待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
「ぬおぁっ!?」
着地。と、同時に転がる羽目になったわ。尾白と砂藤に引っ張られる形で
……なんて、今は考えてる場合ではないのぅ。
儂等は、一番最後に着地した。何やら広々とした建物の敷地内で、既に戦闘が始まっている。ここは中庭……か? まぁ良い。周囲に銃を構えた奴等が見えたから、咄嗟にそこらに血をばら撒き地面を持ち上げ壁とする。と、同時。喧しい音が聞こえた。姿を見るなり発砲か。
「で? 儂等はどうするんじゃ?」
「どうするってそりゃあ、まずは構成員を制圧! 同時に、
「って言っても、銃弾の中を進んで行くのは簡単じゃないよね……!」
「……銃は儂が何とかしよう。お主達は脇目も振らず、目の前の奴等を殴り倒せ」
「応っ!」
「分かった、任せる……!」
……さて。ここからは忙しくなりそうじゃ。何せ二人を守りつつ、悪党を制圧せねばならん。まずは儂が土壁の向こうに飛び出して、悪党共の注目を集めるとしよう。その後で尾白や砂藤に動いて貰えば、危険はある程度逸らせる筈じゃ。その線で行こう。
二人に目で合図して、赫鱗躍動を全開にしつつ土壁の上に跳び乗る。周囲を見渡してみれば、目に映るのは武装した悪党ばかり。儂の姿を視認した何人かの悪党が、儂に向かって銃を向けた。ので、即座に血を飛ばして銃を弾く。ついでに。
「おい! こっちじゃ!!」
声を上げ、両手を叩き合わせて音を立てる。目に付く限りの悪党共に向かって、赤縛や苅祓を次々と飛ばす。狙いは、基本的には銃じゃ。儂に気付いた奴は、儂に向かって銃を向けるから都合が良い。
「うわっ!?」
「ぎゃ……っ!?」
一人、二人。三人四人と、血を飛ばすだけで制圧していく。が、数が多いな。そこらで好き勝手に
って、ぬおっ。銃弾が髪を掠めた。呑気に状況を観察している場合ではないのぅ……!
叩き合わせた両手をそのままに、土壁の上から跳ぶ。同時に血をばら撒いて、出来る限り銃を弾く。えんでゔぁの下で試行錯誤しただけあって、我ながら随分と高く跳べるようになったと思う。
「尾空旋舞!!」
「シュガーラッシュ!!」
……良し。どうにか悪党共との距離を詰めた二人が、次々と悪党共を殴り倒して行く。接近出来たのなら、ある程度は大丈夫じゃろう。生半可な訓練は積んどらん筈じゃからの。儂に勝とうとしてるんじゃから、武装した悪党ぐらいは容易く捻じ伏せてくれなければ困る。
なんて考えながら、着地。もう一度周囲に血をばら撒いて、悪党共の武装を弾いていく。
「他のヒーローは良い! ブラッディを狙え……!! 奴を通すな!!」
む? 狙いは儂か? まばらに散っている悪党共が、他の
周囲にばら撒いた血を使って、儂を囲うように地面を引っ張り上げる。直後、土壁の向こう側に、何度も銃弾が当たった音がした。多少の時間稼ぎにはなるじゃろう。ひとまず
「ぬぉあっ!?」
嫌な予感がしたから咄嗟に真上に向かって跳び上がってみれば、土壁が大爆発したわ。なるほど、爆弾か。咄嗟に跳んで良かったわ。儂じゃなかったら、死んでおったかもしれん。いや、儂でも直撃すれば無事では済まんじゃろうて。まったく、銃に爆弾と来たか。滅茶苦茶じゃの
って、いかん。二度も土壁を出して、二度も真上に跳んだのは良くなかったか。下に居る悪党共が、待ってましたと言わんばかりに銃を儂に向けておる。
「円花ァア!!」
ぬおっ。横から、だぁくしゃどうに掴まれた。と言うか、急に脇腹に突っ込んで来た。
「げほっ、お主なぁ……! もう少し助け方ってものが……!」
「すまん! 無事か!?」
「お陰様でな。で、どうする?」
ひとまず。だぁくしゃどうに掴まれたお陰で銃に撃たれずに済んだ。空を自由に飛べるのは、やはり便利じゃのぅ。いや、出来ればもう少し高度を落として欲しいが。空を飛べる奴は、何じゃってどいつもこいつも儂を抱えて飛び回るんじゃ。
だぁくしゃどうに掴まれたままに中庭の方を見てみれば、次々と悪党共が制圧されていく様子が見える。一度全員して儂の方を見た隙を、
「どうやら、ヒューマライズは頼皆を狙ってる。理由は分からないが、これを逆手に取ろう」
「つまり?」
「……俺達で陽動を掛けよう。そうすれば、ホークスや他のヒーローが動き易い筈だ……!」
……うむ。まぁ、そうかもしれんな。どういう訳か、悪党共は一斉に儂を狙った。そういう号令までしていたぐらいじゃ。
「……相分かった。運搬役は頼むぞ、……つくよみ」
「……! あぁ、任せてくれ!」
掛ける言葉を間違えたかもしれん。すっかりやる気満々になりおって。下手に気張って怪我をされたら洒落にならんから、少し頼りつつも見張っておくか。
……さぁて。悪党共が儂を狙うつもりなら、派手に暴れてやるとしよう。少しは骨の有る奴が居てくれよ……!!
