待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!!   作:一人称苦手ぞ。

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世界の危機。狙撃の準備

 

 

 

 

 

 

 隠れ家の地下室、武器庫と言っても良い部屋で幾つかの洋弓を見付けた。もちろん矢も。この時代の弓……と言うか米国(あめりか)の弓は儂が知る弓とは随分と違う。何で弓に滑車が付いていたり、よく分からん器具が装着されてるんじゃ。矢羽は色鮮やかじゃし、そもそも矢全体が妙に色付いているというか……。儂が知る弓矢とはもっとこう、飾り気が無いものなんじゃけど?

 

 まぁ、見た目はついてはそんなものと納得するしかない。時代が進むにつれて弓も姿形を変えていったんじゃろう。今の時代は便利な物ばかりじゃが、まさか弓まで便利にしようとするとはな。人間の探究心、或いは楽をしようとする意思はとんでもないものなのかもしれんなぁ。

 

 とにかく、弓矢を見付けた。隠れ家の外で三度試射した。儂が知る弓とは幾分か勝手が違ったが、洋弓の使い方はだいたい分かった。矢は念の為多く持ち運ぶことにした。半分は観測手(すぽったぁ)とやらを務めることになった被身子が持ってくれる。急ぎ足ではあったが、準備は出来た。即ち、やる事はひとつ。

 

 これから儂等は、悪党組織(ひゅうまらいず)が設置した爆弾の一つを確保する。その為に、にゅうよぉくに戻る。確か、たいむずすくえあ……? まぁあれじゃ、儂が宿泊していた宿(ほてる)の近くにある通り道。その一角にある建築物に、爆弾が設置してあるらしい。儂等の目的は、手に入れた地図が本物かどうか確かめること。本物じゃった場合、爆弾を確保。偽物じゃったとしても、ほぉくすやすたぁに送った地図が役に立たんことを伝えられるじゃろう。

 

 ……要するに、じゃ。今度は儂等から、悪党組織(ひゅうまらいず)に殴り込みを仕掛ける。その為の作戦は単純なもので、まずは常闇達が殴り込む。儂とながんは、離れた場所から狙撃で援護じゃ。被身子は、儂の側で観測手(すぽったぁ)とか言う役割をながんに任されておったわ。すぽったぁって何じゃ、すぽったぁって。別に狙撃ぐらい、儂独りで出来るんじゃが?? まぁ、被身子が儂の側に居ることは大賛成じゃけどな。もう二度と、悪党なんぞに手出しはさせない。儂の被身子を狙えばどうなるのか、たっぷりと教え込んでやる……っ!

 

「どうどう。今から息巻いても疲れちゃうだけですよぉ。ニューヨークに戻るまでは、のんびりしましょう!」

「忙しくなるのはもう少し後だ。あんた達は、リラックスしてな」

 

 悪党をどう射ってやるか考えていると、隣に座る被身子や運転席のながんに(たしな)められた。確かに、目的地まではまだまだ遠い。車で移動しているとは言え、もう何時間かは掛かってしまう。今から息巻いても仕方ないのは分かっているが、それでも気が逸る。儂の被身子に手出しをした不躾な輩は、儂にぶん殴られて然るべきじゃろうが。許されるなら殺してしまいたいぐらいに、今は悪党共が憎い。

 

「……廻道、落ち着いてくれ。憤るのは分かるが、殺気を漏らされては困る」

「ぐぬ……」

「ムカつくのは分かるけど、命を奪ったりしないでくれよ……? 爆弾とかヒューマライズをどうにか出来たとしても、廻道が警察に捕まったりしたら台無しみたいなもんだからさ」

「ぐぬぬ……!」 

「反撃と言っても、やり過ぎないようにね?

 ほんと、殺人だけは絶対に駄目だから」

「ぐぬぬぬ……っ!」

 

 ぐぬぬ。ぐぬぬぬぬ。くそっ、何で常闇達にまで釘を刺されねばならんのか。納得行かん、解せぬ。被身子に手出しをした悪党に手加減などしたくないんじゃが? 手加減出来る気もしないんじゃが??

 

 ……、……ふぅううぅ……っ。落ち着け、落ち着け……。被身子を狙うような連中は誰一人として許さん。儂の被身子に手を出したんじゃから、悪党組織(ひゅうまらいず)は一人残らず叩き潰す。が、それでも人殺しはしない。今回はあくまでも、英雄(ひいろお)候補生の一人として対処に当たる。幾ら頭に血が上がっていようと、殺人だけは絶対に駄目じゃ。くらすめぇと達との約束は、何としてでも守りたい。

 

「……ふんっ。分かっとるわ、このたわけ共……!」

「んふふ。もぅ、ほんとにトガが大好きなんですから……♡」

「ぐえっ。……こら、被身子」

「まぁまぁ、良いじゃないですか。目的地までまだ遠いんですから♡」

 

 いや、じゃからって車内で押し倒すんじゃない。抱擁(はぐ)は構わんけど、それ以上は流石に自重してくれ。前の座席には常闇達が居て、運転席にはながんが居るんじゃから。目的地まで遠いと言っても、あと数時間もすれば着くんじゃ。だいたい人前で求め合うのは駄目じゃろうが。

 

 ……まったく! 仕方のない奴なんじゃからっ!

