待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!!   作:一人称苦手ぞ。

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世界の危機。制圧の準備

 

 

 

 

 

 

 昨晩は、もう大変じゃった。何がって、それはもう色々と。色々と、物凄かった。じゃって被身子が全然我慢出来なかった上に、儂も途中からその気になってしまってじゃな……? ほぉくすの話が終わるまで被身子が我慢していたのは、多分何かの奇跡じゃったと思うんじゃ。やはり被身子に我慢を覚えさせるのは、無理なのかもしれん。どうにかしたいが、どうにもならん気がしてきたの。うぅむ……。

 

 ま、まぁ。それは一度置いといて。

 

 夕方の四時になれば、儂は悪党組織(ひゅうまらいず)制圧作戦に参加する。英雄(ひいろお)候補生の一人としてじゃ。時間になるまでは自由時間じゃから、夜に差し支えない程度に呪術師として動こうと思う。と言っても、協力者のもらるに話を聞いたり車でそこらを走って貰うだけなんじゃけども。これには、ながんも同行する。被身子は今日も留守番じゃ。

 なので今朝……ではなく、昼過ぎに宿(ほてる)を出た。起きたのは昼前じゃったし、朝食ならぬ昼食を食べたら昼の一時を越えてしまっていた。三時頃には一度戻って、少し休む。その後で、今夜の集合場所に向かうつもりじゃ。

 

 そういう訳で。今儂は、ながんやもらると地上を見回り中じゃ。と言っても、殆ど車の中から外を眺めてるだけなんじゃけども。

 

「……モラル。今朝、また警察署に届いたんだって?」

「うん。朝四時半頃に、十一名の(ヴィラン)が意識混濁状態で届けラレたんだ。またライアーマイトの仕業だね……」

「その中に、喋れそうな奴は居たかの?」

「被害者は全員が病院の中で、いつ回復すルか分かラないんだ。だかラ被害者かラ話を聞こうとすルのは、無理だよ」

 

 ちっ。やはり駄目、……か。悪党とは言え、被害者から話を聞ければ色々探れたんじゃけどな。いつ回復するか分からんとなると、今後当てにすることは出来ん。こうなったら、警察署にでも張り込むか? それで、ひっ捕らえた悪党を届けに来た瞬間を待ち伏せする。もしかすると、これが手っ取り早いかもしれん。ただ、何処の警察署に来るのか分からないのが問題なんじゃよなぁ。一晩中待って、別の警察署に現れでもしたら骨折り損じゃ。そもそも現れない可能性じゃって有るじゃろう。

 

 ……とにかく。今は情報が欲しい。今後、どう対処していくか決める為にも。

 

「いつ何処の警察署に現れたか、それは調べられるか?」

「……それなラ、ライアーマイト事件について個人的に纏めておいたよ。はいこレ」

「む……。それはありがたいのぅ」

 

 一枚の紙面じゃけども、儂とながんに渡された。どれどれ、早速読んで……。……読めんわこれ。全部英語じゃ。被身子に翻訳して貰いたいぐらいに英語じゃ。と言うか、もらる。日本語が話せるんじゃから、日本語で書いてくれんかのぅ。もしや、会話は出来ても文字は書けん感じなのか……? うぅむ、それならば仕方ないことでは有るんじゃけども……。

 

 ……まぁ、何とか読んでみるとするか。まったく英語が分からんわけでもない。英語は大の苦手科目じゃけども、時には自力で何とかしなければな。ええっと、……ええっと?

 

 あぁ……、んむ。ほうほぅ。なるほど? つまりじゃな。つまり……。つ、つまり……。

 

 ……。……うむ、分からん! がははは!!

 

「……はぁ……。英語の勉強は、しっかりしとけ。何でも渡我頼みにするのは良くない」

「ぅ、うむ。相分かった……」

 

 紙面を睨んだり解読を諦めたりしていると、ながんに呆れられた。うぅむ、もっと英語の勉強をしなければならぬなぁ。いやしかし、でもでもじゃって。英語の勉強はまったく捗らないんじゃもん。英単語を頭に叩き込むのが精一杯で、それも試験期間が過ぎてしまうと直ぐに抜け落ちてしまうというか……。恥ずかしながら、一夜漬けで覚えるのが精々なんじゃ。昔から英語だけは、どうにも駄目じゃ。まったく分からん。脳が理解を拒否してると言っても過言ではない。

 

 ……仕方ない。この紙面については、被身子に読んで貰おう。それで出来れば、読み方を教えて貰おう。覚えられるかは別じゃけども、少しは英語と向き合わねば。

 

「……まず、始まりはサンフランシスコだ。昨年十二月、警察署の前にとある(ヴィラン)組織の全員が意識混濁状態で届けられた。被害人数は、318人」

「……は?」

 

 三百十八人……? いや、おい。それだけの人数を一人で制圧したと? その後、警察署まで運んだのか……?

