待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
「さーて第二種目は!! コレよ!!!!」
障害物競走を終えて一息吐いていると、次の種目が発表された。どうやら、騎馬戦らしい。騎馬戦? 確か小学校の頃にやったような……。ああ、馬役と騎手役で鉢巻を奪い合うあれか。ってことは、さっきよりは退屈しないで良さそうじゃな。個人競技だと儂が勝つからつまらん。しかしこの騎馬戦は儂一人では勝てんからのぅ。
ならば、誰と組むか。取り敢えず常闇を誘うとしよう。あの鳥頭は掴みやすい。だあくしゃどうも居るから、実質二人居るようなもんじゃしな。後の二人は……誰が良いかのぅ。舎弟にするか? いや、足を爆破されそうじゃ。そうじゃ、上鳴と青山にしよう。もしくは八百万じゃな。こやつらの個性は、だあくしゃどうの弱点となる。じゃから、味方にすることで弱点を気にしないで良いようにしておきたい。
「―――そして、一位に与えられるポイントは1000万!!!」
ん? 何の話じゃ? おい貴様等。何でどいつもこいつも儂を見るんじゃ。考え込んでいたら、また主審の話を聞いていなかった。まぁ障害物競走では聞いてなくとも一位じゃったし、何とかなるじゃろうて。
「上位の奴ほど狙われちゃう、下克上サバイバルよ!!!」
ほう。つまり一千万点持ってる儂が狙われ易いと。それはそれは、楽しみじゃなぁ……っ!
良いぞ、狙ってこい貴様等。どいつもこいつも返り討ちにしてくれる。さっきまでつまらなかったのに、突然楽しそうな感じになって来たのぅ! 少しわくわくしてきたぞっ。
「よぅし常闇、儂と組もう! 組めっ!」
まずはこやつじゃ。こやつが欲しいっ。じゃから今の内から儂の物と宣伝しておこう。真っ先に声を掛け、ついでに腕に抱き付けば十分じゃろう。こやつの扱い方は儂が一番知っているし、こやつだって儂の扱い方を一番知ってるからの! 組めれば勝てるな!!
「……りょ、了解した。廻道、何か策は?」
「うむ、とっておきのがあるぞっ。がははは!!」
「だっ、抱き付かないでくれ。渡我先輩が、渡我先輩が……っ!」
よし、常闇は確保した。次は上鳴と青山じゃな。どちらかが駄目なら八百万を取って、最悪舎弟を取る。あやつは嫌がるじゃろうが、何せ儂には絶対服従の身じゃ。父が観客席に居ることを教えればまず断らん。と言うか断れん。こんな形で利用するのは気が引けるが、一位になる為じゃ。
それはそうと峰田、常闇を血走った眼で睨むのは止せ。何故血涙を流しておるんじゃ貴様は。滲み出てるそれはやはり呪力か? いや、違うか……。まぁ良い、こやつは放っておくとして。
「上鳴、青山、組もう!」
「えっ、俺っ!? 俺で良いの!?」
「うむ、貴様が要る。むしろ貴様しかおらん。青山、貴様もじゃ!」
「……」
「ん? 青山?」
「悪い、青山は俺と組むんだ」
ぐぬぬ。誰とも知らん紫頭に取られていた。さてはこやつ、だあくしゃどうの弱点に気付いているのか? 仕方がない、早い者勝ちじゃ早い者勝ち。青山が駄目であれば……次は八百万じゃな。ここは取っておきたい。色々便利じゃし、だあくしゃどうの天敵になるかもしれんからな。
「八百万! 儂と組もう!」
「……廻道さんっ! ……いえ、せっかくのお誘いですけど……お断りさせて頂きます」
「……うむ、そうか……」
……残念じゃ。こやつがだあくしゃどうの弱点に気付いていないことを願う。気付かれていたら儂の策が駄目になってしまうからの。しかし、上手く人が集まらんの。あと一人なんじゃけどなぁ。
青山は取られた、八百万には断られた。ならば舎弟か? 舎弟なのか? いや、何かくらすめえとに囲まれているな。仕方ない、放っておくとしよう。
ううむ。あと一人、あと一人か……。青山や八百万に断られるとは思っておらんかったからの。舎弟は誘えそうにないし、困った。
「ふふふふっ。お困りのようでしたら私はどうでしょうっ!? このドッ可愛いベイビーが貴女の役に」
「嫌じゃ!!」
「それは残念です! ではまた!!」
危ないところじゃった。発目と組んだりしたら、後で被身子が嫉妬するからな。頼むからそのまま去ってくれ発目。出来ればあまり儂の側に近寄らんでくれ。被身子が大変なんじゃ、そして儂はもっと大変なんじゃっ!
