。今更思ったんじゃけど、呪術師がどう
「……ひいろおって、何なんじゃろうな?」
「え? そリゃぁ……自己を顧みずに人々を救済をする人、かなぁ。例えば、マザー・テレサとか?」
「……まざぁてれさ?」
……誰じゃっけ、それ。確か道徳の授業だか世界史の授業だかで出てきたような……。
「超常時代以前、病と貧困に喘ぐ人達を救け続けた人だよ。授業で習ったでしょ?」
「……まぁ、の?」
あぁ、うむ……。確かに習った気がするの。あまり覚えてないんじゃけども。確か、ええっと……。そう、印度で活動してた聖人? じゃったよな?
「見返りを求めず、自己を顧みず、多くの難民を救けた人だ。今の時代なら、間違いなくヒーローと呼ばれていただろうな」
「マザー・テレサをヒーローって呼ぶなら、今の時代のヒーローはヒーローじゃない気がしますねぇ」
「もしくは、彼女こそが真の意味でヒーローなのかも知レないね。彼女のようなヒーローが居ないってわけじゃないけど、少ないかもね」
……何となく思い出して来た、気がする。確かに、そんな行いをしていた人物じゃったような。後で調べて見ても良い気がするの。もしくは、被身子に教えて貰っても良い。
それと、儂はどうにも
「それで? その、まざぁ・てれさとやらが、……ひいろおが何たるかを示してるのか?」
「滅私奉公をヒーローの仕事とすルなラね」
「……なるほど」
そう言われると、分かるような気がする。儂がおおるまいとに教えられたことじゃ。
んん……。なんと言うか、儂には難しい事じゃなそれは。儂は、誰かや何かに奉仕したいとは思わん。いやまぁ、相手が被身子じゃったら幾らでも尽くして構わんが。それ以外では、別に私心や私欲を消してまで尽くしたいとは……。
……うむ。考えれば考える程、儂は
「まぁまぁ。円花ちゃんはとっくに私のヒーローですよぉ。そんなに難しく考える必要は無いのです!」
「んぎゅっ」
こら、被身子。儂が考え事をしてるのに、横から抱き付くんじゃない。お主はいつも儂を
「ねっ。火伊那ちゃんも、円花ちゃんはヒーローだって思いますよね!」
「……ヒーローって言うにはポンコツ過ぎるな。けど、素質が有るのは否定しない」
「素質なんて、別に無いじゃろ」
そんなものが有るなら、あれこれ考えたり悩んだりしておらん。儂には
「形はどうあれ人を守って救けてるんだから、ヒーローって言えるだろ?」
「結果が同じでも目的が違う。儂の場合は、最初から人救けを考えてるわけじゃ……」
「ヒーローをやっている奴が、必ずしも人救けの為だけに動いてるわけじゃない。金稼ぎの手段としてヒーローを選ぶ奴だって世の中には居るんだ。
……そういう連中と比べたら、頼皆がしている事は随分立派なもんさ」
「えへへぇ。そうですよねそうですよねっ!」
何でそこで、被身子が喜んでるんじゃか。まぁでも、ながんの言う事は一理有る。中学三年の頃、舎弟は「必ずや高額納税者になるのだ!」……とかそんな感じで担任に啖呵を切っていたのぅ。子供の夢じゃから笑うつもりはなかったが、盛大に呆れてしまったことを覚えている。今にして思えば、あれは全て本心では無かったんじゃろうけど。じゃってほら、態度はともかく授業自体は真面目に受けとるし。実力はともかくとして、向上心と負けん気だけは認めてやっても良いぐらいじゃ。
……やはり、いまいち納得出来ぬなぁ。どうにも解せぬ。儂のどこが
「……っと、もう到着だね。歓迎会、楽しんで来てね」
「……? お主は来ないのか?」
「いやぁ……、ヒーロー同士の歓迎会には混ざレないよ。適当に時間潰してルかラ、気にしないでおいて」
「……そうか。帰りも頼んだ」
「Roger」
らじゃぁ? ……あぁ、了解って意味じゃったっけ。わざわざ後部座席に向かって敬礼する必要は無いとは思うが、もらるは警官じゃしな。職業柄ってことにしておくかの。
気が付けば、目的地に到着していたようじゃ。車が何処ぞの店の前に停まっている。あれこれと話したり、考えたりしている内に着いたようじゃの。案外、
……まぁ、とにかく。これから歓迎会じゃの。なんと言うか、騒々しくなりそうじゃ。
◆
儂等が車から降りた後、もらるは何処かに向かって走って行った。誰かから連絡が有ったようで、少し慌てた素振りをして車を動かしておったわ。警官がああも大慌てするのは、どうなんじゃか。事件でも起きたか……? まぁ、良いか。儂に協力するよう上から言われていても、警官は警官じゃからの。何か有れば、慌てる時も有るんじゃろう。
何処かへ向かって行く車を眺めた後、儂は被身子やながんと共に入店したわけじゃ。何の店かと思ったら、どう見ても居酒屋じゃった。照明が小洒落ていて、少し薄暗い。何やら静かな音楽が流されていて、……未成年が入店しても良いのか、つい聞きたくなる。店内には、見覚えしかない顔と何人かの店員しか居ない。夕方なんじゃからもっと人が居てもおかしくない筈なんじゃが、さては貸し切ったか? いや、単に人気が無い店という可能性と有るのぅ。大通りに面しているのに閑古鳥が鳴きそうなのはどうかと思うが。
まぁ、ともかく。
