待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
「待ってくれ頼皆! 闇雲に動くな!!」
「頼皆、待った!」
「慌てても何にもならねーって!」
少し離れた後方。常闇や尾白、それから砂藤が儂を追い掛けながら叫んでいるが今は無視じゃ。高い建物ばかりが並ぶ道を、ひたすら跳んで走る。被身子の居る方角に向かって、ただひたすらにじゃ。
今に見てろよ、悪党共めぇっ!!
電灯を、車の屋根を、時に建物の壁を踏み台して、ただ真っ直ぐ跳び続ける。風を切り、ひたすら前へ突き進む。先程から喧しい音を鳴らす車が儂に向っている気がするが、知った事じゃない。誰じゃろうと何じゃろうと、今の儂を止めれると思うなよっ。
早く、速く。速く速く……っ!
呪力を放出しながら、全力で跳び続ける。いい加減、後ろから届く声が小さくなって来た。ここまで前を遮るものは、特に無い。強いて言うなら、夜中じゃってのにそこらを歩いている通行人が移動の邪魔じゃ。とにかく今は、被身子を救け出すっ。それ以外の事は、後で良い……!
「……っ、くそ!」
苛立ちが募る。頭に血が上る。今直ぐ被身子を救けなければならぬのに、まだ被身子の居場所が遠いっ。方角が分かることだけが救いじゃ。訳の分からん縛りじゃけども、そのお陰で被身子が居る方角だけは分かる。被身子の身にこれ以上何か起きてしまう前に、急がねば……!!
急げ、急げ急げ急げ……! のんびりしている暇は無いんじゃっ。とにかく今は……!?
「っあ゛!?」
何度目か分からん跳躍をしたその瞬間。何かが儂の腹を貫いた。直後全身が痺れ、落下する羽目になる。咄嗟に
「何、じゃ貴様等は……っ!!」
転がった先、儂を取り囲むように居たのは
「お前は包囲されている! 大人しくお縄になりな!!」
「ぁあ゛っ!?」
何、なんじゃこいつ等はっ! 大人しく捕まれじゃと……!? 何を、訳の分からん事を!! 今は急いでるっていうのに、いったい何なんじゃ!!
「ぬが っ!?」
光が迸った。また全身が痺れる。……なるほど、電撃か鬱陶しいっ。再び
どいつもこいつも、ふざけおって! もう良い、こうなったら……!!
「追いっ、付いたぁ!!」
「ぐおっ!?」
地上に居る
「何だか分からないけど、ここは逃げよう!」
「ふざ、けるなっ! このまま行かせろ!!」
「一度冷静にならないと! 闇雲に進んだって、どうしようもないでしょ!」
「うるさいっ、離せ!!」
どいつもこいつも、何なんじゃ!! 一度冷静になれじゃとっ!? 儂はすこぶる冷静なんじゃが!!?
「頼皆! テイルマン!!」
「よ、し……! 行くよ頼皆!!」
「離せと言っとるじゃろうが!?」
「良いから今は落ち着いてって!!」
こ、の……! 離せ、たわけ共!! 儂を掴んであらぬ方向に行こうとするんじゃないっ!! 被身子が居る場所に向かわせろっっ!!
◆
……くそっ! 尾白とだぁくしゃどうに掴まれて、結局訳の分からん方向に行く羽目になってしまった……! 一度は振り払おうと動いたが、逃げる間も与えられずまた捕まれてしまった。そのせいで、被身子が居る方角が変わってしまった気さえするっ。何を作ってるかも分からん、街外れの工場現場などに逃げ込みおって! これ以上儂に遠回りをさせるつもりなら、相手が子供と言えども……っ!!
「とにかく、落ち着けって廻道っ。渡我先輩が心配なのは分かるけどよ!」
「闇雲に動いたとて、状況が好転するとは思えない。頼むから、今は止まってくれ」
「一旦、冷静になんなきゃ。廻道をこうするのが、ヒューマライズの目的かもしれないし……!」
「儂は冷静じゃが!?」
「オ、落チ着ケ円花ッ。ナ、ナッ?」
ああ゛、もうっ!! 立ち止まってる余裕なんか無いじゃろうがっ。今この瞬間に、被身子が何をされてるのか分からんのにどうして動かずに居られる! これ以上被身子に何か起こりでもしたら、それこそ儂は冷静では居られないっ! 急がねばっ。早く、早く救けに行かないと……!! こうしている時間すら、今は惜しいんじゃっ!!
もう良いっ。こんな分からず屋共は無視して、儂は先に行く。何としてでも、被身子を取り返さなければ―――!
「いい、加減にしてくれっ!」
「ぶっ!?」
横から、思いっ切り殴られた。小癪にも良い所を殴られて、少しばかり視界が揺れた。貴、様……! 何してくれてるんじゃ、この鳥頭は!!
「独りで行くな! 俺達も連れて行け!! 渡我先輩を救けに行きたいのは、廻道だけじゃないっ!!」
「―――っ」
「救けに行くなら、一緒にだ。間違えないでくれ……!」
「じゃっ、……たらっ。止めないで勝手に付いて来んか馬鹿者が!!」
胸ぐらを掴み、叫び返す。何なら殴り返してしまいたい。そもそも、こんな事をしている場合では無いんじゃっ。今直ぐにでも被身子を救け出さなければならないのに、どうしてこの鳥頭は儂を引き留めようとするのか……! そのせいで間に合わなかったら、もしもこれ以上被身子に何か起きてしまったら、もう儂は……っ!
