待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!!   作:一人称苦手ぞ。

532 / 553
教えの時間。保健室にて

 

 

 

 

 

 円花ちゃんが滅茶苦茶しました。そうなるとは思ってましたけど、想定より更に滅茶苦茶してました。トガとしては、何だかんだで手加減しちゃうんじゃないかなって思ってたんですけど、殆ど手加減してなかったみたいです。だから、円花ちゃんに狙われたクラスメートの皆はボロボロでした。ついさっきAチーム全員が保健室に搬送されて来たんですけども、お茶子ちゃんと緑谷くん、そして梅雨ちゃんが重傷でした。切島くんは比較的怪我が軽いそうで、それはオールマイトが相手だったからみたいです。三人も大怪我してたので、リカバリーガールがカンカンに怒ってたのです。どんな滅茶苦茶な訓練をしてるんだ、この子達を潰す気かって激おこでした。

 それで、私はお茶子ちゃんを引き受けたのです。もちろんリカバリーガールの指導の元って形で。反転術式の事は、流石に包み隠さず話しました。それはそれで苦い顔をされたんですけど、とにかく人手は必要だってことで最終的には納得してくれたみたいです。

 

 それで、お茶子ちゃんの怪我はもう少しで矢が肝臓に突き刺さるところでした。ほんとにギリギリで、もう少しズレてたら死んでたかもってぐらいの重傷具合なのです。普通ならこんなの即病院行きなんですけど、そこは反転術式でバーーッて治癒したので今もお茶子ちゃんは保健室のベッドの上に居ます。一応念の為ってことで、今日はもう訓練無しですけど。

 

「反転術式? って、凄いね……? リカバリーガールみたいに治せるんだもん」

「んー……。でもトガの呪力量だと、大きな怪我は日に二回ぐらいしか治せないのです」

 

 お茶子ちゃんで試す形にはなっちゃったんですけど、大怪我を治すと呪力が半分無くなりました。ってことは、多分日に二人が限界です。軽い怪我なら、五人か六人くらいなら行けるかも? とにかく、今の私じゃそれが限界です。もっと呪力効率を良く出来れば、もしかしたら大怪我でも三人か四人ぐらいは治せるかも……ですけど。私も私で、呪力の訓練をした方が良い気がしますねぇ。あ、でもこうして怪我した人を治すのが訓練の一環ですね。

 

 ……それにしても。それにしても、……んふふ。ちょっと役得だなって。いっぱい血が見れて嬉しいのです。ボロボロだったお茶子ちゃんをチウチウしちゃ駄目なのが残念でしたけど。だってチウチウしちゃったら、浮気みたいなものですし。嫉妬する円花ちゃんはカァイイんですけど、円花ちゃん以外にチウチウするのは流石にライン超えだと思うので。出来るものならしたいって、思っちゃうんですけどね。こればっかりはどうしようもないので、後でたっぷり円花ちゃんをチウチウして解消しようかなぁって。今夜が楽しみなのです!

 

「……でも、どうして先輩が反転術式を……? 呪力が無いと、出来ないんですよね?」

「あ、それは円花ちゃんに呪われちゃったからです」

「え゛っ!?」

「つい二人でやらかしちゃったので。でも、お陰で反転術式が使えますし、色々良い事も有ったので!」

 

 ヨリくんの記憶を全部追体験出来たのは、大変でしたけど良い事だったのです。円花ちゃんの全部を知れて、円花ちゃんに成れたような気がして、私としては「やったー!」って気分です。まぁそれでも、やっぱり私は渡我被身子なんですけどねぇ。自分を強く保ちなさいって輪廻ちゃんにも言われてますから、そう思い続けることにしてます。……ちょっと、と言うか結構残念にも思うんですけどねぇ。

 

「あ、内緒にしてくださいね? これ、実は総監部にも秘密にしてるので」

「ぅ、うん……。分かった、内緒にするね。

 でもその、……大丈夫なの……?」

 