 

「んふふ。嫌そうな顔して身体は正直なのです。もっとギュってしてくれて良いんですよ?」

「は? 違うが??」

 

 何で下から抱き締め返してるだけで、そんな事を言われねばならぬのか。解せぬ。何もしなければしないで、不満そうにするくせに。正直なのは被身子の方じゃと思うんじゃけど?

 

 ……まぁ良い。文句を並べ立てたところで押し切られるだけじゃろうし。たまには好き勝手言わせてやるとするか。いや、普段から好き勝手言ってるのが被身子なんじゃけども。

 

「……二人共。仲睦まじいのは良いけど、もう少しこう……」

「テイルマン、それは言うだけ無駄だ。二人して自重が無いからな」

「番いの凶星故、俺達の手には届かん。諦めろ」

「妻婦円満なのは悪いことじゃねーけど、限度ってもんが……」

 

 ……ううむ。ながんや常闇達がすっかり呆れてしまっているの。どうしてこうなってしまったかと言えば、儂が被身子を躾けられなかったの一言に尽きる。後はまぁ、結局押し流されてしまっているのも悪いか。でもでもじゃって、被身子を止めるような術を儂は知らん。何か方法が有るなら是非とも教えて欲しい。いや、もはや知らぬままで良い気がする。知ったとしても、どうせ何も変わらない気がしてならん。

 

 まぁ、それはそれとして。こんな体勢では有るが、少し先の事も話しておきたい。殆ど確認になるじゃろうが、可能な限り手筈通りに行きたいからの。

 

「……儂とながんが外から狙撃するとは言え、気を付けろよ」

「分かっている。出来る限り、射線が通らない位置には踏み込まない」

「戦闘はなるべく窓際で行うよ。想定外の事が有ったら、直ぐ撤退する」

 

 ……ううむ。取り敢えず分かっては居るようじゃけど、それでも心配は尽きん。どうにも落ち着かん。今からでも、儂単身で乗り込む作戦に切り替えた方が良いような気がする。やはり子供を前に立たせるのは、どうにも落ち着かんのぅ。別に今更、常闇の腕を疑うわけじゃない。この鳥頭に関しては、くらすめぇと達の中では最も信用出来る。尾白や砂藤はまだまだじゃが、悪党組織(ひゅうまらいず)程度に遅れを取る程弱くはない……筈じゃ。

 

「子供が関わると、ほんと心配性なのです。きっと大丈夫ですよぉ。ねっ?」

「……仕方ないじゃろ。これは性分みたいなものじゃ」

 

 少しは誰かを頼ると決めても、生き方を変えて行こうと思っても、じゃからって心配しないわけじゃない。むしろ心配は増したかもしれん。それでも、少しでも誰かに頼ると決めたのは儂じゃ。どうにも落ち着かんが、自分で決めたことは貫き通したい。そうしなければ、周囲や……儂自身を裏切ることになる。それは嫌じゃ。誰も裏切らんし、自分も裏切らん。

 

 ただ……。そう、ただ。これからは、優先順位をしっかりと決めていかなければな。何を大事にして、何を切り捨てるのか。改めて考えておきたい。今回の件が済んだら、答えを出すとしよう。でなければ、何もかも半端になってしまうからのぅ。それは避けねば。

 

 って、こら被身子。人があれこれと考えている時に、頬擦りするんじゃない。物欲しげな顔で迫るなっ。まったく、仕方のない……!

 

 ……まぁ。どうせ目的地までは時間が掛かるんじゃ。その間、特にする事も無い。もう少しぐらいは、被身子に好き勝手させても構わんじゃろう。

 

 ただし! 接吻(きす)以上は許さんからな!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 まったく、被身子と来たら。隙あらば儂を求めて好き勝手するんじゃから。ながんや常闇達に気付かれんように接吻(きす)を繰り返すのは、かなり大変じゃった。いやもしかしたら気付かれてるかも知れんが、言及されなかったから良しとしよう。……いや、良くない……か?

