待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
たっぷり八時間ぐらいは、被身子と求め合っていたわけじゃ。じゃって断れないんじゃもん。あんな物欲しそうな目で求められたら、応えたくなってしまうんじゃから。もういっそのこと、日本に到着するまで求め合っても良いんじゃないかと思ったが……流石に疲れ切ってしまっての。腹も空いたから一度食事にして、風呂にも入った。まさか空に居るのにゆっくり湯船を堪能出来るとは。今更じゃけど、ぷらいべぇとじぇっと、……とやらは物凄い代物なんじゃなぁ。あぁそれと、常闇達やながんは各々快適な空の旅を満喫しているようじゃの。居間……とでも言うべきか? ともかく、そんな感じの部屋に気紛れに顔を出してみた。
まぁ被身子と一緒に寝室へ戻っても良かったんじゃけど、二人きりになると日本に着くまで身体を重ね合わせることになりそうでのぅ。一旦休憩じゃ、休憩。
「……で、お主等は何をしてたんじゃ?」
「廻道。……平気なのか?」
「どっかの誰かさんのせいで、何と言うかどうでも良くなってきた」
見慣れた鳥頭が
「すーぐそうやって常闇くんに話し掛けるんですから……。もぅ!」
いや、お主が常闇に対して異常な迄に嫉妬するだけじゃろ。とは言わないでおく。言ったら大惨事じゃし。その代わりに、頭を撫でておいた。これで少しぐらいは勘弁して欲しいものじゃ。まったく、仕方のない奴なんじゃから。ほれほれ、もっと撫でてやるから機嫌を直せ。後でまた、二人で寝室に引き籠もるんじゃから。
「で。お主等は何をしてたんじゃ?」
周りを見渡して見ると、ながんは筆記帳と睨めっこの最中じゃ。あれやこれやと書き込んでるようじゃが、何をしているのやら。尾白と砂藤は、丸机を挟んで何か語り合っている。少し耳を傾けてみれば、中・遠距離攻撃への対処が云々。儂の名前が途中で出ていたのが気になるが、意見交換しとるようじゃから放っておこう。
こうなると、話せるのは被身子と常闇だけじゃの。まぁ良いか。同じ飛行機に乗ってるからって、全員と話さねばならんなんてことは無い。
「ついさっきまで、廻道と正面戦闘した際のシミュレーション訓練をしていた」
「何やっとるんじゃ貴様等」
いや、
「……で? 想像の儂に勝てたのか?」
「……いや、俺達三人だけでは勝ち筋は見えなかった。赤血操術、恐るべし」
「もっと恐ろしい術式は幾らでも有るんじゃけどな」
例えばほら、真っ先に思い浮かぶのは御厨子じゃ。他にも無下限呪術とか、一つ目の術式とか。少し考えるだけでも、あれやこれやと思い浮かぶ。それ等と比べたら、赤血操術は分かり易い欠点が多い。が、間合いを選ばないという点では優れていると思いたいところじゃ。これもよくよく考えれば、他には劣る気がするが。
「まぁ、みんなが円花ちゃんに勝つなんてまだまだ無理なのです。私の円花ちゃんはすっごいので!」
「えぇ、そうでしょう。廻道が凄いのは、改めて認識したところです。まさに修羅。悪鬼羅刹の血塗れ鬼……」
おい。何で急に遠い目をしとるんじゃ鳥頭。それに修羅だの悪鬼羅刹だの、好き勝手に言いおって。血塗れ鬼ってなんじゃ血塗れ鬼って。まだ赤鬼って呼ばれる方が良い気さえするんじゃが?
まぁ、ともかく。気紛れに儂も少し考えてみるとしよう。常闇達三人との正面戦闘での勝ち筋を。
……。……うむ、色々有り過ぎて簡単じゃったわ。がははは!
