待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
はい、椅子に縛り付けられたトガです。目の前には……変な格好をした人達が何人か居ます。見張りだと思います。多分。ここが何処かはさっぱり分かりません。連れ去られる時に、頭に布を被せられたので。でも多分、何処かの工場だと思います。何の工場かは知りませんけど。もしかしたら廃工場かも……? 随分埃っぽいので。
いやぁまさか、悪い人達に拉致されるとは思いませんでした。火伊那ちゃんと警察の人……。ええっと、モラルさんが部屋に帰って来たと思ったらですね? 何か大勢悪い人が部屋に押し掛けてきちゃって、それであっさり連れ去られちゃいました。ぶっちゃけ、逃げたり抵抗することは出来たんですけどぉ……。でも、火伊那ちゃんとモラルさんが真っ先に気絶させられちゃって。倒れた二人を殺すって脅されたら、もう仕方ないですよね。円花ちゃんが後でこの人達を皆殺しにしちゃう気がして、今から戦々恐々なのです。お願いだから思い留まって欲しいんですけど、絶対無理ですよねぇ。じゃあもう、何とかして私が止めないと。
……それと。火伊那ちゃんが心配です。思いっ切りバチバチされてたので。スタンガン? スタンロッド? で、思いっ切りやられちゃってたので。
あと。思い返してみてちょっとビックリしたんですけど、こんな目に遭ってるのに私は結構平静です。だってヨリくんの記憶の方がよっぽど怖かったですし。まさかいざって時に、恐怖心が何処かにバイバイしちゃうとは思いませんでした! 盗聴器とか監視カメラを仕掛けられてるのを知った時は、結構怖かったんですけどねぇ……。
「……ふわぁ……」
あ、ヤバっ。と思っても、欠伸が止められませんでした。手足はキツく縛られてるから痛いぐらいなんですけどぉ、身動き出来ないし今日も長時間勉強してたから疲れてて……つい。
見張りの人が、こっちを睨んで来ます。結構ヤバい気がしてきました。
「……
「
「|Now, let's talk about the distortions in this world《では、この世界の歪みについてお話しましょう》.」
「
……殴られなくて良かったのです。うっかり欠伸しちゃった私に話掛けてきたのは、顔はフードで見えませんが女の人です。声は落ち着いてる感じで、でも若い気がします。何となくですけど。
「
「……」
ん、んん。ちょっと怖くなってきました。怖いというか、気色悪いです。年頃の乙女としてはとっても! 自分の事が知らない誰かに調べ上げられてるって、大分ホラーですよねぇ。まぁ個人情報なんて、悪い人がその気になって調べれば簡単に分かるんでしょうけど。
……それで、ええっと。この人達って、多分ヒューマライズの人達ですよね。まったく関係ない
でも下手に探りを入れて相手の機嫌を損ねたら、危ないのです。
まぁ、やっぱり大人しくしてましょう。多分ヒーローとか警察が直ぐに救けに来てくれるでしょうし。と言うか、私が連れ去られたって知ったら円花ちゃんは直ぐに動いちゃいますよね。今のヨリくんは私の位置が何となく分かりますから、きっと迷わず来れるのです。そう考えたら、直ぐに救けて貰える気がしてきました。
……なんて、思っていると。何やら目立つ足音が近付いて来ます。それと、何かを引き摺る音もしてます。一瞬円花ちゃんかなって思ったんですけど、全然違います。暗がりから出て来た人は……。……あー……。
「……やぁ、ブラッディのフィアンセさん。調子はどうかな?」
暗がりから出て来たのは、椅子を引き摺った……モラルさんでした。いやぁ、良くないですねこれ。まっこと、良くないのです。だってこの人、お巡りさんですよね。お巡りさんが犯人ってことは、……それってもしかして警察署も真っ黒だったりします?