「ちょっ、喧嘩してる場合じゃないでしょ!」
「こんな時に仲間割れしてる場合じゃないだろ!?」
今度は尾白と砂藤が、儂等の間に入って来た。だけではない。砂糖は儂を羽交い締めにして、尾白は常闇を尾で捕まえて引き離す。何なんじゃもぅ……! こんな事をしている時間すら、今は惜しいのにっ。どいつもこいつも、何じゃってこうも分からず屋なんじゃ!? 儂は被身子を救けに行くっ、その邪魔をしないでくれ……っ!
「……すまない、二人共。憤怒に呑み込まれるところだった」
「頼むぜ常闇。まぁ、殴ってでも止めたかったのは分かるけどよ……」
「そういう時は一声掛けてくれないかな?
……それと、廻道さん。今は焦っちゃ駄目だ。渡我先輩を餌に君を釣るのが、ヒューマライズの目的かもしれないじゃないか」
「渡我先輩を、俺達四人で救けよーぜ。……な?」
ぬ、ぐ……。ぐぬ、ぐぬぬ……っ。
「廻道、頼む。渡我先輩を救ける為に、今は落ち着いてくれ」
「……ぐ、ぎぎ……っ」
「焦って動けば、向こうの思う壺になっちまう。渡我先輩の居場所が分かるなら、ちゃんと作戦立てて動こうな?」
「ぐぬ、ぐぬぬぬ……っっ!」
「この状況を切り抜けて、俺達で絶対に救けよう」
ん、ぐぬぅ……っ。ぐぬぬっ、ぐぬぬぬぬ……っ!
「……っはあ……。……もう良い、分かったから離せ」
「えっ」
「離さんか、たわけ。せくはらされたと、被身子に言い付けるぞ」
「そ、それは勘弁……!」
……、……はぁ……。……あぁ、もぅ。仕方ないから、一度落ち着いてやる。頭に血が上って、冷静を欠こうとしてたのは事実じゃ。いやまぁ、思い返してみればとっくに冷静さなどは失っていたのぅ。
やっと砂藤に離して貰えたので、直ぐその場で床に腰を降ろす。胡座をかいて頬杖をついて、口を閉ざしておく。いや、思いっ切り溜め息を吐く。腸は煮えくり返っとるけど、腹の内に留めておく。この怒りをぶち撒くのは、被身子を救けた後にしよう。
「ええっと……。じゃあ、これから作戦会議って事で良いよね……?」
「あぁ、そうしよう」
「どう救けるか、ちゃんと決めて動かないとな。慎重に行かないと、渡我先輩が危ない」
「……」
……あぁ、うむ。そうじゃな。砂藤の言う通りじゃろう。下手な動きをすると、被身子に余計な危険が及ぶかもしれん。それは何としても避けるべきじゃ。
「……状況の確認から行こう。渡我先輩が拉致されたが、幸い廻道が居場所を分かってる。それから、何故かヒーローや警察が廻道を捕らえようとしていた」
「それ、多分これだ。もうニュースになってる」
全員に見えるよう、尾白が
「……廻道が指名手配された。容疑は、……殺人及び離反」
「はぁっ!?」
「濡れ衣を着せられた、……か。このタイミングってことは、ヒューマライズの仕業と見て良いだろうな」
「ってことはよ、警察にもヒューマライズが居るってことか?」
「もしそうなら、ヒーローが廻道を捕まえようとしたのも分かるね。そして多分、これからも狙われる」
「……ホークスが何とかしてくれる筈だ。恐らくは、日本の公安も。今はそう信じて動こう」
……ちっ。黙って話を聞いていれば、随分と面倒な事になっておる。儂が殺人の容疑で指名手配じゃって? しかも離反じゃと? じゃから
まさかここまで、悪党共に注目されていたとはな。そうなっていると聞かされては居たが、ここまでとは思わんかった。まぁ良い、儂に注目しているのなら緑谷に目が向くことは無いじゃろう。その点については良しとする。被身子に被害が加えられたことについては、決して許さぬが。
とにかく。今儂がするべきことは―――。
「一緒にだ、廻道。俺達にも背負わせてくれ」
「……まだ何も言ってないじゃろ」
「見くびらないでくれ。何を考えてるかぐらい分かる」
……。……はぁ……。まったく、
「勝手にしろ。儂は知らん」
まぁ、命が危うくなるようなら助けてやるけども。
何にせよ。こうなってしまったら、慎重に行動せざるを得ないか。逸る気持ちも有るが、下手に動くのは止さねばな。
色々と、面倒な事になって来たのぅ。どうにも厄介事ばかり増えてしまっている気がする。それでも被身子を救ける為に出来ることは、何だってするしかない。緑谷ではないが、ひとつひとつやって行くとしようかの。
三人称による補完は要りますか?
-
欲しい
-
要らん
-
良いから一人称で突っ走れ