待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
「廻道少女。A組を鍛えるって言ってたけど、具体的にはどんな感じで?」
翌朝。朝も早くから食堂で味噌汁を啜っていると、相澤とおおるまいとが姿を見せおった。ながんもじゃ。朝から大人達が雁首揃えて何をしに来たかと思えば、どうやら儂がどのような鍛錬計画を練っているのか、それを聞きに来たらしい。仕方ないから、ゆっくり卵焼きや焼き鮭、白米にほうれん草の和え物を堪能しながら話してやるとしよう。儂としても、今回ばかりは教師の手を借りねばならんからの。被身子の作った朝食を食べるのは久しぶりじゃと言うのに、それを邪魔するとは。まったく、気が利かん奴等め。せめて食べ終わるまで待たぬか。
「……もぐ。まぁ、そうじゃな。まず重点的に鍛えたいのは、基礎体力じゃの」
今のくらすめぇと達に基礎体力が無いとは言わん。が、十二分に足りているとは言えん。相手の数が十万を越えるなら、幾度となく連戦する羽目になるかもしれん。故に、持久力は大事じゃ。一度や二度戦った程度で疲れてしまっては話にならん。長時間、出来れば丸一日を通して戦えるだけの基礎体力を持てばひとまずは合格としておこう。とは言え、体力は直ぐには付かん。まして今以上に伸ばすとなると、それは地道な鍛錬となる。内容としては、そうじゃなぁ……。持久走と短距離走、この二つは必ず加えたい。出来れば朝、一日分の体力を使い切るぐらいの勢いで行ってくれるとありがたい。あ、そうじゃ。山の中で走り回るのも良いな。
「で、戦闘経験も積ませたい。対悪党もそうじゃが、対呪霊や対呪詛師の経験も必須じゃ。じゃからまぁ、何人かずつって形にはなるが」
「対
「そこは円花ちゃんとオールマイトが呪詛師役を演じて訓練すれば良いのです。緑谷くんに手伝って貰うのも有り……ですかねぇ」
いや、無しじゃろ。緑谷にこそ、対呪詛師の経験をしっかり積ませたいところじゃ。そう考えると、儂やおおるまいとが呪詛師役を買って出るのが手っ取り早い。とは言えこの筋肉阿呆が呪詛師役なんぞやったら、大惨事になる予感しかしないが。期末試験の時は、滅茶苦茶じゃったものなぁ。まぁそれも、良い経験にはなるか。
「ずずず。……まぁそう言うわけじゃから、これから数箇月は儂が主立って皆を鍛える。加減は一切してやらんから、そのつもりで居てくれ」
「……廻道。加減無しとは、どの程度だ?」
「じゃから、一切しないと言ったじゃろ。不本意じゃが、本気でやる」
子供相手に全力を出すなんて、気が乗らん。しかし手を抜いた鍛錬では、誰も育たんじゃろう。
……はぁ。味噌汁が美味い、おかずが美味い。白米じゃって美味じゃ。やはり被身子の手料理は素晴らしいものじゃなぁ。もっとゆっくり堪能したいのに、そうも言ってられんのが癪じゃ。何せ準備期間はそう長くないからの。くらすめぇと達の訓練は、今日から早速始めたい。
と、言うわけで。
「今日から始めるから、そのつもりで居てくれ」
おかずも白米も味噌汁も掻き込んで、席を立つ。食後に直ぐ動かねばならんのは億劫じゃけども、儂には時間が無い。五月までにやらねばならぬ事が、山程有るんじゃからな。
「……待て廻道。細かな調整はするべきだ。訓練は、……昼過ぎ、早くても昼前からでどうだ? 少し時間をくれ」
「……んんむ……」
まぁ、相澤の言うことも分からなくもない。訓練を始めるにしても、準備と言うものが有る。何処の訓練場を使うとか、どんな機材が必要かとか、教師陣としては色々と調整したいところなんじゃろう。しかし儂としてはじゃな、今直ぐ始めたいぐらいなんじゃ。何せ儂等には、時間が無い。たった数箇月で、子供達を鍛え上げなければならないんじゃ。
「まぁまぁ。焦って急に始めても仕方ないですよぉ。しっかり準備して臨みましょう。ね?」
……。……それも、一理有るか。仕方ない、準備の為に少し時間を設けるとしよう。特訓が始まったら、何かと忙しくなってしまうからの。こうなるなら、もう少しゆっくり朝食を堪能しても良かったかもしれん。さっさと掻き込んでしまったのは間違いじゃったか。
「ええっと、廻道少女。特訓プランは?」
「……走り込みは必須かのぅ。それと儂との手合わせに、夜は何人かずつ呪霊退治を経験してもらう。とにかく基礎的な部分を伸ばしたい」
「分かった。それじゃあ、プランは私が練るよ。後で内容を見せに行くから、足りない部分が有ったら言ってね?」
