待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
廃工場の中を常闇達が探し回ること、十数分。思ったより早く、ながんの居場所が分かった。どうやらこの廃工場から、歩いて一時間もしない廃墟同然の建物に捕らわれている……らしい。ぱそこん? にそう書いてあったとか、何とか。よく分からんが、尾白と砂藤がそう言っていた。それはそれとして、悪党とは廃墟を根城にしたがるのか? 世間から爪弾き物にされてるのは分かるが、もう少しこう……根城を選ばんか根城を。
それから。この廃工場の地下に例の爆弾が仕掛けられていたそうじゃ。これが爆発すると大惨事になるので、常闇がほぉくすに連絡しておったわ。直ぐに駆け付けてくれるそうじゃけど、いちいち待ってるつもりは無い。何せ儂等は、ながんを救けに行かなければならんからの。
そういう訳じゃから、後の事はほぉくすなり他の
どうにも今宵は、騒々しくなってしまったの。悪党共のせいで、忙しない。まぁ忙しいのはいつもの事じゃけども、今宵は特に忙しい目に遭ってしまっている気がする。事が済んだら、丸一日ぐらいはのんびりしたいものじゃ。被身子と
……いや、
この際、徹底的に
「もぅ……。そんな怖い顔してたら、みんな怖がっちゃいますよ?」
「んむ……っ。ほんな面はしとひゃんふぁ?」
悪党共をどうしてくれようかと考えつつ路地裏を歩いていると、隣を歩く被身子に両頬を摘まれた。どころか揉まれたり引っ張られたりして、まともに喋れぬ。って、こらっ。口の端に指を引っ掛けるな。そのまま引っ張るな……! 何を楽しそうにしてるじゃ貴様ぁ!
「真剣な顔した円花ちゃんも大好きですけどぉ、あんまり殺気を出しちゃ駄目ですよ? ねっ?」
ねっ? ではない。そもそも殺気など出しては……。……いやまぁ、漏れ出ていても仕方ないか。でもでもじゃって、お主に手を出した輩を殺したいと思うのは仕方ないじゃろ。こうして無事に救け出せたから良いが、もしも被身子に傷一つでも付いていたらと考えたら……腹が立つなんてもんじゃない。そんな真似をした悪党も、それを阻止出来なかった儂自身も許せない。
「……静まれ廻道。殺気立たれては、話し掛け辛い」
「怒っちゃ駄目、……とは言えないけど。でも、冷静に。ヒューマライズの狙いは、廻道さんなんだから」
「……甘いもんでも食べるか? っても、飴玉しかないけどよ……」
ぐぬぬむむ、んぐぅう。じゃ、じゃから被身子っ。儂の頬を好き勝手に弄り回すのは止さぬか……! お陰で前やら後ろを歩く常闇達に何も言い返せないではないか。あと砂藤、飴玉なんぞ要らんからその手を引っ込めろ。尾白にしろ常闇にしろ、冷や汗など流しおって。殺気に当てられたぐらいで緊張するなど、まだまだ鍛錬が足りん証拠じゃぞまったく。
「あ、そうだ。晩ご飯にしません? 休憩は大事なのです!」
「いや、渡我先輩。そんな場合じゃ……」
「まぁまぁ。不機嫌な円花ちゃんには、美味しいご飯かスイーツが手っ取り早いのですっ! 火伊那ちゃんを救け出す前に、小休憩しませんか?」
「いや、でも……」
「ずっと緊張してちゃ、いざって時に力が出ないのです。ねっ、ご飯にしましょう!」
んん……。まぁ、一理有る。さっさとながんを救け出してやりたいところじゃけども、常闇達を少しでも休ませてやりたいとは思う。儂はまだまだいつも通りに動けるが、他の三人はそうもいかんじゃろう。全員疲労してるのは事実じゃからの。拉致されていた被身子は、儂等の中では特に疲れているじゃろうし。
……仕方ない。被身子の案に乗るとするか。と言っても、まだ何も言えないんじゃけど。じゃって被身子が、まだ儂の頬を弄り回してるんじゃもん。むぐむぐ、いぎぎぃ。
「……食事はともかく、一息つきましょう。すみません渡我先輩、気が回りませんでした」
「気にしなくても良いですよ? トガはまだまだ元気なので!」
