待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
結局、昨晩は数時間しか寝れなかったわ。三時間近くは寝れた、……と思いたい。何せ昨晩は、と言うか昨晩も大変じゃったから。ほら、色々とな。色々。
常闇や尾白と見張りを交代した後で部屋に戻ると、拗ねた被身子が待っていての。機嫌を直して貰うのに、結構大変じゃった。今の儂等は悪党やら何やらに追われている身なのに、被身子はまるで自重しないんじゃから。まぁ、良いけどな。逃亡中の身じゃからって振る舞いを変えるのは、それはそれで違うと思うし。見付からぬように身を潜めはするものの、じゃからって被身子を蔑ろにする訳にはいかん。
特に被身子は、悪党に連れ去られて怖い思いを、……してないか。その件について謝ろうとしたら「全然怖くなかったですよ? むしろヨリくんの記憶の方が大分ホラーでしたし!」なんて言われたぐらいじゃ。それでも儂は謝ったんじゃけど、そしたらそしたらで……うむ。まぁほら……、色々とされての。色々する羽目にもなった。まったく、被身子の阿呆。へんたい。
ごほん。とにかく、儂は三時間程度しか寝られなかった。被身子と二度寝したくて堪らなかったが、砂藤やながんだけに見張りをさせるのは申し訳無いから何とか起きることにした。危うく二度寝しかけた時は、被身子に掛け布団を剥ぎ取られてしまったが。
そんなこんなで、今。儂と被身子、ながんに砂藤は隠れ家の居間に集まっている。ただ集まってるだけで、特に何もしていないんじゃけどな。常闇と尾白は、まだ部屋で寝てるじゃろう。起きてくるのは、何事もなければ三時間後になる。二人が起きたら、改めて全員で今後どうするかを決めたいところじゃ。
「ふわぁ……ぁ。んんんん……っ」
なので。
「……ほれ。此処なら空いとるぞ?」
ここは先手を打つとしよう。たまにはな。そう、たまには。儂が被身子を良いようにしたって許されるじゃろ。膝を叩いて被身子を誘ってみると、対面の
被身子はと言うと、直ぐに儂の膝上に頭を乗せて来た。嬉しそうな顔で仰向けになりおって。仕方ないから、頭を撫で回しておく。髪に指櫛を通したりしてみると、増々嬉しそうじゃ。まったく、かぁいい奴め。
「んふふ。こんな時に人前で膝枕なんて、ヨリくんも染まって来ましたねぇ……♡」
「誰のせいじゃ、誰の。ほら、少し寝ておけ」
「はぁい。じゃあ、ちょっとだけ寝ちゃいますねぇ。……ふわぁ」
「……、……くぁ……っ」
あぁ、うむ。いかん、被身子の欠伸が移った。儂自身も寝不足じゃからの。ながんや砂藤はしっかり寝ておいたようじゃから、眠気とは無縁そうじゃ。まぁ儂も、後で少し仮眠しよう。もう一度出て来そうになった欠伸を噛み殺すと、ながんが読んでいた本を
まぁ良い。取り敢えずこのまま被身子を撫で続けて、……って。もう寝ておる。膝上から寝息も聞こえて来た。
「シュガーマン、悪いがコーヒーを淹れてくれるか? 頼皆には……紅茶で頼む」
「え? あぁ、はい。分かりました」
いや別に儂は要らんのじゃけども、ながんは何故か勝手に珈琲や紅茶を砂藤に頼んだ。薪を焚べる手を途中で止めた砂藤は台所の方に向かって行ったの。それを横目で眺めていると、ながんが机を指で叩いた。……なんじゃもう、何か話が有るなら直ぐにすれば良いじゃろ。
「これ、読んだか?」
「見張りの時に少しな。まともには読んどらん」
と言うか、まったく読めなかったの。じゃって興味が湧かぬ上に、目が滑るんじゃもん。覚えているのは、……うむ。この本の題名ぐらいのものか。何じゃってこんな本を、あの翼男は呪霊に届けさせたんじゃか。
「だと思ったよ。古臭い単純なやり方だが、これは暗号だ。ホークスからの」
「……暗号?」
ほぉくすからの? ……なるほど、じゃから
……まぁ、良いか。結果として、儂にしっかり届いてるんじゃからな。
それで、ながん。この本が暗号じゃって?
