待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
「呪霊に二代目の座を懸けて勝負を挑まれた、……ですか?」
「それはまた、変な事態に巻き込まれたな……」
「不可解。何故呪霊は、そのような勝負を挑む……?」
「呪霊、のことはよく分からないけど……言葉通じるんだ……」
「呪霊が何言ったって、廻道がいずれ二代目になるのは決まってることじゃねえの?」
あの呪霊が口走ったことは、まっこと不愉快で不可解極まる。現に、儂から話を聞いた全員が何とも言えん顔をしておるし。
「……まぁ、その勝負については後で考えよう。それよりもこれ、見て欲しいんだけど」
尾白が居間の
「テイルマン、これは?」
「渡我先輩を救けた後、廃工場で筒美さんの手掛かりを探してる時に見付けたUSBの中身なんですけど、……
「……良くやった。これはホークスや、スターに共有しよう」
……ほぅ。それはまた、随分と良いものを見付けて来たものじゃの。これが有れば、少なくとも
「よし、爆弾の場所が分かったなら俺達も……! って訳にも行かねーか……」
「あぁ、俺達は追われる者だ。動きたい気持ちは山々だが、外を動き回るのは難しい」
「……あぁ、それなんじゃけど。あの阿呆が儂等を追ってた連中を潰したそうじゃ。外で山積みになっとるぞ」
「は?」
いや、儂を見詰めても何にもならんのじゃが。少なくとも、あの呪霊が言っていたことは事実じゃった。あやつが去って直ぐ、儂は一応隠れ家の外を確認した。帳を通り抜けると、少し離れた所に
「ってことはぁ……。もう追っ手は無いってことですか?」
儂を膝上に抱き抱えてる被身子が、首を傾げた。まぁ確かに、追っ手は無いじゃろう。また後で新たな追っ手を差し向けられるかもしれんが、それまでは追われたりしないと思いたい。
……って、こら。抱き締めるのは構わんが、ついでに膝を撫でるのは止せ。人前でせくはらをするな……!
「追っ手が完全に無くなったかは分からない。どうにもヒューマライズは、頼皆に執着してるからな」
「疑問に思うのですが、何故ヒューマライズは頼皆を……?」
「んーー……、きっと円花ちゃんがカァイイから欲しくなっちゃったんですよ。まぁ何でも良いですけど。誰にもあげないので!」
「ぐえぇっ」
せくはらをされたと思ったら、力強く抱き締められた。息苦しくなるから、腹や胸を圧迫するんじゃない。まったく、仕方のない奴なんじゃから。
……まぁ、でも。少し気になる話では有る。何故
何にせよ、悪党に目を付けられるのは面倒この上ない。緑谷の隠れ蓑になると決めたのは儂じゃが、ここ最近になってそのせいで厄介事が増え始めてしまっている。今後は、何か対策を講じなければな。特に被身子や、両親に危害が及ぶことは避けたい。総監部や公安、場合によっては雄英にも相談しておかねばな。
さて、と。それはそれとしてじゃ。
「貴様等は、この情報が正しいと思うか?」
「……どうかな……。信憑性は有ると思いたいけど……」
尾白が見付けた、
まぁ、そっちの方が色々と大変なのは事実なんじゃけども。
「火伊那ちゃんはどう思います? これって、確かな情報ですか?」
「それは分からない。だが……恐らく事実だろうな。私がモラルの立場なら、そうする」
「は?」
「あぁ……、実はそんな感じです?」
「恐らくな。確証は無い」
「は?」
いや、おい。ながんも被身子も、何を言ってるんじゃ。何故そこで、もらるの名が出る。あやつの事なぞ、今はどうでも良いじゃろ。それと、何勝手に二人で通じ合ってるんじゃ。説明しろ説明。
「渡我先輩、筒美さん。それはいったい 、どういう?」
「分カルヨウニ話セ!」
「……モラルはヒューマライズに送り込まれたスパイだ。もしかしたら、だけどな」
……は? すぱい?
「憶測ですし、思い返してみればちょっと気になる点が有っただけです。まぁどっちでも良いですけどね。私はあの人嫌いですから!