「正直、君が居てくレて助かったよ。あぁ、助けは期待しない方が良い。俺がこうして話し掛けてルって時点で、警察は真っ黒って分かルでしょ?」
「……そうですか。でも直ぐ逃げた方が良いですよ? 円花ちゃんが真っ直ぐ向かって来てるので」
「辿り着けないさ。指名手配犯って事になルし、ニューヨーク中のヒーローにも通達してあルかラ。ついでに、あのお姉さんもこっちで捕まえてルしね」
「……火伊那ちゃんは、無事なんですか……?」
「こことは違う所で拘束してあル。君と彼女はブラッディに対してのカードだから、無闇に傷付けたリはしないさ」
ええっと……。何ですかね、この人。私の前で椅子に座ったと思ったら、色々ペラペラと喋り始めて。やたら笑みを浮かべてるのが、胡散臭くて気になります。
「君って、物怖じしないんだ? 普通こういう状況って、もっと怖がっても良いと思うんだけど」
「これでも人生経験豊富なので」
「へー。じゃあ、こレも怖くないってこと?」
悪いお巡りさんが、拳銃を出しました。ガチャって動かして、銃口を私に向けます。……んん、あんまり怖くないと言うか……実感が無いのです。ほら、日本って銃社会じゃないので。銃が危ない物なのは知識としては知ってますけど、銃よりもナイフとかの方が怖いかもしれません。あっ、やっぱりそうでもない気がしてきました。
「……もう少し怖がってくレないかなぁ。君、一般人でしょ? あぁいや、日本の公安でお仕事してルんだっけ? じゃあ銃ぐらい何とも思わないか……。失敗したなぁ……」
……あー……、ええっと。ピストルより今の方が怖く感じます。この人、何でトガが公安とお仕事してるって知ってるんでしょうか? もしかして、日本の公安も真っ黒だったりします?
「ヒューマライズの一員って、世界中何処にでも居ルんだよ。人ひとリ調べルぐラいは、結構簡単に出来ちゃうぐラいに。
って訳で、大人しくしててね。君が下手な真似をすルと、日本に居ルご両親が大変かもよ? まぁそんなに縛ってあレば、逃げレないだロうけどね」
……んん。これから、どうしましょうか。救けが来るまで大人しくしてようかなぁって思ってたんですけど、そうも言ってられない気がしてきました。逃げ出すことは、まぁ容易です。縛られてますけど、手足から呪力放出すれば縄ぐらい簡単に切れます。最悪拳銃で撃たれちゃっても、
「まぁ何にしても、事が済むまで大人しく人質になっててね。暇ならそこに居るお姉さんの、お有リ難い勧誘を聞いたって良いし。君を通じてブラッディがこちラに来レば、そレはそレで万々歳だし」
「ヤです。怪しい勧誘に興味無いので」
「そ。じゃあ、黙って大人しくしてたラ?
……貴重なカードなんだ。丁重に扱え、目を離すなよ」
話すだけ話して、ついでに指示までして。また椅子を引きずりながら、悪いお巡りさんは暗がりに消えました。……何でわざわざ椅子を引き摺ってるんでしょうね? 笑顔は胡散臭いし、気色悪かったのです。
……とにかく。これからトガはどうしましょうかねぇ。ヨリくんが救けに来てくれるまで待ってても良いんですけど、さっき言ってた事が本当ならヨリくんは指名手配されたりヒーローに狙われたりしちゃうみたいで。そうなると、救けに来てくれるまで大分時間が掛かっちゃう気がするのです。
私が拉致されて、指名手配。これって、結構良くないです。円花ちゃんの事だから、かなり滅茶苦茶しちゃいそうで。
……んん。どうにもこれから、色々と大変な事になりそうなのです。私がヨリくんを止めないと死人が出ちゃいます。それは流石に駄目なので、やっぱりトガが何とかしないと……!
拉致られても呑気してるトガちゃんの図。カァイイね。
三人称による補完は要りますか?
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欲しい
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要らん
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良いから一人称で突っ走れ