待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
麗日に呆れられながらも被身子と
そんなこんなで、今は寮の居間で作業中じゃ。儂は
「あ、これはくじ引きなのです」
「……くじ引き?」
「はい。今夜円花ちゃんと呪霊退治に行く人を、これで決めたら良いかなーって」
「ぅ、うむ……?」
何故くじ引きで、呪霊退治に同行する者を決めようとしているのか。何を考えてるのかさっぱり分からん。分からんけども、まぁ好きにさせてやるとしよう。どうせ止めようとしても無駄じゃからの。ただ一応、意図は聞いておこうかのぅ。理解出来るとは思えんが。
「何でくじ引きなんじゃ?」
「誰を連れてくかをいちいち考えるのは面倒じゃないですか? だったら、くじ引きでぱーっとやっちゃった方が手っ取り早いかなーって」
「それは偏るじゃろ」
「そこは一度参加した人は一巡するまでくじ引きしないってルールにすれば良いのです。そしたら、ちゃんと全員参加出来ますよね?」
「……それもそうか」
まぁ確かに、一巡するまで不参加にすれば偏りは無いか。二巡目からはいちいち面子が違う形になるじゃろうが、それも訓練になる。そう考えると、くじ引きで決めてしまうのも存外悪くない。
「あとぉ、さっさと決めちゃえば時間が空きますよね? そしたらその分、イチャイチャ出来るので!」
「……さてはそっちが主目的じゃな?」
「んふふ。円花ちゃんだってイチャイチャしたいですよね?」
「そうじゃけど」
まったく。結局は、儂との時間を取る為の考えじゃったか。楽しそうに笑いおって。まっこと、被身子は仕方のない奴なんじゃから。お陰で儂はいつもいつも振り回されて大変じゃ。駄目とも嫌とも言わんけど。
……それに、まぁ。しばらくは色々と忙しいが、それでも被身子との時間は確保したい。もうそろそろ一月が終わって、二月になる。二月になると、……ほら。ばれんたいん、がやって来る。その日ぐらいは
「……ふぅむ……」
今年のばれんたいんは、どうしたものかのぅ。一昨年は常闇に手伝って貰いながら、何とか
「……作るか」
「何を作るんです?」
「内緒じゃ、内緒」
「んふふ……♡」
……。何を隠したのかを見透かされているような気がするが、まぁ良い。そうと決まれば、後で隙を見て調べておこう。作り方とか、必要な材料とか。そう言えば砂藤が菓子を作れるの。この際、教えを請うか。他に料理が出来そうな奴に声を掛けてみるのも良いかもしれん。問題が有るとすれば、忙しい上にばれんたいんまで時間が無いってことかの。
「じゃあ、楽しみにしてますねぇ。バレンタイン♡」
「……ぅ、うむ。でぇとしよう、でぇと」
案の定、見透かされていた。何でじゃ。壁に貼ってある
「えへへ。今から楽しみなのです……!」
まぁ、喜んでくれてるようじゃから良しとするか。後でこっそり、くらすめぇと達に相談するとしよう。それはそれとして。
もう少し、個性伸ばしに集中するか。現状、こうして被身子と話していても制御に問題は無い。手足のように自由自在とはいかんが、ある程度は使えるようになって来たと思いたい。となると、次にすべきは個性の使い道を模索することじゃ。今となっても、どう個性の解釈を広げれば良いのか分からん。そもそも、手で触れたものしか回せないというのが不便じゃ。これをどうにか出来るのなら、どうにかしたいと思う。んんむ……。
ぐるぐる、くるくる。くるくる、ぐるぐる。
っと、いかん。回ってる筆を見ていたら目が回りそうじゃ。視線を被身子に戻して、一度個性を止める。直ぐに反動が来たから、
「……ふぅ」
地道な鍛錬は嫌いじゃない。このまま続けて行けば、いずれ個性も自在に扱えるようになるんじゃろう。じゃけども、
「大丈夫ですよぉ、円花ちゃんなら。だって、必ず私の居る所に帰って来るんですよね?」
「約束は違えん。じゃから被身子」
「はい」
「ほれ。来い」
手のひらの
「ふふっ。じゃあ、いーっぱい安心させてくださいっ!」
「もちろんじゃ。任せろ」
直ぐに小走りで駆け寄って来た被身子を受け止める。相変わらずの勢いで押し倒されてしまったが、まぁ良い。思いっ切り抱き締めてやると、胸に額を押し当てられた。から、頭を撫でたり背中を擦ったりしてやる。昔っから甘えん坊じゃよなぁ。そういうところも、ちっとも変わらん。今となっては、そこも愛おしいんじゃけどな。
じゃから、もう少し。あと少し。十分か二十分ぐらいは、このままで居たい。今夜は何人かのくらすめぇと達を連れて呪霊退治に行くんじゃ。被身子のように言うなら、そう。
今の内に、被身子成分を補充しておく。ってやつじゃ。……よく分からんな、これ。やはり意味不明な言葉な気がしてならん。しかも深く考えたら負けな気もする。まったく、仕方のない奴なんじゃから!
