待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
「Wデートしましょう! ダブルデート!」
空に浮く麗日付きの被身子を血で引き寄せて受け止めてみれば、満面の笑みで訳の分からん事を言われてしまった。何で今、そんな事を高らかに口走るんじゃお主は。まったく、そういうところじゃぞ? そういうところがじゃなぁ……。いやまぁ、別に良いんじゃけど。
って、こら。抱き付くのは良いが、然りげ無く押し倒すんじゃない。覆い被さるな。物欲しそうに首筋を見詰めるな。吸い付くな。麗日の前じゃぞ、麗日の。人前でちうちうするのは、……まぁ今は隠さなくても良いか。麗日は知っとるし。なんて思っていると、血が出る勢いで首を噛まれた。
「ん、んん……っ。こ、らぁ……!」
―――っ、は……。んん……。
い、いかん。背筋が粟立つ。熱っぽい息を吐いてしまう。最近は首を噛まれると、もう身体が熱を帯びてしまうようになった。こうも熱烈に求められることは悦ばしいけれども、人前では流石に……。いやでも、いっそこのまま……。
「ん、……ふふ♡ 円花ちゃん、円花ちゃん……♡」
「……っ……」
あぁ、もう。そんな風に欲しがるのは狡じゃ。差し出したくなってしまうじゃろ。直ぐそこに人が居て、ここは訓練場じゃと言うのに。この場に居るのが麗日だけじゃからって、噛み付くことを許したのは間違いじゃった。下手すると、何がとは言わんが色々始まってしまう。駄目じゃ駄目じゃと思いつつも、何でこうも抗い難いのか。
「ん、ん……っ♡ ちゅっ♡」
「っあ……。は……、ふ……」
―――ぞくぞく、する。あぁもう、駄目じゃ。こうなってしまったら、儂にはどうしようもない。被身子が自制するとはとても思えぬし、このままされるがままに流されるしか無い。せめてもの抵抗に抱き締め返してみると、余計に抱き締められてしまった。お陰で更に被身子が側に感じられて。それがどうしようもなく、嬉しくて。じゃから、じゃから……もぅ……。
「ちょっ、ちょ……っ! あかんよっ!? それ以上はあかん―――!!」
「やぁーっ!? お茶子ちゃんのいけずぅ!!」
ちっ。……いや、助かった。危ないところじゃった。危うく、人前で被身子と情事に耽るところじゃったからの。やはりこういうのは、二人きりの寝室でしなければ。まぁ被身子の気持ちも、よく分かるんじゃけども。
と、取り敢えず。乱された掛け襟を直しながら体を起こす。被身子が麗日に羽交い締めされとるが、これは仕方ないじゃろう。こんなところで始めようとしてしまった儂等が悪い。座敷牢に放り込まれないだけ、有情ってものじゃ。そう思うことにする。
「むーー……っ! 私達のイチャイチャを邪魔するなんて……っ!」
「公序良俗を守って!? 人前では駄目っ!! 廻道さんも気を付けてっ!?」
……はぁ……。いやまぁ、その通りじゃけども。その通りなんじゃけども。それでも解せぬものは解せぬなぁ。せめてもう少し、血を吸わせても良かったんじゃないかと思わんでもない。お陰で物足りん。もう少しこう、どうせなら思いっ切り……。っと、いかんいかん。煩悩に支配されるところじゃ。麗日の言う事は残念ながら正しいので、ここは大人しく引き下がるしかないんじゃろう。それはそれとして、儂の被身子に容易く触れてくれるなよ。そういうのは、緑谷にでもしておけ。まったく。
「……ところで。何で麗日まで居るんじゃ?」
被身子が此処に来た理由は分かる。訓練を終えた後の儂と一緒に過ごしたいからじゃ。しかし麗日まで此処に来た理由がいまいち分からん。儂等が外で求め合うことを阻止する為のお目付け役……と言う線は捨て切れない。が、その可能性は高くないと思う。多分。
「むすーーっ。お茶子ちゃんは、円花ちゃんが心配だったから来ちゃったのです」
「うん。心配だったから、つい……」
「は?」
儂が心配だから、此処に来た? いやいや、そんな暇が有るならさっさと個性伸ばしに取り掛かって欲しいものじゃ。戦闘訓練の後は、個性伸ばしの時間じゃと分かっているじゃろうに。そもそも貴様は、儂を気遣ってる場合じゃない。むしろ自分の心配をしておけ。
「……大丈夫? 凄く思い詰めてた顔してたって、みんな言ってたから」
いや……、そんな面をした覚えは無い。が、胸中穏やかとは言えん状況じゃったのは事実じゃ。実際、訓練中の心労は物凄かったからのぅ。一人になった途端、立ってられなかったぐらいで。現に被身子が飛んでこなければ、今も動けんままじゃったかもしれん。そう考えると、思い詰めた顔をしてたんじゃろうな。不覚じゃ、不覚。
……。……次の戦闘訓練の際は、少しばかり気を付けるとしよう。訓練する度に心配されるのは、それはそれで面倒じゃ。
ところで。そろそろ被身子を放してやれ。このままにしておくと、後で儂が大変なんじゃ。被身子を止めるのは構わんが、止めた後のことも考えてくれると助かるのぅ。
「本当に大丈夫……? もし私達で力になれる事が有るなら、いつでも言ってね?