まったく、平然と嘘を吐きおって。何が「まだまだ元気」じゃ。お主が疲れ始めてるって、儂はお見通しなんじゃぞ。悪党共に拐われて、儂等が救け出すまで緊張し続けていたんじゃろうから、疲れていて当然じゃ。出来ればさっさと休ませてやりたいところじゃけども、そうも言ってられんのが現状じゃの。ながんを救けるまでは、ろくに休めんじゃろうて。
「ここからだと、……まだまだ時間が掛かりそうだね。もう少しこの辺りから離れて、そしたら一度休もう。どう救出するのかも決めたいし」
「……だな。そう言えば、レディナガン……って筒美さんの事で良いんだよな?」
「そうじゃな。筒美火伊那は、れでぃ・ながんじゃ」
そう言えば、くらすめぇと達はながんの事を詳しくは知らん筈じゃ。儂の補助監督としか思っとらんじゃろう。実際その通りじゃし、何なら儂もあやつの事に詳しいかと聞かれたら返答に困る。気が付けば数ヶ月も行動を共にしているが、お互い深く関わろうとはしとらんからの。じゃって、大人が何処で何をしていようが気にならんのじゃ。補助監督として良く補佐してくれるし、その点は信用してる。未だ公安への不信感を拭い去れずに居るようじゃが、結局は総監部で補助監督として働いている。それはまぁ、あやつもお人好しの類いじゃから……じゃろうな。
お陰で、助かってる。煩わしい事は大抵任せっきりじゃ。今度、しっかり礼を言っておくか。
「……そっか。でも今は、廻道さんの補助監督なんだよね?」
「そうじゃな。……知ってるのか?」
「あんまり。でも、昔ニュースで見たような気もする。小さい時の事だから、そんなに覚えてないけど」
……。……んんむ。少し、しくじってしまった気がするの。ながんの話題については避けるべきじゃったかもしれん。緑谷程では無いようじゃけど、尾白も少しは知っているらしい。恐らく常闇や、砂藤じゃって当時ながんが何をしたのか知っとるかもな。まぁ儂も、詳しくは知らん。公安の不手際じゃったって七山は言っていた気がするが、……はて?
「まぁまぁ。火伊那ちゃんは火伊那ちゃんなのです。円花ちゃんの補助監督で、トガのお友達! 那歩島では、A組のみんなに色々と教えてくれた火伊那ちゃんですよぉ」
「……ですね。早く救けに行きましょう」
被身子が両手を叩いて急かし、常闇がそれに賛同した。尾白はそんな二人を見て、静かに頷く。砂藤もそうじゃ。
……そんなこんなで。儂等は途中で休憩や作戦会議を挟みつつ、人目に付かぬように気を付けながら先を急いだ。
そんな儂等を待っていたのは、
◆
廃工場から歩くこと、二時間足らず。人目を避けつつ歩いたり、途中で休憩を挟んだり。救出の為に作戦を立てたりしていたら、思ったより移動に時間が掛かってしまった。……が、結果的に何の問題も無かった。何なら作戦を立てた事自体無駄になってしまった。と、言うのもじゃな……。
辿り着いた廃墟……のような
何がどういう訳か知らんが、ともかく奴の姿を見たなら大人しくしている理由は無い。ここで何をしていたかは察しが付くが、知ったことではない……!
いつものように、直ぐ両手を叩き合わせる。その時、英雄呪霊が儂に気付いた。そして。
「待った……! 話をしよう!!」
両手を上げて、おおるまいとそっくりな面でそう叫んだ。
「喧しいっ。何なんじゃ貴様はっ!」
直ぐに穿血を放つ。狙いは顔面じゃったが、首を傾げることで容易く避けおったわ。直ぐに軌道を変えて首を狙えば、今度は片腕で容易く弾かれた。どころか、儂の手の内に残る血すら消えおった。……ちっ、訳の分からん術式を使いおって……!
「ワタシからすれば君こそ何なんだ!? って感じだけどねっ!? とにかく話を聞いてくれないかなぁ!?」
「喧しいと、言っ―――んぐんぐっ!!」
「どぅどぅ。嬉しくなっちゃうのは分かりますけど、ちょっと落ち着いてくださいねぇ」
んぐ、んぐんぐ……っ。こ、こら被身子っ。急に後ろから口を塞ぐなっ、抱き寄せるなっ!! 猛者としか言えん呪霊が直ぐそこに居るのに、何をしてるんじゃ貴様ぁ!
