待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!!   作:一人称苦手ぞ。

52 / 553
雄英体育祭。円花の作戦

 

 

 

 

 

「さーて第二種目は!! コレよ!!!!」

 

 障害物競走を終えて一息吐いていると、次の種目が発表された。どうやら、騎馬戦らしい。騎馬戦? 確か小学校の頃にやったような……。ああ、馬役と騎手役で鉢巻を奪い合うあれか。ってことは、さっきよりは退屈しないで良さそうじゃな。個人競技だと儂が勝つからつまらん。しかしこの騎馬戦は儂一人では勝てんからのぅ。

 ならば、誰と組むか。取り敢えず常闇を誘うとしよう。あの鳥頭は掴みやすい。だあくしゃどうも居るから、実質二人居るようなもんじゃしな。後の二人は……誰が良いかのぅ。舎弟にするか? いや、足を爆破されそうじゃ。そうじゃ、上鳴と青山にしよう。もしくは八百万じゃな。こやつらの個性は、だあくしゃどうの弱点となる。じゃから、味方にすることで弱点を気にしないで良いようにしておきたい。

 

「―――そして、一位に与えられるポイントは1000万!!!」

 

 ん? 何の話じゃ? おい貴様等。何でどいつもこいつも儂を見るんじゃ。考え込んでいたら、また主審の話を聞いていなかった。まぁ障害物競走では聞いてなくとも一位じゃったし、何とかなるじゃろうて。

 

「上位の奴ほど狙われちゃう、下克上サバイバルよ!!!」

 

 ほう。つまり一千万点持ってる儂が狙われ易いと。それはそれは、楽しみじゃなぁ……っ!

 良いぞ、狙ってこい貴様等。どいつもこいつも返り討ちにしてくれる。さっきまでつまらなかったのに、突然楽しそうな感じになって来たのぅ! 少しわくわくしてきたぞっ。

 

「よぅし常闇、儂と組もう! 組めっ!」

 

 まずはこやつじゃ。こやつが欲しいっ。じゃから今の内から儂の物と宣伝しておこう。真っ先に声を掛け、ついでに腕に抱き付けば十分じゃろう。こやつの扱い方は儂が一番知っているし、こやつだって儂の扱い方を一番知ってるからの! 組めれば勝てるな!!

 

「……りょ、了解した。廻道、何か策は?」

「うむ、とっておきのがあるぞっ。がははは!!」

「だっ、抱き付かないでくれ。渡我先輩が、渡我先輩が……っ!」

 

 よし、常闇は確保した。次は上鳴と青山じゃな。どちらかが駄目なら八百万を取って、最悪舎弟を取る。あやつは嫌がるじゃろうが、何せ儂には絶対服従の身じゃ。父が観客席に居ることを教えればまず断らん。と言うか断れん。こんな形で利用するのは気が引けるが、一位になる為じゃ。

 それはそうと峰田、常闇を血走った眼で睨むのは止せ。何故血涙を流しておるんじゃ貴様は。滲み出てるそれはやはり呪力か? いや、違うか……。まぁ良い、こやつは放っておくとして。

 

「上鳴、青山、組もう!」

「えっ、俺っ!? 俺で良いの!?」

「うむ、貴様が要る。むしろ貴様しかおらん。青山、貴様もじゃ!」

「……」

「ん? 青山?」

「悪い、青山は俺と組むんだ」

 

 ぐぬぬ。誰とも知らん紫頭に取られていた。さてはこやつ、だあくしゃどうの弱点に気付いているのか? 仕方がない、早い者勝ちじゃ早い者勝ち。青山が駄目であれば……次は八百万じゃな。ここは取っておきたい。色々便利じゃし、だあくしゃどうの天敵になるかもしれんからな。

 

「八百万! 儂と組もう!」

「……廻道さんっ! ……いえ、せっかくのお誘いですけど……お断りさせて頂きます」

「……うむ、そうか……」

 

 ……残念じゃ。こやつがだあくしゃどうの弱点に気付いていないことを願う。気付かれていたら儂の策が駄目になってしまうからの。しかし、上手く人が集まらんの。あと一人なんじゃけどなぁ。

 青山は取られた、八百万には断られた。ならば舎弟か? 舎弟なのか? いや、何かくらすめえとに囲まれているな。仕方ない、放っておくとしよう。

 ううむ。あと一人、あと一人か……。青山や八百万に断られるとは思っておらんかったからの。舎弟は誘えそうにないし、困った。

 

「ふふふふっ。お困りのようでしたら私はどうでしょうっ!? このドッ可愛いベイビーが貴女の役に」

「嫌じゃ!!」

「それは残念です! ではまた!!」

 

 危ないところじゃった。発目と組んだりしたら、後で被身子が嫉妬するからな。頼むからそのまま去ってくれ発目。出来ればあまり儂の側に近寄らんでくれ。被身子が大変なんじゃ、そして儂はもっと大変なんじゃっ!