廻道さんってほら、抱え込んじゃうから」
っと、いかんな。色々考えてたら、余計に心配されてしまったようじゃ。黙ってないで、少しは口を開くとしよう。
「儂を気にする暇が有るなら、もっと鍛えろ。たわけ」
「ぅ。ご、ごめん……。今日の訓練、全然駄目駄目だった……」
「そうじゃな。駄目駄目じゃったわ」
まぁ、実のところ。儂は真っ先に麗日を狙った。最初に目に付いたってのも理由のひとつじゃが、それ以上にこやつの個性は厄介じゃからの。下手に触れられると自由を奪われるから、さっさと仕留めたかったのもまた事実。結果として、一番早く脱落させることが出来た。
麗日からすれば、さぞ悔しかったじゃろう。いや、悔しいと思っているのは今もか。次こそはもっと活躍するとでも言いたげな面じゃな? それなら、次は少しばかり期待してやるか。少しだけな。
「それでね廻道さん。あの場合、どうするのが正解だったのか聞いても良い? 狙撃される場所に出ちゃった場合って……」
「避ければ良いじゃろ?」
「えっ」
「避ければ良いじゃろ?」
「えぇ……?」
えぇ……? は、こっちの台詞じゃ。狙撃されるような位置に居ること自体が悪いと言ったらそれまでじゃが、狙撃されると分かってるなら避ければ良いだけの話じゃな。遠方からの狙撃を事前に察知出来るなら、避けることはそう難しくもない。もっとも、察知する前に狙撃されたら儂でもどうしようもないんじゃけどな。
とにかく。狙撃されると分かっているなら避ければ良いじゃろ。距離が離れていても、何となく殺気を感じ取れたりするものじゃろ? こんな簡単な話なのに、何故解せぬとでも言いたげな顔をするのか。
あ、そうじゃ。明日からの訓練は、回避や防御をを高めるものにしよう。その方が生存率が上がるってものじゃ。がははは!
「んん……。廻道さんって、やっぱ無茶苦茶だぁ……」
解せぬ。何で白い目を向けられなければならぬのか。見えてる狙撃ぐらい、軽々と避けて欲しいものじゃ。対狙撃訓練は、もう一度しても良いかもしれん。その時は、ながんにも協力して貰うとしよう。その方が手間を省けるし、訓練を早く終わらせられるかもしれん。狙撃への対処法ばかりを教え続けても仕方ないからの。
……ところで。さっきから被身子が、それはもう不満そうにしてるんじゃけど? 麗日、そろそろ放してやれ。でないと、後で儂が大変なんじゃ。そもそも、いつまで儂の被身子を羽交い締めにしとるんじゃ貴様は。まったく、人の許嫁に気安く触れおって。って、何じゃ被身子。不満そうな面をしていたくせに、急に微笑みおって。いったい何を考えてるんじゃ。まっこと、分からん奴じゃのぅ。
「そろそろ放してくれんか? 後が怖いんじゃけど」
「え、……うーーん……。渡我先輩、あんまイチャイチャしたらあかんよ……?」
「むーりーでーすーぅー! トガはしょんぼり円花ちゃんとイチャイチャしたいので!」
「わっ、ちょ……っ! ちからつよっ!?」
うぅむ。我慢出来ぬ被身子が、呪力を使ってまで儂に向かい始めておる。麗日を引き摺りながら歩いておるわ。呪力による強化術は、やはり儂と大差なさそうじゃの。とは言え。
「あっ」
数歩も進むと、呪力が切れたようじゃ。そもそも反転術式で怪我人を治してたんじゃから、残ってた呪力は少なかったんじゃろう。どの程度反転術式を続けられたのか、後で聞いておくか。これは知っておきたい事じゃからの。
それはそれとして。
「……まっこと、仕方ないんじゃから」
ひとまず、立ち上がる。まだ身体が重い。さっきよりは気が楽じゃけども、完全に心が軽くなったわけでもない。落ち着くには、もう少し時間が掛かるじゃろう。この後の事を考えると、いつまでも気を沈めてる場合でもない。やるべき事は沢山有るんじゃ。もちろん、被身子との時間じゃって取りたい。この場に麗日が居ることが気に入らんが、この際仕方ないと思うことにする。
「ん!」
「わっ。……んふふ♡ すっかり素直になったのです」
うるさい。そうなるように仕向けたのは、他ならぬお主じゃろうが。責任取れ、責任。儂の方から抱き付いたんじゃから、さっさと抱き締め返さんか。
「あぁもう……。ほんっと、二人は離れないんだから」
麗日に呆れられたが、無視じゃ無視。そんなことより今は、少しでも長く被身子と触れ合っていたい。でないと、どうにも落ち着けん。しばらくは、大いに甘えることになりそうじゃの。気恥ずかしい気もするが、今はそうして居たいんじゃ。麗日、貴様もいずれ分かることじゃぞ。愛しい人との
三人称による補完は要りますか?
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欲しい
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要らん
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良いから一人称で突っ走れ