待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
目が覚めると、被身子に滅茶苦茶
……まぁ、良いか。仕方ないから抱き締め返しつつ、心地良さに身を預ける。んんむ、このまま二度寝したい。被身子と一緒に惰眠を貪りたい。ながんや常闇達に盛大に呆れられるんじゃろうけど、こればっかりは仕方ないじゃろ? 分かってくれ。と言うか、分かれ。
「んふふ。カァイイ……♡」
「……お主もな。んぅ……」
「……♡」
あぁ……。うむ……。凄まじく怠惰な寝起きじゃのぅ。気怠いまま被身子と抱き締め合って、
「……寝ちゃ駄目ですよ? 気持ちは分かりますけど、そろそろ起きないと」
「……分かっとる分かっとる」
「それ、分かってないやつですよぉ。……もぅ、仕方のない奴め♡」
「んぐぐ……」
ぐ、ぐぬぬ……。指で頬を突くな。摘むな、引っ張るな。何じゃもぅ、普段じゃったら一緒になって二度寝したり好き勝手するくせに。そうでなくとも、放っておいてくれるくせに。今朝の被身子は、少し意地悪な感じがする。このまま素直に起きるのは癪なので、瞼を閉じてもっとくっ付くことにした。あぁ、眠い。気怠い。でも、今はそれが心地良くて。
なんで、冬の布団はこうも心地良いんじゃろうなぁ……。暖かくて、動きたくない。二度寝したくて堪らん。って、こら被身子。唇を摘むな。されるがままなのは不愉快なので、うっすら瞼を開きつつ指に噛み付いてみる。軽く、甘噛み程度に。
「んぁむぅ……」
……何をしてるんじゃろうな儂は。起きたくなくて変な真似をしてしまったのぅ。被身子は被身子で、少し喜んでいる気がするし。もう良い、二度寝してしまおう。このまま被身子と惰眠を貪ってから、のんびり動くとしよう。ながん達には悪いが、こればっかりは仕方ない。
「ほーら、そろそろほんとに起きてくださいっ。そんな風に甘えたって駄目なのです!」
「ん、んぐぐぐ……」
ん、んん……。二度寝したい。起きたくない。被身子と掛け布団で暖を取りつつ、満足するまで寝惚けたい。起きねばならんと分かっては居るんじゃけども、どうにも二度寝の誘惑を振り払うことが出来ん。
……ふふ、こやつめ。こんな柔らかで暖かい体をしおって。お陰で起きれなくなってしまったではないか……!
「んん……。そんな風に甘えてると、襲っちゃいますよ?」
「……良いぞ。好き勝手して」
「―――」
あぁ……、……うむ。間違えた気がするの。でもでもじゃって、冬の朝は寒いからの。今朝は特に、被身子に暖めて貰いたい気がしてならん。じゃからって、寝起きに誘惑するような言葉を吐いてしまったのは良くなかったか。
「……もぅ、もうっ。直ぐそうやって誘惑するんですから……♡」
直ぐって何じゃ、直ぐって。誘惑なんてしとらん。別に儂は、被身子がしたいと思うなら断らんだけじゃ。そもそも断ったって、結局最後は押し倒されるんじゃし。じゃから被身子に求められたら、大人しく応じてるだけなんじゃ。まったく、儂が被身子を誘惑ばかりしてるみたいな物言いは止さぬか。
「んふふ、いただきまぁす……♡」
被身子が儂に覆い被さって、満面の笑みじゃ。まったく、儂は寝起きなのに盛りおって。仕方のない許嫁じゃよお主は。
―――なんて、呆れつつも喜んでいると。
……ちっ。誰じゃ。部屋の扉を力強く叩きおって。多分ながんか、常闇達……か? 被身子が動きを止めてしまったではないか。儂としてはこのまま好き勝手されたかったんじゃけど?