 んふふ。心配されちゃいました。そんな顔もカァイイのです。だからちょっと、何ていうか意地悪したくなってきちゃいました。

 

 な の で。

 

「……実は、ここだけの話なんですけど」

 

 お茶子ちゃんに近付いて、こそっと喋ります。

 

「うん……?」

「肩凝りしなくなって、万々歳なのです!」

 

 今の身体になってから、ほんっとうに肩凝りとは無縁になったのです。前は長時間机に向かってるとどうしても肩が凝ってたんですけど、今は全然。痛くなることも無いですし、万々歳としか言いようがないです。諸手を挙げて喜んだって良いぐらい、これは素敵なのです。

 

「えっ。あー……。……よ、良カッタネ?」

「んふふ。あと、身体が疲れにくくなったりもしてます。多分風邪とかも引かないですねぇ」

「あ、それは羨ましいかも」

「えへへ。でも、駄目ですよぉ。こうやって円花ちゃんに呪われて良いのは私だけなので!」

「呪われたいとは思わないけどなぁ……。ほんともう、渡我先輩は廻道さんが大好きだ」

 

 えっへん。と、胸を張っておきます。円花ちゃんが大好きって点は、誰にも譲らないので。何かお茶子ちゃんが遠い目をしてますが、お茶子ちゃんもいずれ私みたいになると思います。だってほら、もう最近は緑谷くんが好きって隠せてませんから。上手く隠してるつもりなんでしょうけど、トガにはバレバレなのです。カァイイねぇ。

 

「それで、訓練はどうでした?」

「……うん……。その、私は何も出来なかったなぁ……」

 

 あ、しょんぼりしちゃいました。今回の訓練、お茶子ちゃんは駄目駄目だったみたいです。実際、お腹に矢が刺さってましたしね。それがどのタイミングでの事かは分かりませんけど、大怪我をして動けなくなっちゃったなら気にするのも仕方ないのかなって。慰めてあげるのは簡単ですけど、多分私がしても駄目だと思います。トガにヒーローの心は分からないので。なのでここは、他の人に任せちゃうのが手っ取り早いですねぇ。例えば。

 

「緑谷くんに慰めて貰います?」

「んぐ……っ!? 何でそこでデクくんに!?」

 

 あ、ちょっと元気出たみたいです。そうですよね、しょんぼりしちゃった時は好きな人と居たいですよね。と、言うわけで。出来る女のトガは仕切りのカーテンをしゃーっと開けときます。お茶子ちゃんの隣のベッドには、緑谷くんが居るので。ぶっちゃけそうなるように仕向けました。んふふ。

 

「と言うわけで緑谷くん。お茶子ちゃんを慰めてあげてください!」

「え……っ。えっ!?」

「ちょっ、渡我先輩っ。何してるんですかっ!」

「病室ではお静かに、ですよぉ。じゃあトガはちょっと席を外すので、二人で反省会とか色々(・・)してくださいねぇ」

「色々って、もぅ……! 渡我先輩っ!!」

「色々……??」

 

 うわぁ。ほんっと、緑谷くんは鈍感なのです。何でそこで首を傾げるんですか。円花ちゃんは放って置けって言いますけど、私はほっとけないのです。恋愛の極意は押して押して押すことなんですから、いつまでもお互い引いてちゃ何にもならないんですよぉ。

 

 ……さて、と。トガはトガでやる事があります。リカバリーガールに渡された応急処置マニュアルに目を通しておきましょう。外傷の処置について詳しくなればなる程、反転術式の効き目も良くなる……と思うので。新たに勉強することは沢山あるのです。お茶子ちゃんと緑谷くんの恋愛模様に耳を立てながら、治療に必要な知識は頭に叩き込んでおきます。円花ちゃんの許嫁として、そして補助監督としても勉強はやっておかないと。

 

