待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!!   作:一人称苦手ぞ。

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米国逃避行。蜥蜴の呪霊・探索

 

 

 

 

 

「今日は、可能なら蜥蜴呪霊を祓い尽くす。……良いな?」

 

 翌日。地下室生活、三日目。今日は朝からすたぁが顔を出したので、早速呪霊退治に赴くとする。地上は今、通勤時間故に騒々しいらしくての。下水道を探索するにはちょうど良いそうじゃ。ならば、行かぬ理由が無い。今朝は砂藤に脇差を持たせて、儂はまた被身子やすたぁも連れて下水道に出た。念の為に、被身子とは手を繋ぎっぱなしじゃけどな。念の為じゃ念の為。別に決して、昨夜から甘え続けてるわけではない。ただ少し、離れ難いなぁと思っとるだけで。

 

 っておい、被身子。何じゃその顔は。何がそんなに楽しいんじゃ。後でどういう訳か詳しく聞かせて貰うからな。場合によっては、説教じゃ説教。

 

 おほん。まぁ、とにかく。

 

 今は、儂と被身子が先頭を歩いている。目的は、蜥蜴呪霊共を探す為じゃ。昨日は地下室を出れば直ぐにでも見付かったのに、今では姿がまるで見当たらん。あれだけの数が居たくせに、今では一匹も見当たらんと来た。どうなっとるんじゃ、まったく。これでは砂藤に呪霊退治を経験させてやれぬ。どうせ逃げるなら、何十匹か殿を残しておけ。そうしたら、親玉を祓えなかったとしても砂藤が経験を積めるじゃろうが。

 

「山程居るって聞いてたけど、……見当たらねーな……?」

「昨日とはまるで違う感じだ。……逃げられたか?」

「うーん……。まぁ円花ちゃんを怖がって、逃げちゃいましたかねぇ。でも呪霊って、基本的に産まれた場所に留まるんですよ。

 だから、上手く隠れてるんじゃないですか?」

「んんむ、面倒この上ない……」

 

 呪霊を祓いに来たのに、呪霊の姿が見当たらない。それはまぁ、起こり得る話でもある。が、今回はそれでは困る。砂藤に経験を積ませる目的も有るんじゃけども、何より長引かせたくない。出来ることならさっさと祓って、あと数日は黙って潜伏して居たいからの。

 じゃから僅かな時間じゃろうと、何が何でも蜥蜴呪霊を祓っておきたい。なのに、手掛かりらしい手掛かりが特に無い。一応、そこら中に残穢は見えるんじゃけどな。これは蜥蜴呪霊共が残したものと見て、間違いないじゃろう。下水道の中には、他の呪霊なぞ見当たらんし。

 

 地下室を出てから、既に数分は無駄にしている。ひとまず奥へ奥へと進んでいるんじゃけども、まだまだ蜥蜴呪霊共は見当たらん。下水を挟んだ向こう側の通路にも目を配ったりしとるんじゃけども、やはり呪霊の姿は無い。こうなると、やはり何処かに隠れているんじゃろう。儂を恐れて身を潜めるのは生き残る上では間違ってない判断じゃけども、それでは困る。まぁ呪霊からすれば、儂の都合は関係ない。逆もまた然り、じゃ。

 

 手掛かりになりそうなものは、奥へ奥へと続いている残穢のみ。床や壁に、これでもかと残っている。細かな探知は苦手とするところじゃが、今回に限ってはそう苦戦することはなさそうじゃ。何せ、残穢そのものがあちらこちらに染み付いていると言っても良いぐらいに濃いからのぅ。この下水道が領域となってないことも、せめてもの救いか。そうなっていた場合、特級案件になってしまう。被身子や砂藤、そしてすたぁを連れている場合では無い。

 

 相も変わらず酷い臭いの下水道を、奥へ奥へと進んで行く。変わり映えしない景色と臭気で気が滅入りそうじゃが、それでも警戒は解かない。いつ呪霊が姿を見せるか分からんし。

 

 ……まぁ、段々と面倒になりつつも有るんじゃけどな。

 

「もう六分経つ。そろそろ戻らないと、リスクが生じる」

「……少しぐらい伸ばしてくれんか?」

「私もそうしたいけどな。これ以上のリスクは背負え―――、いや……待て。ブラッディ、あれは?」

 

 む。すたぁが何かに気付いた。指差した方向を見てみれば、何かが暗闇で蠢いている。目を凝らして見てみれば、そこに居たのは。

 

「……やけに大きいの」

「凄くおっきいですねぇ……」

「馬鹿デカいな……!?」

「HAHAHA! あれが親玉か?」

 

 やけに巨大な図体を持った、蜥蜴呪霊じゃった。下水道の天井(……とでも言えば良いか?)に、頭が届きそうな程の巨体じゃ。あれが親玉と見て、まず間違いないじゃろう。周囲に他の蜥蜴呪霊が見当たらんことが気になるが、まぁ良い。砂藤には悪いが、さっさと済ませ―――。