「……はぁ……。ほら、起きて円花ちゃん。もう起きないと、色々駄目なのです……」
ん、んん……。被身子が残念そうにしながら、儂から離れてしまった。くそっ、誰じゃ儂等の邪魔をする輩は。このまま何も考えず、被身子と求め合いたかったのに。
……はぁ……。そろそろ、起きるとするか。二度寝したくて堪らんけど、そうも言ってられん。何せ儂は、指名手配されとるんじゃから。有らぬ疑いを掛けられた身で、怠惰に過ごしている場合ではない。
「……服、どこじゃ?」
「隣のベッドに置いてありますよぉ。早く着ちゃってください」
「……ん。相分かっ、ふわぁ……っ」
被身子に引き起こされながら返事をすると、途中で盛大に欠伸に変わった。目尻に溜まった涙を指で拭いつつ、ゆっくり体を伸ばす。まだ眠気全てを振り払うことは出来ぬが、動き始めればそのうち目が覚めるじゃろう。多分。
……よし、まずは服を着よう。隣の
……何故下着が? って、あぁ。今、裸じゃったの。服を着る前に、
って、あ。そうじゃ。
「……一緒に入るか?」
浴室に向かっている最中で、振り返りつつ聞いてみる。すると。
「はぁい。綺麗に洗ってあげますねぇ」
被身子が満面の笑みを浮かべた。と、同時。再び部屋の扉が叩かれた。とても急かされている気がするが、今は無視じゃ。取り敢えず、眠気を覚まして服を着てから応じるとしよう。待たせるのは悪いと思うが、まずは体を綺麗にしたいからのぅ。もう少しだけ、待ってもらうとしよう。
そんなこんなで。この後、儂は被身子と狭い浴室に入った。お陰で、やっと目を覚ますことが出来たの。
……まぁ。後でながんや常闇達に叱られてしまったんじゃけどな。
◆
儂が寝惚けている間に、また
状況は、あまり芳しくない。まさか常闇や尾白、そして砂藤の三人まで儂の協力者として指名手配されてしまうとはの。せめてもの救いは、被身子やながんの存在が報道されておらんと言うこと。二人まで指名手配されてしまったら、色々とままならなくなってしまう。移動や物資の調達なんかも一苦労じゃ。
「面倒じゃな。色々と」
「……ですねぇ。改めて、これからどうします?」
「ひとつの場所に長く留まるのは避けたい。直ぐにでも此処を発とう」
「今後の事は、動きながら決めるしかない……よね。もっとニューヨークから離れて、何処かに身を潜めないと」
「……だな。まずは動こう」
取り敢えず。この場から動く方向で話は纏まりつつある。未だ指名手配されている身である以上、いつ此処に警察やら
いかんな。儂に出来ることは何も無いと分かっていながら、どうにも心配で堪らん。いっそ儂が緑谷の居る場所に赴ければ良いんじゃけども、流石にそれは難しい。何か良い手段があれば今直ぐにでも飛んで行きたいぐらいじゃ。
……どうにも、歯痒い。何とかしてやりたいと、つい思ってしまう。
「……不安がらなくても、きっと大丈夫ですよぉ。ねっ?」
「……んんむ」
そんなに不安そうな顔をしていた覚えは無いんじゃけども、真後ろの被身子に頬を撫で回された。どうにも腹の内を見透かされてしまっている気がして、少し悔しい。分かり易く頬を膨らませてみると、もっと頬を撫で回された。と言うか、滅茶苦茶に弄り回された。仕方ないので体を預けると、今度は抱き締められてしまった。
「大丈夫だ廻道。緑谷を信じよう」
「ソウダゼ! 今ハ信ジトケ!」
「……うぅむ……」
いや、信じろと言われてもじゃな? あの阿呆は、何かあれば考えるよりも先に動いてしまう類いのお人好しじゃ。指名手配されていようが何じゃろうが、目の前で誰かが困ってたら手を差し伸べてしまうじゃろう。場合によっては、無茶をしてでも人助けをする筈じゃ。せめて指名手配が取り下げられるまで、大人しくして欲しいものじゃが……。まぁ、無理じゃよなぁ。緑谷じゃからなぁ……。……はぁ……。
「……まぁ、とにかく動くか……」
儂等も儂等で、緑谷の心配をしている場合ではない。指名手配されているのは、こちらも同じなんじゃから。今はとにかく動いて、警察や
ひとまず、
この後。儂等は
「ながん、直ぐ出せ!」
「―――っち! 掴まれ!」
「わひゃあ!?」
「うわっ!?」
ぐえっ。車が急発進したから、座席に頭をぶつけた。被身子は、……大丈夫じゃの。少し姿勢が崩れただけじゃ。常闇達は……まぁ心配せんでもいいか。被身子と違って鍛えてるんじゃから、窓や座席にぶつかったって大丈夫じゃろう。寧ろこんな程度で怪我をされても困る。被身子を抱き寄せたまま、後ろを見てみる。後部に有る窓の向こうを見てみれば、
「砂藤、頭下げろ。よく見えん」
「ぉ、おう」
「待て廻道。何をするつもりだ?」
「見たままんじゃ、たわけ」
いちいち聞くな鳥頭。
取り敢えず、あの
「ちょっ、そんな急に……!」
両手を合わせると、尾白が頭を下げた。ついでに常闇の頭も下げさせた。うむ、直ぐに意図が伝わって何より。お陰で視界が開けたので狙い易い。走る車の何処を穿てば止まるのかは分からんが、ひとまず放ってみるとしようかの。
「穿け、ぬぉあっ!?」
「掴まってろ!」
き、貴様……! おい、ながんっ! 穿血を放とうとした瞬間に急に曲がるんじゃないっ。有らぬ方向に血を飛ばすところじゃったぞ、まったく!
