待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!!   作:一人称苦手ぞ。

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世界の危機。潜伏は続く

 

 

 

 

 

 

「案外何とかなりましたねぇ。ほんとに円花ちゃんが指名手配されてて、色々大変でしたけど!」

「……まだ油断は出来ない。ひとまずニューヨークからは脱したが、追っ手が無いとは言えないからな」

「その、何だか滅茶苦茶な事になっちゃいましたね。それだけヒューマライズも、廻道さんに注目してるって事なんだろうけど……」

「にしたって、やり過ぎだよなぁ。まさか指名手配までするとは」

「……象徴の後継。注目は止むを得ないが、今後は活動の際に気を払った方が良い」

 

 被身子が呑気な事を口走ってながんに咎められたり、尾白や砂藤が苦い顔をしたり。常闇に忠告されたりとしているが、まぁ潜伏は順調じゃ。

 ……英雄呪霊が姿を消した後で、儂等はながんと合流することが出来た。それで一件落着と行けば良かったんじゃけど、儂に掛けられた容疑は晴れない上に指名手配はそのままじゃ。なので儂等六人は潜伏しつつ、にゅうよぉく……から離れることにした。ながんと被身子は警察や英雄(ひいろお)には顔が割れていないので、比較的自由に動ける。じゃから二人が、大きめの車や着替えを調達して来てのぅ。それに乗って、にゅうよぉくから脱出した訳じゃ。途中で警察の検問が有ったんじゃけども、どういう訳か後部座席や荷台を確認されることは無かった。後で被身子に言われて気付いたんじゃけど、検閲してたのは警察に変装した空軍の連中。つまり、すたぁの部下達じゃったわ。どうやら、すたぁは儂の指名手配が誤報じゃと気付いているようじゃな。そちらの対応については、あやつに任せておくとするか。儂等ではどうにもならんし。

 

 まぁそんなこんなで、今は車で移動中じゃ。一応警察や英雄(ひいろお)の目に留まらぬよう気を付けつつ、儂等は何処ぞの……もぉてる? とか言う類いの、宿泊施設に向かっている真っ最中じゃ。それまではまぁ、車の中でひと休み出来そうじゃの。身体を休めつつ、これからどうするかを全員で決めた方が良さそうじゃ。運転しているながんには、悪いとは思うが。

 

「今後、どうするつもりじゃ?」

「どうって、廻道さんの指名手配が解かれるまでは潜伏してるしかないよ」

「その上で、ヒーローとして出来ることが有れば良いが……」

「けど、隠れて逃げる以外に出来ることは無いよなぁ」

「……なんか、すまん」

 

 状況が状況とは言え。常闇達から活動の機会を奪ってしまった気がするような、しないような。悪いのは全面的に悪党組織(ひゅうまらいず)の連中なんじゃけども、こうして厄介事に巻き込んでしまったことは申し訳ない。こやつ等の協力が有ったから直ぐにでも被身子やながんを救け出せたんじゃけども、その結果として活躍や経験の機会を損なわせてしまったのは……良くない。まぁ、こればっかりは仕方ない。その内、何かの形で機会を与えてやるとするか。

 

「廻道が謝ることじゃねーって。悪いのはヒューマライズだろ」

「こういう経験も、何かの糧になるだろうしね。気にしないで」

「友の為なら、苦労は厭わん。それにこれも、立派なヒーロー活動だ」

「気ニスンナヨナ!」

 

 お人好しで、能天気な奴等め。こんな経験が何の糧になるって言うんじゃ、まったく。取り敢えず隣の被身子に頭を撫で回されつつ、膝上のだぁくしゃどうを撫で回してやるとする。早いところこの潜伏状態から脱することが出来ると良いんじゃけどなぁ。儂やながんはともかくとして、子供達に必要以上の気苦労を掛けるのは……こう。こう、大人としてじゃな? いやまぁ、儂も今は子供の内なんじゃけども。

 

「まぁまぁ。追っ手が来ない限り、危ない目にはもう遭いませんよぉ。いざって時まで気楽にしてましょう!」

「当面はこのまま車を走らせるだけだ。いざとなったら頼るから、それまでは休んでてくれ。あんただって、疲れただろ?」

 

 ……んん。被身子に甘やかされる分には嬉しいんじゃけどな。常闇達やながんにまで甘やかされるのは、何か違う気がしてならん。儂、これでも年長者なんじゃけど? この中で最も、精神的に年寄りなんじゃけど??