 

「あっ!」

「ちっ」

 

 ようとしたら。逃げ出しおったわ。儂等に背を向けて、一目散に下水道の奥へ奥へと駆けて行く。どうせ雑魚呪霊のくせに、警戒心だけは強いようじゃ。真正面から相対して、生き残る見込みが無いと踏んだんじゃろう。両手を叩き合わせて狙いを定めたが、下水の中に飛び込んで姿を消しおったわ。

 

「逃げられちまったな……」

「ですね。まぁ、やっぱり円花ちゃんが怖いみたいです」

「だとしたら、今日はここまでにしよう。そろそろ戻らないとマズい」

「……面倒じゃなぁ。すたぁ、やはり儂だけ残って良いか?」

「駄目ですっ。こんなところで迷子になられたら大変なので!」

「ぐえっ!? こら、被身子……っ!」

 

 出来ることなら、蜥蜴呪霊は今日で祓い尽くしたかった。じゃから、せめて儂だけでも残れぬかと聞いたんじゃが、それは被身子に猛反対されてしまった。そんなに思い切り抱き締めるんじゃない。息が詰まるじゃろ、まったく!

 

「……許可してやりたいが、今は駄目だな。あと三日は静かにしてくれると助かるよ、ブラッディ」

「ちっ。なら三日後じゃ。……戻るぞ」

 

 くそ。今日で祓ってしまうつもりじゃったのに、時間が足りなくて後回しになってしまった。被身子やすたぁの制止なぞ振り切って駆け出したいぐらいじゃが、未だ潜伏中の身であることを忘れてはならない。儂独りなら英雄(ひいろお)やら警察に見つかってしまっても良いんじゃが、今は被身子や常闇達が居るからの。子供達の安全が最優先で、そこは譲れん。呪霊は後回しにするしかない。

 

 それから。何故すたぁは三日後も待てと言うのか。これについては一応、後で聞いておくとしようかの。無論、理由によっては逆らうんじゃけども。

 

 ……とにかく。一度地下室に戻るとしよう。時間も人手も、どうにも足りぬなぁ。こればっかりは、やはり仕方のないことなんじゃけども。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 すたぁ曰く「三日後にここを出るから、それまでは大人しくしてること。飛行機に向かう際、少し纏まった時間が取れるからその時にジュレイを祓ってくれ」とのこと。その少し纏まった時間がどの程度なのか語りはしなかったが、少なくとも十五分なんて短い時間ではないんじゃろう。当日になったら、さっさと蜥蜴呪霊を見付け出して祓ってしまおう。少しばかり忙しくなりそうじゃが、地下室で退屈に過ごすよりはずっと良い。

 それと。結局砂藤だけに経験を積まさせてやることが出来なかったから、三日後は砂藤優先じゃの。まぁ此処を全員で出るついでに呪霊を祓うんじゃから、優先とは言えんか。日本に帰ったら、一度呪霊退治に連れ出してやろう。

 

 そんなこんなで。灌水浴(しゃわぁ)を被身子と済ませて、今は天幕(てんと)の中じゃ。儂は小屋根《ろふと》の縁に腰掛け、足を投げ出しつつも大人しくしている。何せ、被身子が儂の髪を好き勝手に弄っとるからの。気が済むまでは触らせてやるとする。

 

「……三日後に呪霊の親玉を退治するから、それまで待機? ええっと廻道さん、どうして?」

「知らん。儂に聞くな尾白」

 

 足を揺らしつつ呆けていると、下から尾白が儂を見上げていた。一階では常闇達が呪霊退治について意見交換しとるんじゃけども、途中で出て来た疑問に首を傾げておるわ。じゃからって、儂に聞かれても困る。すたぁが三日後と言ったんじゃから、三日後なんじゃろう。理由なぞ知らん。

 

「とにかく、事情有ってのことなのは確かだろう。今の俺達は深淵に潜む身分。無闇には動けん」

「それはそうじゃけどなぁ」

 

 まぁ、常闇の言うことは正しい。事実、今の儂等は潜伏中の身じゃ。下水道で派手に呪霊退治をする訳にはいかん。日本に帰れるその日までは、大人しく隠れて居なければ。でないと、地上の英雄(ひいろお)やら警察に見付かって面倒な事になってしまう。とは言え、……んんむ。

 

「三日後は、全員で此処を出る日でもある。最後に働けってことだろうな」

「儂としては、今祓いに行きたかったんじゃが」

 

 黙って筆記(めも)帳に何かを書き込んでは、何やら頭を悩ませていたながんが口を開いた。考えることに疲れたのか、考えていた事が一段落したのか。どちらでも良いが、何をそんなに書き込んでいたのやら。

 

「いや、それで廻道が迷子になったらやべーって。頼むから独りで出歩くのは止めてくれ。方向音痴なんだから」

「あ゛?」

 

 砂藤、貴様ぁ。誰が方向音痴、じゃって? それについては、ほぼほぼ克服済みみたいなものじゃろうが。今は被身子の居場所が何となく分かるようになったんじゃから、もはや儂は方向音痴ではない。ないったらない。まったく、いつまで儂を方向音痴扱いするつもりなんじゃ……!