◆
だぁくしゃどうに抱えられたまま、目に付く限りの悪党を苅祓や赤縛で制圧していく。回避の全ては、もう常闇とだぁくしゃどうの判断に任せることにした。代わりに、儂は出来る限り悪党の数を減らすことに注力する。中庭を飛んだり、二階の窓を突き破って建物に突入したり。なるべく目立つように血を撒いて、とにかく敵の数を減らしていく。
……それにしても、随分と数が多い。倒しても倒してもそこら中から悪党が湧いて出て来る。この建物に、いったいどれだけの戦力が集中しているのやら。まぁ良い、呪力はまだまだ尽きぬ。百人じゃろうが千人じゃろうが、雑魚が相手なら何とでも出来るじゃろう。実際に何百何千と相手にしたいとは思わんが。
「……ちっ。次から次へと……! 集中を切らすなよっ」
「分かっている……! まだまだ余裕だ!」
「モット任セロォッ!」
またも悪党共が姿を見せたので、今度は加減した穿血で何人か吹き飛ばしてやった。だぁくしゃどうも常闇も、まだまだ動けそうじゃ。
作戦が始まってから、もう結構な時間が経ってしまっているような気がする。十分か二十分か、或いは三十分か。
「……つくよみ、少し時間をくれ。こうなったら、建物ごと纏めて薙ぎ払う」
「……は? まさか、個性を……!?」
「たわけ。そっちでは死人が出るじゃろ。別の手じゃよ、別の手」
いい加減、建物の中を動き回るのも面倒になって来た。いや、儂自身は動いてないんじゃけどな。正確には、こうしてだぁくしゃどうに運ばれるのに疲れた。いつまでもいつまでも雑魚共の相手をしたいとは思わん。手っ取り早く済ませてしまおう。
後腰に帯びた脇差しを引き抜く。剥き出しになった刃に遠慮なく呪力を流し込んで行く。
―――あぁ。しっくり来る。
遠慮無しに振るえば、それだけでこの建物は小波に呑み込まれるじゃろう。儂の呪力と隆之の術式が有れば、間違いなくそうなる筈じゃ。今直ぐそうしてしまいたい。……が。
「つくよみ。他のひいろお共に注意喚起は出来るか?」
悪党共が水に押し流される分には構わんが、
「無線を使えば。だが頼皆、いったい何を?」
「なら、全員建物から退避しろと伝え―――」
っと。建物の中、だぁくしゃどうに運ばれているとまた悪党が飛び出して来た。ので、今回は脇差しを振るって水の壁を作る。発砲音と共に飛来した銃弾は、真っ直ぐ飛びながらも水壁の内に沈んだ。……ふむ。せいぜい軌道を逸らしたり弾丸の速度や威力を少し削れば良い程度に思ってたんじゃが、まさか貫通すらしてこないとは。よくよく見てみれば、水そのものが儂の呪力を纏ってるようじゃな?
……まったく。とんでもない呪具を作りおって。どれだけ儂の役に立つつもりじゃ。業突く張りめ。
「早く伝えろっ。全員溺れても儂は知らん!」
「――っっ! 頼皆から全員に通達! 今直ぐ建物から逃げろ!! ここは水に飲まれる!!」
よし、通達したな? ならもう、待つ必要は無い。刃に全開で呪力を流し込み、振り上げる。既に脇差しそのものが水を纏い始め、同時に辺り一帯の湿気が全て無くなったような気さえした。じゃって、いきなり空気や肌が乾いたんじゃもん。何なら唇が切れた。いやはや、とんでもないなこの呪具は……!