「細かいところはお主に任せる。被身子、ごちそうさま。今日も美味で満足じゃ」
「はぁい。お粗末様でした」
さて。やるべき事は色々と有る。おおるまいとが具体的な特訓内容を提示してくるまで、儂も儂で今出来ることをやっておこう。まずは燃え面に言われた
しばらくは、また随分と忙しくなりそうじゃなぁ。被身子と
◆
やるべき事が多いからこそ、ひとつひとつ片付けていかねばならん。問題は、意欲を持って取り組んだとしても直ぐには終わらない事ばかりが目の前に積み上がっているということ。まったく面倒じゃが、今回ばかりは仕方あるまい。やれば確実に終わるところから攻めていくとしよう。
今やっているのは、任務の選定と
取り敢えず初日は砂藤を優先して連れて行くが、それ以外の奴は……呪霊退治の経験が一切無い奴にしておくべきか。毎日任務に行くと仮定し、一度に三人ずつ連れて行くとしたら、全員が七日に一回は経験出来る。が、それでは足りん。最低でもその倍は経験させたい。となると……。
……うむ。おおるまいとにも働いて貰うとしよう。そうすればくらすめぇと達全員が、四日に一度は呪霊退治を経験出来る。緑谷にも引率して貰えば、三日に一度となるが……それは無しじゃな。緑谷ではまだ不安が残る。と言うかじゃな。そもそも呪具が足りん。根津校長が全国から集めた物があるが、どれも等級が低くてのぅ。蠅頭程度ならばそれで問題ないんじゃが、祓いに行く呪霊が雑魚ばかりとは限らん。たまたま等級が高い呪霊が出てくる可能性じゃって有るんじゃ。そう考えると、やはり儂とおおるまいとが引率するしかないんじゃろう。
しかもじゃ。それに並行して、
しかしこの
……まぁ、良いか。取り敢えずこれは試作として作ってしまおう。完成したら皆に使用感を聞いて、細かな調整は発目にでも任せれば良いじゃろう。またあの工房に足を運ぶとなると、気が進まんけどな。子供達の為とはいえ、苦手なものは苦手なんじゃ。
「……ふぅ……」
「そろそろ一休みしましょう!」
「ぐえぇっ。じゃからお主、……まぁ良いか……」
一息吐くと、被身子に抱き付かれた。仕方ないから抱き締め返してやりつつ、直ぐそこの長椅子《そふぁ》で山積みとなった書類を睨んでいるながんを眺める。すると儂の視線に直ぐ気付いて、一度作業の手を止めた。
被身子とながんには、任務の選定を任せておる。危険度が低そうで、なるべく雄英から遠くないものを探して貰ってる最中じゃ。まぁ、最終的に二人が提出したものを儂が精査するんじゃけども。
「……こっちはそれなりに順調だ。そっちは?」
「順調じゃ。と言っても、時間は掛かる」
「こっちも似たようなもんだよ。夜までには、ある程度進めておく」
「面倒を押し付けてすまんの」
「気にするな。補助監督の仕事の内だ。それに、あんたにはあんたしか出来ない作業が有るだろ」
「これはこれで面倒なんじゃよなぁ……」
儂はどうにも、細かい事には向かん質じゃ。とは言え
……うむ。やはり時間が足りんとしか思えん。合間合間で休息を取りたいところじゃが、そんな余裕は無さそうじゃ。過労で倒れぬよう気を付けねばな。また倒れでもしたら、被身子に泣かれてしまう。それは勘弁じゃ。
「忙しくなりますけど、ちゃんと休んでくださいね? 倒れたらおこですよ、おこ」
「分かっとるって。お主こそ、倒れぬように」
「トガはちゃんと充電するのでっ。ぎゅうぅ〜〜♡」
「うぐぐ。まったく、お主と来たら」
まぁでも。儂も休憩出来るから良いんじゃけど。こうして被身子と
「わーたーしーがーー!!」
……げっ。何やら騒がしい奴がこちらに向かって来ておる。寮の玄関の方から物凄い足音がするわ。この感じ、随分と久々な気がするのぅ。今は被身子と
「A組特訓プランを持って来た!!!」
うぅむ。まっこと、喧しい奴め。お陰で被身子が不機嫌そうにしてるではないか。後で機嫌を取るのは儂なんじゃから、その辺りの事を少しは考えて欲しいのぅ。
……それで? この筋肉阿呆は、どんな特訓を考えて来たんじゃ??
三人称による補完は要りますか?
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欲しい
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要らん
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良いから一人称で突っ走れ