「廻道、最後の一人ってどうすんだ?」
「ううむ、それなんじゃがなぁ。誰が良いと思う?」
「いや、それは分かんねーけど……」
「騎馬を三人にするなら急いだ方が良い。もう残ってる面子は少ない」
……確かにそうじゃ。常闇の言う通り、大体の人数が組む相手を見付けている。残った者の中から選ぶとなると……正直どうすれば良いか分からん。
ん? 待て。騎馬を三人にするなら?
「常闇、騎馬は三人じゃないのか?」
「……」
「おい、呆れるな。聞いてなかったんじゃよ」
「騎馬なら一人から三人で良いんだって。どうする? 俺ら三人でやる?」
ふむ。騎馬が二人でも、問題無いと言えば問題無い。儂が考えた策に人数は要らん。上鳴を確保したのは、そうした方がだあくしゃどうが動き易いやからじゃ。青山や八百万とは組めなかったし、もう騎馬は二人でも良いか? いや……もう一人、出来れば力持ちな個性が欲しい気がするの。その点で言えば、砂藤がちょうど良い。緑谷でも良いが、あやつは個性の制御がまだ出来ておらん。となると砂藤にしたいところじゃが……。
ふむ。駄目じゃの。もう残っておる奴がおらん感じじゃな。常闇と上鳴の確保を優先した結果、この始末か。誰か一人、あと一人。居なくても良いが……。
お? 一人困っている奴が居るのぅ。なら、お主を選んでやろう。考えてみたらこやつを選ばないのは勿体無い。何で誰も欲しがらなかったんじゃ?
まぁ良い。誰かに取られる前に、確保しておくとしよう。
「まだ組む相手が決まっとらんなら、儂とどうじゃ?」
「……私で良いのかしら?」
「うむ、お主が良いの。儂の作戦に必要じゃ」
「ケロケロ。そう言うことなら是非」
……よし。騎馬は三人揃った。ではこれから、儂が思い付いた作戦を教えておこう。最後の最後で梅雨を取れたのは大きかったな。こやつはいざと言う時の保険となる。
うむ。障害物競走は退屈じゃったが、騎馬戦は楽しくなりそうじゃ。楽しくなってくれよ、頼むからっ!
◆
『3……2……1……! START!!』
騎馬戦が始まった。と、同時に儂は騎馬の三人に伝えた作戦を決行する。上手く行けば、大変楽しく遊べる筈じゃ。いや、遊ぶは失礼じゃの。楽しく戦える筈じゃ。何せこの作戦、そして騎馬戦自体は儂だけでは勝ち残れんからのぅ。
「頼むぞ! 常闇、だあくしゃどう!」
「アイヨッ! 任セトケッッ!!」
「梅雨、もしもの時は頼む!」
「ケロッ! 任せて!」
儂の作戦はこうじゃ。まず、だあくしゃどうの背に飛び乗る。そして空高くまで運んで貰う。個性で飛んでるんじゃから、騎馬戦での決まり事には背かない筈じゃ。で、十分な高さまで飛んで貰ったら更に上へと自分の足で跳ぶ。
高さは稼いだ。次にやる事はふたつ。ひとつは地上に向かって、とにかく血液を撒き散らす。なるべく広範囲に、雨でも降らせるかのように。あまり大量の血液を飛ばしては失血で動けなくなってしまうから、程々に。血液の回復は
もうひとつの目的は、この戦場の俯瞰じゃ。誰が誰と組んでいるか、どのような動きをして居るか。僅かな時間しか無いが、これから戦う敵の事はなるべく把握しておきたい。警戒すべきはまず爆豪。芦戸と頼呂と切島と組んでおるのか。頼呂は少し厄介じゃの。轟は……飯田と八百万か。少ない人数で挑む代わりに、他の騎馬にはない機動力を持っておる。更には八百万の汎用性。頼むから、光を出す道具を創るんじゃないぞ。
「おまっ、それ有りかぁ!!?」
「テクニカルだからオーケー! 地面に落ちたらアウトだけど!!」
「オーケーなのっ!?」
「うわ、血っ!? 血の雨っっ!?」
よしよし。主審からの許可が出たな。であればもう、決まり事など気にせずに自由に動こう。要は地面に落ちなければ何をしても良いんじゃろ?
