待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
「ぎゅぅうう〜〜っ!」
「んん……っ。まったく、甘えんぼなんじゃから」
風呂を済ませた後。
それにしても、この甘えたがりなところは少しも直らんのぅ。別に直さなくても良いんじゃけどな。一生甘やかしてやるつもりじゃし。
なんて思っていると、寝間着の中に手を差し込まれた。被身子の手が儂の肌を這い回り始めて、少し擽ったい。それと、……ついその気になってしまいそうじゃ。まったく、同じ布団に入ると直ぐこれなんじゃから。駄目とは言わんけど、もう少し節度を持てと思わんでもない。まぁ結局、最後に流されてしまうのは儂なんじゃけども。
「んふふ。ヨリくんのえっち……♡」
「えっちなのはどっちじゃ。まったく……」
仕返しに、儂も被身子の寝間着に手を差し込んでみた。そしたら何故か変態扱いされたわ。先に肌を弄り始めたのはお主じゃろうに。
それにしても。毎晩毎晩、隙あらば求めて来おって。お陰で儂は大変じゃ。好き勝手するのは構わんけども、たまにはこういう事はしないで過ごしたって良いんじゃないか? と、思いつつも流れに身を任せたくなる儂も儂か。節操無しはお互い様じゃのぅ……。こう、被身子好みに仕立て上げられてしまった気がしないでもない。なんか悔しい。ぐぬぬ。
「こら。何しとるんじゃ被身子」
「何って、イチャイチャしてるんですよぉ」
「さらっと脱がすんじゃない。寒いじゃろ」
「くっ付けばぬくいですよ♡」
気が付けば半裸じゃ。器用に寝間着を開けさせおって。仕方ないから、もっと身を寄せ合うことにする。肌を重ね合わせて、少しでも寒さから逃れたい。まぁ暖房はつけたままじゃから、多少脱いだって寒くなることはないんじゃけども。
「……はぁ……♡ ヨリくん、ヨリくん……♡」
「んぎゅ……っ」
これでもかと、強く抱き締められる。お陰で息がし辛い。けど、こうされると結構心地良い。思いっ切り抱き締めるのも、抱き締められるのも今となっては好ましい。何と言うか、安心してしまう。寝る時はこうして貰わないと、どうにも寝付きが悪くなってしまった気がするの。ちゃんと責任取らんか、被身子の阿呆め。
って、こら。足を絡めるのは良いが、股に膝を差し込むな。太腿を押し当てるんじゃない。
「されるがままなのです。ほんと、ドMなんですから……♡」
「……うるさい。そうしたのはお主じゃろうが」
「えー? 最初からそうでしたよぉ♡」
「……」
まったく、調子に乗りおって。誰がどえむじゃ、誰が。儂はそんなんじゃないし、そう見えたとしたらそれは被身子のせいじゃ。
このまま好き勝手にされるのは悔しいので、どうにかこうにか背を向けてみる。ふんっ、いつもいつも好き勝手されると思うなよ……!
「……気分じゃない?」
「どうじゃろうな」
別に、駄目とは言わん。何なら好き勝手にしてくれても、それはそれで構わん。結局最後はされるがままになるんじゃし。
……じゃけど。たまには。そう、たまには。そういう事はしないで過ごしたって良いとも思う。被身子と求め合う夜も好ましいが、そうじゃない夜だってたまには……。……むぅ……。
「むぅーーっ。円花ちゃんが冷たいのです……!」
「冷たくしとらんじゃろ」
「しーてーまーすーぅ!」
「ぐぇえ」
後ろから、思いっ切り抱き締められた。胸や腹に回された腕が、これでもかと儂を締め付ける。けど、嫌じゃない。むしろ好ましい。ってこら、首筋に顔を埋めるな。甘噛みするな。そんな風に欲しがったって、今は……。……嫌ではないけれど。どうせなら、思いっ切り噛み付いて欲しい気も……。
って。いやいや、そうではなくて。
「もぅ……。どうしたの? シャワーの時から、元気無いのです」
「……そうか?」
そんな素振りを見せた覚えは無いんじゃけどなぁ。別に元気が無いとは思わん。少し疲れているものの、体調が悪いわけじゃない。多少の気怠さはあれど、元気が無いと指摘される程では……。
「……何か、悩んでます?」
「……」
……悩んでる? 儂が?