 

「廻道、最後の一人ってどうすんだ?」

「ううむ、それなんじゃがなぁ。誰が良いと思う?」

「いや、それは分かんねーけど……」

「騎馬を三人にするなら急いだ方が良い。もう残ってる面子は少ない」

 

 ……確かにそうじゃ。常闇の言う通り、大体の人数が組む相手を見付けている。残った者の中から選ぶとなると……正直どうすれば良いか分からん。

 

 ん? 待て。騎馬を三人にするなら?

 

「常闇、騎馬は三人じゃないのか?」

「……」

「おい、呆れるな。聞いてなかったんじゃよ」

「騎馬なら一人から三人で良いんだって。どうする? 俺ら三人でやる?」

 

 ふむ。騎馬が二人でも、問題無いと言えば問題無い。儂が考えた策に人数は要らん。上鳴を確保したのは、そうした方がだあくしゃどうが動き易いやからじゃ。青山や八百万とは組めなかったし、もう騎馬は二人でも良いか? いや……もう一人、出来れば力持ちな個性が欲しい気がするの。その点で言えば、砂藤がちょうど良い。緑谷でも良いが、あやつは個性の制御がまだ出来ておらん。となると砂藤にしたいところじゃが……。

 

 ふむ。駄目じゃの。もう残っておる奴がおらん感じじゃな。常闇と上鳴の確保を優先した結果、この始末か。誰か一人、あと一人。居なくても良いが……。

 

 お? 一人困っている奴が居るのぅ。なら、お主を選んでやろう。考えてみたらこやつを選ばないのは勿体無い。何で誰も欲しがらなかったんじゃ?

 まぁ良い。誰かに取られる前に、確保しておくとしよう。

 

「まだ組む相手が決まっとらんなら、儂とどうじゃ?」

「……私で良いのかしら?」

「うむ、お主が良いの。儂の作戦に必要じゃ」

「ケロケロ。そう言うことなら是非」

 

 ……よし。騎馬は三人揃った。ではこれから、儂が思い付いた作戦を教えておこう。最後の最後で梅雨を取れたのは大きかったな。こやつはいざと言う時の保険となる。

 

 うむ。障害物競走は退屈じゃったが、騎馬戦は楽しくなりそうじゃ。楽しくなってくれよ、頼むからっ!

 

 

 

 

 

 

 

 

『3……2……1……! START!!』

 

 

 騎馬戦が始まった。と、同時に儂は騎馬の三人に伝えた作戦を決行する。上手く行けば、大変楽しく遊べる筈じゃ。いや、遊ぶは失礼じゃの。楽しく戦える筈じゃ。何せこの作戦、そして騎馬戦自体は儂だけでは勝ち残れんからのぅ。

 

「頼むぞ! 常闇、だあくしゃどう!」

「アイヨッ! 任セトケッッ!!」

「梅雨、もしもの時は頼む!」

「ケロッ! 任せて!」

 

 儂の作戦はこうじゃ。まず、だあくしゃどうの背に飛び乗る。そして空高くまで運んで貰う。個性で飛んでるんじゃから、騎馬戦での決まり事には背かない筈じゃ。で、十分な高さまで飛んで貰ったら更に上へと自分の足で跳ぶ。

 高さは稼いだ。次にやる事はふたつ。ひとつは地上に向かって、とにかく血液を撒き散らす。なるべく広範囲に、雨でも降らせるかのように。あまり大量の血液を飛ばしては失血で動けなくなってしまうから、程々に。血液の回復は反転術式(はんてん)で即座に行えるが、術式を順転しながら反転術式(はんてん)を回し続けるのは流石に出来ぬからな。そこまでの操作精度は無い。そんな真似が出来るのは、恐らく六眼持ちぐらいじゃろうて。

 

 もうひとつの目的は、この戦場の俯瞰じゃ。誰が誰と組んでいるか、どのような動きをして居るか。僅かな時間しか無いが、これから戦う敵の事はなるべく把握しておきたい。警戒すべきはまず爆豪。芦戸と頼呂と切島と組んでおるのか。頼呂は少し厄介じゃの。轟は……飯田と八百万か。少ない人数で挑む代わりに、他の騎馬にはない機動力を持っておる。更には八百万の汎用性。頼むから、光を出す道具を創るんじゃないぞ。

 

「おまっ、それ有りかぁ!!?」

「テクニカルだからオーケー! 地面に落ちたらアウトだけど!!」

「オーケーなのっ!?」

「うわ、血っ!? 血の雨っっ!?」

 

 よしよし。主審からの許可が出たな。であればもう、決まり事など気にせずに自由に動こう。要は地面に落ちなければ何をしても良いんじゃろ?