それよりも、この地図を信じるか信じないかを決めません?」
まぁ、良いか……。あやつが何者かなんて、どうでも良いことじゃ。
それよりも、被身子の言う通りにこの地図をどうするか考えた方が良いじゃろう。真偽はともかくとして、もし爆弾対処に動くのであればそれは早い方が良い。いつ
「……偽物でも本物でも、まずはこれをホークスに送るべきだ。その上で、俺は本物だと信じて動きたい」
「……だね。偽物だとしても、このまま放って置きたくはないよ」
「外れだとしても、少なくともこの情報は嘘だって分かるもんな。確かめに行くべきだと思う」
……それはそうかもしれんな。ひとまず、常闇達の意向は分かった。この地図が本物にしろ偽物にしろ、まずは動く。本物じゃったら爆弾を対処すれば良いし、偽物じゃったらその時はその時じゃろう。追っ手が少なくなった今なら、ある程度は自由に動けるしな。この機を逃すのは勿体無いとも思う。が、直ぐに賛同するのはそれはそれで違う。儂からすれば、これ以上動きたいとは思わん。この地図を何とかしてほぉくすやすたぁに送って、後は追っ手から隠れているだけで良い。わざわざ危険を冒してまで、儂等が爆弾を見付ける必要は無い。
我ながら保守的な気もするが、こればっかりはな。ただでさえ子供達を危険に巻き込んだんじゃから、これ以上危険な真似をして欲しくはない。……んじゃけども、そうも言ってられんよなぁ。本物か偽物かも分からん地図を送って、後は知らんとは流石に言えん。こう、
……んんむ……。いや、でも。これ以上、被身子を巻き込む訳には……。ただでさえ大変な目に遭わせてしまったのに、これ以上いざこざに付き合わせるのは気が引ける。
肩越しに被身子の顔を見ると、微笑まれた。ついでにまた、思いっ切り抱き締められたわ。ぐえっ。
「良いですよ? 幾らでも振り回してくれて。私は円花ちゃんと一緒なら、何時でも何処でも行くのです!」
「……んん……」
そう言ってくれるのは、ありがたい。ありがたいんじゃけども、それに甘えるような真似はしたくない。そりゃあ儂じゃって、被身子と一緒なら何時じゃって何処じゃって行っても良い。幾らでも振り回してくれて構わん。でもそれは、あくまでほら……
今更、なのは分かっとる。儂はこれまで散々、被身子を危険に巻き込んで来た。結局そうなってしまっていた。じゃからこそ今回ぐらい、危険からは遠退いて欲しいんじゃけどなぁ。
「渡我が心配なら、此処に残す選択だって有る。今度は必ず、私が守る」
「えーー……? 私は円花ちゃんに守られたいんですけどぉ……」
「……はぁ……。まったく……」
まっこと、仕方のない奴なんじゃから。ながんが思いっ切り呆れとるし、何なら常闇達も苦笑いじゃ。そろそろ何とかした方が良いが、何ともならんのじゃよなぁ。じゃって被身子じゃもん。
……とにかく。被身子を残す選択肢は無しではない。が、その場合はどうしても懸念点が残る。未だながんは個性を扱うことが出来ん。個性さえ自由に使えれば、被身子をながんに任せたって良い。こやつの実力が如何程のものかは知らんが、昔公安の指示で働いていたならもしかすると……ほぉくすぐらいには強いのかもしれん。あ、そうじゃ。
「今、公安に連絡は取れるか?」
「取れるには取れる。見ての通り、パソコンが有るだろ」
ふむ……。じゃったら、まずながんの個性使用許可を取るべきじゃな。公安に連絡して、ながんが個性を使えるようになれば被身子を守る上で何一つ不自由は無いじゃろう。と言うかじゃな、儂に言われんでもさっさと公安に連絡して欲しかったと思わんでもない。こんな状況なら、直ぐにでも許可は降りたと思うんじゃが……。
「……言っておくが、私の方から個性使用許可を求めるつもりはない。そもそも降りないだろうからな。
あんたが必要だと訴えないと、向こうもその気にならないだろ」
「なら、儂が求めれば良いんじゃな? ええっと……?」
取り敢えず、のぉとぱそこんに触ってみる。って、こら被身子。後ろから横取りするんじゃない。儂が連絡しないと公安も納得しないと思うんじゃけど??