取り敢えず、開かれた
「線を引かれた箇所。二番目の文字を繋げてみろ」
「……二番目?」
……ええっと。どれどれ。何だかよく分からんが、二番目の文字を繋げて読めば良いらしいの。
ん……? あぁ、ふむ。……ふむ? つまり? あぁ、そういう……。ほぅ……。
「えぇ……? やじゃぁ……」
それが率直な感想じゃった。いや、
……どうやら。
まず、
……とにかく。呪詛師や呪霊の前に立てるのが三人しか居ないんじゃ。被身子は呪術師になってしまったが、戦いの場に立たせるつもりはない。そして、何より……。
「数を備えろ……じゃと?」
それが何の数であるのかは、何となく分かる。分かってしまった。十万を越える悪党を制するのには、それ相応の数が要る。となると、今居る
子供を戦場に立たせろと言っている。
あの男、次に会ったら殴っても良いかの。勢い余って殺してしまいそうじゃ。こんな大変な時に、儂を苛立たせおって。よし決めた、次に会ったらあの赤い羽根を毟り取ってくれる。
……じゃけど、まぁ。苛立ちはするものの、五月までに備えることは出来る。四箇月も有るからの。いや、正確には三箇月半程になるか。
儂としては、何としてでも子供達を戦場から遠ざけたい。じゃけど相手の数が十万以上も有るのなら、間違いなく
「……くそっ」
こうなって来ると、もう儂の出来る事は決まっている。いずれ来る事態に向けて、準備しておくしかない。くらすめぇと達を、儂の手が届く範囲の子供達を死なせぬように動くしかない。と、なると……。
「……頼皆。これが公安のやり方なんだよ。だから、止めておけと言ったろ」
「……そうじゃったかもしれんな。まったく、とんでもない真似をしおって……」
流石に、公安に嫌気が差す。じゃが
「……ひゅうまらいずをどうにかしたら、また忙しくなるのぅ」
「……乗るのか? こうまでされて、公安の思惑に?」
「……つまりは、戦争じゃろ? いや、内乱か……?」
まぁ、どっちにしろじゃ。これから先、日本は滅茶苦茶になる。下手をすれば世界じゃってそうなるかもしれん。既に
「……はぁ……。まったく……」
今の状況を乗り越えた先に待っているのは、また面倒な状況じゃ。ここ最近、……と言うかこの一年。厄介事が続いてばかりじゃの。もう少し平和な世の中になって欲しいが、思い返してみれば平安じゃって平和には程遠かった。そう考えると、どれだけ時代が進もうと平和なんてものは訪れんのかも知れぬな。まったく、何がどうなっているのやら。
とにかく。今回の騒動が無事に収束したら、次は色々と備えなければならん。今から先の事を考えるのは余計な負担じゃが、運が良い事にまだ
「日本に帰ったら、忙しくなりそうじゃの……」
「……そうだろうな。出来る限り手伝わせてくれ」
……先の事を考えると気が重いが、この際ながんも巻き込んで苦労してもらうとしよう。日本に帰ったら、いや帰る最中に色々と決めたり考えたりしなければな。三箇月なんて時間は有って無いようなものじゃろうけど、出来る限りの事はしておきたい。と、なるとじゃ……。
やはり、儂がすべき事はひとつだけか。
「……雄英に戻ったら、徹底的にくらすめぇと達を鍛える。そのつもりで居てくれ」
「あぁ。分かった」
……はぁ……。まったく。これでは、被身子と
膝上の被身子に目を向けてみれば、それはもう幸せそうに寝ておる。もう何時間かは、このままじゃ。どれ、起きるまで頭を撫で回してやろうかの。この際じゃから、寝顔を観察しておこう。普段は儂ばかり寝顔を見られとるからの。今回は、儂が眺めたって良かろう?
三人称による補完は要りますか?
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欲しい
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要らん
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良いから一人称で突っ走れ