 まったく。まぁ、今は良しとしてやろう。ひとまず追っ手もなく移動出来ているとは言え、それでもまだ気は抜きたなくは無いんじゃけど。

 

 今後は、色々と気を付けねばなぁ。これまで以上に被身子や、子供達を守れるようにしなければ。悪党が儂だけを狙ってくれれば気楽なんじゃけども、どうにも儂の私生活(ぷらいばしぃ)が嗅ぎ回られてしまっている。そうなってしまったのは、あの筋肉阿呆の後継を名乗ったからか。緑谷を守る為じゃから仕方ないんじゃけども、とうとう被身子にまで危害が加えられるとはの。一生の不覚じゃ。くそっ。

 

「あ、そうだ火伊那ちゃん。モーテルでは、私と円花ちゃんは二人きりにしてください!」

「……言われなくてもそうするつもりだ。ツクヨミ達は一部屋で良いか?」

「えぇ。俺達は同室で構いません」

「んふふ。やったぁ!」

 

 何の話じゃ、何の。別に部屋なんて、誰と一緒でも良いんじゃけど。いや、被身子と同室なら他に誰が居たって儂は別に。わざわざ二人きりにする必要は、……いや……まぁ……。

 

 ……まぁ、仕方ないか。よくよく考えてみれば、被身子と二人きりの方が個人的には都合が良い。

 

「……それでだ。今後についてだが、暫くは逃亡生活になる。頼皆はもちろん常闇達も出来る限り人前に出るな」

「買い物とか諸々は、火伊那ちゃんと私で済ませます! さっきみたいに!」

「……でもそれじゃあ、渡我先輩と筒美さんだけに負担が」

「いざって時に直ぐ動けるよう備えてくれるだけで良い」

「……分かりました。その時は全力で取り組みます!」

 

 んんむ……。まぁ、これも仕方ないところじゃな。指名手配されている儂はもちろんとして、その儂と共に行動してしまっている常闇達も警察や英雄(ひいろお)なんかに顔を知られてしまっている筈じゃ。じゃからこそ、人前には出ない方が良いの。下手をすると、そのうち報道番組(にゅうす)なんかで儂等の顔が映しだされそうじゃ。そうなると一般人相手にすら、顔を隠す羽目になるじゃろう。

 

「休める時は休め。……ほら、着いたぞ」

 

 車が止まった。窓から外を見てみれば、もぉてる……? とやらが見えた。これは、どう見ても宿(ほてる)じゃの。外観は小綺麗で、何となく日本の集合住宅(まんしょん)に似ている気がする。もぉてる? の方が少し高級感が有るけども。

 

「外では周囲を気にせず堂々としてること。自然に観光客を装ってくれれば尚良しだ」

「はぁい。じゃあ、みんなで旅行を楽しみましょう!」

「ぅ、うむ……? 分か、った……?」

 

 旅行て。これの何処が旅行なんじゃか。いや、逃亡旅行……と言えなくもないか。手を叩いて楽しそうに笑う被身子に気圧されて、儂どころか常闇達まで固まってしまっているけども。何ならながんは、少し頭が痛そうじゃ。

 ……とは言え。身を潜める為じゃ。ながんの言う通り、被身子の言うように過ごすとしよう。ええっと、観光客を装う……じゃったな。こんな状況じゃなければ、素直に被身子と楽しんでるところなんじゃけどなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……はぁ……。んむ……。何だかんだで、疲れてしまった。

 受け付けを済ませた後、儂等は荷物を持ってそれぞれの部屋に入った。ながんや常闇達の部屋は隣同士じゃったけども、儂と被身子だけは何と別の階じゃ。警察や英雄(ひいろお)から逃亡してるんじゃから、いざという時の為に部屋は近い方が良い気がするんじゃけども。まぁ、これはこれで良しとするか。気が抜けた考えじゃけども、仕方ないと思うことにする。いざとなれば、部屋の床を殴り抜いてしまえば良い。下の階は常闇達の部屋じゃし。

 

 とにかく今日は、もう休んでしまおう。今は被身子が先に灌水浴(しゃわぁ)をしとるから、それが済んだら儂も灌水浴(しゃわぁ)を済ませて寝てしまおう。すっかり夜中になってしまっているからの。明日の事も考えたら、しっかり寝ておかなければ。

 

「……ふぅ」

 

 いかんとは思いつつも、寝具(べっど)に体を放り投げる。背中から倒れて、何となく大の字になって天井を見上げる。浴室から聞こえる水音だけが聞こえる部屋に一人で居ると、ふとあの馬鹿の姿が脳裏に浮かんだ。

 

 ……悪い奴では無いと思ってたんじゃけどなぁ。どうやら今回、儂の眼は節穴じゃったらしいの。今更悪党なんぞの事を考えたって仕方ないんじゃけども、独りで居ると何故か気になってしまって。

 

 

『君は、こちラ側だロう? 今の時代を、今の世界を良く思ってないのなラ……』

 

 

 思い出したって仕方ない。仕方ないのに、思い出してしまった。

 

 ……確かに、そうじゃな。あやつが言っていた通りじゃ。儂は今の時代を良く思っていない。個性なんて力があって、それ故に子供が危険に身を投じてしまう。戦いの場を夢見てしまう。それは英雄(ひいろお)なんて職業が有るから、悪党(ゔぃらん)と呼ばれる犯罪者が産まれてしまうから。