「円花ちゃんがパソコンなんて使ったら大惨事なのです。公安には私が連絡しておきます」
「いや、ぱそこんぐらい儂にも……」
「IT音痴が何言ってるんですか。まったくもぅ……」
呆れられた。解せぬ。別にぱそこんぐらい、いくら儂でも操作出来る。最後に触ったのは十年ぐらい前だった気もするが、まぁ何とかなると思うんじゃけど? まったく、そうやって何かに付けて儂に何もさせないからいつまで経っても学習する機会が損なわれて……。
いや、良いかもう……。被身子みたいに、かたかた操作出来る気がせん。納得はしとらんが、ここは任せるとしようかの。
「はい、メールしときました。後は少し待ちましょう」
ぉ、おう……。早いな……? もっと時間が掛かるかと思ったんじゃけど、実際はそうでもなかった。取り敢えずこれで、後は公安が動けばながんが個性を使えるようになる。
……そうなると、うむ。当然被身子を連れて行かないと言う選択肢がより濃いものとなって来た。ながんが個性を使えるなら、もう
……んん……。いや、別にながんを信用してないわけじゃない。儂の補助監督として良く働いてくれとるし、被身子とも仲が良い。
それでもこんな時に、いやこんな時じゃからこそ。儂は被身子から離れたくない。被身子が誰かに連れ去られてしまうなど、二度とごめんじゃ。二度とそんな目に遭わせたくないし、遭いたくない。そう考えると、儂の直ぐ側に居て貰う方が遥かに安心出来る。が、そうした場合は戦地に被身子を連れて行くことになってしまう。守れない自信が無いわけじゃない。自信なら有る。が、またも危険に晒すような真似はしたくない。
「……ひとつ、質問しても良いかな……?」
どうしたとのかと悩んでいると、尾白が小さく手を上げた。何やら聞きたい事が有るようじゃが、何故か妙に硬い顔をしている。その上、視線の向く先はながんじゃ。そんな尾白を見た砂藤は目を丸くし、さっきから黙り込んでいる常闇は腕を組み直した。
……んん? 三人共、どうにも落ち着きが無いな……?
「……筒美さんって、あのレディ・ナガンですか?」
……あぁ……。んむ……。何でこんな時に、そんな質問をするのか。いやまぁ、こんな時じゃからこそ……か。
ながんがどういう立場に居る人間なのかを、忘れていたわけではない。じゃがそれでも、儂は気にして来なかった。気にする必要が何処にも無かったからじゃ。過去がどうあれ、ながんは補助監督としてよく働いてくれている。儂は大人の過去なんざどうでも良い事じゃと考えているが、全員が全員そう思うわけではない。気にする奴は気にするんじゃろう。特に
これまた、面倒な事になりそうな気がする。ながんに目配せすると、小さく首を横に振られた。……まぁ、良い。好きにさせてやるか。大人がやろうとしている事に口を挟みたいとは思わんからな。
「あぁ、そのレディ・ナガンだ。私は訳あって、頼皆の補助監督として働かされてる」
ん、んん。いや、そこまで素直に答えんでも良いのでは……? と、思わんでもない。ながんの素性については、聞かれたからと言って正直に答えてしまって良いではないじゃろうに。
「……分かりました。それが知れただけで、俺達は十分です」
「今は、これからどうするかを決めましょう。俺達はこの地図を、本物と信じて動きたい。レディ・ナガン、どう思いますか?」
「……偽物の可能性は否定し切れない。が、それでもあんた達はこの地図が示す場所に行きたいんだろ?
だったら、付き合うさ。どの道、私は頼皆の側を離れられないからな」
……ほぅ? また面倒な事になったりするかと思ったんじゃが、意外とそうはならなかった。ながんについて知ったのなら、多少は反感を抱きそうなものじゃと思ったんじゃけどなぁ……。いったいどういうつもりなんじゃか。
まぁ、……良いか。少なくとも今、常闇達はながんを気にしとらんようじゃ。それとたった今、三人が一瞬だけ儂を見たことは少し気になるところじゃったけども。
「んふふ。信用されてますね、円花ちゃん♡」
「は? 急に何じゃ??」
「たぶん今、みんなは円花ちゃんが信用してるから火伊那ちゃんの事は気にしないって思ったのです。これって信用されてるからこそ、ですよねぇ」
「……また訳の分からんことを」
儂が信用してるから、皆もながんを信用する? いやいや、この三人は流石にそこまで馬鹿ではないと思う。そんな理由でながんを気にしないなんて、余程の阿呆かお人好しがやる事じゃ。儂のくらすめぇと達は……。
……余程の阿呆で、お人好しじゃったな。思い返してみれば、否定出来そうに無い。しかもこやつ等は、余程の頑固者じゃしのぅ。被身子の言っていた事は、案外事実なのかもしれんな。中々に不可解な気がするけれども。
「それじゃあ、これからどうするか決めちゃいましょう。何をするにしても、私は円花ちゃんから離れませんから!」
えぇ……? いや、儂としては今回ばかりは離れて欲しいんじゃけどなぁ。この調子じゃと、被身子は何が何でも儂から離れそうにない。そうなって来ると、被身子も連れて行く前提で作戦会議をするしかない……のか?