ならば、後は蹂躙するのみじゃ。
「点寄越せやクソチビィ!!!」
お、舎弟。良いところに飛んできた。貴様、頭に儂の血が付いておるの? 鉢巻にも付いてるな。まぁ、付いてなければ困るんじゃけど。それが狙いじゃし。
「学べ小僧。儂の前で不用意に飛ぶと足場じゃぞ?」
「だっ、てめっ、また踏み台にしてんじゃねぇええっっ!!」
いや、知らんて。儂に向かって飛んできた貴様が悪いんじゃ。
障害物競走の時のように舎弟を足場にした儂は、もう一度上へと跳ぶ。うむ、もう一度血を撒き散らしておこう。駄目押しじゃ。
「だあくしゃどう!」
「任セロ!!」
落下しつつ、足場となるだあくしゃどうを呼んでおく。無事に着地出来れば良いが、着地の瞬間を狙ってくる奴は必ず居るじゃろうなぁ。現に、儂の落下先に向かって飛んで来た奴等がおる。緑谷達じゃ。どうやってこんな高さまで飛んだ? ああ、発目と組んでおるし麗日も居るのか。なら飛べて当然じゃろう。
「廻道さんっ、ごめん!」
いや、謝る必要が何処に有るんじゃ貴様。甘い奴じゃな。嫌いでは無いが、勝負にはもう少し非情になれ。じゃから儂は貴様が伸ばした右手を避けて、貴様の鉢巻を貰うぞ。ほれっ。
「えっ!? 取られ……っ!? 空中じゃ身動き取れないのにっ!?」
いや、取れるぞ。少しだけならな。儂の服に付いた血を操り、少し落下の軌道を変えて貴様の右手を避けただけじゃ。そのついでに、鉢巻も貰ったがの。
何度でも挑んでくるが良いぞ緑谷。もっと楽しませてくれたなら文句無しじゃ。おっといかん、だあくしゃどうの背中に着地せねば。よし、無事着地。
「よし、だあくしゃどう。一度戻るぞ」
「シッカリ掴マッテロヨ!」
「おうとも。頼んだ」
個性とは言え、便利な式神じゃ。自由自在に動く上に、お喋りまで出来る。十種影法術の式神もこんな感じなんじゃろうか? だとしたら少々喧しいかもしれんの。
さて。無事騎馬の下に戻ったところで、次の一手を打つ事にしよう。どいつもこいつも儂等に向かってくるからの。まだまだ休憩するような時間は無い。一息吐くのは、次が上手く行った後じゃ。
血の雨を避けた奴は……轟じゃろうな。大きな傘が捨ててあるからの。八百万に創って貰ったんじゃろうな。となるとあやつ等に血液の付着は無しか。他の連中には付いているようだから、ひとまずそちらから済ませるとしよう。
「梅雨、ちゃんと取れよ」
「任せて。見逃さないわ」
「常闇、だあくしゃどう、上鳴。この後、気を抜くな。いきなり辛くなるぞ」
「了解」
「アイヨッ」
「えっ、辛くなんの??」
残念ながら騎馬にとって大変なのは、ここからじゃ。何故なら今から儂は、血の雨を避け損なった連中の鉢巻を全て奪う。梅雨の協力が必要じゃが、こやつなら上手くやって見せるじゃろう。儂が宙に居る間、儂の動きをしっかり見ていたからの。
「よし、行くぞ。取れよ梅雨」
障害物競走の時にあった綱渡りの綱。あれを揺らしたのと同じ要領で、儂の血液が付着した全ての鉢巻を勢い良く上へと飛ばす。ついでに地面に付着した血もまとめて動かしておく。
結果、どうなるか。足元は悪くなり、体勢を崩す連中が大勢。鉢巻は空中にて一塊になる。それを、間髪容れずに梅雨の舌が絡め取る。そして、儂の手元に大量の鉢巻が引き寄せられた。
……うむ、殆ど作戦通りじゃな。出来れば全員分の鉢巻を取ってしまいたかったんじゃけど、轟は対策しておったからの。やはり創造、侮れん。
「では常闇、だあくしゃどう、上鳴、梅雨。全力で逃げ回るが良い。時間まで、あと十三分ぐらいあるからの」
「あっ、辛くなるってそういう事!? マジ!?」
「さっさと逃げんか。全員血眼でこっちに来とるぞ」
「これは……っ」
「逃げ切れるかしら……」
ううむ……。何を及び腰になってるんじゃこやつ等は。確かに周囲には、こちらに向かってくる連中ばっかりじゃ。逃げ道は少ないと言って良い。しかし、この程度の状況で諦めるのは違うじゃろ。仕方ない。少し励ましてやるか。
「大丈夫じゃ。さっき一位じゃった儂が居るんじゃぞ? 儂を信じて突き進め。儂もお主達を信じて突き進むからのっ」
最悪、他の騎馬を踏み台にして跳び回ると考えては居るが、それは最終手段のひとつじゃ。騎馬戦は個人競技ではなく、団体競技。儂一人が好き勝手に動き回っても良いが、それではつまらんからの。
ここはひとつ、皆で協力して一位になるのも面白いじゃろうて。
「このまま勝つぞ! 気を抜くなよ貴様等!」
円花無双part2でした。円花に抱き付かれた常闇くんの明日はどっちだ。
騎馬戦の決着までは、次回冒頭でダイジェストにする予定です。細かく書くともう一話使っちゃいそうですし、サクサク進めたいので。
三人称による補完は要りますか?
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欲しい
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要らん
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良いから一人称で突っ走れ