「話の前に、火伊那ちゃんはどうしたんですか? まずそこからです」
「もちろん、救けたさ。いやまぁ、救けなんて要らなさそうな感じだったけど。今はまだこの廃ビルの中に……て言うか君、どうなってるのそれ??」
あ゛? 何じゃ貴様。被身子を見るなり、盛大に驚いた面をしおって……! 呪霊如きが、儂の被身子を奇っ怪なものを見たような面を向けるんじゃないっ。よし決めた、こやつは直ぐに祓う。今直ぐ祓う。今に見てろよ貴様ぁ……っ!!
「火伊那ちゃんが無事ならそれで良いです。救けようとしてくれたことは、……まぁありがとうございます? じゃあヨリくん、ご自由にどうぞっ!」
……。……いや、どうぞと言われても。そう言うんじゃったら口から手を外せ。それと儂から離れろ。何でまだくっ付いたままで居るんじゃ、まったく……!
「あー……。とにかく、話しても良いかな? ほら、ホークスから言伝がね?」
「ホークスから、ですか?」
「……何故、師が呪霊に言伝を?」
……はぁ……。もぅ、どいつもこいつも……っ。何じゃって儂の楽しみを邪魔しようとするんじゃか。もう良い、興が削がれた。楽しい時間を過ごせそうだったのに、珍しく今はどうでも良くなってしまった。まぁ凄まじく不満じゃけども、被身子が離してくれんし。振り払うのは簡単じゃけど、じゃからって無下に扱いたくはない。最近、こんなんばっかな気がしないでもない。楽しみを前にお預けさせることが多いと言うか、間が悪いと言うか。
……はぁ……。
「ワタシは機械や非術師から観測されないからね。秘密を伝えるには都合が良いのさ!」
……。……まぁ、そうじゃろうけど。呪霊は、機械に観測されない。今現状、素養の有る者しか視ることは出来ん。言伝を頼むのであれば、確かにこれ以上とない伝令役になるじゃろう。とは言え、呪霊なんぞにそんな真似をさせるのは如何なものかと思うが。何を考えてるんじゃ、あの翼男。
「はいこれ、ホークスから君に。ぜひ読んで欲しいんだってさ」
……は? いや、訳の分からん本を放り投げるな。思わず受け取ってしまったが、何じゃこれ? 異能解放戦線……? こんな本を渡して来て、いったい何のつもりなんじゃか。そもそも、呪霊なんぞに頼まずに自分で手渡せば良いじゃろうが。まぁひとまずは受け取ってやるが、こんな詰まらなさそうな本を読んでる暇は無い。儂は毎日、あれやこれやと忙しいんじゃから。
「と、言う訳で! ワタシは忙しいからこれにて失礼! じゃっ、またねブラッディ!!」
「は? おいっ、貴様!!」
訳の分からん本を渡すだけ渡して、消えおったわ。恐らくは術式による転移なんじゃろうけども、くそっ、何なんじゃあやつは。言伝なんぞより、まず儂と呪い合えっ。今回も逃げおって……!!
「……何だったんでしょうねぇ、あの呪霊」
「知るか。それより、ながんを探そう」
まぁ、恐らく戦闘にはならんじゃろう。ながんを捕らえていた悪党共は、どいつもこいつも気絶している上に地面に山積みじゃ。呪霊に襲われたんじゃから、非術師ではひとたまりもない。隣に転がってる武器の山は、念の為に血で固めて持ち出せないように固定しておく。いつ悪党共が目を覚まして、再び動き出すか分からんからの。必要無い気もするが、念の為じゃ念の為。
……さて。さっさとながんと合流して、この場から離れるとしよう。まだ
この後。儂等は無事にながんと合流した。それから一旦この場を離れて、暫くは潜伏する事に決まった。警察やら
明けましておめでとうございます! 今年もよろしくお願いします!!
……完結まであと何年かかるんですかねぇ、この物語。今年で原作最終章に入りたいですね。1000話までには完結させたい所存。……出来るのか……?
三人称による補完は要りますか?
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欲しい
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要らん
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良いから一人称で突っ走れ