待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!!   作:一人称苦手ぞ。

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教えの時間。円花の様子

 

 

 

 

 

 

 まったくもぅ。円花ちゃんがA組全員を一人残らず大怪我させちゃうから、我慢するのが大変だったのです。みんなボロボロで血塗れで、普段よりもとっても素敵に見えちゃって。実は惚れっぽいトガとしては、うっかり好きになっちゃいそうで大変でした。浮気は厳禁なので、ちゃあんと我慢しましたけど。こうなったら、たっぷり円花ちゃんとイチャイチャしないと気が済みません。一番最後に搬送されて来た障子くんに今日の訓練はお終いだって教えて貰ったので、我先にと保健室を出てグラウンドβへ向か……ってるのは良いんですけども。

 

 ……、ちょっと遠いんですよねぇ。ヒーロー科の訓練施設って。雄英の敷地が馬鹿みたいに広いってのも有るんですけど、徒歩だと校舎から三十分ぐらいは掛かっちゃうのです。途中で入れ違いになりそうな気がしなくもないですが、先に寮に戻って待つのは我慢出来ないので。トガは今直ぐ、円花ちゃんとイチャイチャしたいの。一秒だって待ってられません……!

 

「と、渡我先輩っ。ちょっと待ってぇ……!」

 

 昇降口で上履きをロッカーに仕舞っていると、まだコスチューム姿のお茶子ちゃんが駆け寄って来ました。怪我はとっくに完治してるんですけど、ちょっと顔色が優れないような……? まぁそれはそれとして。

 

「ヤっ! 待ちませんっ!」

 

 ここは塩対応せざるを得ないのです。だって、私は一刻も早く円花ちゃんに会いたいので。今回の訓練で、円花ちゃんは相当疲れちゃってる筈なの。自分の手で子供に大怪我をさせて、何とも思わない人じゃないので。むしろ気が病んじゃってるかもしれないと考えたら、放っておけなくって。

 

「そ、そう言わずに。グラウンドβに行くんだよね? 私も廻道さんに用があって、一緒に行こ?」

 

 ……むーー……。まぁ、良しとしましょう。

 旅は道連れって言いますしね。いや別に、旅でも何でもないですけど。ただ単に、訓練施設の一つに赴くってだけです。とは言え黙って歩くのも退屈ですし、お喋りでもしながら目的地に向かいましょう。そしたらほら、三十分の道程もあっという間なのです。

 

「まぁ良いですけどぉ。……円花ちゃんに用ってなんですか?」

「今回の訓練の事で、色々と。私全然だったから、せめて教えを乞いたいなー……って」

「私の後にしてくださいね。トガはイチャイチャしたくて堪らないので!」

「ぁ、はは……。ほんともぅ、人前では程々にね?」

「それは難しいかなって。最近デートしてないですし……」

 

 向こうしばらく、円花ちゃんは忙しいままです。トガも補助監督として同行する以上、暇な時間はあんまりないです。まぁ補助監督のお仕事が無かったとしても、勉強はしなきゃいけないんですけどね。卒業までは特待生を維持するつもりなので。

 ……一応、補助監督としてのお給料はしっかり貰えてるので、最悪特待生じゃなくなっても何とかなるとは思います。でも来年も特待生特典が欲しいと言えば欲しいので、やっぱり勉強は頑張らなきゃ駄目ですね。円花ちゃんの成績も不安ですし。特に座学。他所の学校だったら心配しなくても良いんですけど、雄英の授業は結構難しいのです。

 

 んんん。デートしたいです、デート。アメリカじゃ結局出来なかったですし、でもこれからずっと忙しいですし……。少しは我慢、ですかねぇ。我慢なんてしたくないんですけど。こうなったら、どこかで無理矢理時間を作りましょう。二時間、いや三時間。むしろ八時間ぐらいは……!

 そうと決めたら、寮に帰ったら早速スケジュール調整をします。トガは補助監督ですから、円花ちゃんの予定を組むことぐらい簡単なのでっ。

 

「……廻道さん、大丈夫かなぁ」

「はい?」

「えっとね。デクくんから聞いたんだけど、訓練中凄く思い詰めた顔をしてたみたいで。渡我先輩が居るから大丈夫だと思うけど、ちょっと心配」

「んん……」

 

 ……ですよねぇ。思い詰めない訳が無いんです。むしろ、思い詰めて当然なのです。みんなに死んで欲しくないから、生きて乗り越えて欲しいからみんなを鍛える。だから円花ちゃんは本気で、情け容赦無くみんなを鍛えようとしてる訳で。だけどそれは、自分の心を考えてないやり方なのです。どうしてそんな、自分も辛くなるような道を選んじゃうんですか。さっそくみんなに心配されちゃうような様子になっちゃうんですか。そういうとこですよもぅ。そういうとこが駄目なのです。

 

 まぁ、円花ちゃんが本音を話すのが下手っぴってのは分かってます。喋らない分、表情に出易いのも分かってます。だけど言葉にしないのは、まっこと良くないんですよねぇ。だからトガにいつもいつも無理矢理聞き出されるんですよ? そこのところ、分かってるんですか??