 

 ならば、後は蹂躙するのみじゃ。

 

「点寄越せやクソチビィ!!!」

 

 お、舎弟。良いところに飛んできた。貴様、頭に儂の血が付いておるの? 鉢巻にも付いてるな。まぁ、付いてなければ困るんじゃけど。それが狙いじゃし。

 

「学べ小僧。儂の前で不用意に飛ぶと足場じゃぞ?」

「だっ、てめっ、また踏み台にしてんじゃねぇええっっ!!」

 

 いや、知らんて。儂に向かって飛んできた貴様が悪いんじゃ。

 障害物競走の時のように舎弟を足場にした儂は、もう一度上へと跳ぶ。うむ、もう一度血を撒き散らしておこう。駄目押しじゃ。

 

「だあくしゃどう!」

「任セロ!!」

 

 落下しつつ、足場となるだあくしゃどうを呼んでおく。無事に着地出来れば良いが、着地の瞬間を狙ってくる奴は必ず居るじゃろうなぁ。現に、儂の落下先に向かって飛んで来た奴等がおる。緑谷達じゃ。どうやってこんな高さまで飛んだ? ああ、発目と組んでおるし麗日も居るのか。なら飛べて当然じゃろう。

 

「廻道さんっ、ごめん!」

 

 いや、謝る必要が何処に有るんじゃ貴様。甘い奴じゃな。嫌いでは無いが、勝負にはもう少し非情になれ。じゃから儂は貴様が伸ばした右手を避けて、貴様の鉢巻を貰うぞ。ほれっ。

 

「えっ!? 取られ……っ!? 空中じゃ身動き取れないのにっ!?」

 

 いや、取れるぞ。少しだけならな。儂の服に付いた血を操り、少し落下の軌道を変えて貴様の右手を避けただけじゃ。そのついでに、鉢巻も貰ったがの。

 何度でも挑んでくるが良いぞ緑谷。もっと楽しませてくれたなら文句無しじゃ。おっといかん、だあくしゃどうの背中に着地せねば。よし、無事着地。

 

「よし、だあくしゃどう。一度戻るぞ」

「シッカリ掴マッテロヨ!」

「おうとも。頼んだ」

 

 個性とは言え、便利な式神じゃ。自由自在に動く上に、お喋りまで出来る。十種影法術の式神もこんな感じなんじゃろうか? だとしたら少々喧しいかもしれんの。

 

 さて。無事騎馬の下に戻ったところで、次の一手を打つ事にしよう。どいつもこいつも儂等に向かってくるからの。まだまだ休憩するような時間は無い。一息吐くのは、次が上手く行った後じゃ。

 血の雨を避けた奴は……轟じゃろうな。大きな傘が捨ててあるからの。八百万に創って貰ったんじゃろうな。となるとあやつ等に血液の付着は無しか。他の連中には付いているようだから、ひとまずそちらから済ませるとしよう。

 

「梅雨、ちゃんと取れよ」

「任せて。見逃さないわ」

「常闇、だあくしゃどう、上鳴。この後、気を抜くな。いきなり辛くなるぞ」

「了解」

「アイヨッ」

「えっ、辛くなんの??」

 

 残念ながら騎馬にとって大変なのは、ここからじゃ。何故なら今から儂は、血の雨を避け損なった連中の鉢巻を全て奪う。梅雨の協力が必要じゃが、こやつなら上手くやって見せるじゃろう。儂が宙に居る間、儂の動きをしっかり見ていたからの。

 

「よし、行くぞ。取れよ梅雨」

 

 障害物競走の時にあった綱渡りの綱。あれを揺らしたのと同じ要領で、儂の血液が付着した全ての鉢巻を勢い良く上へと飛ばす。ついでに地面に付着した血もまとめて動かしておく。

 

 結果、どうなるか。足元は悪くなり、体勢を崩す連中が大勢。鉢巻は空中にて一塊になる。それを、間髪容れずに梅雨の舌が絡め取る。そして、儂の手元に大量の鉢巻が引き寄せられた。

 ……うむ、殆ど作戦通りじゃな。出来れば全員分の鉢巻を取ってしまいたかったんじゃけど、轟は対策しておったからの。やはり創造、侮れん。

 

「では常闇、だあくしゃどう、上鳴、梅雨。全力で逃げ回るが良い。時間まで、あと十三分ぐらいあるからの」

「あっ、辛くなるってそういう事!? マジ!?」

「さっさと逃げんか。全員血眼でこっちに来とるぞ」

「これは……っ」

「逃げ切れるかしら……」

 

 ううむ……。何を及び腰になってるんじゃこやつ等は。確かに周囲には、こちらに向かってくる連中ばっかりじゃ。逃げ道は少ないと言って良い。しかし、この程度の状況で諦めるのは違うじゃろ。仕方ない。少し励ましてやるか。

 

「大丈夫じゃ。さっき一位じゃった儂が居るんじゃぞ? 儂を信じて突き進め。儂もお主達を信じて突き進むからのっ」

 

 最悪、他の騎馬を踏み台にして跳び回ると考えては居るが、それは最終手段のひとつじゃ。騎馬戦は個人競技ではなく、団体競技。儂一人が好き勝手に動き回っても良いが、それではつまらんからの。

 

 ここはひとつ、皆で協力して一位になるのも面白いじゃろうて。

 

 

「このまま勝つぞ! 気を抜くなよ貴様等!」

 

 

 

 

 

 









円花無双part2でした。円花に抱き付かれた常闇くんの明日はどっちだ。
騎馬戦の決着までは、次回冒頭でダイジェストにする予定です。細かく書くともう一話使っちゃいそうですし、サクサク進めたいので。

三人称による補完は要りますか?

  • 欲しい
  • 要らん
  • 良いから一人称で突っ走れ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。