待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
あぐぱぁと何を話していたのか。それについては、あまり語れないのぅ。被身子もながんも常闇達も気にしていたが、儂が露骨に口を噤むと追求してくることは無かった。一応察してはくれたようじゃが、納得はしとらんようじゃ。特に被身子が不満気にしていて、後でどうにかして機嫌を取らなければ。でないと、無理矢理聞き出されそうじゃしの。
まぁ、それはひとまず置いておくとして。
この地下でどう過ごして行くか決めねばならん。と言っても、儂が扉の向こうで話している間に被身子達や、いぃさんが話し合って決めていたんじゃけども。
「……案外悪くなさそうじゃな?」
「まぁ少しぐらいなら、我慢出来なくもないですけどぉ……」
この地下拠点の大部屋(と、呼ぶことにする)の一角に、結構大きな
小さな
「……今後どうするかを決めたら、今日はもう休んでおこう。全員出来る限り、体力は温存しておけ」
ひとまず全員で
「まぁそれもそうなんじゃが、先に良いか?」
ながんの言う通り、今後どうするかを決めることは賛成じゃ。主に日本に帰るまでの立ち振る舞いを、全員で色々話し合って決めておきたいところではある。んじゃけども、一応先にしておきたい事が有ったりする。
儂が片手を小さく上げて口を開くと、全員が儂を見た。真後ろに座る被身子は、儂の肩に顎を置いて来た。どころか腹に腕を回して来たので、仕方ないから頭を撫でてやる。これで今だけは大人しくなって欲しいが、はて。
「……まぁ、その。……常闇も尾白も砂藤も、さっきの戦いでは良くやったの。大した怪我もしとらんし、そこは一応……褒めてやらんでもない」
儂とながんの援護されながらとは言え、この三人は
「……いや。せっかくだが廻道、その賛辞は受け取れない。
俺達は、まだまだ未熟だ。足りない点が多過ぎる」
「だね。嬉しいけど、素直には喜べないかなぁ」
「俺なんか一番受け取れねー。新必殺技、実戦でも使えるようにもっと煮詰めねぇと」
……ほう。三人共、思ったより謙虚じゃの。確かに至らぬ点は有ったかもしれん。儂やながんの援護無しでは、爆弾の確保が出来たかすら分からんところじゃしの。褒められたことを手放しに喜ばず、改善点が有ったと反省する姿勢は悪くない。駄目とは言わん。そうやって貪欲に高みを目指そうとする姿は、儂としても好ましいところではある。ただ、それはそれとして気になる点がふたつ有る。
「……新必殺技?」
「あ、あぁ。シュガードープ・リダクションって言うんだけどよ。普段よりもずっと、パワーを上げれるんだ」
「ほぅ?」
なるほど。普段よりもずっと力を出せる必殺技、か。砂藤の個性は、緑谷程に強力なものではない。いや、あの個性は常軌を逸しているから比べても仕方ないんじゃけども。……まぁ、とにかくじゃ。更なる必殺技を編み出したこと自体は、良いことじゃ。これも内容によっては褒めてやらんでもない。今度、こやつと手合わせでもしてみようか? 思えば最近、くらすめぇと達の成長を直に見てない気がする。日本に戻ったら春までに鍛えてやるつもりじゃし、その際にお披露目してもらうとしようかのぅ。
「でも扱いが、結構難しくってな。どうしても、まだ連携前提で……」
「しばらく頭が働いておらんかったのは、そのせいか?」
「……おぅ。面目ねぇ……」
……。……まぁ、言いたいことは色々あるが今は良しとしてやろう。結果的に、その新必殺技とやらを使う判断は間違ってなかったんじゃろうし。それから。
「……」
「廻道?」
「……いや、別に……」
……それから。まぁ、何と言うか。これは言わんでおくとしよう。口にしてしまったら、それはもう横柄を通り越して横暴な気がする。じゃから言わんでおく。ただ、……少し。そう、少しだけ。少しだけ不満に思ってしまったので、常闇達を睨んでおく。ちっ、人がせっかく褒めてやったと言うのに……!