 まるで筋肉阿呆(おおるまいと)のように、滅茶苦茶じゃな。そんなところまで似なくても良いと思うんじゃけど。

 

「ちなみに、被害者全員トラックの荷台に詰め込まレてたみたい。殆どが意識混濁で、中には骨折してル者も居たってさ。でも、死者は無し」

「その四日後。今度はカルフォニアで65人、更に三日後にはロサンゼルスで74人。どちらも纏めて届けられたそうだ。

 この辺りから、各州の警察は管轄を跨いで協力体制を敷いたんだが……これと言った証拠は掴めず。目撃者数名は、犯人はオールマイトだったと証言している」

「でも、全ての事件当日や犯行時刻と思わレル時間に、オールマイトは日本に居た。この国には来てない。まぁ彼なラ海ぐラいひとっ飛びなんだロうけど、ひとまず捜査線からは除外さレたみたいだよ」

 

 ん、んん……。聞けば聞くほど、とんでもない事件じゃなこれは。あの呪霊、随分と好き勝手にしているようじゃな。被害者の全ては悪党(ゔぃらん)だけ。怪我人はそこまで多くはなく、だが意識が混濁した者は多い。全員が全員、呪われたと考えるべきか……? んんむ。これはやはり、被害者に一度会うべきじゃろうな。意識混濁で全員が入院中とのことじゃけども、もしかすると全員何らかの呪術で呪われてしまっているのかも。

 ……そう言えば、あやつの術式は何じゃったか。いや、知らん。知らんの。前に会った時は、それはもう楽しい時間じゃったからなぁ。つい舞い上がって、話も聞かずに祓おうとして、それで……逃げられたな。うむ、逃げられた。思い出したら、腹が立ってきた。儂より強い奴が儂の前から逃げるなどと、許される行為ではなかろう? 儂より強いんじゃったら、儂が満足するまで呪い合うのが筋じゃろうが。少なくとも両面宿儺は、儂を満足させて……くれはしなかったが、最期まで向かい合ってはくれたんじゃぞ。くそっ、あの呪霊……! 思い出したら、苛ついて来た……!

 

「こレは俺の予想だけど、近い内にまた姿を見せると思うんだ。だってほラ、この街にはヒューマライズの支部が有ル。で、そのヒューマライズのせいで今世界は大変でしょ? (ヴィラン)だけ狙ってルなラ、可能性が高そうじゃない?」

 

 ……確かにな。もらるの推理は、もしかすると正しいのかもしれない。英雄呪霊(らいあぁまいと)は、少なくとも儂が知る限りでは悪党(ゔぃらん)にしか手を出していない。いや、ながんにも手を出したが……あの時は牢獄の中じゃったしの。あやつに(ゔぃらん)判定されて、襲われた可能性は高い。……そもそも、何故あやつはながんを見逃した? 得体の知れない呪いを掛けて、立ち去った? 英雄の呪霊が何を考えているのか、まったく分からん。

 

「もしライアーマイトの次の狙いがヒューマライズなら、面倒な事になるな。下手すると、今晩鉢合わせることになる」

「……そうじゃな。他のひいろおにも、周知しておくべきかのぅ」

「……かもな。ホークスやスターには伝えておこう。連絡しておく」

 

 もし英雄呪霊(らいあぁまいと)が、今回世界規模で騒動を起こしている悪党組織(てろりす)に目を付けていたら、今夜姿を現す可能性が有る。そうなると、色々と手間じゃの。悪党の制圧だけではなく、あやつを祓わねばならん。

 

 ―――けひっ。望むところじゃ。

 

 近い内に再び相見えるなら、個人的には大歓迎じゃからの。相手が猛者ならば、いつ呪い合ったって良い。次こそは祓ってみせる。絶対に逃がさん……!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 結局のところ。昼間の捜索は何の成果も無かった。英雄呪霊(らいあぁまいと)どころか、雑魚呪霊すらろくに見当たらん。郊外の廃工場に、数匹の蠅頭が居ただけじゃ。この国は、日本と比べたらあまりに呪霊が少ない。むしろ日本がおかしいのでは? と、思わんでもない。

 ……何にせよ。呪霊が少ないならば、それはそれで良しとしよう。英雄呪霊(らいあぁまいと)の調査がてらに、いちいち大量の雑魚呪霊を祓うのは手間になるからの。あやつを祓う為にも、今回の任務はなるべく呪力を温存しなければ。

 

 三時近くになると、またも空軍基地に呼び出された。宿(ほてる)に戻る暇は無かったので、直接出向く羽目になってしまったが。ほぉくすに用意された英雄装束(こすちゅうむ)は、上も下も真っ黒な袴じゃった。そして長襦袢や帯は真っ赤じゃった。着心地は悪くないんじゃが、この上に隆之が遺した羽織りまで着てしまうと……常闇みたいな真っ黒加減になってしまってのぅ。被身子がとても嫌そうにしとったわ。

