待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!!   作:一人称苦手ぞ。

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世界の危機。翼男の言伝

 

 

 

 

 

 

 廃工場の中を常闇達が探し回ること、十数分。思ったより早く、ながんの居場所が分かった。どうやらこの廃工場から、歩いて一時間もしない廃墟同然の建物に捕らわれている……らしい。ぱそこん? にそう書いてあったとか、何とか。よく分からんが、尾白と砂藤がそう言っていた。それはそれとして、悪党とは廃墟を根城にしたがるのか? 世間から爪弾き物にされてるのは分かるが、もう少しこう……根城を選ばんか根城を。

 

 それから。この廃工場の地下に例の爆弾が仕掛けられていたそうじゃ。これが爆発すると大惨事になるので、常闇がほぉくすに連絡しておったわ。直ぐに駆け付けてくれるそうじゃけど、いちいち待ってるつもりは無い。何せ儂等は、ながんを救けに行かなければならんからの。

 そういう訳じゃから、後の事はほぉくすなり他の英雄(ひいろお)に任せる形で儂等は廃工場を出た。その際、念の為に悪党共は全員念入りに縛っておいた。何なら気絶させ直したりもした。今は、ながんの居場所に向かって人目を避けつつ歩いている。だぁくしゃどうに運んで貰えばもっと速いんじゃけども、なるべく人目に付きたくないからの。何せ儂、悪党組織(ひゅうまらいず)のせいで指名手配中じゃし。お陰で面倒この上ない。

 

 どうにも今宵は、騒々しくなってしまったの。悪党共のせいで、忙しない。まぁ忙しいのはいつもの事じゃけども、今宵は特に忙しい目に遭ってしまっている気がする。事が済んだら、丸一日ぐらいはのんびりしたいものじゃ。被身子と逢瀬(でぇと)しても良いかもしれん。

 ……いや、米国(あめりか)に居る間は控えた方が良いか。どうやら儂の存在は、海外でも知れ渡ってしまっているようじゃからの。儂を狙う馬鹿共が、また被身子に手を出そうとする可能性は有るんじゃし。もっとも、二度とそんな真似はさせんが。

 この際、徹底的に悪党組織(ひゅうまらいず)を叩き潰すことで周知しておいた方が良い。儂の被身子に手を出すと、どんな目に遭うのかを。

 

「もぅ……。そんな怖い顔してたら、みんな怖がっちゃいますよ?」

「んむ……っ。ほんな面はしとひゃんふぁ?」

 

 悪党共をどうしてくれようかと考えつつ路地裏を歩いていると、隣を歩く被身子に両頬を摘まれた。どころか揉まれたり引っ張られたりして、まともに喋れぬ。って、こらっ。口の端に指を引っ掛けるな。そのまま引っ張るな……! 何を楽しそうにしてるじゃ貴様ぁ!

 

「真剣な顔した円花ちゃんも大好きですけどぉ、あんまり殺気を出しちゃ駄目ですよ? ねっ?」

 

 ねっ? ではない。そもそも殺気など出しては……。……いやまぁ、漏れ出ていても仕方ないか。でもでもじゃって、お主に手を出した輩を殺したいと思うのは仕方ないじゃろ。こうして無事に救け出せたから良いが、もしも被身子に傷一つでも付いていたらと考えたら……腹が立つなんてもんじゃない。そんな真似をした悪党も、それを阻止出来なかった儂自身も許せない。

 

「……静まれ廻道。殺気立たれては、話し掛け辛い」

「怒っちゃ駄目、……とは言えないけど。でも、冷静に。ヒューマライズの狙いは、廻道さんなんだから」

「……甘いもんでも食べるか? っても、飴玉しかないけどよ……」

 

 ぐぬぬむむ、んぐぅう。じゃ、じゃから被身子っ。儂の頬を好き勝手に弄り回すのは止さぬか……! お陰で前やら後ろを歩く常闇達に何も言い返せないではないか。あと砂藤、飴玉なんぞ要らんからその手を引っ込めろ。尾白にしろ常闇にしろ、冷や汗など流しおって。殺気に当てられたぐらいで緊張するなど、まだまだ鍛錬が足りん証拠じゃぞまったく。

 

「あ、そうだ。晩ご飯にしません? 休憩は大事なのです!」

「いや、渡我先輩。そんな場合じゃ……」

「まぁまぁ。不機嫌な円花ちゃんには、美味しいご飯かスイーツが手っ取り早いのですっ! 火伊那ちゃんを救け出す前に、小休憩しませんか?」

「いや、でも……」

「ずっと緊張してちゃ、いざって時に力が出ないのです。ねっ、ご飯にしましょう!」

 

 んん……。まぁ、一理有る。さっさとながんを救け出してやりたいところじゃけども、常闇達を少しでも休ませてやりたいとは思う。儂はまだまだいつも通りに動けるが、他の三人はそうもいかんじゃろう。全員疲労してるのは事実じゃからの。拉致されていた被身子は、儂等の中では特に疲れているじゃろうし。

 