「呑み込め……!!」
刃を振り下ろす。その次の瞬間、儂等の目の前は人など容易く押し流す程の水流が出現した。現に悪党共が軒並み流されておる。悲鳴……は水に押し流されて消えたわ。放った水の勢いは留まることを知らず、横へ前へと広がって……。あ、いかん。壁やら床やら天井やらで跳ね返って、儂等の方にも向かって来たわ。しかも結構、勢いが強い……っ! 呑み込まれたら溺れるどころじゃ済まんやつじゃこれ……!!
「だ、だぁくしゃどうっ! 回れ右!!」
「退くぞ! 頼皆っ、滅茶苦茶な事をしないでくれ!!」
「ここまでとは思わなかったんじゃっ!!」
「イイ加減ニシロヨ円花ァ!?」
い、いかん。まっこと、いかん……! だぁくしゃどうが全速力で撤退を始めるが、それでも直ぐ真後ろに水の気配が迫っている……! いやいや、自分で出した水流に溺れるなんて真似は流石に阿呆のすることじゃっ。どうにかしなければ……! ど、どうやって!?
た、隆之貴様ぁっ!! なんて呪具を作ってるんじゃ!?
「ぅ、おぉおっ!?」
「ぬぉあ……っ!?」
肝を冷やしながら廊下を飛び抜け、儂等は窓を突き破りどうにか建物の外に飛び出した。直後、だぁくしゃどうが錐揉みしながら上昇した。その際、窓から吹き出た水流が中庭を呑み込む……どころか押し潰す様が見えた。お、おいおい……。大丈夫かこれ? もしや、駄目なのでは……!?
って、何じゃ……? 流れていた水が、全て水煙に変わった。術式効果が自然と消えた? いや、これは何か別の力が働いたように思える。
「か、廻道……っ。何をしたんだ……!?」
「何って、……思いっ切り呪具をな?」
「呪具? とにかく、滅茶苦茶しないでくれ……!! これじゃ作戦どころじゃないっ」
「す、すまん。想定より凄まじかった……」
まさか、ここまでとはのぅ……。あの時は小波程度にしか思わなかったが、まさか建物すら崩しかねん程の勢いと水量じゃったとは。この呪具、さては簡単に振って良いものではないな? こ、今後は気を付けねばっ。
……それにしても。水煙が凄まじい。周囲を見渡すことがまるで出来ん。濃霧に囲まれたってこうはならんじゃろって、思う程に。これでは状況が分からん。無線は……この水煙の中で役に立つのか? あれだけ戦闘音が響き渡っていたのに、今では何も聞こえない。悪党共は、水に押し流されたか? なら、
『ぁ、あーー。ヨリミナ、聞こえる?』
ぬ。無線が聞こえた。これは、ほぉくすの声じゃな。どうやら無事らしい。
『後でお説教。ツクヨミ、状況は?』
「外からでは、水煙で何も。そちらの状況は?」
『だよね。スターが奥まで来てた水を変えたんだ。ひとまずこっちは無事。……ただ、爆弾は見当たらなかった』
「……何じゃって?」
『爆弾は見当たらなかった。ついでに、爆弾の位置を知る構成員も居なそうだ。
……やられたよ、無駄足になった。けど今はとにかく、さっきので溺れた構成員の捕縛が先。水煙は直に晴れる、警戒を怠らないように!』
……ちっ。どうやら、儂等はここまで来て成果は得られんかったようじゃ。とんだ無駄足になってしまったの。しかも、今回の作戦は……確か世界的に実行されている筈のものじゃ。
とにかく。今は周囲を警戒しつつ、悪党共の捕縛をするとしよう。水煙は少しずつ消え始めて、何とか建物が見えて来た。……これは、大惨事じゃの。建物は余す所なく水浸しで、壁には亀裂が出来とる。今直ぐ倒壊するなんて事態は無いよな……? そんな事になったら、大惨事なんてものじゃない。念の為に、手早く捕縛を済ませるとしよう。
なんて考えていた、その時。
「HAーーHAHAHA!!」
何処かで聞いたことのあるような笑い声が聞こえて、背筋が粟立った。
「もう大丈夫! 何故って?
ワタシがぁ!! 来たァあ!!!」
直後。とんでもない轟音が響き、辺り一帯を覆う水煙が吹き飛んだ。晴れた視界の中、水浸しとなった中庭に……奴が現れた……!!
お久しぶりです。また十話ぐらいは毎日投稿出来るかなって思います。
ライアーマイト、参戦。あーあ。
三人称による補完は要りますか?
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欲しい
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要らん
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良いから一人称で突っ走れ