 それはそれとして。訓練が終わったらたっぷり構って貰わないと! 勉強疲れを癒すには、やっぱり円花ちゃんですよねっ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 お茶子ちゃんと緑谷くんに進展はありませんでした。二人は私が離れた後でちょっと静かになって、何か話そうとしたら言葉が被っちゃって。それでお互い譲り合おうとして、結局また黙り込んじゃう。そんな焦れったいやり取りを何度も繰り返して、最終的には緑谷くんの方から切り出しました。具体的な内容は、今回の訓練についてでしたね。そこからヒーロー候補生らしい反省会が始まって、途中で全身打撲の切島くんが参入しちゃって、最後は梅雨ちゃんも参加して長々とした反省会になっちゃいました。

 

 まぁ、仕方ないと言えば仕方ないのです。皆ヒーローを目指してるんですから、訓練で良い結果を出せなかったのなら反省会をして当然。良い結果を出したとしても、反省会をするんでしょうけど。

 とにかく。そうやって何が良くなかったのか、何処が悪かったのかを分析して、次の訓練や本番に備えるんです。全員が本気でヒーローを目指しているからこそ、妥協はしないのです。たまには息抜きも必要だと思うんですけど、A組の皆が目指すところは円花ちゃんなので。それが良くないと言えば、良くないんですけどねぇ。

 

 ……でも。

 

「悪ぃ麗日っ。最初の狙撃、俺が直ぐに気付くべきだった……! そしたら、血ぃ流すようなことは無かったのに……!!」

「い、良いよ良いよ。あれは私も、他の誰も反応出来なかったんだし。次はお互い頑張ろっ」

「円花ちゃんの狙撃、恐ろしかったわ。遠距離でも至近距離でも狙いが正確で」

「もし路地裏で戦ってなかったら、あの狙撃だけでもきっと全滅してた。不意打ちで弓は壊せたけど、その後は良くなかったなぁ……」

「そうだ緑谷……! あんま時間稼げなくて悪かったっ。もうちょい何とか出来れば良かったのかもしんねー……!」

「ううん。あそこで切島くんがオールマイトを引き受けてくれたからこそ、僕が梅雨ちゃんを救けに行けたんだよ。そこの判断は正しかったと思う。

 ただ、……僕の力が足りなかったってだけで」

「緑谷ちゃんは良くやってくれたわ」

「……ごめん。私が動けてれば、もう少し違ってたのかなぁ……」

 

 こうやって一つの事に、皆で夢中になって語れるのは羨ましい気もするのです。ちょっと疎外感を感じるのは、私がヒーロー科じゃないからですねぇ。恋バナとかだったら積極的に和気藹々と出来るんですけど、ヒーロー談義は流石に付いて行けない部分が多いので。

 んー……、何だか円花ちゃんとイチャイチャしたくなって来ました。今ちょっと寂しい気分です。なんて思っていると、また保健室の外が騒がしくなりました。次のチームの訓練が終わって、怪我人が搬送されて来たに違いないのです。今度はいったい、どんな滅茶苦茶をしたんですかねぇ。って、あ。

 

「失礼します! 耳郎くんが大怪我を……! 意識不明、大腿部裂傷! それと、……恐らく胸骨が折れてます!!」

 

 勢い良く扉が開いたと思ったら、肩や背中に矢が刺さった飯田くんが響香ちゃんを抱き抱えてやって来ました。彼に遅れる形で、他のチームメンバーも救急ロボに搬送されて来ました。Bチームは、響香ちゃんに百ちゃん、飯田くんと甲田くんと尾白くんの五人です。パッと見た感じ、全員軽くない怪我をしてるのです。一番怪我が重そうなのは、……響香ちゃんなのです。胸骨の骨折もそうですけど、何より太腿からの出血が酷いですね。今も血が滴ってて、……ついつい目を奪われちゃう。

 

 もぅ、円花ちゃんの馬鹿。トガの目には毒な怪我ばっかりさせちゃ駄目なのです……!

 

 

 

 

 

 

三人称による補完は要りますか?

  • 欲しい
  • 要らん
  • 良いから一人称で突っ走れ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。