いや、いやいや。流石にこれ以上連れ回したいとは思わん。かと言って、儂が残って守るのは……それはそれで気が引ける。子供が戦地に向かうのに、儂だけ残るのは違うじゃろ。
んんむ……。これはいったい、どうしたものか……。
「……渡我先輩。流石に、これから先は此処で隠れて居てください。先輩を守りながらでは、潜入も爆弾処理も難しい」
「そこは大丈夫ですよぉ。自衛ぐらい出来ますし、今のトガならみんなが怪我したら治してあげれます。円花ちゃんの手綱も握れますし!
ほら、連れてった方が何かとお得ですよ?」
「怪我を治す……? 渡我先輩って、治癒系の個性でしたっけ……?」
「……反転術式じゃ。被身子は儂と違って、人の怪我を治せる」
尾白が首を傾げたので、一応捕捉しておく。まぁ確かに、被身子を連れて行く利点がまったく無いとは言わん。こやつは
……が。じゃからって被身子を連れて行くと、別の問題が生じるのも事実。被身子を連れて行く事自体が、危険行為そのものなんじゃ。儂の過去を追体験している以上、ある程度は自衛出来るじゃろう。戦う術を一切知らんわけでは無い。じゃからって、率先して連れて行きたいとは思わんけども。
「渡我、流石に大人しくしてくれ。あんた一人の我が儘で、此処にいる全員を危険に晒すつもりか?」
「俺達も、渡我先輩の同行には反対です。危険過ぎる」
「……むーー。別に大丈夫ですよぉ、何とかなりますって。ねっ? ちゃんと邪魔しないようにしますし!」
……ん、んん……。やはり全員に反対されたからと言って、被身子はそう簡単に引き下がったりしない。寧ろ、意地でも付いてくるつもりじゃ。無理矢理突き放すような真似をしても、却って逆効果になる。勝手に付いて来られでもしたら、もっと大変じゃ。このまま全員で反対し続けたら、それはそれで後で儂が大変じゃ。被身子は拗ねるとな、それはもう大変じゃからのぅ……。
っと。いかんいかん。昨晩の被身子を思い出して、遠い目をしてる場合ではない。
やはりどう考えても、被身子を連れて行きたいとは思わん。しかし、置いて行くのも嫌じゃ。この場に居る全員を信用していないわけじゃない。ながんの事はある程度信用しとるし、常闇の実力は認めている。尾白や砂藤に関してはまだまだじゃけども、それでも被身子よりはずっと戦えるんじゃ。
考えれば考える程、被身子を連れて行くべきではない。じゃからと言って、置いて行きたいとも思わん。
「……頼皆。私としては、渡我を連れて行くべきではないと思ってる。あんただって、危険かもしれない場所に連れて行きたくないだろ?」
「それはそうじゃけど」
「爆弾捜索はあんた達四人、私はバックアップしつつ渡我の護衛。それが最も安全だと思うが」
……そうじゃな。ながんの提案は正しいものじゃ。儂と常闇達で爆弾を探し、ながんは後方支援をしつつ被身子を守る。この布陣ならば、危険は少ない筈じゃ。全員の安全を願うなら、この提案に儂も乗るべきなんじゃろう。実際、乗りたいし。
じゃけど……。
「むーー……。でもぉ……」
「……被身子。すまんが……」
「むぅーー……っ」
「……、……ながん。連れて行っては、駄目か?」
あぁ、もう。我ながら、甘い。どうにも、被身子には甘くしてしまう。被身子を連れて行くことが、危険なのは分かっとる。幾ら儂の過去を追体験していようが、儂のせいで呪物となって呪力や反転術式を得ようが、被身子は……非術師じゃ。言うならば一般市民であり、
けれど。儂の側から離して安全と言い切れる状況でもない。正確に言えば、そんな状況は……今後来ることは無い。
儂はもう、様々な悪党に目を付けられてしまっている。例えば
連れて行っても危険、連れて行かなくても危険。そんな状況になってしまった。ならばもう、儂は被身子から離れぬ方が良い。そう思ってしまうのも、また事実で……。
「……駄目だ。あんたにとって、渡我がどれだけ大事なのかは分かってるつもりだ。だからこそ、連れて行けば明確な弱みになる。
何より、あんたの身にもしもの事が有ったらそれだけでヒーローは終わりだ。もっと自分が、敵にも味方にも重要視されてると自覚してくれ」
「それは、……分かっとるけど」
「なら、渡我を連れて行くべきじゃない。分かるだろ?