 

「やっぱ、私達のせいで無茶させちゃってるのかなぁ……」

 

 んん……。これは思ったより重症かもしれないですね。緑谷くんに気取られて、お茶子ちゃんには気付かれちゃってる感じなのです。こういう時は抱き潰して流しちゃうのも手なんですけど、今回は別の手段を取るべき……ですかねぇ。でも、だからって円花ちゃんの過去を勝手に話すのは嫌です。そもそも知られたくないですし、誰かに知って欲しいとも思わないので。……でも。

 

 ……うぅん……。いや、んん……。ええっとぉ……。

 

「やっぱり、無理させちゃってる……よね?」

「んんん……」

 

 お茶子ちゃんを不安にさせちゃいました。自分や、みんなが未熟だから円花ちゃんが無理をしてるって考えちゃってます。確かにみんなは未熟かもしれませんけど、円花ちゃんが思い詰めちゃってるのはまた別の理由と言うか。何なら円花ちゃんにも悪いところが有ると言うか。そういう所も何とかしてあげたいんですけど、トガとしてはもう面と向かって反対するのは難しいです。

 

 だって、知っちゃいましたから。円花ちゃん、……ヨリくんがどんな人生を歩んで来たのか。それを全部追体験しちゃった身としては、円花ちゃんがあんな風になっちゃったのも仕方ないと思えちゃうので。だからって、全部をみんなに丸投げしちゃうのも違います。

 

「……ええっと、んん……」

 

 んん、っと。どうしましょうか。今の円花ちゃんが無理を始めてるのは明らかで、その原因だって分かってます。解決策が思い浮かばないってことは無いですけど、実行したいとも思わないんですよねぇ。どっち付かずって感じなのです。

 

「……話しにくい? ごめん、触れられたくない部分も有るよね」

 

 いやまぁ、……そうなんですけど。そうなんですけど。そこで私の顔を見て一歩引いちゃうのは、それはそれで違うのです。だってそれじゃあ、円花ちゃんは無茶や無理を押し通します。心がボロボロになったって、みんなを本気で鍛え上げちゃうんです。このまま容赦無く続けちゃう。恋人として許嫁として良妻として、それを良しとはしたくないです。

 

「でも、話したくなったら言ってね? その時は力になるから!」

 

 ん、んんん。だから、そこで引いちゃ駄目なのです。円花ちゃん相手に何かをしようとするなら、何かして欲しいって思うなら、素直に白状するまで押さなきゃ駄目なの。そうしないと、いつまで経っても改善しないので。あの円花ちゃんに愛の言葉を言って貰えるようになるまで、トガが何年掛けたと思ってるんですか。どれだけゴリ押ししたのか、ぜーんぶ語らなきゃ分からないんですか? そういうところですよお茶子ちゃん。そんなだから、緑谷くんが気付かないのです……!

 

「―――お茶子ちゃん」

「ぅ、うん……?」

「そんなだと、緑谷くんとカップルになれないのです」

「ウギュッ!? い、いや今はデクくんの話はしてへんよ……!??」

 

 あ、言いたい事が違いました。でもつい、口からポロッと。私としては、早くお茶子ちゃんと緑谷くんにくっ付いて欲しいんですよねぇ。そしたらWデート仕放題ですし、恋バナだって仕放題じゃないですか。そしたらきっと楽しいのです。

 

「ぶっちゃけ脈有りだと思うんですけど、アタックしないんです?」

「し、しない! こ、これはしまっとくの……!」

「えー? あけすけにしましょうよぉ。しまっとくのは、心にも体にも良くないのです!」

「だ、だからって渡我先輩みたいなあけすけになるのは……っ。もぅ……! なんでみんな、直ぐその話題にしたがるん……!?」

 

 なんでって、お茶子ちゃんが分かり易いから……ですかねぇ。見てて歯痒いですし、私はWデートがしたいので。あっ、そうだ!

 

「んふふ。じゃあ思い詰めちゃった円花ちゃんを元気にする為に、Wデートしましょうか!」

「何で!?」

「と言っても、しばらくはみんなも円花ちゃんも忙しいので直ぐには……。あ、バレンタインとかどうです? バレンタインにしましょうっ!」

「待って待ってっ、同意してない……!」

「まぁまぁ。訓練ばっかりじゃなくて、時には楽しまないと。ヒーローにだってお休みは必要ですよぉ」

 

 誰だって、どこかでお休みする時間は要ります。ヒーローだって呪術師だって、ちゃんと休まないと心身が持ちません。特に円花ちゃんはこれからも忙しいですし、休める時には休まないと。その為の時間は私が作ります。それで二人で、いや四人で休んでデートですデートっ。

 

「それはそうかもしれないけど……! でも、デートは違うんじゃ!?」

「えへへ。楽しみですねっ!」

「き、聞いてない……!? 聞いてないよね!?」

「聞こえてますよぉ。んふふ」

 

 話が逸れましたけども、これはこれで良しとします。だってデートしたいですから。Wデートの提案をすれば、円花ちゃんも何だかんだで楽しみにしてくれるでしょうし。時間を用意するのは大変ですけど、そこは何とかします。

 それと。あたふたしてるお茶子ちゃんは、それはそれでカァイイですね。そういうとこも緑谷くんに見せれば良いのに。って思わなくもないです。

 

「それじゃ、さくっと円花ちゃんに会いましょうか。この後、お茶子ちゃんも個性伸ばしですよね?」

「ぁ、そうだった……! ちょっと急がないと……!」

 

 そんなこんなで。円花ちゃんが居る筈のグランドβに向かって、お茶子ちゃんと小走りで向かいます。Wデートも決まりましたし、早く慰めてあげなくっちゃ!

 

 

 

 

 

 

 

三人称による補完は要りますか?

  • 欲しい
  • 要らん
  • 良いから一人称で突っ走れ
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