「んふふ。カァイイ」
「んむっ。……何じゃもう」
「得意顔してる円花ちゃんも、好きって言ったんですよぉ」
「んぐむ……」
寝転んだままの被身子に、頬を摘まれた。どころか好き勝手に弄りだしおったわ。摘むな、引っ張るな。手のひらで押すな。仕返しに左手で口を塞ぐと、舐められた。何しとるんじゃもぅ。別に駄目とは言わんけど。
「……はぁ……。とにかく、議論や討論を繰り返していた。今回のヒーロー活動についてもだ」
「……何か、すまぬの」
「謝る必要は無い。悪しきはヒューマライズ故」
そうじゃけどな。あの悪党組織が世界中で滅茶苦茶をしとったから、儂等はわざわざ
「……今回の遠征。廻道はどう思った?」
「滅茶苦茶じゃった。面倒ばかりで、ろくでもない」
特に肝が冷えたのは、被身子が悪党連中に誘拐された時じゃ。思い返すと、殺しておくべきじゃったかもしれん。儂の被身子に手を出したらどうなるのか、もっと世間に知らしめねばならん気がしてきた。いっそ竜巻でも起こして、何もかも吹き飛ばしてしまった方が分かり易かったかもしれんなぁ。そう考えると、失敗した気がする。いや、竜巻なんぞ起こしたら大惨事なんじゃけども。
「だが、……何か得たものが有っただろう?」
「は?」
得た、もの? そんなものは無いじゃろ。得たとすれば、それは苦労とか面倒とかそう言う。あぁでも、……そうじゃなぁ……。
『分かったような口を……! 個性を持ってて、オールマイトの後継でっ! 恵まれてる君なんかに……!!
何でも持ってル君に、分かラレて堪ルか!!!』
あやつの言葉が、妙に頭に残っている。被身子を拐ったあの阿呆。そう、もらるが言っておった。悪事を働いた大人なんぞ、もはやどうでも良い。あやつを近くに置いた儂の失態でも有るしの。元より大人なんぞに期待なぞしとらんのじゃけども、それでもあやつを使おうとしたのは儂じゃ。で、何で使おうとしたのかと言うと。
……今更ながら、少し思うところが有ったんじゃろうな。あやつが無個性じゃと聞いて、気に掛けてしまったのかもしれん。つい緑谷を思い浮かべてしまったから、気になった……のかも。結果があの様じゃけどな。ただ、あの阿呆には……今回の一件では、改めて思い知らされた。
儂、この世界が嫌いじゃ。この時代の在り方が、どうにも気に食わん。
じゃって、そうじゃろ? 個性なんて力が有って、
『君は、こちラ側だロう? 今の時代を、今の世界を良く思ってないのなラ……』
……そうじゃな。良くは思っとらん。むしろ、悪く思っとる。じゃからって、あんな風に滅茶苦茶な破壊活動をする気はしない。悪党なんぞになりたいとは思わん。悪党の考え方は、分からんでもないがな。と言うか、
『生き易い世の中なんて期待してませんけど、円花ちゃんならもしかしたら……って思わなくもないです。
……世界、変えちゃいます?』
ぬぅ。いや、じゃからな? 流石に世界なんて変えられない。変えようとは思えない。こんな世界に産まれ直した以上、こんな世界のままで生きて行くしかないんじゃ。でもなぁ、じゃからって被身子にあんな顔をされるのは嫌じゃ。気に食わん。儂の被身子が腹の底から笑えんのは、どうにも気掛かりじゃ。
まったく。儂を悩ませておきながら、嬉しそうに膝上を独占しおって。そういう所がじゃなぁ……。
「世界を変えたい、……かもしれんな」
つい、口から零れた。
「えっ」
「……」
「忘れろ。何でもない。気の迷いじゃ」
馬鹿なことを口走った自覚しかない。被身子も常闇も儂を凝視し始めたし。そもそもじゃ、世界を変えたいなぞ願った先に何が有るのかを、儂はもう知っている。そう、死ぬんじゃ。儂は死んだぞ。真っ二つになって御陀仏じゃ。またもそんな目に遭うわけにはいかん。被身子を残しては死ねぬし、死んでやるつもりも無い。
じゃから、さっきのは気の迷い。実際に世界を変えようなどとは、儂は思わん。じゃけど。
被身子の為に出来る事が有るなら、それはしたい。世界を変える云々は別としてな。出来る事が有るのなら、する。して見せる。ほら、それが伴侶ってものじゃろ?
「世界を変える。壮大で、無茶な理想だ。……だが、俺で良ければ力を貸そう」
「真に受けるな、たわけ。何言ってるんじゃ鳥頭」
「んふふ。私も手伝うのです! 一緒に世界。変えちゃいましょう!」
「じゃから真に受けるなっ。阿呆か貴様等ぁ!」
い、いかん。このままでは、世界を変える羽目になってしまう。流石にそんなのは勘弁じゃ。幾ら儂でも、無理なものは無理なんじゃ。まったく、滅茶苦茶な事を口走りおって。そうやって儂を振り回すのも、大概にしておけよ貴様等ぁ……!
儂は! 世界なぞ! 変えんからな!!
廻道円花:オリジンまでもう少しのような、遥か遠くのような気がします。加茂頼皆:昇華は近……まだ遠いかもなぁ。次回からA組魔改造編が始まります。
三人称による補完は要りますか?
-
欲しい
-
要らん
-
良いから一人称で突っ走れ