幾らなんでも、そこまで馬鹿じゃない筈だ」
「……」
駄目、か。いや、そうなる事は分かっていた。ながんの言う事は正しくて、一瞬でも被身子を連れて行こうと思ってしまった儂が間違っている。
被身子を連れて行くことは、やはり出来ん。でも、じゃけど。どうしても、離れてしまっては駄目じゃと思ってしまう。それは被身子の身に、実際に危害が加えられてしまったから。あんなのは、もう二度とごめんじゃ。そうならない為にも、やはり……置いて行くしかない。
でも……。じゃけど……。
「……頼皆、レディ・ナガン。そして渡我先輩。提案が」
今度は、常闇が小さく手を上げた。何か、意見のひとつやふたつでも言いたそうじゃ。取り敢えず黙って聞くとしよう。何かこう、もしかしたら良い案を出して来るかもしれんしの。
「爆弾捜索をするにあたって、主に動くのは俺達三人。廻道と、筒美さんはその援護をしつつ渡我先輩を守る。
……と言うのは、どうだろうか?」
「……は?」
いや、それは……。まぁ確かに、その案ならば被身子は安全じゃ。儂とながんの二人で守るんじゃから、もはや並大抵の悪党では被身子に手出しすることは出来ん。じゃけどその場合、今度は常闇達三人が危険に晒される。爆弾が地図通りの場所に置いてあったとして、その場所に
そんな場所に、子供だけを向かわせることは出来ない。それは儂の主義に反する。どんな場所じゃろうと、どんな状況じゃろうと、まず儂が危険の前に立つべきなんじゃ。
「頼皆の術式なら、視界さえ取れてれば遠距離でも俺達を守れる。まず俺達が頼皆の援護が届く範囲で先行。常に一定の距離を保ってさえ居れば、渡我先輩に危害が加わることは無い筈だ」
ん、んん……。まぁ、それもそうじゃの。確かに儂の術式ならば、見えてさえいれば距離が離れていようと常闇達を守れる。援護射撃に徹すれば、先頭に立たずとも先を行く三人を守ることは出来るじゃろう。そして常に悪党共から距離を離していれば、被身子が狙われようとも儂が対応出来る。それに今回の場合、儂等が悪党共の根城に向かって攻め込む形となる。先に行く三人が派手に暴れれば、後方に居る儂等三人は悪党に狙われ難い……筈じゃ。
「頼皆。今度は俺達を、遠くから守ってくれないか? それなら、渡我先輩を連れて行っても安全だ」
「……だね。頼皆の援護が有るなら、俺達も危なくないと思う」
「それなら渡我先輩も連れて行けるし、全員で殴り込むよりは安全じゃねーか?」
常闇の提案に、まず尾白と砂藤が頷いた。
「相手が立て籠もってるなら、突入班と狙撃班に分けるのは悪くない。だがその場合、まずは狙撃ポイントを見付けないとな。
……頼皆。どうする?」
「……んん……」
どうすると、聞かれてもの。確かに儂やながんが、根城の外から悪党共を狙撃するのは悪くない。視界さえ取れれば、もっと言えば射線さえ通せれば常闇達に向かう悪党共は遠方から撃ち抜ける。被身子を連れて全員で潜入したり、殴り込むよりかは……被身子はずっと安全じゃ。でも、この場合安全で居られるのは被身子だけじゃ。突入する三人には、やはりどうしても危険が付き纏ってしまう。
……駄目じゃ。やはり、常闇達だけを前に立たせるわけには……!
「……廻道、今は信じてくれ。俺も、尾白も砂藤も。危険から守られてばかりでは、遠ざけられてばかりじゃ、……お前の隣に居られない」
「……んん、む……」
いや、いやいや……。論外じゃ。そんな真似は認められん。そんな真似をさせて堪るか、して堪るか。子供達だけを突入させて、儂は後ろで援護に徹するなぞ。
いったいどうしたものかと考えていると、被身子に手を握られた。思わず顔を見上げると、目が合った。被身子の瞳は、まるで「大丈夫」とでも言いそうなぐらいに……優しくて。
あぁ……、そうじゃったな。そうすると、そうしていくと、もう儂は決めたんじゃった。
「……死んだら呪うぞ。馬鹿共め」
……ふんっ。良いじゃろう、被身子を救けに行った時のように今回も好きにさせてやる。少しは、頼ってやる。その代わりっ、死んだら絶対に呪うからなっ!? 絶対じゃからなっ!!?
多分あと5話でWHM編は終わると思います。多分ね。
三人称による補完は要りますか?
-
欲しい
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要らん
-
良いから一人称で突っ走れ