 ……仕方ない。被身子の案に乗るとするか。と言っても、まだ何も言えないんじゃけど。じゃって被身子が、まだ儂の頬を弄り回してるんじゃもん。むぐむぐ、いぎぎぃ。

 

「……食事はともかく、一息つきましょう。すみません渡我先輩、気が回りませんでした」

「気にしなくても良いですよ? トガはまだまだ元気なので!」

 

 まったく、平然と嘘を吐きおって。何が「まだまだ元気」じゃ。お主が疲れ始めてるって、儂はお見通しなんじゃぞ。悪党共に拐われて、儂等が救け出すまで緊張し続けていたんじゃろうから、疲れていて当然じゃ。出来ればさっさと休ませてやりたいところじゃけども、そうも言ってられんのが現状じゃの。ながんを救けるまでは、ろくに休めんじゃろうて。

 

「ここからだと、……まだまだ時間が掛かりそうだね。もう少しこの辺りから離れて、そしたら一度休もう。どう救出するのかも決めたいし」

「……だな。そう言えば、レディナガン……って筒美さんの事で良いんだよな?」

「そうじゃな。筒美火伊那は、れでぃ・ながんじゃ」

 

 そう言えば、くらすめぇと達はながんの事を詳しくは知らん筈じゃ。儂の補助監督としか思っとらんじゃろう。実際その通りじゃし、何なら儂もあやつの事に詳しいかと聞かれたら返答に困る。気が付けば数ヶ月も行動を共にしているが、お互い深く関わろうとはしとらんからの。じゃって、大人が何処で何をしていようが気にならんのじゃ。補助監督として良く補佐してくれるし、その点は信用してる。未だ公安への不信感を拭い去れずに居るようじゃが、結局は総監部で補助監督として働いている。それはまぁ、あやつもお人好しの類いじゃから……じゃろうな。

 お陰で、助かってる。煩わしい事は大抵任せっきりじゃ。今度、しっかり礼を言っておくか。

 

「……そっか。でも今は、廻道さんの補助監督なんだよね?」

「そうじゃな。……知ってるのか?」

「あんまり。でも、昔ニュースで見たような気もする。小さい時の事だから、そんなに覚えてないけど」

 

 ……。……んんむ。少し、しくじってしまった気がするの。ながんの話題については避けるべきじゃったかもしれん。緑谷程では無いようじゃけど、尾白も少しは知っているらしい。恐らく常闇や、砂藤じゃって当時ながんが何をしたのか知っとるかもな。まぁ儂も、詳しくは知らん。公安の不手際じゃったって七山は言っていた気がするが、……はて?

 

「まぁまぁ。火伊那ちゃんは火伊那ちゃんなのです。円花ちゃんの補助監督で、トガのお友達! 那歩島では、A組のみんなに色々と教えてくれた火伊那ちゃんですよぉ」

「……ですね。早く救けに行きましょう」

 

 被身子が両手を叩いて急かし、常闇がそれに賛同した。尾白はそんな二人を見て、静かに頷く。砂藤もそうじゃ。

 悪党組織(ひゅうまらいず)が何をしでかすか分からん以上、あまり悠長にしておれん。被身子の為に休憩は取るが、それ以外ではなるべく急ぎたいところじゃからの。あまりのんびりしていると、また事態がややこしくなりそうじゃし。

 

 ……そんなこんなで。儂等は途中で休憩や作戦会議を挟みつつ、人目に付かぬように気を付けながら先を急いだ。

 そんな儂等を待っていたのは、悪党組織(ひゅうまらいず)の構成員ではなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 廃工場から歩くこと、二時間足らず。人目を避けつつ歩いたり、途中で休憩を挟んだり。救出の為に作戦を立てたりしていたら、思ったより移動に時間が掛かってしまった。……が、結果的に何の問題も無かった。何なら作戦を立てた事自体無駄になってしまった。と、言うのもじゃな……。

 

 辿り着いた廃墟……のような高層建築物(びる)の前に、悪党共が山積みになってたからじゃ。ついでに、武装の数々も。お陰で目を丸くする羽目になってしまったが、こうなった原因は直ぐ分かった。山積みとなった悪党共の上に、偽筋肉阿呆(らいああいと)が突っ立って居たからじゃ。

 何がどういう訳か知らんが、ともかく奴の姿を見たなら大人しくしている理由は無い。ここで何をしていたかは察しが付くが、知ったことではない……!

 

 いつものように、直ぐ両手を叩き合わせる。その時、英雄呪霊が儂に気付いた。そして。

 

「待った……! 話をしよう!!」

 

 両手を上げて、おおるまいとそっくりな面でそう叫んだ。

 

「喧しいっ。何なんじゃ貴様はっ!」

 

 直ぐに穿血を放つ。狙いは顔面じゃったが、首を傾げることで容易く避けおったわ。直ぐに軌道を変えて首を狙えば、今度は片腕で容易く弾かれた。どころか、儂の手の内に残る血すら消えおった。……ちっ、訳の分からん術式を使いおって……!

