待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
……さて。問題は、これからどうやって被身子を救けに行くかじゃ。幸いにも被身子が居る方角は分かるから、そこに向かって行けば救けることは出来る筈じゃ。しかし、外は警察やら
まぁ、並大抵の
「ヒーローも警察も、出来る限り接触したくないよね」
「戦闘は避けたい。が、言葉ではどうしようもないだろう」
「問答無用って感じだったからなぁ……。見付かったらやべーし、隠れながら行くしかない……よな?」
まったく。どうにも面倒な事じゃ。三人がこれからどうするべきか話し合っているが、まだ良い案は出て来ないらしい。それもそうじゃろう。こんな事態になるなんて、誰も予想出来なかった。儂じゃってそうじゃ。予想出来なかったが故に、何の備えもしとらん。こういう場合に陥った際の対処法について、授業で習ったりしとらんのか? いや、習ってるならとっくに実践してるか……。
今回の事態を無事に終えることが出来たなら、この場合の対処法について少しは学んでみるとしようかの。今後現れる悪党共が、同じ事態を引き起こさないとは言い切れんし。
……まぁ、とにかく。砂藤が言うように、隠れて進むのが安全では有る。被身子を救けるのに時間が掛かってしまうが、下手に
「廻道。何か意見は?」
「……隠れて進むしか無いじゃろ。もっと夜が更ければ、だぁくしゃどうで飛んでしまっても良いかもしれんが」
幸いと言うか、何と言うか。今回の
「夜陰に潜むのは、悪くない。が、救助まで時間が掛かるな……」
「焦りは禁物だけど、だからって時間を掛け過ぎるのは……渡我先輩が心配だよね」
「隠れながら空を飛ぶ、ってのも無理だしな。と言うか、ダークシャドウで四人も運べるのか?」
「夜が更ければ可能だ。しかし全員を抱えて飛ぶとなると、狙い撃ちでもされたら危険だ」
んんむ。まぁ、それもその通りじゃの。夜闇に紛れてだぁくしゃどうに運んで貰うのは、移動手段としては手っ取り早い。が、
……ちっ。こちとら急ぎたいと言うのに、移動手段が限られるのは面倒この上ない。
「……そうだ、廻道。ひとつ思い浮かんだんだが」
「何じゃ常闇」
「帳で、飛んでいる俺達を隠せないか?」
「……」
……なるほど。よく思い浮かんだものじゃ。帳を降ろせば、その内に有るものは覆い隠せる。帳で儂等を隠してしまえば、誰にも察知されずに被身子を救けに行ける。常闇はそう思ったんじゃろうな。
「……んんむ。ひとまず、帳は降ろしておくか……」
掌印を組み、いつもの呪詞を口にする。この建築現場自体にしっかりと帳を降ろしておく。これで外から見つかることは無いじゃろう。この場に留まって隠れている分には、問題無い。
しかしまぁ、無茶苦茶な事を提案してくれたな? 移動してる儂等を、帳で覆い隠せじゃと? 確かに、それが出来れば移動に困らぬ。
……出来なくもない、か……? それを試した事は無い。が、例えば……そうじゃなぁ……。
そう。例えば、彌虚葛籠。彌虚葛籠を張ったまま移動することは可能じゃ。じゃったら、帳を降ろしたまま移動することが可能なのでは?
「廻道?」
「少し黙っとれ。今、考えとるから」
三人から離れて、再び掌印を組む。ぶっつけ本番になるが故、即席の縛りを用いた方が良いじゃろう。そうじゃなぁ、両手は常に掌印を組み、両足が地面から離れたら即終了。この結界を運用している間、術式を使わない。それと、結界効果自体は非術師でも注視したり聞き耳を立てたら看破出来る……程度に弱いもの。これで、どうじゃろうか?