 それに今回は、四角い箱のような形をした航空機(へりこぷたぁ)の中じゃ。しかも既に飛んでいる。やはり乗り物に乗って空を飛ぶのは、気が気じゃない。どうにも落ち着かん。まさか、目的地に着いたら空から攻める羽目になるとはのぅ……。

 

「―――そういう訳で、アルファチームの指揮は私が執る! こうして会えて光栄だよ、世界中のヒーロー達!」

 

 薄暗く、少し狭いように思える機内の中。すたぁの声がしっかりと通り抜けた。回転翼(ぷろぺら)の音が喧しいんじゃけども、それでもよく聞こえる。もしやこやつ、喉まで筋肉阿呆か……? いやまぁ、声が通り易いのは悪いことじゃない。どんな状況でも、しっかり指示を伝えられるってことじゃからの。耳が痛くなりそうなぐらい喧しい場所でも、こうも声が通ってるんじゃから大したものじゃ。もしや、ぷれぜんと・まいくよりも声が通るんじゃないか……? いや、流石に無いか。

 

「そろそろ目的地だ。ポイントに到達し次第、順次降下! 迅速に目標を制圧し、個性因子誘発爆弾(イディオトリガーボム)を回収! 好き勝手動かれる前に決着だ!」

 

 ……ふむ。まぁ、すべき事は何となく分かった。施設の制圧は、そう難しくないじゃろう。爆弾の回収も、大して手こずらんとは思う。周囲に居る英雄(ひいろお)共と連携していけば、時間は掛からんと思う。すたぁと同じ組分けになってるんじゃから、誰もがそれ相応の実力を持っている筈じゃ。そうでなければ困る。即興で協力する羽目になるじゃろうけども、そこは仕方ない。儂が合わせてやるとしよう。

 

 ただ、ひとつだけ問題が有ってのぅ……。んんむ……。

 

「頼皆。ちゃんと聞いてた、よね……?」

「分かんない事が有ったら、俺達が教えるからさ。独りで動くのは止めてくれよ……?」

 

 何が問題って、この組分けの中に尾白と砂藤が居るって事じゃ。常闇や翼男は、別の組分けじゃ。ちなみに、ながんは宿(ほてる)に帰って貰った。というのも、どうにも被身子が心配になってしまっての。あの部屋は盗聴器やら何やらが大量に仕掛けられていたわけじゃし、警戒しておくに越したことは無い。いっそ、昼間の呪霊探しに被身子も連れて行くべきじゃったかもしれん。

 ……とにかく、じゃ。儂としては、くらすめぇと達と同じ組分けになるとは思わなかった。よくよく考えてみれば、儂等は候補生なんじゃなら出来る限り一纏めにしておく方が無難じゃと分かる。いっそ常闇も同じ組分けじゃった良かったんじゃけども、まぁ離れてしまったなら仕方ないか。こうなってしまったのなら、子供達を守りながら悪党を制圧するしかあるまいて。

 

「って、頼皆。聞いてる?」

「……ん、……あぁ。……うむ……」

「こりゃ聞いてないな……。テイルマン、俺達でフォローしようぜ」

「……そうだね」

 

 あれこれ考えていると、黒い英雄装束(こすちゅうむ)を身に纏った二人が何かを言っておる。話し掛けられた気がして顔を上げてみたら、両隣の男子共が何故か呆れた顔をしておったわ。解せぬ。何か言ってたのは聞こえてたんじゃが、何を言っていたかは聞いてなかったわ。って、ぬおっ。気付けば風が……! 何で空を飛んでるのに、航空機(へりこぷたぁ)昇降口(はっち)が開いているんじゃ……!

 

「降下開始だよ! 行こう!」

「ボサボサしてると、置いてかれちまう……!」

 

 は? 降下? 待て待て、まだ着陸してないじゃろうが。人は空から落ちると死ぬってことを知らんのか、たわけ。幾ら個性が有るからって、好き好んで飛び降りるような真似は……! って、こらっ。二人して儂の手を引くな、引っ張るなっ! 外に向かって走るんじゃない! いったい何を考え―――!!

 

 

「ぬ、ぬぉおおっ!?」

 

 

 尾白と砂藤に手を引かれるまま、儂は外へ飛び出す羽目になってしまった。遥か遠くに見える地上には、広々とした敷地の建築物。そこに向かって、英雄(ひいろお)達が我先にと降下している。一番先頭に居るのは……すたぁか。儂等は最後尾じゃの。って、呑気にしている場合ではない……! 着地を、着地を考えねば!? 投身自殺なんて、絶対に御免被る!!

 

 

 

 

 

 






ヒューマライズに殴り込むぜ!ってタイミングですが、今回の更新はここまでです。尾白くんと砂藤くんにも出番があります。年末か、新年になったらまた投稿したいと思います。進捗次第ではクリスマスに投稿出来るかなと。

次回「ワタシが来た!」

三人称による補完は要りますか?

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  • 良いから一人称で突っ走れ
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