待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!!   作:一人称苦手ぞ。

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久しい教室。

 

 

 

 

 

 いんたあんしっぷは終了となった。おおるまいとが呪力を獲得した上に、呪眼(のろいまなこ)の生産が出来るようになったからの。なので、儂も被身子も通常通りの授業に復帰。実に十三日ぶりの教室じゃ。これが中々に大変での。

 

 儂、今、くらすめえとに囲まれとる。

 

 理由は単純。十三日も目に見えぬ化け物相手に儂は一人で戦っておったことになっておる。話を聞きに行こうにも生徒達は授業が終わり次第、即時帰宅を命じられていた。急に建築された寮に訪ねても、儂は夜に備えて寝ておったからな。被身子が応対してくれたそうじゃが、あやつは大丈夫の一言しか話さんかったらしい。そこはもう少し話しても良かったんじゃないか? とは思うがの。どうせ儂の寝顔を独占したいとか、二人きりで居たいとか思ってたんじゃろう。その気持ちは分からんでもない。まっこと、仕方のない甘えん坊じゃよあやつは。

 

 ちなみに。昨日一昨日の二日間で全ての演習場の呪霊を祓い尽くした。中々に大変じゃったが、まぁ何とかなったわ。おおるまいとめ、口で説明しただけで即座に呪力を扱えるようになりおって。

 何が「こうかな!?」じゃ。何で呪力捻出も呪力操作も呪力放出も、一度説明されただけで出来るようになるんじゃ。あやつはもう、個性無しでも呪力を使えるようになりおった。

 基本的な部分を教える必要がもう無いんじゃけど? 発目と言い、天才の部類か?

 呪力操作の面では、もう反転術式(はんてん)ぐらいしか教えることがないが?

 

 何じゃあの筋肉大漢。いい加減にしておけよ……。これが才能と言うやつなのか? 仏や神よ、居るなら緑谷にも分けてやれ。今こそあやつに必要なものじゃぞ。流石に不公平が過ぎると思うぞ。

 優秀過ぎる弟子を持つと、師匠は苦労するのぅ。

 

「廻道、大丈夫だったか? 息災で何より」

「廻道さんっ! 皆、心配してましたのよ!? せめてスマホぐらい見てくださいっ!」

「いやでも、元気そうで良かったよ。で、どうなの? 渡我先輩とはよろしくやってるの?」

「廻道くん! インターンシップお疲れ様! 今日ぐらいは気を休めてくれ!」

「一人で皆の為にずっと戦ってたんだって? くぅ〜〜っ、漢だな廻道!!」

「渡我先輩と寮暮らしってほんと!? 根掘り葉掘り聞かせてーーっ!」

 

 いや、一斉に話し掛けられても誰が何を言うておるのか分からんて。真っ先に話し掛けてきたのが常闇だったことだけは分かる。何を言っていたかは分からんがな。

 あと女子(おなご)共よ。心配してくれてたのは分かったから、一斉に抱き付くのは止せ。こんな場面を被身子に見られたら儂が大変な目に遭うじゃろ。頼むから離れてくれ。そっとしておいてくれ!

 

「だぁあああっ!! 朝からうるせえんだわボケ共!! クソチビに何か有るわけねえだろうが!!!」

 

 ……取り敢えず、舎弟だけはいつも通りじゃな。むしろ安心したわ。それはそれとして、後で締めてやろう。

 

 誰が……、ちび、じゃって……?

 

 おいこら貴様。小僧の分際でまだ儂の身長に触れてくるか。許さん、処す。地獄を見せてくれよう。泣いても許さんからなっ!!

 

 

「予鈴が鳴ったら席に着け」

 

 

 ……残念ながら、相澤のお出ましじゃ。大人しく席に座るとしよう。でないと捕縛布で縛り上げられてしまうからの。蜘蛛の子を散らしたかのように全員が一斉に席に着いた辺り、教育が行き届いておるのぅ。いや、儂もそうなんじゃけど。

 

「まずは廻道、インターンお疲れ。かなり特例的なものだったが、お陰で呪霊対策は順調に進んでいる。眼鏡の方は引き続き生産してくれ。

 明日までにもう一つ欲しいから、時間が掛かるようなら途中で授業を抜けても良しとする」

「先生、その眼鏡についてよろしいでしょうか!」

「なんだ飯田」

「我々A組も呪霊対策として、呪眼が必要かと思われます! 今後呪霊が差し向けられる可能性を考えたら、我々も見えるようになった方がよろしいかと!!」

「……だそうだ、廻道。あと二十個頼む」

 

 ……。……いや、相澤、それは……。

 

 

「……勘弁、してくれぬか……?」

 

 

 本音を言うと、嫌じゃ。委員長が言ったことは間違ってないし、この先くらすめえと達も呪霊は見えるようになっておいた方が良い。悪党連合の狙いが儂なら、また襲撃される可能性はあるじゃろう。

 

 しかし、しかしじゃな? 呪眼ひとつ作るのは大変なんじゃぞ?