「―――闇より出でて闇より黒く。その穢れを禊ぎ祓え」
……ふむ。随分と狭苦しい帳が降ろせたな。ひと四人が密着すれば何とか歩ける程度じゃろう。しかも視界が薄暗い。母がしてる
「……!? 廻道……っ!?」
「消え……っ!? いや、そこに居る……?」
「居る、……よな? でも何か、朧げっていうか……意識を離すと見えなくなるって言うか……」
……どうやら機能はしとるらしいの。何歩か歩いてから掌印を解き、結界を終了させる。そしたら、目を丸くしている三人の姿がよく見えた。
「まぁ、何とかなりそうじゃな?」
走ることは出来んし、完全に姿形を覆い隠せるわけじゃない。視界も悪い。が、多少なりとも人目を欺ける程度の効果は有る。今の帳を張って歩けば、視線にさえ気を付けていれば気付かれることは無い……とは思う。まさか即席即興で、こんな訳の分からん結界を編み出す羽目になるとはの。
……まぁ、とにかく。これで被身子を救けに行ける。儂が独りで跳んで向かうよりは遥かに時間が掛かるが、進めるだけ良しとしておこう。
◆
せ、狭苦しい……っ! 姿形を潜める為とは言え、何で男子三人と密着して歩かなければならないんじゃ! くそっ、結界の要項を間違えた。もう少し広めにしておくべきじゃったかもしれん。
「わ、悪い廻道。こんな密着して……」
「尾白、もう少し詰めてくれ」
「いや、これ以上は無理……っ」
儂等を覆い隠してくれる帳について説明した後。儂等は敢えて大通りを選び、被身子が居る方角に向かって進むことに決めた。が、周囲が見え難い上に四人で密着してないと帳の内に収まりきらん。それでも何とか歩いて進んでいるが、まだ被身子が居る場所は遠いように思える。そもそも方角が分かるってだけで、距離までは分からんからのぅ。うっかり通り過ぎる……なんて事は無いと思いたい。
結界を維持したまま、被身子に意識を向けてみる。方角は、……良し。まだ真っ直ぐ進んで大丈夫そうじゃな。そして、この帳の効果は悪くない。一度近くを
……時折、近くを通られた時は気が気じゃないが。それに、道行く通行人にぶつからないよう歩くのも中々大変じゃ。進めてはいるものの、牛歩な気がしてならん。せめてもの救いは、時間が経つにつれて一般人の数が減って来たということ。あと何時間かすれば、人気は無くなるかもしれん。それまでは窮屈に進むしか無さそうじゃ。
「て言うかこれ、廻道さんの足を引き摺りながら飛べば良いんじゃ……?」
「……そうかもしれん」
「いや。ここまで密着したまま飛んだら、かえって危ない」
駄目か。尾白の提案は良いものじゃと思ったが、常闇が無理と言うなら無理なんじゃろう。まぁ地面に足が付く程度の高度で飛んだって仕方ないじゃろうし、周囲が見え難い中で飛ぶのはそれはそれで危ないからの。今の儂等は、とにかく歩き続けるしかない。
「……そう言えば、何で渡我先輩の居る方角が分かるんだ?」
「知らん。訳の分からん縛りの成果じゃ」
何故儂が被身子が居る方角を把握出来るのか。その理屈は、実のところまるで分からん。と言うかそもそも、どんな縛りを結んだのかさえ今では朧げじゃ。あやつめ、いったい儂とどんな縛りを結んだんじゃか。害になるような事ではない……と思うんじゃけども。まぁ、結果として役立っとるようじゃから文句は言わん。
「と、とにかく進もうぜ。爪先と腰が……!」
「おい、震えるな砂藤」
「わ、悪い。でもこの姿勢、結構キツ……っ」
「ぷるすうるとらじゃ、たわけ」
儂じゃって辛い。両肩に砂藤の体重が掛かっている気がするし、左右は尾白と常闇に挟まれてるせいで何とも歩き難い。
とにかく、急ごう。いつまでもいつまでも、男子と密着して歩きたいとは思わんからの。
……それに。どうにも嫌な予感がしてならない。急いてはならんと分かっていても、どうにも胸の内がざわついて仕方ない。
―――数時間後。被身子が居る方角が急に真後ろに変わったことで、儂等は何とか被身子が連れ去られた場所を見付けられた。どうやら被身子は、この廃工場の中……に居るようじゃ。
三人称による補完は要りますか?
-
欲しい
-
要らん
-
良いから一人称で突っ走れ