 

「ワタシからすれば君こそ何なんだ!? って感じだけどねっ!? とにかく話を聞いてくれないかなぁ!?」

「喧しいと、言っ―――んぐんぐっ!!」

「どぅどぅ。嬉しくなっちゃうのは分かりますけど、ちょっと落ち着いてくださいねぇ」

 

 んぐ、んぐんぐ……っ。こ、こら被身子っ。急に後ろから口を塞ぐなっ、抱き寄せるなっ!! 猛者としか言えん呪霊が直ぐそこに居るのに、何をしてるんじゃ貴様ぁ!

 

「話の前に、火伊那ちゃんはどうしたんですか? まずそこからです」

「もちろん、救けたさ。いやまぁ、救けなんて要らなさそうな感じだったけど。今はまだこの廃ビルの中に……て言うか君、どうなってるのそれ??」

 

 あ゛? 何じゃ貴様。被身子を見るなり、盛大に驚いた面をしおって……! 呪霊如きが、儂の被身子を奇っ怪なものを見たような面を向けるんじゃないっ。よし決めた、こやつは直ぐに祓う。今直ぐ祓う。今に見てろよ貴様ぁ……っ!!

 

「火伊那ちゃんが無事ならそれで良いです。救けようとしてくれたことは、……まぁありがとうございます? じゃあヨリくん、ご自由にどうぞっ!」

 

 ……。……いや、どうぞと言われても。そう言うんじゃったら口から手を外せ。それと儂から離れろ。何でまだくっ付いたままで居るんじゃ、まったく……!

 

「あー……。とにかく、話しても良いかな? ほら、ホークスから言伝がね?」

「ホークスから、ですか?」

「……何故、師が呪霊に言伝を?」

 

 ……はぁ……。もぅ、どいつもこいつも……っ。何じゃって儂の楽しみを邪魔しようとするんじゃか。もう良い、興が削がれた。楽しい時間を過ごせそうだったのに、珍しく今はどうでも良くなってしまった。まぁ凄まじく不満じゃけども、被身子が離してくれんし。振り払うのは簡単じゃけど、じゃからって無下に扱いたくはない。最近、こんなんばっかな気がしないでもない。楽しみを前にお預けさせることが多いと言うか、間が悪いと言うか。

 

 ……はぁ……。

 

「ワタシは機械や非術師から観測されないからね。秘密を伝えるには都合が良いのさ!」

 

 ……。……まぁ、そうじゃろうけど。呪霊は、機械に観測されない。今現状、素養の有る者しか視ることは出来ん。言伝を頼むのであれば、確かにこれ以上とない伝令役になるじゃろう。とは言え、呪霊なんぞにそんな真似をさせるのは如何なものかと思うが。何を考えてるんじゃ、あの翼男。

 

「はいこれ、ホークスから君に。ぜひ読んで欲しいんだってさ」

 

 ……は? いや、訳の分からん本を放り投げるな。思わず受け取ってしまったが、何じゃこれ? 異能解放戦線……? こんな本を渡して来て、いったい何のつもりなんじゃか。そもそも、呪霊なんぞに頼まずに自分で手渡せば良いじゃろうが。まぁひとまずは受け取ってやるが、こんな詰まらなさそうな本を読んでる暇は無い。儂は毎日、あれやこれやと忙しいんじゃから。

 

「と、言う訳で! ワタシは忙しいからこれにて失礼! じゃっ、またねブラッディ!!」

「は? おいっ、貴様!!」

 

 訳の分からん本を渡すだけ渡して、消えおったわ。恐らくは術式による転移なんじゃろうけども、くそっ、何なんじゃあやつは。言伝なんぞより、まず儂と呪い合えっ。今回も逃げおって……!!

 

「……何だったんでしょうねぇ、あの呪霊」

「知るか。それより、ながんを探そう」

 

 まぁ、恐らく戦闘にはならんじゃろう。ながんを捕らえていた悪党共は、どいつもこいつも気絶している上に地面に山積みじゃ。呪霊に襲われたんじゃから、非術師ではひとたまりもない。隣に転がってる武器の山は、念の為に血で固めて持ち出せないように固定しておく。いつ悪党共が目を覚まして、再び動き出すか分からんからの。必要無い気もするが、念の為じゃ念の為。

 

 ……さて。さっさとながんと合流して、この場から離れるとしよう。まだ悪党組織(ひゅうまらいず)のせいで、警察やら英雄(ひいろお)が儂等を探し回っているからの。一つの場所に長居すると、また面倒な事になってしまう。

 

 この後。儂等は無事にながんと合流した。それから一旦この場を離れて、暫くは潜伏する事に決まった。警察やら英雄(ひいろお)達の間を飛び交う誤報が正されるまで、儂は身を隠さねばならん。まったく、どうにもこうにも面倒な事になってしまったのぅ……。

 

 

 

 

 

 






明けましておめでとうございます! 今年もよろしくお願いします!!

……完結まであと何年かかるんですかねぇ、この物語。今年で原作最終章に入りたいですね。1000話までには完結させたい所存。……出来るのか……?

三人称による補完は要りますか?

  • 欲しい
  • 要らん
  • 良いから一人称で突っ走れ
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