 

 何が大変かって、血液採取の際に被身子が拗ねるんじゃ。私のものなのにって、恨めしげに睨んでくるんじゃよ。その後、如何に機嫌を取るのが大変なのか貴様等は知らん。知らんから、そんな簡単に追加発注を頼めるんじゃ。ふざけるなよ? まっことに、ふざけるなよ??

 

「何故だ?」

「いや……事情があっての……」

「事情?」

「……被身子がな……拗ねるんじゃよ……」

「惚気は断る理由にならない。作れ」

 

 惚気とらん。これは死活問題じゃっ。貴様、まともに取り合わんか……っ! いやしかし、被身子の嗜好を話すわけには、わけには……っっ!

 

「おい返事」

「……う、む……。百日以上は、掛かるが良いか……?」

「頼んだ。さて、遊英体育祭は目前となったわけだが―――」

 

 ……追加で二十個か。二十か……。つまりあと二十回は、被身子が拗ねるって事じゃな?

 

 儂、全部完成するまで生きていられるか?

 とうとう被身子に殺される日がやって来たような気がするぞ……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 呪眼の追加作成を頼まれたのは、この上無く大変じゃ。この件については正直に被身子に話して、謝るしかあるまい。今から気が重い。しかし、仕方のない事なんじゃよなぁ……。

 

 昼休み。儂は緑谷と共に、おおるまいとに呼び出された。舎弟の頭でも掴んでやろうかと思っていたのじゃが、呼び出されたのなら仕方ない。

 仮眠室のそふぁに腰掛けた儂は、まずは弁当箱を開く。今日の弁当は……のり弁じゃな。でも隅に小さなはんばぁぐがあるの。実に喜ばしい。もう最近は被身子が作る飯なら何でも良いとすら思っているのじゃが、やはりはんばぁぐがあるとの。気分が良くなる。我ながら単純だとは思うんじゃけど、好物だから仕方ない。仕方ない仕方ない。

 

 いただきます。

 

 ……うむ。今日も被身子の弁当が美味い。やはり弁当は、被身子に作って貰うに限る。

 

「あの、オールマイト。今日はどうして?」

「ワン・フォー・オールに思わぬ力が備わっていることが分かってね。それの周知を君に」

「っ! いやでも、その……っ」

「ああ、良いんだよ。廻道少女にはもう話してある。思わぬ力について、彼女の知識が必要だからね」

 

 なるほど、呪力が備わっていた件について話すのか。じゃから儂まで呼び出したと。うむ、少し待っておれ。儂は今、弁当を食べることに忙しい。

 

「思わぬ力……。え、まさか呪力が……?」

「そうだね。ワン・フォー・オールは、力をストックする力。その力の内に、どうやら呪力も含まれていたらしい」

「なるほど、だから廻道さんを……!」

 

 ……もぐ、魚の揚げ物が美味い。もぐ、このきんぴらごぼうも美味。もぐ、ご飯も美味い。もぐ、このちくわの磯辺揚げも……。

 ううむ、何を食べても美味い。美味い……。

 

 美味い……。美味(うま)……。うま……。

 

「緑谷少年には、今後出力調整と並行して呪力の扱い方も学んで貰う。そちらについては私より廻道少女の方が適任だから、彼女から指示を仰ぐように」

「はい! よろしく廻道さんっ!」

 

 ……うるさいのぅ。人が食事をしてる時は静かにせんか貴様等。揃いも揃ってまったく……。それはそれとして、何で筋肉大漢の前で飯を食わねばならんのじゃ。貴様、少しぐらい縮まんか。萎ませろその筋肉を。

 

「……ああ、今日からお主は儂の弟子じゃ。厳しくするから、覚悟しておけ」

 

 

 呪眼の作成に、おおるまいとや緑谷への指導。更に呪霊への警戒に、またほったらかし気味になっている舎弟の教育。ううむ、やることが多いの。どこからやっていくべきか。取り敢えず、今は弁当を食べ進めながら呪力について緑谷に教えておくかのぅ……。

 

 

 

 

 

 

 まぁ、事はそう上手く運ばんのが世の常じゃ。少し考えれば分かる事じゃが、緑谷は個性を使うことにすら手間取っておる。そんな奴が直ぐに呪力を使える筈は無く。結局こやつが呪力を捻出することが出来るようになったのは、体育祭当日の昼過ぎ。がちばとるとおなめんと、とか言う競技の最中のじゃったわ。

 

 ……教えた翌日には呪力を出せるようになったのじゃから、これは褒めておくべき……かのぅ?

 

 

 

 

 





何度でも言うぞ。今日はもう書かん。

さて。次回はやっと体育祭です。ちょっと呪霊対策問題が長引いてしまいました。考えずに書くとね、こういうことになる……。うーん反省!ノープロットは、止めようね……っ!

でも変わらずライヴ感で書きます。よろしくお願いします。

三人称による補完は要りますか?

  • 欲しい
  • 要らん
  • 良いから一人称で突っ走れ

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