いや、まぁ……。悩みが無いと言ったら嘘になるか。実際、
「いや、何でもない。ほら、もう寝よう。疲れたじゃろ?」
「……円花ちゃん」
ぐぬ。いかん。背後からの圧が凄い。身を寄せ合ってるのに、薄ら寒くなった気さえする。
「そこで隠されると、傷付くんですけど」
「ん、んん……」
「何でも言ってくれなきゃ、私はヤです。おこです、おこっ」
「……ん……」
……んん。駄目か。儂はもう、被身子に隠し事ひとつ出来ぬのかもしれん。じゃって、傷付けたくない。どんな些細な事でも、被身子を傷付けるような真似はしたくない。じゃから、……その。言ったって、仕方ないとは思うんじゃけども。……じゃけど。
「……なぁ。お主は、この世界をどう思う?」
まずは、聞いてみるとする。これは別に、聞かなくても分かることなんじゃけども。
「……とっても、生きにくいです。だから、そういう意味では大っ嫌い」
そうじゃろうな。
「儂も、……嫌いじゃ。どうにも気に食わん」
「ですよねぇ。そうだと思ってました」
「なら、……お揃いじゃの?」
「んふふ。はい、お揃いです!」
……嬉しそうにしおって。こやつはいつもそうじゃ。昔っから儂とお揃いじゃないと気が済まん質で、何かとお揃いにしたがる節が有る。身に付ける物じゃったり、使う物じゃったり。何でもかんでも、お揃いにしたがってのぅ。お陰で大変じゃった時も有ったの。同じ物を揃えるのに、何件も店を回ったりとか。
まぁ、今となっては可愛らしい部分じゃと思ってるけど。当時は大変じゃったの、当時は。
「その事で、悩んでたの?」
「……そうじゃな。そうかもしれん」
世界の在り様なんて、考えたところで仕方がない。儂に世界をどうこうするような力は無いからの。今の世界の在り方が不満では有るし、文句も言いたい。が、言っても何にもならん。ただ虚しいだけじゃ。
結局のところ、目を背けるしかないんじゃろう。気に食わんけど、こればっかりはどうしようもない。個性なんて力が有るから、不幸になる子供が居る。被身子のように、生き辛いと感じる子供じゃって居る。それは分かってる。分かってるからこそ、……こうしてやりきれん気持ちになってしまう。
……はぁ……。これは、余分な思考じゃなぁ。考えたって仕方ない。時間の無駄じゃ。そんな事より、儂は儂のすべき事をしなければ。呪いを祓って、ついでに悪党も取っ捕まえて。少しでも、子供に危害が加わらないようにする。そのくらいしか、儂には……。
「……じゃあ、いっそ世界を変えちゃいます? 私もヨリくんも、生き易いように」
「それが出来たら、誰も苦労せんのじゃけど?」
流石に、世界をどうこうするなんて真似は儂には出来ん。無理じゃそんなの。何をどうしたって、世界は変わらんと思う。だいたい、世界を変える方法なんて何処に有るんじゃ。そんなものが有るなら、是非とも見せて欲しいのぅ。
「まぁ、流石にヨリくんでも世界を変えるなんて無理なのです。でも」
「でも?」
「でも。ヨリくんは……こんな生き辛い世界で、私を生きれるようにしてくれたの。
だから、もしかしたらー……って思わなくもないです!」
「……えぇ……?」
いや、いやいや。流石に無理じゃと思う。被身子を受け止めることと、世界を変えることは違うじゃろ。何がもしかしたら、じゃ。無茶振りをしおって。
「もし世界を変えたくなったら、言ってくださいねぇ。どんな事でも、私が協力するので!」
「……考えておく」
まぁ、この先世界を変えようなんて思うことは無いとは思うが。……ただそれでも。こうして支えようとしてくれる人が居ると思うだけでも、心が軽くなる。それに何と言うか、こうも能天気な事を言われると……あれこれ考えてしまったのが馬鹿らしくなって来た。
世界の在り方なんて、別にどうでも良い事じゃ。儂は儂がすべき事をやる。今更揺れるな、迷うな。子供を守り、救ける。それから。
―――それから。被身子を、幸せにするんじゃ。
もう一度体の向きを変えて、被身子と向かい合う。暗闇の中で、被身子の顔が見えた。目が合うと、確かに微笑んだ。……あぁ、もう。今そんな風に微笑むのは、狡じゃ狡。
急に気恥ずかしくなって来たので、顔を見られないように抱き付く。それで、じゃ。それで、その……。
「……その、さっきは悪かった。だ、抱いてくれるか……?」
なんて、甘えてみたりして。
「ん、ふふ……っ♡ いただきまぁす♡」
ぞくり。と、体の芯が震えた。
◆
……あぁ、うむ……。こう、盛り上がるだけ盛り上がると悩みなど良くなるものじゃなぁ。良いように操られてる気がするが、まぁ良しとする。結局のところ、被身子が笑顔なら儂は何だって良いんじゃ。困ったことに、その想いが胸の中心に居座って動こうとしない。呪術師とか、……
じゃけど、まぁ……。どうしても被身子には幸せで居て欲しいと思うんじゃ。こんな巫山戯た時代じゃったとしても、笑って居て欲しい。生き難い世の中じゃったとしても、笑顔で居れば……きっと何とかなるんじゃろうから。
そう考えると、もっともっと……何かしてやれる事が有るんじゃないかと思う。こう、伴侶として許嫁として、恋人として。儂がいったい何をしてやれるのかは、さっぱり分からんけども。
「んん……。……えへへぇ♡」
どんな夢を見てるんじゃか、まったく。儂を好き勝手に弄んで、これでもかと辱めておきながら先に寝惚けおって。そういうところじゃぞお主。そういうところなんじゃからな?