「んふふ。拗ねちゃってカァイイのです♡」
「ん……っ、こら被身子。人前でそういう事は……!」
「まぁまぁ。今更ですよぉ」
それはそうじゃけど。じゃからって急に耳に
「……話を戻して良いか?」
横目で被身子を睨んでいると、ながんが呆れた。何故か儂を睨んでいる。解せぬ。
「はぁい。これからどうするか、ですよね?」
「そうだ。今後の指針は決めた方が良い」
今後の指針、か。確かにそれは決めておくべきじゃ。と、言っても決めれる事はそう多くない気がするのぅ。じゃってほら、この地下から外に出れば
……ただ。やはり少し、申し訳無い気にもなる。常闇達は
……あぁ……、まぁ……無くは無い。
無くは無い、けども。それは気乗りせん。とは言え、いずれ教えて行くことになる。特に常闇に限っては、今後補助監督として頼りにしていくつもりじゃからの。
「そうは言っても、今は潜伏を続けるしかないのでは?」
「外に出ても、追われるだけだしね」
「ヒューマライズの件で俺等にやれる事は、もう無い……よな?」
……うぅむ……。まぁ、確かに
そう。呪霊退治じゃの。儂の補助監督として、学べることは有る。が、どうにも気乗りしない。この国に追われてる身なのに、わざわざこの国の呪霊を祓ってやる理由は無いように思える。そもそも補助監督の仕事についてあれこれ学ぶことが、
……。……躊躇っている場合ではない、か。
「……むぅ……」
我ながら、随分と女々しくなったと思う。たった一言を、中々口に出せんようになってしまった。少し前までならば、もう常闇達には何もさせないのが儂だったんじゃけどなぁ。
今ではもう少し、今ならばもう少しぐらい。そう思って、別の考えが頭をよぎる。それが正しい事とは思えん。明らかに間違ってると、かつての儂が叫んでいる。考えひとつを改めきるのに、どれだけ時間が掛かるのやら。
「ほら、そこはプルスウルトラですよぉ。ね?」
「……嫌いじゃその言葉。ろくでもない」
何が、
やはり、どうにも好きになれんな。
と言うか、被身子。然りげ無く太腿を撫でるな。腹を撫で回すな、耳を唇で食むな。せくはらじゃぞ、せくはら。何でお主はいつもそうなんじゃ、まったく。せめて人前では止さぬか、へんたい。
ふと。常闇達を見る。儂が何か言うのを、待ってるように見えなくもない。こやつ等もこやつ等で、仕方ない奴等じゃよなぁ。儂の苦労など微塵も考えとらんのでは? これでは、また色々と忙しくなりそうじゃ。そもそもあの翼男が暗号なぞ寄越さなければ、こんな事を考えなくても良かったんじゃけど??
……はぁ……。まぁこれは、いずれは通る道じゃ。今回はどうしても避けられんじゃろう。ならば、もう腹を括って踏み出すしかあるまい。少しでも周りを頼ると決めたのは、他ならぬ儂自身なんじゃから。
「……これは貴様等次第じゃが、この地下に居る呪霊を祓っても良い。補助監督として、同行するか?」
「……! 良いのか……っ?」
良くない。まっこと良くない。本来これは、儂一人でやる事じゃ。そこに他の誰かを、まして子供を手伝わせるなど、有ってはならん。やはりどうしても、真っ先にそう思ってしまう。ただ今後、そうも言ってられなくなる。始めるなら、いっその今の内から始めてしまった方が良いじゃろう。じゃから。
「……一人ずつ、対呪霊戦を経験させてやる。この地下は、丁度呪霊だらけじゃからの」
この地下で見掛けた呪霊は、結構な数が居る。どれも低級のように見えたから、儂が後ろで援護すれば問題無いじゃろう。怪我を負ったり、下手に呪われたりしないか不安ではあるが……。
「んふふ。じゃあ、トガが手伝います! 反転術式が有るので、何か有っても大丈夫ですよぉ」
……そうじゃったな。被身子が居れば、ある程度は大丈夫じゃろう。どういう訳か、こやつは反転術式を人に施せるからの。その回復効率がどの程度のものなのかは試しとらんけども、まったく使い物にならぬなんて事は無い……筈じゃ。多分。ただ被身子の呪力量はそう多くない筈じゃから、治せても精々一人か二人。怪我や呪いの濃さ次第じゃ、万全まで治せるのは一人が限界かもしれん。まぁ呪力量については、最悪儂に変身してもらえば解決するんじゃけども。
