待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
あっ。いきなり騒がしくなりました。呪力の気配を感じたので、円花ちゃんが来てくれたって分かります。地響きが上の方からしたので、多分この部屋は地下ですねぇ。私を見張ってる人達は大慌てで部屋の外に出て行ったので、案外逃げ出すチャンスかもしれません。こうなったらトガも動いて……! って、訳にもいかないのです。だって銃を持った人が、一人だけ側に残ってるので。いざとなれば呪力強化も反転術式も有りますけど、流石に銃で撃たれたら御陀仏なのです。それは嫌なので、円花ちゃんが来てくれるまで待ちます。無茶をするなら、円花ちゃんが見えてからにしようかなって。
って言っても、救けられてから本番みたいなところが有るんですけど。
だってほら、やっぱり円花ちゃんが顔真っ赤なので。上の方に感じる呪力が結構荒々しくって、死人が出てないか心配になってきました。
まぁヨリくんを怒らせちゃったヒューマライズが悪いんですけど。それでも、円花ちゃんに人殺しはさせたくないので。やっぱり私が何とかしないと……!
「
んん……。頭に銃口が突き付けられたんですけど、困ったことに全然怖くないのです。むしろチャンスかなって思っちゃったりして。今、トガを見張ってるのは一人だけ。この人をどうにかすれば、どうにか逃げれると思います。そうした方が良い気がしてきました。
……でもぉ、どうせなら愛する人に救けられたいなーって思いません? こう、夢見る乙女心的に。
あ、部屋の外が一層騒がしくなりました。そしたら隣の悪い人は、明らかに意識が私から逸れましたねぇ。やるなら今ですけどぉ……。あっ、ちょっと躊躇ってたらタイミング逃しました。私の頭に銃を突き付けたまま、真後ろに回られちゃいました。やっぱり大人しくしてましょう。無茶をするのは、ヨリくんが見えてからです。
なんて、考えていると。部屋の外の騒がしさが更に増しました。銃声やら悲鳴やら、鈍い衝突音とかが響いてます。そろそろ、ですかねぇ。そろそろ円花ちゃんがトガを救けに―――。
あっ。部屋の扉が吹き飛びました。咄嗟に椅子ごと倒れながら、手首や足首から呪力を放出して縄を焼き切ります。やっとヨリくんが救けに来てくれましたっ! って……。
「渡我先輩!」
「救ケニ来タゼェ!!」
な ん で 常 闇 く ん な ん で す か っ ! !
「う、ぉおおおっ!!」
私を救けに来てくれたのは、円花ちゃんじゃなかったのですっ。常闇くんと、砂藤くん。二人の奥には、尾白くんも居ます。
まず真っ先に砂藤くんが、突入の勢いをそのままに雄叫びを上げながら突進します。銃相手にそれは良くない気がしますが、直ぐに大丈夫だって分かりました。右から常闇くんがダークシャドウと一緒に駆けて、左からは尾白くんが低い姿勢で走ってます。いきなり必死な顔をしヒーローが三人も突撃してきたら、誰を撃てば良いのかトガには分かりません。あ、いやヨリくん的に考えるならまず真ん中の一人に向けて穿血なんでしょうけど。
とにかく、です。念の為に反転術式を回す準備をして、次の瞬間に備えておきます。
銃声が鳴りました。それと同時に、鈍い音が三……四回。じゃなくて五回。悪い人ひとり相手にちょっとやり過ぎな気がしないでもないですが、銃を向けられてるなら手加減なんて出来ませんよねぇ……。
結局。悪い人は三人……四人? に殴られちゃって、壁に向かって吹き飛びました。多分気絶してますね、あれ。ちょっと可哀想な気がしますけど、こればっかりは仕方ないのです。それに常闇くん達はヒーロー候補生ですから。激おこ円花ちゃんと違って、殺す気までは無い筈です。
「渡我先輩っ、これでもう大丈夫です……!」
「ご無事で何より。今は廻道が陽動してくれてます。俺達は、早く此処から脱出しましょう」
ん、んーー……。ん、んんん……っ。助けられちゃいました。全然納得が出来ないと言うか、したくないと言うか……。だって! どうせならヨリくんに救けて欲しかったのです……!!
◆
むすーーっ。どうせ救けて貰うなら、やっぱりヨリくんが良かったです。何で常闇くんとか、尾白くんとか砂藤くんなんですかねぇ。円花ちゃんはどうしたんですか円花ちゃんはっ。やり直し! やり直しを要求します! トガを真っ先に救けに来るのは、ヨリくんじゃないと納得出来ません……!!