「おいっ、急に曲がるな! 狙えんじゃろっ!」
「それは悪かった!」
……ちっ。まぁ仕方ないから許してやろう。被身子が乗ってるんじゃからもう少し気遣って欲しいところじゃが、追われ始めた以上はそうも言ってられんか。再び後ろを見てみれば、やはり
もう一度狙いを定め、今度こそ穿血を放つ。儂の血は
「まったくもぅ……。ヒューマライズのせいで滅茶苦茶なのです」
「……すまん」
「円花ちゃんは悪くないですよぉっ」
「ぐえぇっ」
ん、んぐむぅ。こ、こら被身子。急に抱き付くなと儂はあれ程……! ……言ってはないか。言ってはないんじゃけども、もう少し手加減してくれ。頭を抱き締めるなら、もう少し力加減をしてくれないと息が詰まる。お主最近、儂の頭を抱き枕か何かと勘違いしとらんか? まったく、仕方のない奴なんじゃから。
「取り敢えず撒けた……かな? さっきのは、多分ヒューマライズ……だよね」
「こうなると、逃亡は容易ではない。周囲を警戒せねば」
「……だな。周りの車には気を付けよう」
被身子に好き勝手させていると、後ろの席で常闇達が気を引き締め始めた。儂も気を付けねばな。いつまでも警戒なぞしていると徒に消耗してしまうだけじゃから、時折周囲の車に気を配る程度にしておくつもりじゃけども。
「っぷは。警戒し過ぎても疲れるだけじゃぞ。程々にし、んぐぐ……っ」
お、おいっ。こら、被身子っ。儂が喋ろうとしてるんじゃから、頭を抑えつけるんじゃない。乳房を顔面に押し当てるな。喋れんし、そもそも息が詰まるんじゃって……! そもそも狭い車内で、儂に覆い被さるんじゃない。何で少し楽しそうにしてるんじゃ貴様ぁ……っ!
「警戒は程々にしましょう! 疲れちゃうのでっ!」
「んぐむむむ……」
いや、じゃから。儂が言おうとした事を高らかに口走るのは構わんが、覆い被さるのは止さぬか。いつまでも儂を下敷きにしとるつもりじゃお主は。これでは喋るどころではない。何ならろくに身動きも取れん。あぁもう、これでは周囲を気にするどころではないんじゃが? 警戒し過ぎるつもりはないが、じゃからってまったく警戒しないのも駄目なんじゃって。
「……何処かで車を乗り換えよう。頼皆、仕方なかったとは言え、次からは車を壊さないようにしてくれ。いちいち乗り換えるのは手間だ」
……それはまぁ、すまん。背面の窓を穿血で貫いてしまったからの。何なら血の軌道を変えたこともあって、穴どころか真っ二つに裂けてしまった。確かにながんの言う通り、逃亡の身ではいちいち車を乗り換えるのは面倒じゃろう。今後はまぁ、気を付けるとしようかの。
ところで、被身子。いつまで儂を下敷きにしているつもりじゃ。そろそろいい加減にしてくれないと、息が詰まるんじゃけど?? なぁおい、おいったら!!
お久しぶりです。進捗がよろしくないので、今回は5話になります。
三人称による補完は要りますか?
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欲しい
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要らん
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良いから一人称で突っ走れ