「お、やっと来たか。遅いぜブラッディ! 三人で迷子か?」
「……部屋で色々と起きての。遅くなったのは済まなかった」
と、気さくに話し掛けて来たすたぁを睨んでおく。そしたら。
「何だ? 盗聴でもされてたのか? そりゃあ悪かったよ、上の連中は変態でなぁ。って、冗談だ冗談。ジョークだよ、お嬢ちゃん達」
すたぁに従う空軍の一人が、
「……悪いな。こいつはデリカシーがなくていけねぇ。代わりに謝るよ。
さ、席に着いてくれ。主役が居ないと盛り上がらないだろ?」
確か、いぃさん……じゃったか? 同僚の脳天に盛大な拳骨を落とした後で、椅子を引いて儂を手招いた。仕方ないから席に着いてやるとする。その後で被身子は無言で儂の隣に。ながんは、少し離れた席に腰掛けた。
着いた席の対面には、すたぁが居る。いぃさんや、他の連中もじゃ。歓迎会をやる、と言うのはどうやら嘘ではないようじゃな。既に
「それじゃ、始めようか。でもその前に、そちらのお嬢ちゃんを紹介してくれる?」
「……儂の許嫁で、恋人。訳有って今回は同行しとる」
「へぇ、Fiancee! お兄ちゃん達、可愛いからって口説くのは止めとけよ?」
「おいおいスター。んな真似したら全員殴り飛ばされちまうよ。まぁ、もうちょい歳食ってたら口説いてたかもな? よろしく可愛いお嬢さん。
……ええっと、名前は?」
「ぷいっ」
……んん? 何じゃ、珍しいの。被身子が人見知りしとる。拗ねた顔で、思いっ切り顔を逸らしおったわ。普段じゃったら儂が紹介するまでもなく、何かとんでもない自己紹介をしてるところなんじゃけど……。
「……どうした?」
「この人達が色々取り付けてたかも知れないので、警戒中です。最警戒なのですっ」
あぁ、なるほど。ならまぁ、仕方ないか。あれだけの数の盗聴器や
……恐らく。
取り敢えず。被身子を落ち着かせるとするか。思惑はどうであれ、せっかく歓迎会を開いてくれたんじゃ。好意を無下にするのは、それはそれで駄目じゃと思う。空気が悪くなるのは構わんが、変な衝突はしない方が良い。……まぁ、
「……単刀直入に聞かせろ。ほてるに盗聴器や、かめらを仕掛けたか?」
「は?」
「いや、山程出てきたんじゃけど」
「……はぁ?」
……ふむ。すたぁも空軍の連中も、寝耳に水とでも言い出しそうな面と反応じゃの。これは嘘ではあるまい。って事は、こやつ等も盗聴器だの
「それは有り得ない。あの部屋は、事前に私達で調べてる。マスターの弟子に何か有っちゃ、会わせる顔が無いだろ?」
「そうか。じゃったら、誰が仕掛けたんじゃろうなぁ」
んんむ……、面倒じゃ。なんでいちいち、あれこれと考えてから話さねばならんのか。
まさか、儂等……と言うより儂を監視しようとする輩が出て来るとは。単に悪党の仕業ってだけなら、とっ捕まえて終わりなんじゃけどなぁ。
「それについては、こっちでも捜査する。盗聴器やカメラを、預けてくれるかい?」
「……スター、捜査なら伝手が有る。俺達で昔馴染みに聞いて回っとく」
「頼むぜお兄ちゃん達。場合によっては、私が直接行く」
「並みの
……。……はぁ……。やはり、腹の探り合いは得意じゃない。儂でも嘘ぐらいは見抜けるが、相手が上手じゃったら騙されるだけじゃし。だいたい、儂は細かい事を考えるのは苦手なんじゃ。あれやこれやと考えるのは止めにして、出たとこ勝負をした方がよっぽどやり易い。
誰が何の目的で、儂等を監視してるのかは分からん。今は、そういう奴が居るって留意しておくだけで良いか。ただでさえ不慣れな地で呪霊を祓うんじゃ。最優先は呪霊と、ひゅうまらいず。この二つ以外については、一旦些事として放っておこう。まぁ、主目的が済んだら盗撮盗聴の犯人を殴り飛ばしに行くが。儂の被身子を怖がらせて、無事で済むと思うなよ……っ!
「せっかくの歓迎会だってのに、変な空気になっちまったな……?」
「もう飲んじまおう。ほら、スターとチームアップするブラッディに」
一人が立ち上がり、
「Cheers!」
あっ。耳に付けた翻訳機が、英語を訳さなくなってしまった。どうやら電池切れのようじゃの。……ちぁあず……? って、何じゃ? こうなってしまったら、被身子に通訳して貰うしかないのぅ……。
この後。冷めた肴を当てに、歓迎会は結構騒々しく続いた。訳の分からん催し物が行われたり、何だかんだで馴染み始めた被身子がいぃさんに文句を言っていたり、ながんが空軍の一人に口説かれたり、まぁ色々と喧しくて騒がしかった。けど。
存外居心地は、悪くなかった。心から歓迎されていると分かったからじゃ。……どうやら、すたぁ達ぐらいは信用しても良いのかもしれん。
ヒーローとは何か? それを知りたくなってきた円花の図。
三人称による補完は要りますか?
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欲しい
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要らん
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良いから一人称で突っ走れ