 ま、まぁほら。特に何も言われなかったということは、儂と被身子が後部座席で何をしてたか気付いてないってことじゃ。頼むからそうであって欲しい。そうでなければ困る。米国(あめりか)に来てまで、座敷牢に入れられたいとは思わん。今この場に、八百万が居なくて良かった。

 

「んーー……っ。さて、流石にそろそろ集中しましょう! ここからが大変なのです……!」

「分かっとる。……まったく、まっこと」

「仕方のない奴なんじゃから?」

「先に言うな、たわけ」

「んぎゃっ」

 

 取り敢えず、被身子の鼻を摘んでおいた。もう少し我慢が出来るようになってくれんかのぅ。別に儂を好き勝手したいと思うのは良いんじゃけども、何なら今では何時だって好き勝手にしてくれても良いんじゃけれども、それでも時と場合を考慮して欲しい。不満気に睨み付けると、楽しそうに微笑みおったわ。さてはまるで反省しとらんな? 後で折檻してやるから、覚えておけよ貴様ぁ。

 

 ……さて。ここからは、被身子が言った通り集中していかねばならん。持って来た洋弓を左手に、矢筒は後ろ腰に。狙い定めるのは、二百(めぇとる)先に有る、窓だらけの高層建築。の、窓の向こう。儂と被身子が居る高層建築の屋上からでは、見える箇所に限りが有る。多少距離が離れた別の場所には、ながんが付いている。常闇達は、もう爆弾が隠された建物の麓に辿り着いているじゃろう。儂とながんからの合図を確認した後、内部に突入する手筈になっている。

 

「……ながん、準備は?」

『いつでも』

「……つくよみ、ているまん、しゅがぁまん。聞こえとるな?」

『勿論』

『ばっちり』

『こっちも、いつでも良いぜ』

 

 どうやら、それぞれが配置に付いたようじゃの。今回は、と言うか今回も。奇襲急襲を掛けるのは、儂等の方。車の中で定めておいた合図は、儂とながんの狙撃じゃ。儂等のどちらかが射るなり撃つなりした時点で、常闇達が突入する。

 

 じゃから、まぁ。儂の役割は、遠方からの狙撃で常闇達を守ること。積極的に悪党組織(ひゅうまらいず)の構成員を無力化して行くつもりじゃ。もっとも儂が減らせる数は、そう多くない。どうしたって矢の数に限りが有るからの。被身子が持って来てくれた分と合わせて、四十本。仮に一矢一殺じゃとしても、儂の方では四十人までしか対応出来ん。そもそも狙撃地点に立ってみると、射ることが出来る箇所は限られているのが分かる。儂が対応出来そうなのは、……正面入口付近とその真上に連なる窓の向こう側ぐらいか。一度常闇達が建物に入ってしまうと、常に狙撃出来るわけでもない。ある程度矢を放ったら、儂も建物に突入してしまった方が良い気がするの。その場合は被身子を此処に放っておく羽目になってしまうのが嫌じゃけども。じゃからって被身子を連れて突入はしたくないしのぅ……。うぅむ……。

 

「ざっと見た感じ、各階に何人も見張りが居るのです。常闇くん達は特に気を付けてくださいねぇ。怪我なんてしたら、そっちに円花ちゃんが行っちゃうので」

 

 洋弓を引く前に被身子の方を見てみれば、双眼鏡で偵察しておるわ。無線も使って、常闇達からでは見えない位置にいる悪党共について通達しとる。まったく、人の気も知らないで観測手など買って出おって。そういうところじゃぞお主。そういうところが、儂を悩ませるんじゃぞ。今回は仕方なく見逃してやるが、やはり次回からは共に戦場に立つことなど許さん。駄目ったら駄目じゃ。

 不満じゃから、一度は思いっ切り睨んでおく。一応な。何の効果も無いことは分かってるんじゃけども、睨んでおく。

 

「……始めるぞ。各々好きに動け。合わせてやる」

 

 儂の血を付着させた矢を三本番え、狙いを定める。最初の狙いはもう決めてある。正面入口で突っ立っている二人と、三階の窓に寄り掛かって微動だにしない気の抜けた奴。こんな調子で見張りをしているつもりなら、片腹痛い。指揮系統がしっかりしてないのか、それとも普段からこんなものなのか。何じゃか知らんけど、隙を見せるなら付け入るだけじゃ。長距離を射るのは随分と久しぶりじゃが、何とでもなるじゃろう。

 

 さぁ、今度もまた教え込んでやろう。儂の被身子に手を出したら、どういう報いを受けるのかをな……!!

 

 

 

 

 

 





お久しぶりです。先月はモンハンで執筆サボりました。
また5話程更新予定ですので、よろしければお付き合いくださいませ。

三人称による補完は要りますか?

  • 欲しい
  • 要らん
  • 良いから一人称で突っ走れ
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