 もしかするとこの時代は、平安よりも酷いのかもな。あの時代よりも法が整備されて、あの時代よりも様々な事が発達した世界なのに、それでも不幸になる子供は絶えない。えりのような子も居れば、悪党となってしまう子じゃって居るんじゃ。被身子のように、生き辛い子じゃって居る。

 

 けれども、結局。儂が出来ることなど決まっている。この目に映る子供を、この手が届く子供しか守れない。救けられない。前世よりも呪力が増えようが、反転術式を鍛え上げようが、個性を得ようが、誰かを少しは頼ろうと思い始めても、何も変わってない。変えられない。

 

 人の悪意に、世の中の理不尽に、呪霊に呪詛師に、悪党に。そういったものに、子供が傷付けられることが嫌いじゃ。どれだけ年月が進んだ世界でも、子供は何かに傷付けられてしまう。どうして変わらない? どうして世界は、子供を傷付ける?

 

「……嫌いじゃ、こんな世界は」

 

 漏れ出た本心が口に出ると、より強く……はっきりと自覚する。そんな事はとうの昔に分かってる事じゃ。この時代がずっと気に入らない。ずっと嫌いじゃ。それでも、いつも通りやって来た。気に食わん悪党を殺せなくとも、不自由な想いをしようとも、それでも儂が出来ることを続けて来たつもりじゃ。

 これからもそれは変わらない。危険や害意から子供守り、救ける。

 

 これだけは、譲れない。絶対に変わることのない、儂の主義じゃ。

 

 ふと、首を動かして窓を見る。そこには、かつての儂が映っていた。今にも文句のひとつやふたつを言い出しそうな面をしている。いい加減、鬱陶しいのぅ。いつまで見えるんじゃ貴様は。

 

 

 ―――また、同じ事を繰り返すつもりか?

 

「……黙れ」

 

 ―――また失わなければ、分からないのか?

 

「黙れと言ってる」

 

 ―――いつまで、そちら側に居るつもりだ?

 

「―――」

 

 ……うるさい奴め。我ながら呆れてしまう。儂はどちらかと言えば、悪党なんじゃろう。じゃって、殺してしまうのが手っ取り早いと思ってしまうんじゃから。後で誰かに恨まれようが、どんな奴でも命を奪えばそれで終いじゃ。殺してしまえば、子供を守れる。救けることが出来る。なのに今は、殺さずに守ろうとしてる。命ひとつ奪わずに、子供を救けようとして……。

 

 そうした隙を晒し続けて、いつかまた……目の前で子供が死ぬんじゃろうな。その時儂は、果たして悪党を殺さずに居られるのか。

 

 約束が有るんじゃ。守ってやりたい約束が、幾つも。……じゃから、それが儂にとってどれだけ不愉快じゃったとしても。

 

 

「約束は、守るものじゃろう?」

 

 

 じゃから。もう、いちいち出てくるな。黙って見てろ。廻道円花は人を殺さない。貴様が何を言ったところで、無駄なんじゃから。

 

 

「ヨリくん? どうかしたの?」

 

 

 ……気が付けば、被身子が浴室から出て来ていた。体を起こして目を向けてみれば、素っ裸で髪を拭いている姿が見えた。まったく、年頃の女子(おなご)がだらしない格好を。風邪を引いても、儂は知らんぞ?

 

「いや、何でもない。儂も入ってくる」

「……むー……」

 

 あ、いかん。被身子が不満そうにしておる。何ならこれでもかと儂を見詰めて来おった。

 

「そこは一緒に入るって言ってくれないと!」

「えぇ……? いやでも、狭いんじゃろ……?」

 

 二人で入るには狭いから別々でって提案したのは、お主じゃろうに。何じゃってそこで一緒に入ろうとするんじゃか。それにお主なぁ、たった今灌水浴(しゃわぁ)を済ませたばかりじゃろうが。……まったく、こやつと来たら。今も昔も何を考えてるのか分からん。

 仕方ないので、服を脱ぎ散らかしながら浴室に向かうとする。それから。

 

「ほら、入るぞ」

「えへへぇ。はぁい♡」

 

 狭いらしいが、何とかして二人で入るとするか。どうせこうなるなら最初から二人で入ってれば良かったのでは? と、思わんでもない。まぁ良いか。今宵は疲れたから、もう何も考えたくない。今は被身子の無事を喜んで、体を休めよう。それに今は二人きりなんじゃから、何をしたって良いじゃろう。

 

 ……うむ。そうと決めたら、まずは灌水浴(しゃわぁ)を済ませるとしよう。後で何をするにして何をしないにしても、体は綺麗にしておかねば相手に失礼じゃからな。

 

 

 

 

 

 






……500話? ご、ごひゃく……わ……?

三人称による補完は要りますか?

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  • 要らん
  • 良いから一人称で突っ走れ
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