そうじゃなぁ。被身子の反転術式がどの程度のものなのか、ついでに試してみるとするか。場合によっては、もう少し頼りにしても良いかもしれん。もちろん、総監部には内緒じゃけどな。被身子まで呪術師として働かせようとするじゃろうし、そんな真似は絶対にさせん。念の為、常闇達にも口止めはしておくか。既に尾白とか砂藤が目を丸くして、被身子を見詰め始めとるし。人の許嫁をじろじろ見るんじゃない、まったく。
「尾白、砂藤。被身子が反転術式を使えることは他言無用で頼む。特に総監部の耳には入れたくないからの」
「それは良いけど。でも、何で渡我先輩が反転術式を? 呪力が無いと使えないんじゃ?」
「あ、理由を聞くのはNGです。そういうもんだと思ってください!」
「ぇ、ええ……?」
「とにかくNGなので! ヨリくん規定に反します!」
いや、何じゃその規定。急に指先でばってんを作ったと思ったら、訳の分からん理由で突っぱねおって。別に、お主が儂の過ちを隠そうとしなくても良いじゃろ。この件については、儂に非が有る。早く何とかしてやりたいが、その方法がどうしても分からん。今現状は、様子を見守るぐらいしか出来ん。それが、心苦しい。
「……出来れば聞かないでやってくれ。俺は知ってるが、大丈夫だ」
「ソウダゼ! 秘密ダカンナ!!」
……おい。何じゃもぅ。常闇まで隠そうとしおって。だぁくしゃどうは儂の膝上に飛び込んで来るし。
「……分かった。深くは聞かないでおく。でも、俺達に出来ることが有ったらちゃんと言ってくれよ? 一人で抱え込むのは、良くないからよ」
「うん、そうだね。何が出来るか分からないけど、出来る限り力になるから」
……はぁ……。
まぁ、それでじゃ。地下に隠れていなければならんが、じゃからって何も出来ないわけじゃない。地下に巣食う呪霊退治ぐらいは出来る。とは言え、これをやれば多少なりとも警察や
ながんに目を向けると、顰めっ面をしとる。まぁ、そうじゃよな。儂の提案は、受け入れられるものじゃない。
「言っておくが、私達は追われる身だ。その気になってるところ悪いが、今の状況で呪霊退治をする余裕は無い。下手に動けば、ここが見付かる可能性がある」
じゃよなぁ。提案したのは儂じゃけども、儂もながんの言葉には頷くしかない。可能なら今の内から始めておきたいが、別にこれは日本に帰ってからでも良い。じゃから、ながんが言ってることは正しい。実際、常闇達も反論せず耳を傾けとるし。被身子じゃって黙っとる。
「―――だから。もしやるなら、本当に短い時間だけだ。その時間は、イーサンやスターと相談した上で決める。反対されるようなら、何もしないで此処に隠れ続ける。
それで良いなら、私は反対しない」
「……良いのか?」
思ったより反応が悪くない。むしろ、ながんはこの話に肯定しているように見える。鋭い目付きで儂等全員を見ているが、否定的では無いのぅ。何と言うか、何だかんだで甘い奴じゃの。意外と子供には優しいと言うか、受け身と言うか。
「……ここでやれなくても、日本に帰ったらやるんだろ? 始めるなら早い方が良いのも事実だ。何せあんたには、時間が無い」
「……そうじゃな。まぁそういう訳で、この話はあやつ等次第じゃ。ひと休みしてから、皆で話をしに行こうかの」
「委細承知。そうする他無し」
「……そうだね」
「だな。取り敢えず、今の内にひと休みしよーぜ」
こうして。これからどうするかの話し合いは、結構直ぐに纏まった。呪霊退治が出来るようになるかは分からんが、一応やれる前提で考えておくかの。今日は、と言うか今日も色々有ったから、儂も少し休んでおきたい。それと休みながら、被身子を甘やかしてやらんと。
じゃから。
「……上に行かんか? 少し、二人きりになろう」
妙に柔らかな床から立ち上がりつつ、被身子の手を取ってみる。そしたら被身子は直ぐに顔を輝かせて。
「はいっ! イチャイチャしましょう!」
と、諸手を上げて飛び跳ねた。そんな姿が可愛らしくて微笑ましくて、思わず気が抜けた。あぁもう、こやつには敵わんなぁ……。
三人称による補完は要りますか?
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欲しい
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要らん
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良いから一人称で突っ走れ