「あの、何で渡我先輩は不機嫌に……?」
「もしかしてだけど、頼皆に救けて欲しかったとか……?」
「その可能性は有る。まさに番いの凶星……」
ぷいっ。分かってるなら真っ先に来ないで欲しかったです。まぁ救けに来てくれたことに関しては感謝してますけど。それに、これでも喜ばしく思ってます。上で円花ちゃんが大暴れして、常闇くん達が救けに来たってことは……つまりそういう事で。
今までこうした場面じゃ人を頼れなかったヨリくんが、今回は常闇くん達にトガを任せたのです。これは円花ちゃんにとって、とても大きな一歩だと思います。間違いなくプルスウルトラです、プルスウルトラ。それについては沢山褒めてあげなきゃって思うんですけど、でもやっぱり不満なのです。嬉しい気持ちが半分、残念な気持ちが半分。むぅう〜〜……。
「……とにかく、まずはここから出よう。もう誰も居ないと思うけど、警戒は怠らずに」
「あぁ。ダークシャドウ、先導してくれ」
「後ろは俺が。テイルマンは、渡我先輩を守ってくれ」
「了解。行こう……!」
……。……んん、ちゃんとヒーローしてますねぇ。前は常闇くんとダークシャドウが、後ろは砂藤くんが。隣には尾白くんです。三人がそれぞれ、私を守ろうと気を張ってくれてます。円花ちゃんは、相変わらず上で大暴れをして……ないですね。呪力の気配が消えました。一通り悪い人達をやっつけたんだと思います。それなら、多分こっちに向かって来てると思います。早く合流したいです、合流。トガはちょっぴり怖かったので、その分ぐらいは直ぐにでも甘えたいの。あと、乙女心的にはやっぱり好きな人に救けに来て欲しかったと言うか……。むぅ……。
「……頼皆は大丈夫かな? いや、心配しなくて良いのは分かってるんだけど」
「直ぐに合流しないとな。じゃないとほら、どんな大暴れをするか……」
「悪鬼羅刹。死人は出てないと思うが……」
それにしても。薄暗くて埃っぽい廊下に、何人も悪い人が倒れてますねぇ。そこら中に銃とか刃物とかが落ちてるのは物騒なのです。状況的に、この辺りは常闇くん達が制圧してくれたんでしょう。お陰で安全に脱出出来そうですけど、ちょっと引っ掛かるんですよねぇ……。
そもそもヒューマライズは、何でトガを拉致したんでしょうか。ヨリくんを誘き寄せたり、私を人質にすることでヨリくんを手元に置きたかった……とか? それにしては、あまり準備が出来てるように思えない気がして。世界規模でテロ活動してる悪い組織が、こんな簡単に人質を救出されるなんてことが有ります??
まぁ、円花ちゃんや常闇くん達が優れているって面は有ると思います。それにしたって、こう……スムーズに行き過ぎなんじゃ……?
念の為、いつでも呪力を練れるようにしておきます。何ならうっすら呪力強化した方が良い気さえして来ました。もう一悶着有りそうと言うか、油断大敵と言うか……。こう、嫌な予感がして来たので。
「……気を付けるのです。何かこう、……嫌な予感がひしひしと……」
「大丈夫です。何が起きても、渡我先輩は俺達が守ります」
「任セトケ!」
「スムーズに行き過ぎ……って感じはするよね」
「気を引き締めて行こうぜ!」
……わざわざ言わなくても大丈夫だったかもしれません。案外頼もしく育ってますね、三人共。まぁA組はヨリくんが鍛えたようなものなので、いい加減頼りになってくれないと困るんですけど。
そんなこんなで薄暗い廊下を、急がず慌てずに気を付けながら進みます。あ、多分外に通じる階段が見えて来ました。話し声が聞こえるので、誰か降りて来てるみたいです。この状況で降りてくる人と言えば、それは一人しか居ません!
今度こそ! 円花ちゃんなのです……!!
「円花ちゃんっ!」
もう待てないので、飛び出しちゃいました。そしたら階段を下ってたヨリくんが一瞬目を見開いて、でも直ぐに私に向かって駆け寄ってくれて。
「被身子……っ!!」
真正面から、しっかり受け止めてくれました! んふふ、好きっ! これにて一件落着なのです!!
……って、訳にも行かなさそーです。だって直ぐそこに、物騒な顔をした悪ーいお巡りさんが居るんですから。
わざわざ私達に向かって拳銃を構えてるんですから、やっぱりそういう事ですよね。
三人称による補完は要りますか?
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欲しい
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要らん
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良いから一人称で突っ走れ