まっこと! 仕方のない奴めっ!
仕方ないから、しっかり抱き付いて寝てやろう。もうそろそろ朝になってしまう気がしないでもないが、少しは熟睡出来るじゃろう。じゃって、裸でひっ付いて寝ると安心するんじゃ。寂しくないと言うか、不思議と満たされると言うか……。んんむ、やはり責任を取って貰わなければ。この先、独りで寝れなくなったらどうしてくれるんじゃ。
「……まったく。こやつめ」
好き勝手された仕返しに、頬を摘んでみる。だらしない寝顔を晒しおって。年頃の娘が大口を開いて寝るのはどうなんじゃ? そんなに隙だらけじゃと、悪戯のひとつやふたつぐらいしても良い気になってくる。……なので。
なので。今度は、犬歯……八重歯に触れてみる。何でこんなに尖ってるんじゃろうなぁ。個性の影響か? それともただ単に、産まれつき……か? この牙に、何度肌を突き破られたか分からん。ついさっきじゃって、思いっ切り噛まれたしの。お陰で酷く興奮してしまった。噛まれるのが悦ばしいなんて、我ながらどうかと思うが。
「……儂が幸せにするからの。覚悟しておけよ、貴様ぁ……」
ふふん。無防備に寝惚けて、隙だらけなんじゃから。こうして寝ている姿は年相応と言うか、何なら子供っぽい。いや、被身子は普段からお子様じゃけどな? とてつもなくわがままで、自由奔放じゃし。くらすめぇと達と比べても、やっぱり子供っぽい気がする。それが可愛らしいと言えば、それまでなんじゃけどな。
「……ふわぁ」
ん、んん。眠くなって来た。今宵は色々有った上に、被身子に好き勝手されたからの。いい加減体が疲れて来て、瞼が重い。……んじゃけども、もう少しだけ。あと少しだけ、寝顔を眺めてたい。普段は儂ばかり寝顔を見られているような気がするし、じゃからこれも仕返しの内なんじゃ。……んんぅ……。
んん……。目を、開けてられん。温かくて心地良くて、気怠くて。このままで居たら、儂は一分も経たない内に寝てしまうじゃろう。どうせなら一秒でも長く寝顔を眺めて居たかったんじゃけど、もう限界じゃ。被身子の寝顔を堪能するのは、またの機会に……。
……。…………。…………ん、ぅ……。
……被身子。大好き、じゃからな。もう、お主無しでは……。
もっともっと、幸せにしてや、……るから。儂に出来ることなら、何じゃって……。お主の為なら、世……界じゃって……。んにゅぅ……。
「……すぴぃ」
今回の更新はここまでとなります。また1ヶ月後に投稿出来たらなーと思ってます。
今の世界に悩みつつ、トガちゃんとイチャコラしつつ、寝落ちしながらも、少しずつ変わり始めている円花の図。廻道円花:オリジンが少し見えて来たような気がします。いつかほんとに書きたいですね、廻道円花:オリジン。いつになるかは知りませんけど!!
三人称による補完は要りますか?
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欲しい
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要らん
-
良いから一人称で突っ走れ