 

「どぅどぅ。円花ちゃんはまだまだ方向音痴ですよぉ。多分ちょっとぐらいはマシになりましたけど!」

「被身子まで何じゃもぅ。儂はもう方向音痴ではないっ」

「いやぁ……。どう、だろうね……?」

「迷子の暴君」

「あんた、自分が本当にどうしようもない方向音痴なのをいい加減に自覚した方が良い」

「き、貴様等ぁ……っ!」

 

 何故全員から駄目出しされねばならぬのか。解せぬ。やはり解せぬ。こうなったら、いずれ儂が方向音痴でないことを証明せねばなるまい。後で覚えてろよ貴様等。謝ったって、絶対に許さんからな??

 

「……それはともかくとして。三日も有るんだ。この時間は少しでも有意義に使いたい。

 ツクヨミ、テイルマン、シュガーマン。私からひとつ課題を出そう」

 

 ……おい。何が、それはともかくてし……何じゃ? おいこら、ながん。今の言葉を、もう一度儂の目を見て言ってみろ。全員纏めて拳骨じゃぞ拳骨。

 

 まったく。どいつもこいつも……!

 

「どぅどぅ。かっかするより、私とイチャイチャしましょうよぉ」

「ん……っ、こら。せくはらするな……!」

 

 急に腹や太腿を撫でるんじゃない。どうしてお主はそうなんじゃ。儂にせくはらして、何がそんなに楽しいんじゃ。後で仕返しじゃからな、覚えてろ。被身子の阿呆、たわけっ。へんたい! お主がそんなじゃから、下の四人が儂等を呆れた目で見上げてるじゃろっ。

 

「……それで、筒美さん。俺達に課題とは?」

「日本に帰るまでに、あの子に勝てる作戦及びあの子から逃げ切る作戦を立てろ。想定は、市街地での正面戦闘とする」

 

 んっ、こらっ。こっそりと腰を撫でるんじゃない。下で訳の分からんことを話し始めたんじゃから、そちらを聞かせ―――。んんんっ、後ろに引き倒すな。耳を撫でるな、擽るなっ。変な声が出たらどうするつもりじゃ……!

 

「廻道さんに、正面戦闘で勝つ作戦……?」

「もしくは逃げ切る作戦って……。いや、どっちも無理じゃ……?」

 

 お、そうじゃな。儂と正面から戦って、勝つも逃げるも出来ると思うな。向かってくるなら叩き伏せるし、逃げるならとっ捕まえてくれる。まだまだ常闇達に負けてやるつもりはない。それにそろそろ、被身子にも勝ちたいところじゃ。いつもいつも儂を好き勝手するこやつを、次こそは負かしてやりたい。日本に帰ったら、今度こそ儂が勝つからな。今に見てろよ、ふんっ。

 

 ん、ぅ……。じゃから、耳を弄るな。倒れとるから辛うじて下の連中には見られてない筈じゃけど、じゃからってせくはらを続けるのは駄目じゃろ。儂がその気になったらどうするつもりじゃ……! 公序良俗を守れ、公序良俗を!

 

「詳しくは日本に帰ってから話すし、あの子からも改めて説明される。今のあんた達、……いや。

 ……これはA組全員に、必要な事だ」

 

 ……。……あぁ、なるほど。まぁ確かにそうじゃな。日本に帰ったら、儂が直々にくらすめぇと達を鍛え上げなければならん。場合によっては、……と言うか英雄(ひいろお)達にも呪霊や呪詛師対策をしろと周知しなければならん。あの燃え面の要請で、呪眼(のろいまなこ)も作り直しじゃしな。帰ったら色々と忙しい。

 そう考えると、今の内に日本に帰ってからのことを考えておいた方が良いな。三日後まで暇になんじゃから、ちょうど良いと言えばちょうど良いか。よし、早速何か考え―――。

 

「むーー……。私が先です!」

「んぐっ。わ、分かっとるって……!」

 

 いかんいかん。被身子を構い倒してやらねば大変じゃ。もう少しこやつとの時間を過ごしてから、あれこれ考えることにしよう。でないと、後でもっと大変じゃからの。

 それに、……まぁ。儂もそういう気分になりつつあるしの。さっきからこれでもかとせくはらして来るものじゃから、つい健全の範疇を越えて求め合いたくなってしまって。

 

 ……まぁ、日本に帰るまではお互いにお預けなんじゃけどな。朝まで愛し合うのは、二人きりの時にしなければ。

 

 で。この後。常闇達に叱られない程度に、儂と被身子は健全に求め合った。余計に物足りなくなって、早く日本に帰りたいと思ったのは内緒じゃ。内緒。

 

 

 

 

 

 

 

三人称による補完は要りますか?

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  • 要らん
  • 良いから一人称で突っ走れ
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