待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
……さて。爆弾を確保し、それをすたぁに引き渡した後。儂等は警察の目をやり過ごしつつ、建物の裏口から外に出た。無線でのやり取りを繰り返しつつも、ながんとも合流。警察やら
まぁ、警察共に追われてしまっている儂等には行く宛がない。
「鼻が曲がりそうなのです……」
「……まさに冥界の幽香。闇は良いが、この香りは堪え難い……」
「我慢する……しかないよね。地上は出歩けないし」
今、儂等は下水道の中を歩いているからの。すたぁの地図に示されていたのは、
しかもじゃ。当たり前なんじゃけども、結構暗い。所々に設置されている淡い光の蛍光灯がなければ、歩くのにも苦労していたじゃろう。いやそもそも、何も見えん真っ暗闇の中では歩けぬか。
「……で? いつまでこんな所を歩けば良いんじゃ?」
「……地図によると、ざっと三十分ぐらいだ。臭いは、……我慢しろ」
勘弁して欲しい。あと三十分以上も下水道の中を歩かねばならんのか。相変わらず儂に抱き付きながら歩いている被身子が、これ以上機嫌を悪くする前に目的地に辿り着きたいところじゃ。いっそ、全員だぁくしゃどうの背に乗ってしまった方が早いのでは? ここは暗いし、六人乗ったって大丈夫じゃろ。そう思ったら、馬鹿らしくなって来た。何でわざわざ下水道を歩いてんじゃ儂等は。悪党共のせいで、色々大変な目に遭ってしまっている。ゆ、許さん……!
「でも実際、スターの指示したポイントには何が有るんだろうね?」
「このまま進んで行けば放棄されたヒーロー拠点が有る、……らしい。そう書いてある」
尾白が溢した疑問に先頭を歩くながんが答えたが、聞くんじゃなかった。こんな道を通って辿り着く
……それはそれとして。
「……はぁ……、まったく……」
さっきから、いちいち視界の端に呪霊が映る。見たところ、少なくとも二種の呪霊が居る。ひとつは壁に張り付いた大量の蜥蜴っぽい奴。もうひとつは平然と下水を泳ぐ鰐……のような呪霊共じゃ。鰐の方は水面から顔を出して儂等を見ていたので、血を飛ばして祓った。ただ蜥蜴の方は、幾ら祓っても何処からか湧き出て来る。あまり考えたくないが、後日根こそぎ祓う羽目になりそうじゃ。その時は、……そうじゃな。常闇でも同行させようかの。この悪臭をもう一度被身子に嗅がせるのは気が引ける。ながんには、被身子の護衛を頼もう。ついでに尾白と砂藤にもな。
あぁ、それにしても鼻が曲がる。いい加減にして欲しい。この臭いにはいつまで経っても慣れそうにない。
「ここ、呪霊が多いですねぇ……。どうします……?」
「今はどうもせん。後回しじゃ」
「そうしてください。下水塗れで呪霊退治なんて、流石にちょっと」
「そうじゃな。ここの呪霊は後で考える」
今は呪霊なぞに構ってる暇はない。さっさとこの下水道を抜けて、隠れ家とやらに辿り着きたいところじゃ。こんな場所をあと三十分も歩かなければならないと思うと、気が滅入る。これ以上被身子が不機嫌になってしまう前に、何とかして抜け出さなければな。
それで、結局。この後、儂等は三十分程度は下水道を歩き回る羽目になってしまった。鼻は曲がって不愉快極まりない。出来ることなら、二度と入りたくない場所じゃのぅ。
◆
「おっ、全員無事に辿り着けたか。ほら、こっちだ」
三十分程も下水道を歩いていると、銃を持った男と出会った。こやつには見覚えがある。すたぁの部下の、……いぃさん……? とか言 う奴じゃったか……? 儂等を見ても警戒する素振りを見せず、片手を上げて気さくに話し掛けて来た。男の後ろには、何やら分厚そうな扉がある。その扉の奥が地図に書いてあった目的地じゃろう。そうでなければ困る。これ以上悪臭の中に身を置きたくないんじゃ。被身子もそろそろ限界そうじゃ。
「あんたは、……イーサンだったな。この地図に書かれたヒーロー拠点ってのは、その扉の向こうか?」
「あぁ、そうだ。かなり古いが、造りは頑丈でな。まだまだ使える」
「……もしかして、臭いですか?」
「いや、古い割りに中は綺麗さ。隙間風も無いし、臭いも無い」
「じゃあ早く入れてくださいっ。こんな場所はもう懲り懲りなので!!」
「そうだな、話は中でしよう。お嬢ちゃんにはキツい臭いだしな」
軍人でも、下水道に居続けるのは苦痛らしい。詰め寄る被身子の言い分に賛同して、いぃさんは壁に設置された、……端末? を操作する。そしたら、閉じていた扉が軋むような音を立てて徐々に開いていく。錆やら埃やらが落ちてくるが、大丈夫か? まさか途中で止まったりしないじゃろうな……?