◆
「というわけで、くじ引きじゃ。引け」
被身子と三十分は抱き締め合った後で、儂は被身子と共にくらすめぇと達が個性伸ばしをしている訓練場に出向いた。もちろん、被身子が作ってくれたくじ引きを抱えての。
「えっ、何が!? 何のくじ引き……!?」
「ま、まさか……この後でまた戦闘訓練とかじゃねーだろうなぁ!? い、嫌だ! オイラは引かねーーっ!!」
「か、廻道ちゃんっ。流石にみんな死んじゃうよ……っ!?」
「お、落ち着いてください皆さん。きっとこのくじ引きは、この後の呪霊退治の為のものですわ……!」
「でもヤオモモ……! 廻道ならやりかねないよ……!? くじ引きでハズレを引いた人が、戦闘訓練とか……!!」
解せぬ。被身子手製のくじ引きを持って来ただけなのに、何でどいつもこいつも顔面蒼白になって慌てふためくんじゃ。さてはこやつ等、夜の予定を忘れておるな?
……まったく。世話の焼ける奴等じゃ。もう少しこう、しっかりして欲しいのぅ。
「どうどう。百ちゃんの言った通り、夜は円花ちゃんと呪霊退治ですよぉ。このくじ引きは今回参加する人を決めるものなのです」
「そういう訳じゃ。ほれ、騒いでないでさっさと引かんか」
「な、なんだ良かった……! 危ねぇ、殺されるところだった……!」
「死んじゃうところだった……っっ!」
いや、じゃからな? 騒いでないで、さっさとくじを引けくじを。何で全員して、露骨に安堵しているのか。確かに手厳しい訓練の後じゃけども、じゃからって大騒ぎする必要は無いじゃろうが。仕方ない連中じゃよ、まったく。
「確認だ廻道くん! このくじ引きは、今夜の呪霊退治同行のメンバーを決めるもので相違ないな!?」
相変わらず喧しい委員長じゃ。いつも通り右手を振り回して声を張っとるのぅ。まぁ、これが飯田らしいと言えばそうなんじゃけども。
「そうじゃ。割り箸の先が赤く塗られてたら儂に同行」
「青く塗られてたら、オールマイトに同行してくださいねぇ。ちなみに定員は三人ずつなので、六人は呪霊退治に行けるのです」
うむ。被身子の言う通り、青く塗られた割り箸を引けた奴は筋肉阿呆《おおるまいと》と共に呪霊退治に赴く手筈になっている。あやつに指導を任せるのは些か不安では有るが、流石に無茶苦茶はしない筈じゃ。それに、人手不足じゃからの。くらすめぇと達に短期間で呪霊退治を経験させるには、もう一人ぐらいは呪術師が欲しい。おおるまいとを呪術師と言って良いとも思えんが、この際仕方ない。背に腹は代えられん。くらすめぇと達が生存する可能性が僅かでも上がると言うのなら、目を瞑るとしよう。
「えっ、オールマイトに!?」
「マジか。オールマイトに教えて貰えるのは胸熱だな……!」
「あの人にも教えて貰えるのか。爆豪、不参加なのはもったいねぇな……」
「るっせえわ半分野郎! 煽っとんのか!!」
んんむ。おおるまいとにも教えて貰えると話すのは、少し早計だったか? 各々が浮かれ始めているように思える。舎弟は喧しい。じゃがまぁ、これは仕方ないか。皆が目指すのは
「でも、良いのかしら? 円花ちゃんは象徴の後継で、オールマイトから学ぶ事がいっぱい有るのに」
「このままだと私達ばかりが教わって、廻道さんの時間が取られる一方のようにも思えます」
「梅雨、八百万。そこは気にしないで良いんじゃ。そもそも儂があやつに教わる事など無い」
とは言い切れんけども、今は嘘でも「問題無い」と言い切っておく。実際のところ、あやつに教えて貰える事は山程有るじゃろう。
「……とにかく引け。考える時間が惜しいからくじ引きにしたんじゃぞ」
被身子手製のくじ引きを、箱ごと突き出しておく。そしたら舎弟を除く全員が一列になってくじを引き始めた。
……その結果。
「えーっと。それじゃあ上鳴くんと青山くん、百ちゃんは円花ちゃんに付いてください。オールマイトには、障子くんと峰田くんと口田くんが付いてくださいねぇ」
今夜の任務は、上鳴・青山・八百万の三人が儂に同行することになった。今回はそこに砂藤も加える形で、一度に四人見なければの。
……さて。同行する面子も決まったことじゃし、動くとしよう。ゆっくりしている時間は無い。少しでも多く、少しでも長く学んで貰いたいからの。
「あ、それと。トガは円花ちゃんに同行するので! 補助監督としてっ!」
ぐえっ。首に抱き付くな、まったく。いい加減危ないじゃろ……!
三人称による補完は要りますか?
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欲しい
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要らん
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良いから一人称で突っ走れ