「そうだブラッディ、これ付けな。英語は不便なんだろ?」
「……うむ、助かる。もう少し勉強せんとなぁ……」
今にも壊れそうな扉が開く様を眺めていると、翻訳機を手渡された。ので、直ぐに付けておく。これで誰が英語を話しても、会話の内容が分かるじゃろう。
……思い返してみると、この男にはやたらと世話になってる気がするの。翻訳機と言い、上着と言い。すたぁよりは余程気遣いが出来るようじゃ。何か有れば、少しは頼りにしても良いかもしれんな。
なんて考えていると、上下に動いていた扉が途中で止まった。大人が通るには少し狭い気がするが、儂等子供の体型ならば特に問題は無い。この隠れ家、
って、おい被身子。我先にと駆け込むんじゃない。仕方ないから後を追い、儂も中に入る。用意されていた隠れ家は、……まぁ綺麗とは言い切れんの。そこらには埃が積もっとるし、地下故に風通しも悪そうじゃ。壁一面に設置された古ぼけた液晶画面がやけに目立つ。
「何て言うか秘密基地って感じかな……? 何の為の部屋なんだろう……?」
「電気は通ってるようだが、しかし何故地下に……?」
「……まぁ、隠れて居られるなら何でも良いじゃろ。一休みぐらいは出来そうじゃな」
遅れて入って来た尾白や常闇が首を傾げているようじゃが、二人の疑問に答えは出せん。儂としては、警察や
「……さて。悪いが君達には、しばらく此処で身を隠してもらう。六日後には、人目に付かないように俺達で日本に送り届ける予定だ。快適な空の旅……とは行かないが、必ず送り届ける」
閉まっていく半開きの扉の前で、いぃさんが喋り始めた。しばらく此処で身を隠す羽目になるのは分かりきっていた事じゃけども、何故空軍の連中が儂等を日本に? 送るのは空港までで良いじゃろ。乗りたくはないが、飛行機で日本まで帰れるんじゃから。
「……どういう事だ? ヒューマライズの一件が済めば、この子の指名手配は解かれるだろ?」
「そうですよ。そしたらわざわざ隠れる必要なんて……」
「いいや。恐らくブラッディの指名手配は解かれない。ってのが、スターの推測だ。詳しく聞かせては貰えなかったが、どうもヤバいようでな」
「……は?」
訳の分からん話が飛び出した。いぃさんの言ったことは、恐らく嘘偽りは無いじゃろう。こやつ自身も、すたぁから詳しい事情は聞けていないらしい。
「君達がヒューマライズから持ち出したデータのお陰で、少なくともこの国は守られる。まずその礼を言わせてくれ。
……ありがとう。君達に関わった一人の軍人として、一国民として感謝する」
「そもそも成り行きじゃ。礼は良い。それよりも……」
「……頼皆の指名手配が解かれないとは、どういう理由で?」
「詳シク話セオラァ!」
いや、おい。常闇もだぁくしゃどうも、儂の前に立つな。お主等に庇われても何も嬉しくないし、そもそも庇えるだけの実力も有るとは言えんじゃろうが。
……まったく、好き勝手しおって。まぁ危険が無い内は、ある程度好きにさせてやるつもりじゃけども。
「事情は聞かされてない。ここからは俺の予想になるが、……ジュジュツ、とやらが関わってる」
呪術? 何故呪術が、儂の指名手配と関係しているのか。少し考えて見ても、さっぱり分からん。うぅむ……。
……まぁ、……そうじゃな。思い返してみれば、
ともかく、
「……ちっ」
あれこれと考えていると、段々と腹が立ってきた。何が苛つくって、儂だけならばともかく儂の周りに居る連中まで巻き込むような事態になってしまった。半分以上は
「ともかく、知っている事は全て話せ。場合によっては、儂は暴れるぞ?」
「……そこからは私が話そう。あまりスターのチームを苛めないでやってくれ、ブラッディ。いや、ヨリミナ」
いぃさんに詰め寄ろうとすると、少し離れた所から声がした。振り向いてみれば、部屋の隅にある扉の前に、いつの間にか一人立っていた。水色の肌をした、髭面の奴じゃ。爬虫類……? いや、蛸か……? まぁどちらでも良いが、とにかく異形系の奴が立っておる。誰じゃこやつは。
「私は、ティモシー・アグパー。スターに命令出来る立場にある者だ」
「なら、さっさと話せ。儂の気はそう長くないぞ」
………。何者かは分からんが、話すと言うなら聞いてやろう。
それで? 何がどうして、儂の指名手配は解かれないんじゃ??
今回更新はここまでとなります。何やら円花はまだまだ大変な模様。まだアメリカでドタバタします。もう幾つか米国潜伏編を書いたら、全面戦争編・序章に入れそうです。
三人称による補完は要りますか?
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欲しい
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要らん
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良いから一人称で突っ走れ